レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所」

貧家銭内(平賀源内)の診察記録

レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」 其二

2017-04-17 | 講 談

       原作 土屋寛文

      イメージ・キャスト(仮)

   貧家銭内(発明者) ルー・大柴
 
   杉田玄白(蘭方医) 笹野高史

   土屋正直(見回り同心) 國村 隼   

   助 六(下役人) 石倉三郎

   村人A

         其 二

貧家銭内は厭(イヤ)な夢を見た。

     その夢とは・・・

水車が回っている。
徐々に徐々に早く回転して行く。
最後はスクリューの様に早く回る。
 
そこは、江戸は「渋谷村」の夢であった。


        夢の内訳

丑三つ時の闇夜。
今夜もまた、切り裂くような悲鳴が聞こえた。

 声「ギヤ~ッ!」 
  
村人(全五戸、五家族)が飛び起きる。
今日で五日目、夜な夜なこの叫び声に驚かされる渋谷村の村人であった。

 村人A「? また狼かッ!」

赤子は寝ぼけて大泣きをしている。

      *    *    *

田園の中の水車小屋に灯りが漏れている。
「町方役人」が提灯を持ちながら水車小屋を取り囲んでいる。
一人の同心(土屋正直)が外(ハズ)れかけたたドアーを叩く。

 音 「ドンドンドン」

正直の鋭い眼が光る。

 正直「おいッ、誰か居るのかッ!」

小屋の中から苦しむ声が、

 声 「ウ~・・・」

正直は大声で、

 正直「? どうしたッ! ここを開けろ」

正直はドアーを蹴破る。
正直の白足袋が、ヤタラ目立つ。

 音 「バン・・・」

仄暗い小屋の中、水車が規則正しく杵を搗いている。
情けない音。

 音 「コト、コト、コットン」

正直は目を凝らし小屋の隅々を見る。
下役人助六がカンテラ提灯を照らす。

水車の心棒に、何か細工がしてある。
細工物から、縄のような物が天井まで延びている。
正直の白い顔。

 正直「・・・何だ? これは・・・」

正直は縄の行方を目で追う。

天井から、鉄鍋が下がっている。 
縄のような物は鉄鍋の芯にニカワのような物で貼り付けてある。
正直はもう一度、水車の心棒に取り付けてある細工物を見る。
細工物の箱の中から「ハチが飛ぶ」ような音が聞こえる。

 音 「ブ~ン、ブ~ン・・・・」

間の抜けた「助六」の顔。

 助六「! ・・・? な、何だこれは?」

正直はキツイ眼で、

 正直「何かを、コサエ(製作)てたみたいだのう・・・」 

 助六「・・・旦那、野郎は何処に居たんでしょう」

正直は緊張した眼で、

 正直「ヤロウ? オマエは「男」と云う事がよく判るな。女狐(メギツネ)かも知れんぞ」

 助六「いやね、十日程前に小伝馬町の養生所から貧家銭内と云う癲狂浪人が逃げたと知らせが有りましてね」

正直は眼を丸くして、

 正直「貧家銭内?」
  
 助六「旦那、ご存知で」

 正直「うん? うん。*田沼殿の所で、殿(トノ)に怪しげな入れ知恵をしていた用人(ヨウニン)だ・・・」

積まれた藁(ワラ)の中からう、めき声がする。

 声 「ウ~ッ! ウ~」 

昏倒している浪人が居る。

 助六「おッ! やっぱり野郎だ。こんな所で寝てやがる」

正直はカンテラ提灯で浪人の顔を照らす。
浪人は我に返る。

 助六「ヤロ~・・・。おい、三品(サンピン)! 貧家銭内だな?」

銭内の眼は死んでいる。

 銭内「・・・? 如何(イカ)にも。 ・・・? 何故、ワタシは此処に居る」

 助六「何を? それは俺のセリフだ」

助六は十手で銭内を殴ろうとする。

 正直「まあまあ」

止める正直。
正直は優しく、

 正直「・・・かような所で、何をして居(オッタ)た」

 銭内「いや~・・・また失敗してしまった。配線を間違えた。許せ」

正直は驚き、

 正直「何ッ! ハイセンとな?」

 銭内「発光からくり細工と云う物をコサエ(製作)ているのだ」

 正直「ハッコウ・・・?」

 銭内「お主(ヌシ)に言っても分らん。提灯はもう古い。もっと先を照らす物をコサエ(製作)ているのだ」

 助六「旦那、こんなサンピンの言う事なんざ、信じちゃいけませんよ。何しろ、癲狂養生所からのお尋ね者ですからね。しょッ引きましょう」

 正直「う~ん。・・・提灯は古いとは解(ゲ)せぬ事を言うヤツ。よしッ。 御用だ! 助六、縄を打て」

 助六「ガッテン!」

銭内は助六の縄を受け立ち上がる。
薄暗い床に、切れた縄(配線)が延びている。
銭内は助六の縄に引かれて数歩、歩む。
切れた縄(配線)を踏む銭内。

 銭内「ギャ~ァ! アッ、アッー・・・」

助六は仰天する。
助六は眼を丸くして、
 
 助六「だッ、旦那! これがこのサンピンの病ですよ」

正直は銭内の眼の中を睨む。
感心する正直。

 正直「う~ん。・・・解(ゲ)に、癲狂養生所罪人とは恐ろしい者よのう」

 助六「この銭内とか云う癲狂浪人、よく発作と云うものを起こすと町人が言ってました」

正直は切れた縄(配線)と銭内を見て、

 正直「なるほど。縄を踏むと気が狂う。縄当たり(食当たり)と云う病か・・・」

 助六「旦那、ひょっとして縄を打たねえ方が良かったんでは」

                 つづく

*田沼殿 (老中・田沼意次である)


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