舞台用ドラマ「酷道岬(切れた道)」Schizophrenie

ベツレムの部屋(統合失調症)

舞台用ドラマ 「酷道岬(Schizophrenie)」 終わり

2017-05-22 | 舞 台

   舞台用ドラマ 「酷道岬 (切れた道)」

          終わり

         統合失調症
      
              原作 土屋寛文
   
      イメージ・キャスト(仮)

     吉村レミ (16歳)有村架純

     ママ(吉村信子) 野際洋子

     パパ(吉村龍司) 綿引勝彦

     リサ(白い猫・アメリカンカール)

          S 33

 玄関をノックする音。

音 「コ~ン・・・コン・・・。 コ~ン、コ~ン・・・」(SE)

 風の悪戯(イタズラ)で、ドアーに何かが当たっるような音。

 *レミを誰かが見てい様な気がする。

 レミ、振り返る。

          S 34

 居間の鏡、レミが映っている。
 奇妙なレミの姿。
 レミ、振り返って居るのに、鏡の中のレミは後ろ向き。

レミ「? 見ているのは・・・アタシ」

          S 35

 何処からか、杏奈(アンナ)の声が聞こえて来る。

杏奈(声)「レミ、海は綺麗よ。ほら、こんなに可愛い貝。早く、早く。あッ! レミ、先に行かないで。杏奈を置いて行かないで」

 ドアーをノックする音が続く。

音 「コン・・・コ~ン・・・」

 杏奈の声が続く。

杏奈(声)「レミ、開けて。会いに来たの。杏奈よ。 開けて」

 レミ、急いでトイレに。

          S 36

 レミ、トイレの窓を開けて外を見る。
 コバルトブルーの海原にカモメとカラスが喧嘩している。
 浜辺に打ち上げられた壊れた船。
 太陽は、動いていない。

レミ(M)「・・・時間が切れている」(UP)

 レミ、大声で叫ぶ。

レミ「杏奈~ッ! アタシは此処よ~。アンナ~・・・」

 レミ、トイレ出て急いで玄関に。

          S 37

 ドアーを開けるレミ。

レミ「えッ! そんな・・・」

 ドアーを開けると、そこにまた部屋が。(UP)

 レミ、その先のドアーを開ける。

          S 38

 アタシ(レミ)が居る。

 信子の声が。

信子「レミ、仮の退院よ」

 龍司、2階で叫んでいる。

龍司(声)「灯りを何とかしてくれ。絵が描けないじゃないか。レミの声がするぞ。戻って来たのか。信子ッ! おい、ノブコ!」

 レミ(もう1人のレミ)、ソファーに座ってテーブルのケ―キを食べてる。

レミ「アタシは、レミ(アタシ)を見ている」

          S 39

信子「レミ(1人のレミ)、2階にいらっしゃい。パパがアナタに会いたがっているわよ」
レミ(もう1人のレミ)「えッ!」

 レミ(もう1人のレミ)、急いで階段を上がって行く。
 リサ(猫)、レミ(もう1人のレミ)の後を追う。
 アトリエの部屋のドアーを開けて、レミ(もう1人のレミ)と信子が入って行く。

*それを観ているアタシ。

 笑い声が聞こえる。

3人(声) 「ハハハハ。そうか。戻って来たのか。そうよ。レミは治ったのよ。パパ、その絵は窓の絵? そう。もう1枚そこに置こうと思ってな。黒い絵だ」

 *楽しそうなアタシの家族

          S 40

 アタシは、もう1つの部屋の「玄関のドアー」を開けて外に出る。

 「そこも、アタシ(レミ)の家。そこにも、レミ(アタシ)が居る。そして、アタシのレミが2階に居る ・・・。振り返ると居間の鏡にアタシの後ろ姿が映っている。アタシ(レミ)が沢山いる。アタシは切れている。アタシが分裂している。アタシは分裂している。レミ(アタシ)も分裂している。アタシは、レミじゃない。レミはアタシじゃない。此処に居るのはアタシ(レミ)。ママもパパもリサ(猫)も、みんな居ない。此処は、 ・・・ 無い家。記憶の中の家」

 *「万華鏡の家」

 「こんにちわ。隣の杏奈(アンナ)です。最近、レミを見ないので手紙しました。元気ですか。杏奈は元気だけど、この手紙はお別れの手紙なの。杏奈は明日この家を出て行くの。なぜ? だって道が無くなってしまったんだもん。みんな途中で切れちゃうの。こんな家に居てもしょうがないジャン。もう2度と戻らないし戻れない。 だからこの手紙はさよならの手紙。 この間レミのお母さんと会ったわ。 やっぱり同じ事を言ってた。 落ち着いたらメールするわね。レミ、からだ大丈夫? 海が見える所に引っ越せれば良いけどね。じゃあ、またいつか会える日まで。さようなら。元気でね」

          S 41

 レミ、病院の玄関に1人で立っている。(UP)
 周りは霧が立ち込めている。

          S 42

 看護師が近づいて来る。
 看護師は「信子」に似ている。

看護師「レミちゃん。・・・レミちゃん!」(UP)

 レミ、その声に気が付く。

レミ「はい」(UP)
看護師「1人で来たの?」
レミ「えッ? ・・・はい」
看護師「何処に行っちゃたのかと思った。皆心配してたのよ」
レミ「退院して、お家(ウチ)に帰ってたの」
看護師「退院? お家? お家が分ったの?」(UP)
レミ「えッ? お家は、お家は ・・・無かったの・・・」(UP)

看護師「そう。じゃ、もう少し此処(ココ)にいましょね。私がお家(ウチ)を捜してあげるから」

                   終わり

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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舞台用ドラマ 「酷道岬(Schizophrenie)」 3

2017-05-21 | 舞 台

  舞台用ドラマ 「酷道岬 (切れた道)」 3

         統合失調症
      
              原作 土屋寛文
   
      イメージ・キャスト(仮)

     吉村レミ (16歳)有村架純

     ママ(吉村信子) 野際洋子

     パパ(吉村龍司) 綿引勝彦

     リサ(白い猫・アメリカンカール)


          S 21

レミ「そんな・・・みんな途中で切れてる・・・」

 レミ、横に成りながら今日1日の事を振り返る。

          S 22

 イメージ

 「バスを降りる。・・・道路を歩く。・・・道が行き止まり。・・・農夫に道路の事を聞く。・・・あそこに見える白い家に行きたい。・・・家は無い。・・・? ・・・アナタは誰? ・・・? ・・・1ヶ月前に出て行った。・・・出て行った。あそこの家に帰りたい。・・・家? ・・・誰も居ない。・・・何処から来た? ・・・蓼科の病院。・・・気おつけて。・・・気をつけて」

          S 23

レミ(M)「行き止まり? 家は無い? アナタは誰。誰も居ない? 1ヶ月前。・・・でもアタシは此処に居る。ママもパパもリサ(猫)も・・・。杏奈の手紙・・・」

 レミ、徐々に深い眠りに入って行く。

レミ(M)「アタシは体に温かい物を感じた」  

 レミ、そっと目を覚ます。
 信子、レミに毛布を掛けるている。

レミ「あッ、ママ! ありがとう」

 信子、何も言わずに微笑む。
 レミ、毛布に包まり、振り向いて信子を見る。

 信子、居ない。

レミ「あれ? ママ? ママ!」

 リサ(猫)、階段の中ほどからレミを見て居る。(UP)

レミ「リサ、ママは何処?」

 リサ(猫)、階段を急いで駆け上がって行く。(UP)

レミ「あッ、リサ・・・」(UP)

 突然の雨音。 

レミ「・・・雨?」

 レミ、そっと起き上り、トイレに行く。

          S 24

 窓のすりガラスを開けるレミ。
 レミ、窓から外を覗く。

レミ「あら・・・? 雨・・・降ってない」

 海原でカラスとカモメが喧嘩をしている。 
 砂浜に打ち上げられた壊れた船。

レミ「・・・止まっている。・・・アタシの時間。・・・止まっている」

 レミ、急いでトイレを出て、ソファーに座る。

          S 25

 壁の時計を見る、レミ。
 振り子がゆっくり、動いている。

音 「カッ・・・チ カッ・・・チ・・・・」(SE)

レミ(M)「? 時計の針が逆に回っている・・・」

 2階から信子と龍司の話声。

龍司「レミは学校から戻ったのか」
信子「何言ってるの。今は夏休みよ。1ヵ月前に蓼科のおばさんの所に泊まりに行わ」
龍司「ああ、そうだったな。あの子も大きく成った・・・。1人で蓼科に行くなんて」
信子「アナタしっかりしてちょうだい。アナタが送って行ったのよ。レミは、まだ幼稚園生ッ!」
龍司「あッ、そうか。まだ幼稚園だったか。ハハハ。幼稚園じゃ大きい方だろう」
信子「だって周りの子より5つも年上よ」

 奇妙な会話だった。

          S 26

 雨音が止まった。

 レミ、ソファーを立ち、自分の家の中を散策し始める。
 レミ、階段を、中ほどまで上がる。

 2階の廊下の奥に大きな鏡が見え。

 レミ、ゆっくりと、あと2~3段上がる。
 奥の鏡にレミの顔と階段が半分、映る。
 更に上がるレミ。
 レミ、また鏡を見る。

レミ「・・・?」

 階段を上がった分だけレミの姿が消えている。
 レミ、上がって来た階段を振り返る。
 下からリサ(猫)がレミを見て居る。

レミ「・・・変な家」

 レミ、急いで階段を上がって、2階に行く。
 手すり越しに、1階を覗く、レミ。
 誰かがソファーの上で、毛布に包まり寝て居る。

レミ「? アタシしか居ない筈なのに・・・」

 信子の部屋のドアーが少し開く。

レミ「ママ?」

 信子、声。

声 「だめよ、2階に来たら」(SE)
レミ「えッ?」

 レミは、そっと信子の部屋のドアーを開ける。(UP)

          S27

 誰も居ない部屋に灯りが点いている。
 また、信子の声。

声 「部屋を覗いたわね。困った子・・・」(SE)
レミ「ママ、何処?」
声 「此処」(SE)

 レミ、声の方向を見る。
 正面の鏡に信子が映って居る。
 レミ、後ろを振り向く。

 信子が居る。(UP)

レミ「あッ! ママ。ビックリするじゃない」(UP)
信子「此処に来てはダメ。早く降りなさい」
レミ「ええッ!?」

 レミ、信子の顔を見る。
 信子の青白い顔。

レミ「・・・分った」

 レミ、また、正面の鏡を見る。
 レミ、姿が映ってない。(UP)

レミ「・・・そんな。・・・ママ、この鏡、変ンよ。アタシが映って無いわ。ねえ、ママ」

 レミ、また振り向く。
 信子、そこには居ない。
 レミ、もう一度、鏡を見る。

 信子が映っている。(UP)

 レミ、急いで1階に下りる。

          S 28

レミ(M)「アタシ、狂ってる。・・・アタシは狂ってるわ・・・」(UP)

 ソファーに誰かが寝て居る。
 レミ、ジッとソファー見る。

 レミ(M)「? アタシが寝て居る。ああ、そうか・・・アタシは夢を見ているんだ。これは全部夢。早くアタシの中に戻らなくちゃ。でも、どうやって戻るの? どうやって戻ったら良いの。・・・そうだッ! アタシを起こしたら・・・」

 レミ、寝て居る自分に触れる。(UP)

レミ「レミッ!・・・レミ! ・・・冷たく硬い・・・。レミ? 起きて、レミ! アタシよ。起きてッ!」

 いつの間にか信子、階段の中ほどに立っている。
 信子、青白い顔でレミを見ている。(UP)

 レミ、必死に自分を起こす。

レミ「レミ、起きてッ! 起きてよぉー・・・」  

          S 29 

 2階の廊下を龍司が歩いて行く。

龍司「信子? レミの声が聞こえるぞ。おい! 信子? 何処に居ったんだ」

 信子、レミをジッと見ている。(PU)
 リサ(猫)、信子の足もとに座って居る。(UP)

信子「・・・何をしているの?」

 レミ、信子の声に驚く。(UP)

レミ「あッ! ママ。アタシ夢を見てるの。ねえ、どうしよう。アタシが起きないの。アタシ、・・・戻れない」
信子「夢なんかじゃないわ」
レミ「だって、アタシ、此処に寝てるじゃない」
信子「レミが寝てる? アナタは起きてるじゃない」
レミ「うそッ! アタシは此処に寝ているわ」
信子「アナタは夢なんて見てないわ。そこに居るのはアナタじゃないの」

 龍司が2階の廊下を歩いている。

龍司「信子。レミの声が聞こえるぞ。レミは戻っているのか? 信子? 信子ッ! 何処に行ったんだ」
レミ「ママ、パパが呼んでるわよ」
信子「パパは居ないわ。アナタが着いた日に家を出て行ったの」
レミ「そんな・・・。2階を歩いてるじゃない」
信子「2階? 2階なんて無いわよ。もう取り壊したの」
レミ「えッ!? ・・・。ママ、アタシ此処に居るのよね」
信子「勿論よ。レミは、ちゃんと此処に居るわ。ママはいつもアナタを見てるわ」
レミ「ねえ、ママ、アタシをこの家から出して。レミ、外が見たいの」
信子「だめよ。アナタはまだこの部屋が見えてるでしょう。部屋が見えなくなったら外に出られるわ」
レミ「えッ? ママ、どういう事?」

