事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「蜜蜂と遠雷」 恩田陸著 幻冬舎

2017-01-23 | 本と雑誌

評判は聞いていた。もんのすごい傑作だと。でもこっちは貧乏だからどうせ図書館待ち。いつ読めるものだか……なんとうちの学校の図書主任が購入してくれてました!これは生徒のためにも先に読んでおかなくては(笑)。学校事務職員でほんとうによかった。

しかも読んでいるさなかに直木賞受賞。おまけに本屋大賞にもノミネート。快進撃はつづく。

舞台はある都市(浜松がモデル)のピアノコンクール。四人の若者が優勝をめざして競う、ストーリーはそれだけ。なのに二段組み500ページ超を一気に読ませる。なにしろキャラの設定が泣けるのだ。明らかに少女マンガの方法論を利用している。

・養蜂家の息子で、コンクールに入賞すると“ピアノを買ってもらえる”(!!)という野生児のような天才(彼の名は風間塵……よく考えたらカンサスの「すべては風の中に」Dust in The Windのもじりです)。

・天才少女の名をほしいままにしながら、庇護者だった母親の死によってピアノから逃げた過去を持つ音大生。

・ジュリアードで英才教育を受け、現代音楽を革新しようとまで考える美男の若者。優勝候補筆頭。

・楽器店に勤務しながら、年齢制限ぎりぎりでコンクールに挑む常識人。彼の視点が、天才たちの異様さをあらわにしていく。マンガでいえばメガネくんキャラ。

……章立てはすべて古今東西の名曲のタイトル。「仁義なき戦いのテーマ」まであります(この章、泣けるんだ)。コンクールの結果もよく考えてある。

ピアノ演奏を小説で描くというアクロバットを成功させ、肌合いとしては「宮本武蔵」などの剣豪小説に近い。上には上がいるという展開とか。あるいはドラゴンボールの天下一武道会か。

とにかくむやみやたらに面白く、感動も保証する。直木賞納得。きっと本屋大賞もこれだ。恩田陸おそるべし。必読。買いなさい今すぐ(わたしだけは言っちゃいけない)。

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