本蔵院 律良日記

熊本県にあるお寺“真言宗 本蔵院 律良のブログ”日々感じるままに活動のご報告や独り言などを書いた日記を公開しています。

「有」(う)ということ

2017-08-10 21:19:32 | 住職の活動日記

 

ご近所の一人暮らしの方が

亡くなられました。

迎えに来られるデイサービスの方が

発見されたようで、

救急車は来るは、消防車も来て

パトーカーもやって来ました。

一人で亡くなられたということで

事件性はないかご近所への聞き込み

翌日、息子さんと顔を合わせ

どう言葉をかけようか

と思案しているうち、

向こうから普通にお早うございます

との一言で、

母が亡くなったこともおっしゃらず

数日後、回覧板で亡くなったとの

報告が廻りました。

 

なんだかとても寂しい気になります

普段色々言葉を交わしたり

雨戸は開いているかと気にかけて

いたのですが、

 

最近ではこういう事例が

多くなってきたようです。

死んだら終い、

ということでしょうか。

また言葉にしても

簡潔で短いフレームのことばが

もてはやされます。

 

人はお金が有ろうが無かろうが

また、地位や名誉があっても

四苦八苦の生老病死、

愛別離苦・怨憎会苦・

求不得苦・五陰盛苦

という苦しみは

平等に備わっています。

お金が有ればあったで悩み

無ければ無くて苦しむものです

そのことをお釈迦様は

「有田憂田・無田憂田」

田んぼという財があれば

有ったで悩み苦しみ

無くても欲しいと悩み苦しむ

と言っておられます。

 

仏教には「有」(う)ということで

人間のあり方を捉えています

この有は幅広い意味を持っていて

人間の身体のみならずその環境

までも含んでいるのです

三有・四有・七有・二十五有と

そのあり方の幅広いことを表して

います

そういえば、世界中には

たくさんの人々がいて

それぞれに個性を持って

それぞれの世界(有)があり

そんなに簡単に人間ということは

できないはずです。

 

いつもお葬式の時に読む

表白文の中に

「娑婆の縁尽き、既に他界に趣き

南浮(なんぶ)の身を離れて

まさに中有(ちゅうう)に遷る」

という言葉があります。

有の考え方のひとっつとして

四有(しう)ということがあります

ここに出てくる「中有」ということは

死んでから次の生を受けるまでの間

そして、

「生有」(しょうう)は生まれた瞬間

「本有」(ほんう)は生まれてから

死ぬまで、

「死有」(しう)は臨終のその一瞬

というように

人が生まれてから死ぬまでを

四つの生存(有)として捉えている

ということです

 

ですから、

死んだら終いではないのです

生れたその瞬間も「有」という

存在であるし

亡くなったその瞬間までも

「有」というあり方で

表現しています

 

また、

「真空妙有」ということも

気になっていることですが

本当の空ということは

比べられない有である

というのです

これは『十地経講義』の中でも

「能く寂滅定に入って而も

 寂滅定を証せず」

という一文が出て来ます

安田先生もどうもひっかかられた

ようで繰り返し説いておられます

 

寂滅定とは涅槃のことで悟りです

普通では悟りに入るのが目的です

しかし、さとりに入っても

そこに、証せずというのですから

とどまらない、ということです。

 

ちょっと飛躍した考えですが

真空妙有もそうですが

本当の空を表すものは

有であるという

つまり迷いの私たちの存在

ということです

寂滅定に入っても証せず

ということも

寂滅定という涅槃に入ってしまったら

七地沈空と同じで

空に沈んでしまう

その空に沈まないためには

有という迷いのあり方の世間

ということが大事なのだと

 

さとり、さとりと

向こうへ行ってしまうのではなく

かえって

さとりということを表現するのは

迷いのこの世界である

さとりと迷いというのは

切り離して考えるのではなく

相関関係というか

さとりの具体的実践は

迷いのこの世界しかないという

ことです。

 

(というようなことを勝手に

 思っていましたし、

 どうも気になっていることなんです)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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