 レミ、杏奈(アンナ)のあの手紙を思い出す。

          S 30

 イメージ

 「なぜ? だって道が無くなってしまったんだもん。みんな途中で切れちゃうの。こんな家に居てもしょうがないジャン。もう2度と戻らないし戻れない。だからこの手紙はさよならの手紙」

          S 31
 
 信子、階段から、

信子「そうよ、家を出たら2度と戻れないのよ」
レミ「えッ!? ママ、アタシの心が読めるの?」
信子「何言ってるの。アナタ、今喋ったじゃない」
レミ「喋った?」

 信子、笑って頷く。

レミ「そんな・・・。アタシ今、2階に上がったの。あの時ママ、私の後ろに居たわよね」
信子「2階には誰も居ないわよ。アナタはそこに寝てるじゃい」
レミ「うそッ!アタシは起きてるじゃない。ママと話してるじゃない。此処に寝ているのはアタシよ! アタシは夢を見ているの? ママの姿も夢? もう、この家は無いの? このソファーも無いの? レミはこの家に居ないって云う事? ねえ、ママ。ママは本当に居るの? アタシを1人置いてママは・・・。レミは何処に帰れば良いの」

 レミ、階段の信子を見る。
 信子、優しく笑いながら寝ているレミを見ている。
 信子、何かを喋る。(UP)

 信子「ち・・・・な・・・・み・・・たの。 ・・な? ・・・ら・・でしょ」

 信子、言葉が消えている。

 室内の灯りが点滅する。

 龍司の声が2階から聞こえる。

龍司「おいッ! い・・・加減にし・・れ。・・じゃ絵・・・描けな・・・ないか」

 レミ、不思議な顔をして部屋の中を見回す。(UP)

          S 32

 雨音が突然、屋根を叩く。

音 「バラバラバラバラ・・・」(SE)

 雨音が何かを喋っている。
 雨音の中に杏奈のとぎれとぎれの声が聞こえる。

杏奈「レミ! 遊び・・・来たの。此処・・・開けて。杏奈。一緒・・浜へ行こう。素晴ら・・景色よ。ハハ・・・。ハハハハ」

 レミ、階段を見る。(UP)

 部屋の中の灯りが点滅しながら、信子が消えて行く。
 2階の信子を呼ぶ龍司の声も、灯りが点滅しながら消えて行く。

 雨音の中、杏奈の声がはっきりと聞こえて来る。

杏奈「レミ! 遊びに来たの。此処を開けて。杏奈と一緒に浜へ行こう。素晴らしい景色よ。ハハハ。 ハハハハ」

 レミ、急いで玄関に向かう。

                   つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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舞台用ドラマ 「酷道岬(Schizophrenie)」 2

2017-05-20 | 舞 台

  舞台用ドラマ 「酷道岬 (切れた道)」 2

         統合失調症
      
              原作 土屋寛文
   
      イメージ・キャスト(仮)

     吉村レミ (16歳)有村架純

     ママ(吉村信子) 野際洋子

     パパ(吉村龍司) 綿引勝彦

     リサ(白い猫・アメリカンカール)


          S 11

レミ、ため息を吐き、もう一度部屋の中を見回す。
部屋の中は赤と黒、シャンデリアの灯りが異様に白い。
潮騒の音だけが部屋を包む。(SE)

レミ、ケ―キを1欠片(カケラ)をナイフで切る。
ミルクカップを口に、開(ヒライ)いた便箋を読み始める。(UP)

          S 12

* 手紙(UP)

こんにちわ。隣の杏奈(アンナ)です。
最近、レミを見ないので手紙しました。元気ですか。杏奈は元気だけど、この手紙はお別れの手紙なの。杏奈は明日この家を出て行くの。なぜ? だって道が無くなってしまったんだもん。みんな途中で切れちゃうの。こんな家に居てもしょうがないジャン。もう2度と戻らないし戻れない。だからこの手紙はさよならの手紙。この間、レミのお母さんと会ったわ。やっぱり同じ事を言ってた。落ち着いたらメールするね。レミ、からだ大丈夫? 海が見える所に引っ越せれば良いけどね。じゃあ、またいつか会える日まで。さようなら。元気でね。 3月27日 永田杏奈

          S 13

レミ「3月?」(UP)

 レミ、ケ―キを口に運ぶ。

信子「ど~お、美味しい?」
レミ「あッ、びっくりした」

 いつの間にか信子、階段の中ほどに立って居る。

信子「ごめんなさい。パパが呼んでたの。・・・お手紙読んだ?」
レミ「うん。杏奈(アンナ)からよ。でも・・・3月?」
信子「あら、3月だった? ・・・あの子、可哀そうなの」
レミ「ええッ!? なぜ?」
信子「入院したの。悪性の癌(ガン)ですって。若いから転移も早いし、半年位しか生きられないんですって」

 レミ、驚く。
 
レミ「えッ、うそ! 杏奈、引っ越したんじゃないの?」(UP)
信子「引っ越し? 隣はまだ居るわよ。今朝(ケサ)、杏奈ちゃんのお母さんと話したわ」
レミ「・・・。ねえ・・・やっぱり道が無いんじゃない?」
信子「何を言ってるの。湖(ミズウミ)が見える綺麗な道路が、無くなる訳が無いじゃない」
レミ「湖? ママ、ドアーを開けて良い?」
信子「なぜ?」
レミ「外が見たいの」
信子「そこから見えるじゃない」

 信子、ロスコの「窓」ような龍司の描いた「壁の絵」を指さす。

レミ「? あれは絵よ。外の景色を見たいの」
信子「・・・もう少し良く成ってから」
レミ「何で? アタシ1人で家に戻って来れたのよ。もう治ったわ」
信子「いいえ。・・・1週間だけの退院よ」
レミ「そんな」

 2階のアトリエから龍司の声。

龍司(声)「レミ? 戻って居たのかッ!?」
レミ「あッ、パパだ。パパ、アタシ1人で戻って来たの。戻って来れたのよ」
龍司(声)「ほほお、それは凄い。よく戻って来れたな。信子ッ! オマエは迎えに行かなかったのか」

 信子、声の方を見て、

信子「え? だって・・・アナタが居るし」
レミ「パパ、来て。顔が見たいの。此処に来て」
龍司(声)「そうだね。ちょっと待ってくれ。今、手が離せないんだ。もう少しで完成するんだよ」
レミ「・・・分った」

 信子、階段からレミの顔をジッと見ている。
 レミ、信子に視線を移す。

レミ「? ママ、何を見てるの」

 信子、急に笑顔に。

信子「・・・大きく成ったわね」
レミ「何言ってるの。ママ、おかしいわよ」
信子「おかしい? だって久しぶりじゃない」
レミ「久しぶりって、3ヶ月しか経っていないじゃない」

 信子、ため息まじりの笑い。

信子「・・・うふふ」
レミ「ママ、ちょっとトイレに行って来る」
信子「そう」

 レミ、ソファーを立つ。

          S 14

 レミ、トイレの窓から外を見る。

 コバルト色の海。
 海原で「カラスとカモメ」が喧嘩している。
 砂浜にうち上げられた「壊れた船」。

レミ(M)「・・・時間が途切れてしまったよう・・・」

 レミ、家迄の「道路」を覗く。

レミ(M)「あら? 道路は・・・続いている」
レミ「えッ! ・・・? そんな・・・アタシ・・・」

 レミは急いでトイレを出る。

          S 15

 信子、階段の中ほどで、優しく笑いながらレミを見て居る。

信子「どうしたの? そんなに慌てて」
レミ「えッ? 何でもない。 あの・・・」
信子「何?」
レミ「道路が」
信子「道路がどうかしたの?」
レミ「道路が・・・、 通じてる・・・」

 部屋にチャイムの音が響く。

音 「キンコ~ン」
レミ「あッ、お客様だ。ママ」

 レミ、階段を見る。
 信子が居ない。

 玄関のインターホンの声。

宅配人(声)「吉村さ~ん! すいません。お荷物をお届けしました」

 ドアーが開く音。

音 「ギ~」(SE)
信子(声)「ご苦労さま。 ・・・サインでも良い?」
宅配人(声)「はい。・・・有難うございます」

 ドアーが閉まる音。

音「ガシャ」(SE)

          S 16
 
 レミ、杏奈(アンナ)の手紙を読み返す。(UP)

「こんにちわ。隣の杏奈(アンナ)です。最近、レミを見ないので手紙しました。元気ですか。杏奈は元気だけど、この手紙はお別れの手紙なの。杏奈は明日この家を出て行くの・・・」

          S 17

 レミ、階段を見る。
 信子、大きな荷物を2階に運んでいる。

レミ「あら? ママ、アタシの前を通った?」
信子「なに言ってるの。・・・ヨイショッ! これパパの頼んだ画材なの」

 レミ、荷物を見て

レミ「・・・手伝おうか?」
信子「いいわよ。休んでらっしゃい」

 2階のアトリエのドアーが、ひとりでに開く。(UP)

          S 18

 龍司の声。

龍司(声)「おお、届いたか。やっぱり100号のキャンパスじゃないとな。こう云う絵は描けないな。・・・レミは?」
信子「ソファーで休んでいるわ」
龍司(声)「会いたいねえ」
信子「まだだめよ」
龍司(声)「そうだな・・・」

 信子、ドアーを閉める。

          S 19

 レミ、龍司のアトリエのドアーをジッと見て居る。
 信子、階段の中ほどまで下りて来て、立ち止まる。
 リサ(猫)、信子の脚に絡みつく。
 リサ(猫)、レミの顔をジッと見る。

          S 20

レミ「・・・。ママ、アタシ、疲れたわ」
信子「そう。じゃッ、寝なさい。ママは上の部屋に行くわ」

 レミ、ソファーに横になる。

レミ「ママ! ママ?」

 信子、いつの間にか、居なくなる。

レミ「・・・」

 レミ、また杏奈の手紙を読み返す。(UP)

「なぜ? だって道が無くなってしまったんだもん。みんな途中で切れちゃうの。こんな家に居てもしょうがないジャン。もう2度と戻らないし戻れない。だからこの手紙はさよならの手紙。 ・・・・ 2月27日

レミ(M)「あら? 日にちがさっき読んだ時と違っている・・・。そんな・・・」

                   つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。 

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舞台用ドラマ 「酷道岬(Schizophrenie)」 1

2017-05-19 | 舞 台

 舞台用ドラマ 「酷道岬 (切れた道)」 1

         統合失調症
      
              原作 土屋寛文
   
      イメージ・キャスト(仮)

     吉村レミ (16歳)有村架純

     ママ(吉村信子) 野際洋子

     パパ(吉村龍司) 綿引勝彦

     リサ(白い猫・アメリカンカール)

          S 1

 3日経った。(テロップ)

(イメージ)
「吉村レミ」は保護者の同意を得て退院する。
その日、両親は迎えに来てくれなかった。

          S 2

 レミ、バスを降りて帰り道を急いぐ。(UP)
 暫く歩く。(UP)

 道、行き止まりになってフェンスで閉ざされている。
 鍵は壊れている。(UP)

レミ(M)「この先に、アタシの家が在るのに・・・。いつから行き止まりになったのかしら」

 畑で農作業をしている「夫婦?」。

レミ「すいませ~ん。・・・すいませーんッ!」(叫ぶ)

 レミ、夫婦に声を掛ける。

 夫婦、レミの声が聞こえたらしく「夫」が近づいて来る。

夫 「・・・」
レミ「忙しい所すいません。あの~、この道・・・、先に行けないのですか」
夫 「? 行き止まりだ」
レミ「そんなぁ・・・。いつからですか」
夫 「いつから? ・・・1ヶ月位前からかなぁ・・・」
レミ「1ヶ月? アタシの家・・・この先に在るんですけれど」

 夫、怪訝な顔で、

夫 「この先? この先には家なんか無い筈だけど・・・。アンタ、名前は?」
レミ「吉村です」
夫 「吉村? ・・・吉村さんは1年前に立ち退(ノ)いたよ」
レミ「ええ、ウソッ! アタシ、3カ月前にその家から出て来たのよ」

 「妻」、夫の傍に来る。
 妻、レミを見て、

妻 「こんにちわ」

 妻、夫に尋ねる。

妻 「誰なの?」(小声で)
夫 「吉村さんの娘(ムスメ)さんらしい」

 妻、レミを見る。(UP)

妻 「・・・」
レミ「あッ、アタシこの先の家の吉村です」

 妻、怪訝な顔でレミを見る。
 レミ、怒る。

レミ「吉村の娘(ムスメ)ですッ!」
妻 「ええ? 吉村さんには娘なんか居いよ・・・」
レミ「嘘でしょう。アタシは吉村レミ。娘ですッ!」

 夫婦が顔を見合わせる。

妻 「レミさん? ・・・何処から来たの」
レミ「病院。・・・退院して来ました」
妻 「退院・・・。何処の病院?」
レミ「蓼科(タテシナ)ッ! アタシは家に帰りたいんですッ!」

 レミ、フェンスに近付く。

妻 「危ないわよ。この先、道が崩れてるわ」

 レミは夫婦の言葉を無視してフェンスを開ける。
 心配そうにレミを見ている農夫婦。(UP)

