近所の、野菜や惣菜などを販売している酒屋での話だった。
相変わらずの飲ん平たちが、三三五五にストーブを囲みワンカップやら酎ハイを手にして話し込んでいた。
ちょっとしたツマミには、苦労のないお店でもある。
「あれだけのよ、体を痩せさせるとなるとあれだな、半端なダイエットじゃ痩せねぇな」と、水道屋の章ちゃん。
「なに〜っ、誰がさ」と、今度は電気工事屋の孝ちゃん。
「あ〜ぁ、章とこの四,五軒隣りの豆腐屋のかかぁのことだろ。
まだ若いからな、四十前後でお相撲さんにゃなりたかぁねぇだろうて、の?」と、酒屋の親父。
「痩せるだけじゃなくさ、健康式ダイエットじゃねぇのか」と、章ちゃん。
「朝早くから一日働いているんだからさ、何も改めてダイエットでもあるまいて。
もっともよ、結婚したら太るとも言われることもあるさな」と、酒屋の親父。
「そうけぇ、なんでだ、その理由?」と、今度は孝ちゃん。
「まぁはえい話しはさ、結婚して同じ共有生活ともなりゃ〜よ、独身の時と違ちご)うてさ、社会的プレッシャーがかからなくなるからな。
つまり、亭主と言う得るべきものを得てしまったわけだからさ、いくら大食いして太ってもよ、怖いものが無くなった訳よ」と、親父。
「そりゃ〜そうだろうな、カロリーも増えておまけに運動不足となりゃ〜さ、豚のように太るだけださ。
でぇいちさ、お化粧だってあっさりしたものになるな。
むしろよ、独身時代のあの厚化粧よりもいいかもな。
どっか、ちょっと弛(たる)んだような疲れっぽくて埃っぽい感じもするがな、毎日眺めていりゃそのうち気にもならんだろうからな」と、章ちゃん。
「そうだな、ちょうどおめぇさんとこのかぁちゃんみたいにな?」と、孝ちゃん。
「てやんでぇ、独り身のおめぇさんにゃ解らんことださ。
痩せぎしの女なんざぁ〜よ、チンコが痛(いと)うて付き合っておられんと言うぜ」。
「そうかいそうかい、それでか、あんまり具合がいいもんで五人もガキが出来たかい。
そりゃそうとさ、痩せ女だったらどうなるんだろ?」。
「バカこけ、床が変わった見てぇだろうて」と、章ちゃん。
「ハハハハ、こりゃおもしれぇ、な〜るほど、床が変わった見てぇとはよ、床じゃなく女が変わったんだろうて」と、孝ちゃん。
「ところでよ、たかがダエイットと言えどもよ、別な見方もあるなそうだぜ」と、酒屋の親父。
「なに〜っ、どんな見方よ。
美しくなろうとするから、ダエイットだろうが?」と、孝ちゃん。
「まぁ大抵はな、ところが<幸福度と体重の関係>と言う法則もあるんだってさ。
急にな、ジムに通ったりダエイットを始める人と言う者はな、こっそり別な相手を探すためらしいんだぜ。
つまり、浮気の相手を見付けたかあるいはゲットしょうとしているためと言う法則なんだな。
もっともよ、そんな軽はずみなことに費やするためとは限らねぇがさ、いずれ新しいチャンスを得るための警告とも言われておるんじゃ」と、親父殿。
「じゃあれか、若いころの親父の経験からの話しけぇ、あん」と、孝ちゃん。
「よく言うぜ、電気屋も」と言いながら、親父さんが辺りを見回していた。
「おばさんはよ、さっき外へ出て行ったよ。
聞こえはしねぇさ、と言うことはよ、章のかかぁもそれが狙いかな」と、孝ちゃん。
「なんだと、うちのかかぁがダエイットしてたってか」と、少々ムキになる章ちゃん。
大抵はどこの夫婦でも、危機的な関係ともなれば大食いも少なくなり強いては両方共が体重が減って来るものであるらしい。
幸せであれば、お互いにプレッシャーが無くなり一定の体重が保持されるとも言われるようでもある。
「結婚の契約書に書いたインクが乾き始める頃、彼らは体重と見た目に関しての支配をゆるめてしまう」と言う、格言らしいものもある。
太るのが幸せな結婚の結果ならば、太った相手に愛想を尽かしてしまうのもまた結婚の結果なんですな。
結論は、「幸せなカップルは太りやすい」と言うことのようで。
「借金か 離別のせいか 痩せ夫婦」。









