事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ソロモンの偽証 前篇・事件」(2015 松竹)

2015-03-11 | 邦画

原作の特集はこちら

1990年12月25日早朝、東京の下町にある公立中学校の通用門近くで、生徒の遺体が発見される。学校も警察も飛び降り自殺と判断したが、①学級委員②担任③校長宛に告発状が送られる。自殺ではなく、殺されたのだと……。

宮部みゆきの、あの長大な原作を映画化しようとし、実現したことがまずすばらしい。新歌舞伎座の好調を背景に、松竹が本気で自前の映画製作にとりかかったことが幸運だったし、一万人規模のオーディションで選ばれた33名の中学生たちに、確実に才能があったことはもっと幸運だった。

特に主役の藤野涼子。役名を芸名にしたこの子は確実に大女優になる。賭けてもいい、NHKは朝ドラの主役に抜擢することと思う。それほどのタマ。

彼女の選択はまわりのスタッフから反対されたらしいけれど、成島出監督(「八日目の蝉」「山本五十六」)がつっぱったそうだ。さーすが相米慎二監督(「翔んだカップル」「台風クラブ」)の弟子だけに女の子を見る眼がある。

しかし中学生がすばらしいだけではこの作品は成立しない。後篇で明らかになるであろう“真犯人”の邪悪さは、彼らだけでは受け止めきれるはずがないからだ。

そこで登場するのが実力派俳優たち。未熟で逃避をくりかえす担任に黒木華、子どものためという善なる思いが最悪の結果を招く校長に小日向文世、生徒が“覚醒”することに我慢できずに涼子をたたいてしまう学年主任に安藤玉恵(体型・姿勢までいかにも学年主任っぽい!)、太っていることは悪いことじゃないと松子ちゃん(いいキャラでした)をさとす母親に「湯けむりスナイパー」の池谷のぶえ、夫の暴力のために身体の蝶番が外れたかのような市川美和子、江口のりこ……んもう数えきれないくらいだ。

特に、冷静な女性刑事を演じた田畑智子と、無邪気さがかえって怖い永作博美はすごい。

批判もあるようだけれど、後篇へのつなぎはあれで大正解だと思う。ギリギリとひきしぼられたギターの弦が、音を立てて断裂する感じ。おみごと。

キャラが徹底的に描きこまれた原作のなかで、ただひとり“和服を着ている”としか描写されない人物は、はたして後半登場するだろうか。わたし、原作では彼女で号泣でしたが。

もちろん後篇につづく。ああ待ち遠しい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 冠婚葬祭のひみつPART4 | トップ | 冠婚葬祭のひみつPART5 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

邦画」カテゴリの最新記事