夫 「・・・蓼科病院て昔の聖山(セイザン)病院かな?」
妻 「ああ、そうだよね・・・」

夫 「ありゃ、精神病院だろう」

          S 3

 フェンスを越えで暫く歩くレミ。
 確かに道路は崩れている。
 岬に白い家が2軒建っている。
 1軒はレミの家である。

          S 4

 道路工事している人。

レミ「すいません。あそこの家に行きたいんですけれど」

 作業員、レミを見る。(UP)

工事夫「何しに?」

 レミ、怒る。(UP)

レミ「何しに? アタシの家なんですッ!」
工事夫「・・・やめた方が良いぞ。誰も居ないし」
レミ「うるさいわね。アタシの家ッ! どう行けば良いの? 教えて!」

 工事夫、いぶった化にレミを見る。

工事夫「・・・今、車が来る。それに載せてもらいな」

 レミ、道端(ミチバタ)に座って車を待つ。
 潮騒が聞こえる。

レミ(M)「・・・眼の前に見えるアタシの遠い家・・・」

          S 5
          
 暫く時間が経つ。
 工事用のトラックが来る。

 工事夫、運転手に何か話している。
 運転手、レミを見る。(UP)

運転手「おい、乗りな」

 レミ、トラックに乗る。

          S 6

 車内、暫くの沈黙。

運転手「・・・何処から来た?」
レミ「蓼科(タテシナ)」
運転手「タテシナ?」
レミ「そう。病院・・・」

 運転手、チラッとレミを見る。

運転手「蓼科の病院? ・・・う~ん。 ・・・岬に家なんか在ったっけ?」
レミ「? あそこに在るじゃない。見えないの?」

 レミ、白い家を指す。(UP)

運転手「・・・ああ、あれ? あれは廃屋だ。誰も住んでない」
レミ「廃屋!? そんな事ないわ。早く行ってよッ!」
運転手「・・・」

 白い家の前、トラックが停まる。
 レミ、トラックを降りる。
 運転手、妙な笑いを浮かべレミを見る。(UP)

運転手「気を付けてな」

きつい眼で運転手を睨むレミ。

          S 7

 家の門、 「吉村」 の表札が埋め込んである。(UP)
 門扉を開けて家のドアーをノックする。

音 「コンコン・・・・」(UP)

 返事が無い。
 ドアー、施錠してない。
 レミ、ドアーを開ける。

          S 8

 暗い部屋。
 レミ、室内灯のスイッチを入れる。
  突然、明るく成る室内。

螺旋階段の中ほどに女が立って、レミを見て居る。(UP)

 女(吉村信子)、レミの母。
 灯りに照らし出され、顔だけが異常に白い「信子」。

 信子、にこやかに。

信子「おかえりなさい。ごめんね、迎えに行けなくて」
レミ「良いわよ。ちゃんと1人で帰って来れるんだから。・・・パパは?」
信子「パパ? ああ、2階で寝ているわ。具合が悪いみたい。ちょっと呼ンで来るわね」

 信子、急いで2階に上がって行く。

 レミ、室内を見まわす。(UP)

イメージ 
 (あの時と変わって居ない室内)

 パパ(吉村龍司)の赤一色で描いた200号の「夕日の海の絵」が壁に掛っている。(UP)
 龍司は画家である。

 信子、2階から降りて来る。
 後を追うように白い猫(リサ)が降りて来る。(UP)

 信子、螺旋階段の中程(ナカホド)に立ち止まってレミを見る。

信子「ごめんなさい、パパやっぱりダメみたい。何も話さないわ」
レミ「そう。・・・良いわよ。どうせパパ、アタシの事嫌いなんだから」
信子「そんな事ないわよ。パパは心配してたの。アナタの事いつも話ていたわ」
レミ「・・・。道路が崩れていたわ」
信子「あら、そお・・・」
レミ「えッ!? ママ、知らなかったの?」
信子「・・・表に出ないから」
レミ「そんな。買い物は?」
信子「全部、届けてくれるわ」

 レミ、ソファーに座る。

レミ「・・・ねえ、ママ。此処に来て。聞きたい事が有るの」
信子「何? 話して」
レミ「此処に来てよ。アタシもう治ったんだから」
信子「だめよ、まだ。仮の退院でしょ」
レミ 「・・・。あのね、・・・この家って誰も住ンでない事に成ってるみたいよ」

 信子、笑う。

信子「誰が言ったの、そんな事」
レミ「ええ? っていうか、この家はもう無い筈って言ってた」
信子「そんな事ないでしょう。アナタはちゃんと家に戻って来たし、パパもママも、ほら、リサだって此処に居るじゃない」
レミ「そうよね。おかしいわよね。アタシも此処に居るんだから・・・」
信子「あッ、レミ? おなかが空いたでしょう。アナタの好きなケ―キを焼いといたの」
レミ「ええッ、本当! 嬉しい。何ヶ月ぶりかしら、ママのケ―キなんて」
信子「ハハハ。レミが元気に戻って来たらと食べさせてやろうと思って」

          S 9

 急に部屋の電灯が点滅し始める。(UP)

レミ「あら? どうしたの?」
信子「工事してるみたいよ。最近、時々こうなるの」

 部屋の灯りが一斉に消える。(UP)

 2階から龍司の怒鳴る声が。

龍司「お~いッ! いいかげんしてくれ。絵が描けないじゃないか」

          S 10

 暫くして灯りが点く。(UP)

レミ「あら? パパ絵を描いてるの?」

 信子、何かを隠す様に、

信子「えッ? 今ベッドで寝て居たのに。アトリエに行ったのかしら」
レミ「ママ、上に行っても良い?」
信子「だめッ!」
レミ「何故? ・・・ねえ、ママ。アタシ、2階に上がりたいわ」
信子「だめッ。2階はアナタはまだ、上がれないわ」

 レミ、俯(ウツム)く。(UP)

レミ「・・・まだダメ・・・」
信子「あッ、そうだ。1ヶ月前にアナタに手紙が来てたわよ。そこの暖炉の上に置いてあるわ」(UP)
レミ「えッ!」

 レミ、暖炉の上の手紙を取りに行く。

 *「切手の貼って無い手紙」(UP)

 レミ、封を切って便箋を取り出す。
 レミ、ソファーに座ると、いつの間にかテーブルの上にケ―キとミルクが置いてある。

レミ「あら? ママいつ降りて来たの?」

 レミ、階段を見る。(UP)
 信子、居ない。
 リサ(白い猫)、階段の中ほどから覗いている。(UP)

レミ「ママ? ママッ!」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 最終話

2017-03-09 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          最終話


      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    相原政治(31歳) 阿部サダオ

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S73

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
安藤が帰って、武智と伴が応接室に戻って来る。

 武智「伴ッ! ドアーを閉めろ」
 伴 「あッ、すいません」

伴がドアーを閉めソファーに座る。
武智は伴を見る。

 武智「おい。今、俺がここで話す言葉は記憶にない話だからな」
 伴 「えッ? あッ、はい。 ・・・しかし、凄いですねえ」
 武智「何が?」
 伴 「いや、武智さん」
 武智「うん? ・・・うん」

武智は伴をジッと見詰めて、ニヤッと笑い、

 武智「そりゃー、オマエとは違うよ」
 伴 「・・・あれって、一千万だったンじゃないですか?」
 武智「うん? そうだったか?」

武智は伴を鋭い目で見る。

 武智「オメーも聞いてたろう。解散選挙が近けンだよ。ナリフリ構わずゼニを集める! これが俺達の仕事だ」

伴は感心したように、

 伴 「武智さんて途轍(トテツ)もない詐欺師ですね」
 武智「詐欺師? 失礼な事いうンじゃない。俺は誰も騙してねーぞ」
 伴 「えッ? ・・・まあ・・・ですね。でも相当、ヤバイ仕事じゃないですか」
 武智「デキル秘書て言われてるヤツは皆こンなもんよ」
 伴 「でも・・・」
 武智「いいか。すべて、この仕事は未必でやってるンだ」
 伴 「でも」

武智が怒る。

 武智「うるせえな、デモデモって。デモは会館の外でやってるよ」
 伴 「いや、でもこう云う事は本当に犯罪じゃないンですか?」
 武智「ハンザイ? ・・・オメー本当にそう思うか?」
 伴 「えッ? ・・・まあ」
 武智「犯罪だと思うのなら、この部屋から出て行く事だな」
 伴 「しかし・・・」
 武智「今度はシカシか。オメーな、冴えねえ頭や理屈で物事を考えたらダメだぞ。俺は誰にも迷惑は掛けてねえと言ったろう。オヤジが上手く上に上がれれば良いだけだ」
 伴 「・・・?」
 武智「伴。最初に俺が言った言葉を覚えているだろう。政治屋(セイジヤ)をやって行くにはジバン・カンバン・ カバンだ。秘書の仕事とは 光り輝く表の世界を、裏で支えて行くと云う事だ。泥まみれに成るのよ。あんな風に見えても、安藤さんも昔は仕事がデキル秘書だった。しかし、出来過ぎて金庫番を辞めさせられたンだ。・・・詰め腹を切らされたのよ」
 伴 「えッ!? 詰め腹を?」

武智は伴を見る。

 武智「・・・自分のオヤジを大臣までする事は容易なもんじゃね」
 伴 「実力でしょう」

伴の投げやりの良い方に武智が怒り、

 武智「何んだその言い方は」
 伴 「すいません・・・」
 武智「大臣の椅子は高(値段)けえンだ。組閣の前には実弾(金)の撃ち合いだぞ」 
 伴 「そうなンですか」

武智は伴の真似をして、

 武智「そうなンですよ。・・・伴もそろそろ、うちの陣営を知っといた方が良いな」
 伴 「陣営?」
 武智「オメーや相原みてーな秘書達は表に出ているデフェンスだ。この仕事はフォワードもセンターもバックも居なければ出来ねえ。安藤さんはオヤジのバックを守る男だ。影の私設秘書だよ。言わば、ダーティーな所を引き受けている影武者だ」
 伴 「へえー」
 武智「おい。背広と靴でも見て来い!」

伴は驚いて、

 伴 「ええッ! 今度は本当でしょうね」
 武智「ベルサーチでもアルマーニでも、秘書は食わねど良い物を着るンだよ。良い背広を汗だくにするンだ」
 伴 「いや~、本当に勉強に成ります」
 武智「バカ野郎! あッ、そうだ。明日、総理が日米交渉から帰って来る。上がるぞ」
 伴 「上がる?」
 武智「株だよ、株ッ!」

武智は応接のドアーを少し開いて、

 武智「高木くん、自工(自動車工業会)の堀さんに電話してくれ」
 高木「あッ、はい」

         S74

○大木戸の乗る公用車車内(二人)
突然、大木戸の内ポケットの携帯が鳴る。

 音 「ピピ、ピピ」 SE

携帯を取り出す大木戸。

 大木戸「はい(優しく)」
 武智(声)「武智です」
 大木戸「・・・分ってる! 結論は」
 武智(声)「今月中に二本(二千)入ります」

大木戸は眼を丸くして、

 大木戸「おおッ! 大きいね。一本釣り?」
 武智(声)「転がしてます」
 大木戸「ッてことは、洗ってあるわけね・・・」
 武智(声)「安藤さんが中に入ってますから」
 大木戸「おお、それは安心だ。ヨシッ! これで力が付いた。ご苦労さんね」

携帯を切る大木戸。
胸の内ポペットに仕舞いながら、自分に気合を入れる。

 大木戸「ヨ~シッ!」

相原が運転席から、

 相原「何か言いました?」
 大木戸「うるさいッ! バカ者。誰に口を聞いてるッ!」
 相原「あッ! すいません」

大木戸の携帯がまた鳴る。

 音 「ピピ、ピピ」 SE
 大木戸「はい。(優しく)」
 伴(声)「自工の掘さんが喜んでました。ほとんどの自動車株が一斉に上がりました。そうとう儲けたみたいです」
 大木戸「そう。・・・もう動いたか。で、十月のパーチーの件、話したでしょうね」
 伴(声)「はい、一応、三十枚と云う事です」
 大木戸「バカ者ッ! そんな弱気でどうする。儲けさせておいて三十枚とは何事だ! 今直ぐ二袋置いて来なさい」
 伴(声)「えッ! フタッ」

                 おわり

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第16話

2017-03-08 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第16話


      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S71

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
ソファーに武智と伴が対座している。
伴は武智の交渉術に感心して、

 伴 「・・・しかし武智さん、凄い交渉術ですね」
 武智「バカ野郎! これが番頭の仕事よ」

      *    *    *

火曜日の朝。
安藤との約束の日が来る。
大木戸事務所事務室の電話が鳴る。

 音 「ピロピロピロ」 SE

高木が受話器を取る。

 高木「はい、大木戸事務所です」
 
 安藤(声)「武智さん居ますか」
 高木「あッ、安藤さん! お世話に成ります。少しお待ち下さい」

高木が電話の保留ボタンを押し応接の内線に電話を回す。

         S72

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
武智と伴が応接室のドアーを閉めて話をしている。
応接室の内線が鳴る。

 音 「トゥルル・・・」 SE

伴はソファーを立ち、代議士の机上の受話器を取る。

 伴 「はい」
 高木(声)「安藤さんから一番です」
 伴 「はい」

伴は武智を見て、親指を立てる。
武智が嬉しそうに伴から受話器を取り上げる。

 武智「もしもし、おはよう御座います」
 安藤(声)「有り難う御座います。うまく行きましたね」
 武智「いやー、大変でしたよ~」
 安藤(声)「ハハハハ。今、近くに居ます。これからお邪魔しても・・・」
 武智「どうぞどうぞ。お待ちしております」
 安藤「じゃッ、五分後に・・・」

武智は伴を見ながら受話器を置く。

 伴 「・・・来ましたね」
 武智「うん。さあ、ここから本番だ。伴ッ! オメーのその良い頭を借りねえとな」
 伴 「え? ・・・高いッすよ」
 武智「何ッ!?」

暫らくして、事務室のインターホンの音が。

 音 「ピコ~ン」 SE

高木がインターホンの受話器を取る。
モニターに安藤が映る。

 高木「はい」
 安藤(声)「安藤です」
 高木「はい」

高木が開鍵ボタンを押す。
ドアーの開鍵の音

 音 「カチャ」 SE

安藤がそっとドアーを開けて入って来る。

 高木「あッ、安藤さん! お待ちしておりました」

安藤が、いつものケーキの箱を高木に。

 高木「はい、これ」

高木は嬉しそうに、

 高木「わ~、これ、石川屋さんのケーキッ! いつも有り難う御座います。武智さんが奥でお待ちかねですよ」
 安藤「そう」

安藤は、ニッと笑う。

 高木「あら? 歯ッ!」
 安藤「ハハハ、新築したンだ」

高木は驚いて、

 高木「シンチク!?」

安藤は応接室のドアー開けて覗く。                   

 安藤「どうも」

武智は慇懃に笑いながら、

 武智「おう! オウオウオウ、来た来た来た。どうぞどうぞどうぞ。ハハハハ」

伴がソファーを立ち、無理に笑いをつくろい、ソファーを指さす。

 伴 「お世話に成ります。どうぞ、こちらに」

安藤は伴を一瞥し、軽く片手を挙げソファーに座る。
伴は応接室のドアーをそっと閉め、ソファーに座る。
安藤は二人に見せびらかす様に出っ歯を作り笑う。

 武智「あれ~ッ! 入ってるじゃないですか」
 安藤「良い工事でしたよ」

伴が噴き出してしまう。

 伴 「プッ、ハハハハ」
安藤は伴を見ながら、おもむろに懐からダンヒルのタバコを取り出す。
伴がすかさず、デュポンのライターを背広のポケットから取り出し、火を点け、安藤のタバコに。

 安藤「おう、わるいねえ」

ライターの蓋の閉まる音が応接室に響く。

 音 「キーン・・・」 SE

安藤が武智と伴を一瞥して、

 安藤「・・・で、どうしましょう」
 武智「それでねえ、とりあえず日下工業から大公に六億の見積もりを出してもらいましょうか」

安藤がタバコをクリスタルの灰皿に置き、
テーブルのメモ用紙を一枚破き、書き取って行く。

 安藤「・・・うん」

高木が応接のドアーをノックする。
ドアーが開き、お茶とコーヒー、ケーキを持って高木が入って来る。

 高木「失礼します」

急に応接室の中が静まる。
クリスタルの灰皿から、タバコの煙が一筋。
高木がお茶とコーヒー、ケーキを静かにテーブルの上に並べて行く。
安藤を見て、

 高木「どうぞ、ごゆっくり」

安藤は、高木を見てニコッと笑い、

 安藤「ありがとう・・・」

高木が、静かにドアーを閉め、応接を出て行く。
安藤は灰皿からタバコを取り、

 安藤「・・・それで?」

 武智「仮に、大公から値引き依頼が一千とすると、五億九千、日下が五億で出来ると云う事で九千が浮きます。そこで、桜田の富士見からの借金がトータルで三千と云う事ですから、その三千を桜田に代わってうちの大木戸が富士見に返済。もちろん、桜田を通してですが。この三千の返済が桜田の条件なンですよ。そうすると残り六千、これを安藤さんが、安藤さん、岸田さん、大木戸の三人の割り振りを決めてもらう。・・・こんなんでどうでしょうか・・・」

伴は「三千」と云う言葉を聞いて、思わず武智の顔を見る。

 伴(M)「三千? あの時の電話では確か・・・、一千て言っていたはずなのに」

安藤は天井を見詰め、深く吸ったタバコを吐き出す。

 安藤「・・・桜田の借金は三千だったのですか・・・」

武智はコーヒーを一口、口に含む。

 武智「賭けゴルフで一千負け、完工保証のトラブルで二千、合計三千。全部、桜田が絡ンでるんですよ」
 安藤「桜田はそれまでして何で富士見をかばうんでしょうね」
 武智「それは、桜田組の稲垣の娘が、最近、富士見工業の息子に嫁に行ったらしいンですよ。地元の秘書も言ってました。俺もそれまでは知らなかったンですけれどね」
 安藤「ああ・・・、なるほど」

安藤はタバコをクリスタルの灰皿に押し消す。

 安藤「分かりました。フフフ・・・。 大公から値引きはさせませんよ」
 武智「その辺は安藤さんにお任せします」
 安藤「お互いに取り分が多いにこしたことはない。それに・・・」
 武智「それに?」
 安藤「七千を三者で分けた方が良いでしょう」
 武智「・・・安藤さん、ここから先はアンタの受け持ちだ。大木戸もこの件に関しては非常に強い関心を持っている。何しろ本格解散の方向だしね・・・」
 安藤「分かりました。キチッと洗ってお渡しします」
 武智「イヤイヤイヤ、そうしてくれると、大木戸も大助かりです」
 安藤「じゃッ、これで!」

安藤がソファーを立つ。

 安藤「分配の件は今週の金曜日まで待って下さい。落札後五日以内にまず三千を預手で、これは三枚分けてお持ちします。残りの四千は現金。・・・早い方が良いでしょう」
 武智「いや~、安藤さん! 助かります」

武智はソファーを立ち安藤と熱い握手をする。
安藤は歯を舌で触り、ニヒルな笑いを浮かべて応接室を出る。
武智と伴が安藤を見送る。
高木が応接室から出てきた三人を見て、

 高木「あら、もうお帰りですか。やっぱり安藤さんは歯が無いと様になりませんよ~」
 安藤「もう、煎餅は食わない事にしたよ」
 高木「クッキーの方が柔らかいですよ」
 安藤「俺がクッキーじゃ似合うかなあ」

安藤はその一言を残し大木戸事務所から出て行く。
武智と伴は安藤の背中に、

 二人「お世話に成りま~す」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第15話

2017-03-06 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第15話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    稲垣剛助(35歳) 中村獅童

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎

          S59

○議員会館大木戸事務所応接室(夕方・二人)
向かいの衆議院第二会館の五木田事務所(大木戸と同じ選挙区)のカーテンの間から、灯りが洩れている。
武智と伴が、応接室のテーブルを隔て、天井を見ながらモノ思いにふける。

 武智「考えて居てもしょうがねえ」

武智がソファーを立つ。
伴は、武智を見る。

 伴 「コーヒーですか?」
 武智「いや、便所に行って来る」
 伴 「ああ・・・」

武智が事務所を出て行く。
暫くして、武智が事務所に戻って来る。
武智は自分の机の引き出しから名刺ファイルを取り出す。

 武智「え~と、桜田、サクラダ・・・おッ、有った!」

伴はお茶とコーヒーを注ぎに事務室に来る。
武智を見て、

 伴 「電話ですか?」
 武智「・・・うー・・・ん」

武智が桜田組の名刺を手に応接室のソファーに座る。
鼻クソをホジリながら名刺を見ている。

 伴「どうぞ!」

伴がテーブルの上にコーヒーを置く。
武智は伴の心ずかいに驚く。

 武智「おおッ!? 何んだい、ワリ-な」
 伴 「いや~、背広と皮靴とクルマですからね」

武智は伴を見て、

 武智「うん? ・・・うん。・・・ちょっと待ってろ」

武智はコーヒーを一杯飲んで受話器を取る。

 武智「046・・・。・・・ ・・・もしもし、社長居る?」

武智は横柄な態度で。

         S60

○(株)桜田組事務所(夕方・一人)
中年の女事務員が受話器を取る。

 女事務員「どちら様ですか?」
 武智(声)「衆議院大木戸事務所の武智ッ!」

事務員は驚いて、

 事務員「あッ! ハ、はい。ちょっとお待ち下さい」

         S61

○(株)桜田組社長室(一人)
稲垣剛助(桜田組代表取締役・三五歳)がソファーでタバコを吸いながらゴルフ雑誌を見ている。
内線電話の呼び出し音。

 音 「ルルル」 SE

稲垣がテーブルの上の受話器を取る。

 稲垣「何ッ!」
 事務員(声)「あのー、大木戸事務所の武智さんから一番です」
 稲垣「タケチ? ・・・うん」

稲垣が一番をプッシュする。

 稲垣「アー、もしもし、稲垣です」

稲垣も態度が大きい。

 武智(声)「よー、ご無沙汰! 武智だ・・・」

稲垣は少し緊張ぎみに、

 稲垣「あッ、ど~も。その節はお世話に・・・」

稲垣はテーブルの上のタバコ(ハイライト)を一本取り出す。

 武智(声)「そうだよなあ。どうだい、その後は」

稲垣はタバコに火を点け煙を飲み込む。

 稲垣「お蔭様で、あの道路も二ヶ月前に完工しました」

         S62

○大木戸務所応接室(夕方・二人)
電話中の武智。
伴がソファーに座って真剣に聴いている。

 武智「そう。そりゃー良かった。それじゃ・・・、完工祝いでもやらなくっちゃねえ、イ・ナ・ガ・キ・・・」
 稲垣(声)「へへー、ですねえ。またあそこのコースを予約しておきましょうか。で、夜はパーっと宮の下のソープで・・・」
 武智「良いねえ・・・」

武智はコーヒーを一杯、口に運ぶ。

 武智「・・・それはそうと、立川のヘリポート其の一って聞いた事ある?」

稲垣の声が少し変わる。

 稲垣(声)「えッ! 知らないなあ・・・」
 武智「知らない・・・そう。 ・・・知らない筈が無い訳けどな~・・・。妙な噂が流れて来ンだ・・・」
 稲垣(声)「? ・・・あッ、時間だ! 武智さん、また今度電話します・・・」
 武智「おい、イナガキ・・・。逃げるなよ~。ゆっくり話を聞かせてくれよ~・・・」
 稲垣(声)「いや、これから打ち合わせが有るンですよ~」
 武智「ウルセーッ!(声を荒げて)」

         S63

○(株)桜田組社長室(一人)
稲垣はとぼけて、

 稲垣「立川?・・・何ンの事ですか・・・」


○大木戸事務所応接室(二人)
武智の横顔が不気味である。

 武智「おい、俺とオマエの仲じゃねえか。ボカシた話は無しにしょうぜ・・・」
 稲垣(声)「ああ、防衛省のヘリポートの件かな? な~んだ、もうそこまで話が広がっちゃいましたか。マイッタなー。ハハハハ」
 武智「何もマイル事はあるめー。・・・おい、仲良くやれよ~」

         S64

○(株)桜田組社長室(一人)

 稲垣「いやー・・・誰から回ったンでしょうねえ」
 武智(声)「そんな事はどうでも良い。中身はどう成ってンだ(優しく)」
 稲垣「武智さんが直接掛けて来る位だから、中身はお分かりでしょう?」


○大木戸事務所応接室(二人)

 武智「うん? ・・・で、富士見て云うのは何者だ」
 稲垣(声)「フジミ? あ~、ただのゴルフ仲間ですよ」
 武智「ゴルフ仲間? それにしちゃ、随分入れ込むじゃねえか」
 稲垣(声)「そんな~、入れ込むなンて・・・。(ニヤついた声)」

武智はコーヒーを飲みながらメモ帳を開く。

 武智「また賭けゴルフで借金でも作ったのか?」
 稲垣(声)「いやいやいや、武智さんに合ったら総てお見通しだ」
 武智「ほお。・・・で、いくらだ・・・」
 稲垣(声)「ええ? へへへ、一本位ですか・・・」
 武智「一本? 百か?」
 稲垣(声)「いや・・・。千」

武智は驚いて、

 武智「センッ?!」

         S65

○桜田組社長室(一人)
稲垣は咥えたタバコをくゆらせている。

 稲垣「へへへ・・・」
 武智(声)「で、オマエが負けたのか?」
 稲垣「とんでもない! フジタさんですよ」
 武智(声)「? ・・・それだけか?」
 稲垣「ウンニャ・・・」
 武智(声)「ウンニャ? 何んだそれは。喋っちまえよ! ネタは上がってるン だから」

稲垣が頭を掻きながら、

 稲垣「まいったなー。工事の保証ッ!」
 武智(声)「いくら?」
 稲垣「うちは、二千」
 武智(声)「全部で三千か・・・」

稲垣は慇懃に

 稲垣「へへへ、そうなりまっか(大阪弁)」

         S66

○大木戸事務所応接室
武智は天井の一点を見詰める。

 武智「て、云う事は・・・その千が戻れば元の鞘に収める事は出来るって事かな?・・・」
 稲垣(声)「そりゃあ、うちとしても来年は会の幹事ですからねえ。こんな事はしたくないですよ」 
 武智「バカ野郎、幹事どころか永久に会からツマハジキだ」
 稲垣(声)「えッ! いや、まあ・・・。誰ですか? 流したヤツは」

武智は稲垣の問い掛けを無視。

 武智「おい。その借金だけど・・・」

武智は冷えたコーヒーを一口に含む。

 武智「大木戸がモツって言ったら・・・」
 稲垣(声)「え~? そんなー、先生にまで迷惑は掛けられませんよ~」
 武智「うるせえ! オメーがゴネてる事がオヤジに迷惑を掛けてるんだよ」

         S67

○(株)桜田組社長室(一人)

 稲垣「ええ!? なーんだ、この工事、裏が付いてたンですか」
 武智(声)「おう、イナガキ」
 稲垣「はい・・・」
 武智(声)「引けよ。千戻れば、おまえン所は丸く収まるんだろう」
 稲垣「まあ、・・・それは・・・」
 武智(声)「何んだい、その煮えきらねえ言い草はよお。まだ何か有るのか?」

稲垣はフテクサレて、

 稲垣「・・・分かりました」

         S68

○大木戸事務所応接室(二人)

 武智「最初からそう言えば良いンだよ。・・・バカ野郎・・・」

武智は伴の顔を見て親指を上げて軽くガッツポーズ。

 武智「明日の朝十時迄にチャンピオンの大公に電話しておけ」
 稲垣(声)「ああ?! 大公さんから回ったンですか。アイツ・・・俺に何にも言って無かったなあ。キタネー野郎」
 武智「ウルセーッ! 誰だって良い。いいかイナガキ、もしこの件で変なアヤが付いたらオマエの会社、県の建設協会、経済同友会、木曜会から全部外すからな」
 稲垣(声)「そんなは事しませんよ。こっちは千万戻って来れば良いンですから」
 武智「そうか。じゃッ、俺との約束だ。分かったな! 明日の朝十時だぞ」

         S69

○(株)桜田組社長室(一人)

稲垣はタバコをクリスタルの灰皿に捻り消し、

 稲垣「分かりました」
 武智(声)「何だい。元気がねえな。・・・まあ、仲良くやれよ」
 稲垣「武智さん、こう云うのは事前に知らせて下さいよ~」
 武智(声)「あいよーッ!」

         S70

○大木戸事務所応接室(二人)
武智が受話器を置く。
伴は感心した表情で武智を見る。

 武智「よしッ、伴。良いか。此処からが俺達の本当の仕事だ。よ~く聞いとけよ」
 伴 「はい」

高木が地下の郵便局から戻って来る。

 高木「すいません、遅くなって。結城先生の所のサッちゃんとそこで会っちゃって。電話有りました?」

武智が応接室から

 武智(声)「無いよ~」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第14話

2017-03-05 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第14話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    大川正義(60歳) 岸部一徳

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S56

○議員会館大木戸事務事務室(早朝・二人)
電話の音。

 音 「ピロピロピロ・・・」

伴が受話器を取る。

 伴 「お世話になります。大木戸事務所です。・・・」

電話は通じているが、相手の声がしない。

 伴 「もしもし、大木戸事務所です。・・・もしもし・・・」

突然、受話器から声が聞こえて来る。

 大木戸(声)「しっかり、しなさいッ! もう一度、請求しなさいッ!」
 大川(声)「いや先生、あんまりせっつくと強要に成りますよ~」
 大木戸(声)「大丈夫だッ! 弱気じゃ事は運ばないッ! ・・・」
 大木戸(声)「もしもし」
 伴 「あッ、お疲れさまです」
 大木戸(声)「オマエはバカか? さっき起きたんだ。疲れてなんかいないッ! あれを出せッ!」

今日の大木戸は、荒れている。

 伴 「あッ、失礼しました。あの、アレって・・・高木さん?」
 大木戸(声)「バカッ! 武智くんだッ!」
 伴 「あッ、代理主席で、十時の九段会館へ直行してます」
 大木戸(声)「代理? ・・・何ンの?」
 伴 「農林事業振興総会です」
 大木戸(声)「総会? ・・・安藤の件は、君も立ち会ったンだろうね?」
 伴 「あッ、はい」

         S57

○地元大木戸事務所代議員室(早朝・一人)
大木戸が伴と電話をしている。

 大木戸「報告は?」
 伴(声)「あッ、今しょうと・・・」
 大木戸「言い訳はよしなさい。結論だけだ」
 伴(声)「すいません」
 大木戸「で、結論ッ!(きつく)」
 伴(声)「はい。一週間後に結論が出ます」
 大木戸「何ッ? ・・・流れは?」
 伴(声)「悪くはありません。ただ・・・」
 大木戸「ただ?」
 伴(声)「堀田先生の事務所が関わっています」
 大木戸「ホッタッ!(驚く) ・・・公明党の堀田か?」
 伴(声)「あッ、はい」
 大木戸「建設か・・・。分かった・・・」
 伴(声)「何か?」
 大木戸「君に言っても分からない。アレが戻ったら電話するように言いなさい。報・連・相と言っときなさい」
 伴(声)「ハ?」

         S58

○議員会館大木戸事務所事務室(早朝・二人)
大木戸が電話を切る。

 伴 「もしもし・・・? ・・・切れた・・・」

高木が事務所に入って来る。

 高木「おはよう御座います」

伴は振り向いて、

 伴 「あッ、おはようございます」
 高木「あら、今日は早いですねえ」
 伴 「昨夜(ユウベ)武智さんから、もう少し早く出勤しろって言われたンで」
 高木「ええッ!? 武智さんが早く出過ぎですよ」

高木はロッカーにコートを仕舞ながら、

 高木「武智さん、事務所にいつも七時半には来てるンですよ」
 伴 「ええッ! 三鷹からですか?(驚く)」
 高木「ええ。いつも、仕事の事で頭がイッパイなんですって」

伴は不安そうに、

 伴 「・・・俺・・・付いて行けるかなあ・・・」

高木は伴の座る机にお茶を持って来て、

 高木「どうぞ」
 伴 「あッ、ありがとうございます」

高木は伴を見て、

 高木「大丈夫ですよ。武智さんは特別です。あの方、よく群馬の小中学校で皆勤賞だったと自慢してますから」
 伴 「へえ~。真面目なンですねえ」
 高木「高校も大学も皆勤賞だと言ってましたよ」

伴は鼻からお茶を出し、咳き込む。

 伴 「ゴホッゴホッゴホッ・・・」

      *    *    *

電話が鳴る。
高木が受話器を取る。

 高木「おはようございます。大木戸事務所です」
 武智(声)「おうおうおう、ご苦労さん。伴、居るか?」
 高木「あッ、武智さん。ちょっとお待ち下さい。伴さん、武智さんからです」

伴が受話器を取る。

 伴 「はい、電話代わりました。おはようございます」
 武智(声)「うん。電話あったか?」
 伴 「はい、本人から報・連・相だと」
 武智(声)「ハハハ(捨て鉢の笑い)。いつも食ってるよ。それだけか?」
 伴 「早川さんが引っ掛かってる様でした」
 武智(声)「早川? ああ、公明党だからな・・・。そんなの関係ねえよ。おい、防衛施設庁の審議官の所に寄って来る。オマエは防衛庁の中沢さんの所へ行って挨拶して来い」
 伴 「ナカザワ?」
 武智(声)「施設課長だよ」
 伴 「ああ、・・・何んて言うンですか?」
 武智(声)「バカ、挨拶だ。後は俺がヤル。それから・・・、四時から例の件、二人で打ち合わせしよう」
 伴 「あッ、はい」 

                 つづく

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第13話

2017-03-04 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第13話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S55

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
安藤が出て行った後の応接室。
伴が応接室のドアーをそっと閉めて、ソファーに座り直す。
武智は、テーブルの上のメモ用紙に数字を書きながら、伴に、

 武智「・・・さっきの話、分かったか?」
 伴 「えッ? あッ、・・・まあ。要するに、桜田組さんが今回の話し合い(談合)に参加してくれれば総てが丸く収まるんですよね。それにはあの急に浮上して来た富士見工業さんが何で桜田組さんとJVを組んだか・・・。それが分かれば簡単じゃないですか」

武智は伴を見て、わざとらしく、

 武智「さすが警察官の息子だ。読むねえ~・・・」
 伴 「・・・で、武智さんは何んで桜田さんと富士見さんがJVを組んだと思いますか?」

武智がもっともらしく、

 武智「そりゃあオメ~・・・、桜田と富士見との間に利害関係があるからでしょうよ」
 伴 「利害関係?」
 武智「富士見工業なンて聞いた事のねえ名前だ。そんな新参者とJVを組むンじゃ桜田も相当の訳があるンだろう」 
 伴 「へえ~、そうなンですか(関心する)」
 武智「俺は、こう読んだ。富士見なんて聞いた事もねえ土建屋が、何の後ろ盾も無く表舞台に出られるわけがねえ。・・・と云う事は・・・」

武智は応接室の天井を睨み、

 武智「うーん・・・。県下でも指折りな桜田が、何かの工事で富士見と関(カカワ)わっちゃった・・・」

伴は笑いながら、

 伴 「何んかの工事で、桜田さんが富士見さんの保証人か何んかに成ってたンじゃないですか」

武智は自分の膝を叩き、

 武智「そうだッ! 保証人だ。・・・おそらく何処ッかの工事で、富士見の手抜きがバレタ・・・」
 伴 「検査でバレてやり直しッ! 納期に間に合わない。あッ、こんなの事も考えられます。もしかしたら・・・出先の建設局の局長に多額なビール券を渡した事が、富士見にバレて・・・タカラレタとか」
 武智「ああ、なるほど。・・・あの脇の甘めえバカ息子ならそれも十分、考えられるな」

武智が伴を見詰め、

 武智「オメー、結構読むなあ」
 伴 「そんな事・・・、そんなもンじゃないですか。世の中とは」

武智は指の爪を噛みながら伴をジッと見て、

 武智「あんまり先を読み過ぎると長生き出来ねえぞ」
 伴 「手が後ろに回る方が良いですよね」

武智はきつい眼で伴を見る。
武智は改まって、

 武智「・・・いずれにしてもその辺を探って、・・・結果、もし工事のチョンボなら富士見が桜田に義理を返せば良いて訳だ。桜田としては、下請けか何んかの富士見からの金銭的な債務を、工事で返してもらおうと云う算段だろう。でなければ桜田だって、ヤバイ橋を渡ってまで叩き合いなんかしたくもねえ筈だ。今回、このままフリーにでも成ったら桜田はこのグループから外されるからな。桜田だって、富士見工業なンてチンケな土建屋と心中なんかしたかねえだろう。大体、桜田のバカ息子は元暴走族だ。気が短くて地元じゃ評判だ。オヤジが息子に代を継がせるのが早過ぎたのよ」

武智は両手を思い切り伸ばし、背伸びをしながら、

 武智「あ~あ、桜田組に俺みてえな懐の深~い参謀が居ればなあ。おうッ! そんな事はどうでも良い」

武智はテーブルの上のメモ帳に、ぼそぼそと呟(ツブヤキ)きながら、また何かを書き始める。

 武智「要するに、日下工業が五億で出来るって言っていたな。・・・今回のチャンピオンが七億九千百三十で落としてくれたら、そこからチャンピオンの利益がマックス、二十五パーセントで・・・約一億九千八百。残った約五億九千から五億を引くと・・・」
 伴 「九千万円です!」
 武智「うん。下請けの日下から大公に六億の見積もりを出させる。どうせ、大公から幾らかの出精値引きが来る筈だ。それが一千万としたら五億九千。その九千の中から富士見の義理を桜田に返す」

武智は、また天井を睨む。

 武智「ただ、富士見のチョンボした義理金、いや、桜田が代わって保証した損出が幾らかだ。 富士見みてえな低ランクの土建屋が億単位の仕事は任せられねえ。とすると ・・・、仮にその損が三千としたら・・・残りを・・・三人で話し合い・・・」

 伴 「三人?」

武智は伴を見て、

 武智「安藤と、堀田ンとこの早川とオマエ。・・・なあ、良く出来た話じゃねえか」

 伴は自分の名前が出て驚く。

 伴 「エッ! 僕ですか?」
 武智「バカ野郎、この位のシナリオ書けなくっちゃ秘書じゃねえ。かりに、この話がダメに成っても桜田組の下請けを日下にやらせれば良い事よ。所詮、富士見工業なんてグリコのオマケみてえなもンだ」
 伴 「どっちに転んでもコンサルタント料は入るって事」
 武智「そう! 完璧なシナリオだ!」
 伴 「でも、金でなくて、チクッた方なら?」

武智は伴を見て、

 武智「うん?」
 伴 「だって、その理由を知ってるのは僕と武智さんしか居ないという事ですよね」

武智はニヒルな笑いを浮かべ、伴を見詰める。

 武智「バン、オマエもワルじゃのう。ベルサーチの背広でも買ってやるか」
 伴 「ついでに靴とクルマを」
 武智「何ッ!」

伴と武智は顔を見合わせ、

 二人「ウフ・・・ハハハハ」

武智と伴が大声で笑いながら、親指を立ててガッツポーズをする。

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

      -TSUCHIYA Production-

 

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第12話

2017-03-03 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第12話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S54

○議員会大木戸事務所応接室(夕方・三人)
会館が夕闇に包まれる。
安藤と結城、伴が応接室で密談をしている。
テーブルの上には安藤の好きなダンヒルのタバコ、コーヒー、お茶、持参したケーキが置いてある。
事務室から高木の声。

 高木(声)「すいませ~ん。お先に失礼しまーす」
 武智「お~うッ! ご苦労さんねー。後で神田の旨い焼鳥屋に連れて行くから」
 高木(声)「え~ッ! 信じて良いのかなあ」
 武智「俺はウソは付かないよー」
 高木(声)「ハハハハ、じゃッ!」

高木が事務所を出て行く。

      *    *    *

大木戸事務所に三人が残る。
武智はコーヒーを替えにソファーを立つ。

 武智「ちょっと、熱いのに替えるべえ」

武智は安藤のコーヒーを見て、

 武智「・・・替えましょうか」
 安藤「おお、そうだね」

武智がカップを二つ持って事務室に消える。
応接室には安藤と伴が残る。
伴は安藤を見て、

 伴 「仕切り屋ってどんなお仕事ですか?」

安藤は、伴の突然の「その」問いかけに、えも言われぬ顔で歯を左手隠し、

 安藤「俺は仕切り屋じゃないよ~」
 伴 「高木さんから、仕切り屋と聞きましたけど」
 安藤「仕切ってなんていませんッ! ・・・流れを調整するお仕事ッ!」

伴は首を傾げて、

 伴 「・・・」

武智がコーヒーを二つ、両手で持って来る。

 武智「伴ッ! オマエは飲むんだったら、自分で持って来い」
 伴 「はい」

武智がコーヒーをテーブルに置いて、ソファーに座る。

 武智「・・・で・・・」

安藤がダンヒルのタバコを一本抜き、抜けた歯の間に入れる。
伴がすかさず、例のライターで火に点ける。

 伴 「おう、わるいねえ」

安藤は伴を睨み、タバコを深く吸い、歯の間から煙を出す。
伴は俯いて、ジッと笑いを堪える。
安藤がおもむろに話始める。

 安藤「実はねえ・・・、あるヤツから依頼されてね・・・」
 武智「あるヤツ?」

安藤は伴を一瞥(ベツ)する。
武智が安藤を見て、

 武智「ああ、コイツなら大丈夫。口は固てえから」

武智は伴を睨む。
 伴 「あッ、はい・・・」

安藤はまたタバコを深く吸い、天井に向かって歯の間からゆっくり煙を吐き出す。
そして、急に体を前に倒す。
それに、続いて武智と伴も体を前に。

 安藤「予定価格九億六千五百。・・・、五社呼ばれて今回のチャンピオンは大公・徳高のJVが七億九千三百で落とす予定・・・」
 武智「ええッ!?(驚く) ナンダイ、もうそこまで話が進んでるンですか」

安藤は武智と伴をチラッと見て、溜息まじりに、

 安藤「・・・ただ、一社がどうしてもねえ・・・。このままだとモグラ叩き・・・」
 武智「? で、その一社って云うのは?」
 安藤「神奈川の桜田組と静岡の富士見工業のJVなンですわ・・・」
 武智「サクラダ? ああ、石田のバカ息子の所か」

伴はウラグチの件を思い出し、

 伴 「ええッ?! またバカ息子ですか?」

武智は、いぶった化な顔で伴を見る。

 武智「おい! オマエは黙ってろ」
 伴 「あッ! はい・・・」

安藤は話を続ける。

 安藤「そのバカ息子の所ですよ」
 武智「桜田に変な噂でも流れてるんですか」
 安藤「いや、実は富士見の方なンですよ」
 武智「フジミ・・・? 神奈川のフジミかあ・・・聞かねえ名前だな」
 安藤「いや、俺はそんな事どうでも良いンですがね」
 武智「え?」

伴が安藤と武智の会話を目を丸くして聞いている。

 安藤「私が頼まれているのはその下の下請け業者なんですよ。どうせ、フリーに成っても「二五」を切ったら不調で流れる。桜田としても、前々から上手くやっている裏仲間だ。昨日今日(キノウキョウ)の新参者じゃねえしねえし・・・一応、フリーに成っても仁義だけは通すでしょう」
 武智「で、頼まれている下請け業者っていうのは?」
 安藤「東京の日下(クサカ)工業という所です」
 武智「クサカ? どっかで聞いた事があるなあ・・・」
 安藤「堀田さんの所の秘書が顧問をしている所ですよ」

武智は驚いて、

 武智「ええッ、早川のッ! ・・・あの早川が顧問だったのかあ・・・。なるほどねえ・・・」
 安藤「そう。・・・で、かりに、叩き合いに成っても七億三千止まり。落札業者の利益をマックスで三割とすると、こっちの見積もりじゃ五億」
 武智「え~えッ! 五億ッ? 五億で出来るンですか?」

安藤は軽く、

 安藤「大丈夫でしょう」
 武智「面白れえ。て云う事は石田(桜田組)の息子を何とかコンペに引きずり込めば良いって事か」
 安藤「それが出来れば、それにこしたことはないですけれど・・・。富士見の焦げ付きは幾らあるのかなあ・・・」

武智は驚いて安藤を見る。

 武智「焦げ付き?」

安藤は意味深(イミシン)な表情で、前歯の抜けた口で不気味な笑いをつくる。

 安藤「・・・」

武智は安藤のシナリオにハタと気付く。

 武智「そうかッ! よしッ、乗ったッ! で、入札日は?」
 安藤「五月の連休が明けて直ぐ」
 武智「五月八日か・・・」

武智は代議士の机の裏壁のカレンダーを見る。

 武智「三ヶ月後か・・・。伴ッ! 面白く成って来たぞ。安藤さんッ! 美味しい話を有り難う御座います。来週の火曜日迄、待って下さい」

 安藤「・・・一週間か・・・」

安藤はタバコをクリスタルの灰皿に強く押し消し、前歯の抜けた口で不敵な笑いを浮かべながら、武智と伴を見る。

 安藤「分りました。上手く行けば、・・・大きいですからねえ・・・」
 
安藤が席を立つ。
伴は我に返り、席を立つ。

 伴「アッ、ご苦労様です!」 

安藤は何も言わずに自分で応接のドアーを開けて出て行く。
武智が笑顔でもみ手すり手で安藤の後を追う。

 武智「いや~、いやいや、安藤さんには負けるなあ。有難うございま~す」

安藤が事務所のドアーを開けて出て行く。
ドアーが静かに閉まる。

 音「カチャッ」

伴は事務所の空気を感じて、

 伴 「・・・格好良いですねえ・・・」

武智は伴を見て、

 武智「?? 何処が?」

事務室の電話が鳴る。

 音 「ピロピロ・・・」

伴が受話器を取る。

 伴 「お世話になります。大木戸事務所で御座います。・・・もしもし、・・・もしもッ!」
 大木戸(声)「うるさいッ!」
 伴 「あッ! お疲れさまです」
 大木戸(声)「何をしてるッ!」
 伴 「あッ、はい、安藤さんとの打ち合わせが今、終りました」
 大木戸(声)「・・・武智くんに代わりなさい」
 伴 「はいッ!」

伴は武智を見て、

 伴 「本人です」

武智は得も言われぬ顔で、伴の受話器を取る。

 武智「あッ、ハイッ! 代わりました」
 大木戸(声)「・・・いいね。あまり深く掘らない事。今は周りが厳しいからね」
 武智「あッ! ハイッ!」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第11話

2017-03-02 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第11話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S49

○議員会館大木戸事務所応接室(朝・二人)
大木戸が本会議に出て行った後。
武智と伴がソファーに座り茫然と見詰め合う。
武智が溜息をついて、

 武智「毎日毎日、叱咤激励だ。厳しいのう・・・」
 伴 「武智さんは金庫番だからしょうがないですよ」
 武智「何ッ」

武智が伴を睨む。

 武智「オマエがやれ」
 伴 「無理ッすよ~。僕は泥棒は出来るかも知れませんけど、詐欺師はムリ」
 武智「オイ、バカにしてるンだろう」
 伴 「とんでもない。尊敬してます」

武智はやけくそな笑いを浮かべ、

 武智「オメーよ・・・。まあ、良い。二時の大谷村の十人の陳情団、頼むぞ」
 伴 「あッ、はい」

伴は、懐から手帳を取り出し読み上げる。

 伴 「・・・まず、県の出先、総務省、国交省、農水省、えーと、それ以外、何処か廻りますか?」
 武智「うん? おう、それで良い。特に国交省は官房の総括、各審議官、水資源の部長と地域対策の課長、河川局は局長、次長、各課長、この辺はくれぐれも宜しく頼むって言っとけや。特に、河川局の桑原次長は地元だからな」
 伴 「ハイ。・・・あの~、何の陳情に来るんですか?」

高木がコーヒーとお茶をお盆に載せて、笑いをこらえるて応接室に入ってくる。
高木はソファーの隅に小さく座る。
武智は呆れた顔で、伴を見て、

 武智「伴よー、はるばる大谷村から、村長を頭に十人もの陳情団が雁首そろえて来るんだ。まさか、裏口でもあるめえ」
 伴 「まあ、そうですけれど・・・」
 武智「村が沈んじゃうンだよ」
 伴 「地盤沈下ですか?」
 武智「バカ! ダムの計画があるのよ。湖底の村になっちゃうのよ。そんな事、事前に棚の陳情ファイルを読ンで頭に入れとけ。また、オヤジにドヤされるぞ!」
 伴 「なるほど。石川達三の世界ですね」
 武智「何ンだそれはッ!」
 伴 「故郷(フルサト)が無くなっちゃう事でしょ」
 武智「うん?・・・お前は政治家には向いてねえな」
 伴 「そうですか?」
 武智「いいか伴。こう云うのは、推進派と反対派が居るンだ。どっちの陳情団の話も丁寧に聞いてやる。そして、丁重な扱いをしてやる。偏ったら票は減る。どうせ、もう直ぐ解散だ。この辺の芝居は大きな山場だ。金も集めろ、票も集めろ! とにかく、行け行けゴーゴー。ヤバイ橋も渡らなくっちゃ。さっき、オヤジが言ったろう? 親身になって丁寧に聞いてやる。無理はくれぐれもしない事」
 伴 「ハイ。勉強に成ります」 
 武智「・・・うん」

武智はソファーの隅に座る高木を見て、

 武智「それから安藤さんの件、十六時に呼ンでくれる」
 高木「あッ、はい」

事務所の電話が鳴る。
高木が急いで応接室を出て行く。
武智は伴を改まって見て、

 武智「伴ッ!」
 伴 「はい!」
 武智「オマエよー。この世界はいつも二つ先の事を考えるンだよ。そうすれば手は後ろに回らねえ。オヤジに言われたら先の先を考えるンだ」

         S50

○衆議院第一議員会館正門受付(夕方・一人)
墨紺のスーツに身を固めた品の良い? 男が。
男は受付で面会依頼紙を取り、

       「安藤 登」

と、大きな文字で書く。
用件欄の「陳情」に丸を付け、提出する
受付の女子職員が受話器を取りボタンを押す。

 女子職員「・・・受付です。安藤様が面会です」
 高木(声)「はい。お願いします」

安藤は入館紙を衛視に提出、衛視がちぎって安藤に渡す。
安藤がロビーに入り、エレベーターを待つ。
暫くして、エレベーターのドアーが開く。
十階のボタンを押す安藤。
ドアーが閉まり安藤を乗せたエレベーターが上がって行く。

         S51

○議員会館廊下(二人)
安藤がセカンドバックを持ち、廊下を俯きかげんに歩いて行く。
すれ違う年配の男性秘書。
男性秘書は振り返って、

 男性秘書「安藤さん!?」

安藤は立ち止り左手で口を隠し、振り返る。

 安藤「ああ、矢吹さん。久しぶり」
 矢吹「そうですねえ。今日は?」
 安藤「うん。・・・ちょっとね」
 矢吹「後で寄って下さいよ」
 安藤「ああ、分かりました」

安藤が大木戸事務所の前に立つ。
インターホンのボタンを押す。

         S52

○大木戸事務所事務室(一人)
高木がインターホンに答える。

 高木(声)「はい」
 安藤「アンドウです・・・」 
 高木(声)「どうーぞー」

施錠を解放する音。

 音「カチャッ」 SE

安藤が「菓子折り」を持って入って来る。

 高木「あッ、ご苦労さまです。皆さんお待ちです」

安藤は菓子折を高木に渡す。

 高木「わ~、フランソワーズのケーキッ! 美味しそう・・・」

安藤は、左手で口を隠し、

 安藤「皆さんて、先生も居るの?」
 高木「いいえ、武智さんと伴さんです」
 安藤「バン?」
 高木「新人の秘書さんです」
 安藤「ああ・・・」
 高木「安藤さん、口、どうしたンですか?」
 安藤「・・・」

安藤は高木を無視して、応接室に入って行く。

         S53

○応接室(三人)
武智と伴が、安藤を見て椅子を立つ。
武智は右手を差し出し、握手を求める。

 武智「いや~、イヤイヤイヤ、イヤイヤ、まあ~ッ、どうぞ、どうぞどうぞ。何ンだ何ンだ、久しぶりじゃないですか~(慇懃に)」

安藤も左手で口を隠して右手を差し出す。
奇妙な笑い声で、

 安藤「ホホホホ。うんうんうん」
 武智「どうしました、口?」
 安藤「刺し歯が取れちゃって・・・」
 武智「ええッ!(驚く)」
 安藤「いや、此処に来る前に大公さんに寄って、茶うけの煎餅を食べたンですよ。そしたらポロっと・・・。まいっちゃいましたよ~」
 武智「あら~~~。大公建設で・・・」

安藤は伴を見る。

 武智「ああ、紹介します。俺の舎弟で伴と云うカバン持ちです」

伴は背広のポケットから皮の名刺入れを出し、一枚。

 伴 「あッ、はじめましてー、伴 憲吾と申します。お世話になりますー」

安藤も、セカンドバックからビトンの名刺入れを取り出し、一枚。

 安藤「安藤 登です」

伴をまじまじと見て、武智に、

 安藤「良いの入ったじゃないの」
 武智「そうですか?」

武智は伴を見て、

 武智「ほ~ら、言われちゃったじゃない。ハハハハ。まあ、どうぞどうぞ、座って座って」

高木がお盆にコーヒーとお茶を載せて応接室に入って来る。
高木はテーブルにコーヒーとお茶を並べ、

 高木「安藤さん、久しぶりですねえ。元気そうで」
 安藤「そ~お?」

安藤はソファーで伸びをする。

 安藤「あてててー。首が痛くて・・・」
 高木「クビッ!」
 安藤「回らないンだ」
 高木「そりゃあ、大変。寝違えた?」
 安藤「う~ん?・・・金が有ればねえ・・・」
 高木「は~?」

伴が安藤を見詰めている。
安藤は応接の陳情棚を見て、武智に、

 安藤「・・・良い話し有る?」
 武智「う~ん。ゼンゼン」
 安藤「そ~お?」

安藤は左手で口を隠し、

 安藤「・・・あれ、ちょっとやってみようかと思って・・・」
 武智「あれ?」
 安藤「例の防衛省のヘリ基地」
 結城「・・・ああ、あの可決した横田の・・・」 

武智は鋭い眼で安藤を睨み、コーヒーを一杯飲む。

 結城「おい、伴ッ! ドアーを閉めろ」
 伴 「あッ、はい!」
 武智「・・・あれは緊急で補正を組んで、三ヶ月以内に着工します。アメリカがうるさくて」
 安藤「岸田事務所の吉村さんからも聞きました・・・」

武智は目を細め、眩しそうに安藤を睨む。

 武智「・・・ボーリング依頼ですか・・・」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第10話

2017-03-01 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第10話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    山川トメ(80歳) 市原悦子

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸ヨネ(77歳) 角替和枝

    大川正義(60歳) 岸部一徳

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S48

○議員会館大木戸事務所応接室(朝・三人)
週初めの大木戸を交えての懇談会(営業会議)である。
事務所では高木が電話をしている。

 声 「・・・ハイ。今日は全員、地元に戻っております。・・・ハイ。・・・・ハイ。その様にお伝えします」

大木戸が懐から議員手帳を取り出しテーブルに置く。

 大木戸「サア! 始めよう。で、どうかな?」
 武智「ハイ! ええ、昨日、水神村から戻りまして・・・」
 大木戸「ウーンッ!(力強く) どうだったッ!」
 武智「大変な田舎で・・・」
 大木戸「そうッ!(力強く)」

本日の大木戸は非常に精神が安定して、強気である。

 武智「人口が百二十三、平均年齢六十七歳」

大木戸は鬼の様な歯を見せて、武智を見てニッと笑う。

 大木戸「高齢化だねえ・・・」
 武智「はい。・・・で、ほとんどの住民が山川姓です」

大木戸の「ニッ」の笑い直らない。

 大木戸「そう。近くに郵便局は在るの?」
 武智「在ります。特定が」
 大木戸「ほお・・・在る・・・。アレの看板は立って無いね?」
 武智「アレッ?」
 大木戸「ゴキタ(小声で)」
 武智「アッ! 有りません」
 大木戸「ヨシッ!(力強く) 大川くんに言って直ぐに看板を立てさせなさいッ! 御意見箱も忘れずにクッ付ける事ッ!」
 武智「ハイッ!」
 大木戸「で、湯呑は配ったンだろうね」

武智「アッ、はい。ただ、ほとんどの方がトメさんの親戚と云う事で・・・」

大木戸の目が輝く。

 大木戸「三十では足りないッ!(力強く)」
 武智「はい・・・」

大木戸は天井を見上げ何かを考える。
武智が口を挿む。

 武智「トメさんに後援会の取りマトメ役に成ってもらう・・・」
 大木戸「そうッ!(力強く) 君も成長したね~。そこなンだよ。ねー、伴くん」
伴は自分に振られて、緊張しながら、

 伴 「ハイッ!」

大木戸は優しく鬼の様な笑いを浮かべ、猫の様な声で、

 大木戸「君は、何をしてたの?」
 伴 「はい! 浦口さんとウラグチの件で・・・」
 大木戸「そうッ。で、カステラは?」
 伴 「はい。お持ちしました」
 大木戸「う~ん。喜ンだでしょう」
 伴 「はい。一人で良いのかと」
 大木戸「何ッ! そンな事が出来るのか」
 伴 「全体枠が有るみたいです」
 大木戸「ほう。武智くんも同行したの?」

大木戸は優しい目で武智を見る。

 武智「私はちょっと・・・」
 大木戸「チョット?」

大木戸の顔色が変わる。

 武智「イヤッ! 私は水神に・・・」
 大木戸「私は一緒に行ってやりなさいと言ったよね」
 武智「あ、はい。ですから、私は・・・」
 大木戸「いい訳は止めなさいッ! 伴くんはまだ素人だ。つまらない事を喋ってしまったら私が困るンだからね」
 武智「あッ、ですから私は電話で・・・」
 大木戸「うるさいッ!」

大木戸は二人を見て、

 大木戸「・・・いいですか、人と人は触れ合う事で愛が深まるンです。分かりますか?」
 二人「あッ! ハイッ!」
 大木戸「地元事務所の陳情者でも進学に迷っている若者やご家族が居る筈でしょう」
 二人「ハイッ!」
 
大木戸は大声で高木を呼ぶ。

 大木戸「高木く~んッ!」
 高木「ハイッ!」

高木が応接室のドアーをノックし、部屋に入って来る。

 高木「お呼びでしょうか?」
 大木戸「ヨネさんを出してくれる」
 高木「ハイ」

高木は事務所から、

 高木「先生~ッ、三番、ヨネさんです」
 大木戸「おお・・・」

大木戸はソファーを立って机上の受話器を取る。

 大木戸「ご苦労さンね~。大川くんは? ・・・そう。出てるの・・・何処へ? ・・・水神村ッ!? 何ンとまあ~、先の読める人だねえ~」

大木戸は受話器を耳に当て二人を睨む。
武智と伴は俯いて聞いている。

 ヨネ(声)「どうした? 陳情かい?」
 大木戸「うん。学校だ・・・」
 ヨネ(声)「学校? 大学かい?」
 大木戸「うん」
 ヨネ(声)「五人来てるよ。生還病院の次男坊も来てるなあ」
 大木戸「生還? 院長は民進党じゃないの?」
 ヨネ(声)「奥さんは大木戸派だよ」
 大木戸「ええッ!(驚く) 何処に入りたいの」
 ヨネ(声)「応恵大の医学って書いてあったよ」
 大木戸「応恵ッ!(驚く)」

大木戸は二人を見る。
武智が伴の膝をこずく。
伴は気付き、大木戸に手でOKサインを送る。

 大木戸「そう。その陳情書、此処にファックスしてくれる。伴くん宛てにね」
 ヨネ(声)「あいよ~・・・。それから川場村の集会場の看板、また、足が折れてるンだよ~」
 大木戸「何~、またかあ・・・。私の反対派が多い所だからねえ。鉄パイプにしなさい。頑丈な」
 ヨネ(声)「あいよ~」

大木戸が受話器を置き、ソファーに座り直し、

 大木戸「いいですか。簡単な事なンです」

武智と伴は大木戸を見て、

 武智「ハイ! とても勉強に成ります」
 大木戸「私は、いつかも君達に言った事が有るねえ。思い出してご覧なさい」
 二人「は?」
 武智「すいません。ちょっと記憶が・・・」
 大木戸「バカ者ッ! 長いお付き合いして行くンだ。固い絆ッ。絆は助け合いから始まるッ! どんな陳情でも早く、確実に、丁寧に、相手の身になり、力強くッ! 支援者を包み込むように。これが、熱い、熱い一票に繋がる。人にはそれぞれ人に言われぬ悩みが有る。それを解決してやる事が票に繋がる。ひるがえって、我々の糧に成るのである」
大木戸が机を人差し指で叩きながら、熱弁をふるう。

 二人「ハイッ! 勉強になります」
 大木戸「・・・うん・・・」

大木戸は、テーブルの上のコップの水を一口飲み、

 大木戸「安藤くんが来たらしいね」
 武智「あッ! そうだ」
 大木戸「ソウダ? 報、連、相はどうした」
 武智「すいません」

大木戸は武智をキツイ眼で見る。

 大木戸「・・・何しに来たの?」
 武智「あッ、横田のヘリコプター基地拡張工事の件で・・・」
 大木戸「おお? もう動いているのか」
 武智「そうです」
 大木戸「あそこは格納庫の増設もあるはずだ。もう直ぐ出るはずだぞ」
 武智「今日の夕方、安藤さんと打ち合わせます」
 大木戸「そう。横田も立川も大変だ。大統領が変わったからねえ・・・」
 武智「えッ!? 立川も?」
 大木戸「・・・」

大木戸は腕時計を見て、
 大木戸「おお、もうこンな時間だ。本会議が始まる」

大木戸は議員手帳を懐に仕舞、ソファーを立つ。
二人を見て、

 大木戸「いいですか、無理はくれぐれもしない事」

武智と伴はソファーを立ち、

 二人「ハイッ!」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第9話

2017-02-28 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第9話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    山川トメ(80歳) 市原悦子

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S44

群馬水神村(全景)
大変な田舎である。
武智が「山川トメ宅」の玄関先から、携帯で電話をしている。

 武智「モシモ~シ・・・モシモ・・・」

武智はAUの携帯を睨み、

 武智(M)「こんな田舎からAU、通じるンだろうか・・・」

 武智「モシ~・・・オッ!? 通じたッ!」
 高木(声)「あッ、すいません。この電話、混線してるみたい。え~と、どちら様でしょうか?」
 武智「俺だ」
 高木「あッ! 武智さん。お疲れさまです」
 武智「うん?・・・うん。・・・いや~、イヤイヤ、えれ~山ン中だよ。ダメかと思った」
 高木(声)「は?」
 武智「いや、このAUだよ」
 高木(声)「AU? ああ、武智さん、AUですか?」
 武智「うん。・・・何かある?」
 高木(声)「・・・今の所有りません。あッ、本人が電話を入れろって」
 武智「電話?」

武智はイブッタ化に、

 武智「分ったよ」
 高木(声)「今、どちらですか?」
 武智「婆さんの家だ。おい、バッテリーが切れそうだ。伴に変わってくれ」
 高木(声)「はい」

         S45

○議員会館大木戸事務所応接室(一人)
伴が応接室の書類棚から陳情フェイルを取り出し、立ち読みしている。
事務所から高木の声。

 高木「伴さーん、一番に武智さんからです」
 伴 「えッ! あッ、すいません」

伴が代議士の机上の電話の受話器を取る。
ボタンを押して、

 伴 「代わりました。ご苦労様です」
 武智(声)「何やってンだ」
 伴 「えッ、浦口さんの例のウラグチの件で陳情ファイルを見て・・・」
 武智(声)「ンなの後で良い。株が下がってるぞ」
 伴 「カブ?」
 武智(声)「早川は来なかったか?」
 伴 「来ません」
 武智(声)「そうか。・・・来週の月曜日、アメリカからパインズ財務長官が総理ン所に来る。で、その晩、官邸で皆ンなを集めて何ンかを喋るらしい。そうしたら翌日、株が上がる。浦口に伝えとけ」
 伴 「ええッ!(驚く)」
 武智(声)「いいから、早く連絡しろ。五、六人まとめて入れるから」

武智は感心して、

 伴 「武智さんて凄いヒトですねえー」
 武智(声)「バカ野郎、この位出来なくちゃ金庫番になれねえよ」
 伴 「分かりました。しかし、この部屋じゃ、株の上がり下がりまで事前に分かっちゃうんですね」   
 武智(声)「ハハハ、ああ見えてもアレは一応財務副大臣やってンだぞ。おいッ! この事は、口外無用ッ! 誰にも言うなよ。俺達どころか、オヤジの手も後ろに回っちまうからな」
 伴 「言いませんよ。私は株なんかまったく興味が有りませんから」
 武智(声)「バカ野郎ッ! 株と為替ぐらい勉強しろ。政治とは株と為替だ!」
 伴 「は? そう云うモンですか」
 武智「そう云うモンよ」

高木が応接室に入って来て、電話中の伴の机上に「一枚」の名刺を置く。
高木はメモ用紙を名刺の隣に置き、応接室から出て行く。
伴は、メモを見て、

 伴 「アッ、それから「N&C」安藤「安藤 登・五十歳」さんと云う方が武智さんを訪ねて来たようです」
 武智(声)「安藤さんッ!(驚く)」

         S46

山川トメの自宅(午後・二人)
トメがなかなか家の中に入って来ない武智に、

 トメ「何やってンだ?・・・あれ、まだ喋ってンの。蚊に刺されるから早く入れや」

武智は携帯を耳から遠ざけて、、

 武智「アッ、すンません。また、弟ですよ~。困ったヤツだ。ハハハハ」
 トメ「餅を焼いたから食えや」
 武智「あッ、ありがとうございます」
 伴(声)「モシモシ・・・モシモ~・・・」
 武智「ハイハイハイハイ」
 伴(声)「誰と話てるンですか?」
 武智「婆さんだ!」

「と」、携帯電話の電池切れの警告音。

    「ピピピ、ピピピ、ピピピ・・・」

 武智「おい、もうダメだ」
 伴(声)「誰ですか? 安藤さんて」
 武智「仕切り屋だ!」
 伴(声)「シキリヤ? モシモシ・・・ モシモ」
 武智「ダメだ・・・」

武智の携帯電話の電池が切れる。

         S47

議員会館大木戸事務所応接室(一人)
電話が切れる。

    「・・・・・・」

伴は受話器を置き、机の上の名刺を取り上げて、

 伴 「シキリヤさんか・・・」

「と」、高木が事務室からお盆にお茶を載せて応接室に入って来る。

 高木「お茶をどうぞ・・・」
 伴 「あッ、すいません。・・・高木さん・・・、この安藤さんて誰ですか?」
 高木「ああ、安藤さんはこの事務所の下請けです」
 伴 「下請け?」
 高木「交渉専門の外郭団体です」
 伴 「何ンですかそれ?」
 高木「何ンと云いますか、・・・談合関係の調整会社・・・かな? 上手く説明出来ません」
 伴 「談合って・・・あのゼネコンの?」
 高木「そうッ! 安藤さんは昔、此処の事務所で第一秘書をしてたンです。頭が良くて・・・。お話を聞くと凄く勉強に成りますよ」
 伴 「談合のスペシャリスト?・・・。へ~え、早くお会いしたいなあ。しかし、この部屋の関係者ってみんな狼(オオカミ)みたいな人ばっかりですねえ」
 高木「ええッ!? そんな怖い方は居ませんよ。どっちかと云うと・・・タヌキとか・・・キツネ、ムジナかな?・・・うん、皆ンな、とっても可愛い方ばっかり!」
 伴 「タヌキとキツネ、ムジナ? ・・・蕎麦屋みたいですねえ」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第8話

2017-02-27 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第8話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    山川トメ(80歳) 市原悦子

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S40

○文教振興会応接室(午後・三人)
応接室のテーブルを隔てて浦口と伴が座っている。
テーブルの下には「セキネのカステラ」の紙袋が。
テーブルの上には交互に浦口と伴の名刺が置いて有る。
浦口はテーブルの上のマイルドセブンのタバコを一本抜き取り、口元に。
伴はすかさず、ポケットから例のデュポンのライターを取り出し、火を点け、浦口のタバコに。

 音 「ピ~ン」 SE

浦口はタバコを深く吸い、伴を見てニコッと。

 浦口「君、タバコは?」
 伴 「私はやりません」
 浦口「そう。・・・で・・・」
 伴 「は? あッ!」

伴がテーブル上に「セキネのカステラ」の紙袋を載せる。
浦口はセキネと云う文字を見て態度が一変する。

 浦口「おおッ! そう。いやいやいや、チョット待って。・・・山口さ~ん(山口喜美子・四七歳)、お茶を出してくれる~ッ!」

事務室から山口の声

 山口「はーい」
 浦口「玉露をねー」
 山口「分かりました」
 浦口「それから、このカステラを持って行って」
 山口「はーい」

暫くして、山口がお盆にお茶を二つの載せて応接室に入って来る。
山口はテーブルの上の「セキネのカステラ」を見て、

 山口「あらー、局長の一番好きなモノじゃないですかー。これが来ると何か良い知らせでしょ」

山口は伴を見る。

 伴 「えッ、アッ! まあ・・・」
 浦口「二つだってよ。二つッ!」
 山口「二つッ! あら、国分寺の方も? さすが、大木戸先生」

山口は伴を見て、妙な熟女の色気を出し、

 山口「ごゆっくりしてらっしゃい」
 伴 「あッ、恐縮です」

山口が応接室を出て行く。

      *    *    *

浦口がお茶を一杯すすり、伴を見て、

 浦口「で?」
 伴 「あッ、実は稲大に入りたい青年が居るのですが」

浦口は驚いて目を丸くする。

 浦口「ええッ!・・・何人?」

伴も驚いて、

 伴 「いやッ、一人ですよ」

浦口はヘリンボーンのジャケットの内ポケットから黒い手帳を取り出し、

 浦口「・・・名前を聞かせて?」
 伴 「野村勇作、十八歳です。大木戸の後援会長の息子さんです」

浦口は手帳に書き取って行く。

 浦口「・・・何処の学部に入りたいの?」
 伴 「文学部らしいです」
 浦口「文学部で良いの?」
 伴 「はい」
 浦口「一部でしょうね」
 伴 「そりゃあ、・・・多分」
 浦口「・・・分かった」

浦口は手帳をポケットに仕舞ながら伴を見て、

 浦口「この時期は多いのよ。あッ、この彼は稲大だよね。他の先生からも今年は、ウチだけで十五人、頼まれてるのよ」

伴は驚いて、

 伴 「えッ、そんなにッ!」
 浦口「川田先生のお嬢さんも、どうしても英智大学に入りたいというのよ」
 伴 「英智ッ! 凄いですねえ」
 浦口「凄くないのよ。何処の大学も学生の取りあいよ~。だって、少子化で経営が大変なンですから。出来るだけ身元のしっかりしたご子息の方が安心出来るンですよ。特に先生方の関係してる方が」
 伴 「そう云うもんですか?」
 浦口「そう云うモノよ。・・・確認の為、もう一度聞きますが、この野村くんだけで良いのね?」
 伴 「はい・・・今の所は・・・」

浦口は伴を見て、お茶を勧める。

 浦口「冷(サ)めちゃうよ」
 伴 「あッ、はいッ!」

         S41

○議員会館大木戸事務所事務室(二人)
高木が受話器を取って、電話中である。
伴も自分の机で電話をしている。

 伴 「アッ、武智さん? 伴です、ご苦労様です。 今、大丈夫ですか?」

         S42

○車内(二人)
武智は群馬水神村の山中を山川由紀之の婆さん「山川トメ・八十歳」を乗せて運転している
武智は運転しながら、携帯を持って

 武智 「何ンだ? 運転中だ。電話するな!」
 伴(声) 「えッ!? すいません。あの例の裏口の件です」
 武智「後にしろ・・・」

伴はその言葉を無視して、

 伴(声) 「バッチリです」
 武智「バカ野郎! お前の話を聞いてると事故っちゃうよ。ちょっと待て。今、車停めるから・・・」

武智が路肩に車を停める。
後ろの座席に座ってるトメを見て、

 武智「トメさん、わりーねー。 三分待っててや」
 トメ 「いいよ! どうせ、急ぐ旅でもあるめえよー」

武智はまた、携帯を耳に、

 武智「もしもし。伴、オマエ親父の口癖、知ってるだろう。五W一H だぞ!」
 伴(声) 「アッ、すいません。昨日、浦口さんの所に行って来ました」
 武智「結論ッ!」
 伴(声) 「アッ! OKでした」
 武智「そんな事、あたりめえじゃねえか。切るぞ」
 伴(声) 「いや、一人で良いンですよね」
 武智「何?」
 伴(声) 「あのー・・・、浦口さんが一人で良いのかと・・・」
 武智「・・・」
 伴(声)「もしもし、もしもし、武智さん?」
 武智「聞こえてるよお~。・・・おい、応接の棚の陳情ファイルを広げてみろ。息子の進学で悩んでいる親が居るだろう」
 伴(声)「あッ、分かりました。また後で電話します」
 武智「いいよ。電話なンてしなくて」

武智が携帯を切る。
トメが後部座席から武智に赤飯の握り飯を差し出す。

 トメ「忙しいねえ~。これ、食うか?」

武智が驚いて、

 武智「あッ、イヤ~、いやいや、こりゃーすいません。旨そうだ」
 トメ「誰と喋ってたンだい?」
 武智「出来の悪い弟だよ」
 トメ「そ~けえー・・・」

武智は握り飯を頬張る。

         S43

○議員会館大木戸事務所事務室(二人)
伴が受話器を置き、お茶を一気に飲む。

 伴 「アッチー! 何て熱いンだ。喉が焼けどしそうだよ」

高木が呆れた顔で伴を見る。

 高木「・・・焦って飲むからですよ。・・・裏口、上手く行きそうですね」
 伴 「浦口さんですよ。ウラグチじゃないから」
 高木「だって、私大は定員の二倍以上は補欠学生を取ってるじゃないですか。それが証拠に学籍番号、あれってとっても変ですよ。 だから、私大の場合、別に学生の能力の問題じゃ無いンじゃないかな。 一に経営、二に儲け、三四が無くって五に補助金ですよ」
 伴 「?・・・高木さんチも政治一家ですよね」
 高木「そうです。何か?」
 伴 「いや、僕この部屋に居ると世の中、百八十度、違って見えて来るんですけれど」
 高木「そうですか? うちの父は、私の小さい頃から家族によく話してました。世の中は「裏と表」は有るが、「表と裏」は無いってね」
 伴 「何ですか?それ」
 高木「裏の明るさを知れば表が暗く見える。表の暗さを知った人は裏の明るさを見たがる」
 伴 「・・・ああ。・・・イヤー、何から何まで本当に勉強に成りますねえ。 僕、人間が変わりそうです」

「と」、電話が鳴る。
高木が、受話器を取る。

 高木「お待たせしました。 衆議院大木戸事務所で御座います」 

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第7話

2017-02-26 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第7話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    植松行政(45歳) 堤 真一

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    森住玲子(40歳) 室井 滋

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S36

○第一議員会館正面玄関(午後・三人・その他)
伴がコンビニの袋を提げて議員会館の正門階段を足早に上がって行く
衛視が伴に敬礼する。
伴は首に掛けた「IDカード」を見せ軽く会釈する。
衛視はコンビニの袋の中を確認する。
衛視はニコッと笑い、

 衛視「弁当ですか。お疲れさまです」
 伴 「いや、どうも」

伴は急いでエレベーターに向かう。
堀田事務所の第二秘書・早川(早川俊久・四五歳)がエレベーターを待つ。

 伴 「どうも」
 早川「おう、久しぶり!」
 伴 「そうですね」
 早川「地元?」
 伴 「いや、国交省です」
 早川「国交省・・・」

エレベーターが停まり、ドアーが開く。

 伴 「どうぞ」
 早川「おッ、じゃ、お先に!」

エレベーターの中にワインの箱を数段重ね載せた、台車が目を引く。
早川が台車の横の女性秘書・森住(森住玲子・四十歳)に、

 早川「おッ、甲州ワインですねー。中元かな?」
 森住 「はいー・・・」
 早川「うちにも来るのかな?」
 森住「勿論ですよー。・・・先生お元気ですか?」
 早川「元気すぎて困りますよー。先週人間ドックで検査してもらったら体力は三十代ですって」
 森住「あらー・・・ そう言えば堀先生、スポーツクラブに通っていらっしゃるんですって?」
 早川「ええ? 結構、知れ渡ってますねえ」
 森住「うちの先生は運動不足で尿酸値が上がってしまって・・・。運動って言ったら議会で大声張り上げるぐらいでしょう。あれじゃその内、糖尿で・・・」

八階のドアーが開く。
伴がエレベーターの開放ボタンを押す。

 伴 「どうぞ!」
 森住「あら、すいません!」

森住は台車を押しながら、

 森住「・・・大木戸先生の所の秘書さんですよね」
 伴 「はい! 伴と申します。 宜しくお願いします」
 森住「こちらこそ。先生に宜しく!」
 伴 「はい!」

森住が台車を押しながら廊下の表札を確認し去って行く。
伴と早川が廊下を足早に歩きながら、

 早川「森住大臣の長女だ」
 伴 「エッ! そうですか。可愛い方ですね」
 早川「可愛い!? まだ独身だ。よかったら話を進めようか」

         S37

○議員会館大木戸事務所事務室(午後・三人)
武智が電話を掛けている。
伴が事務所に戻って来る。

 高木「ご苦労さまです。」
 伴 「すいません。遅くなって。・・・あれ? 先生は」
 高木「電話が入ってちょっと前に、出ました」
 伴 「ええッ?! 道路の金井さんと話してたのにー・・・」

武智が受話器を置く。
伴を見て、

 武智「おう、ご苦労さん」
 伴 「何か遭ったんですか? 急に戻って来いって・・・」
 武智「うん?・・・うん。いいなあ、オマエは」
 伴 「エ?」
 武智「おい! ちょっと黙ってろ。俺は忙しいンだ。」

伴は自分の席に着き、カバンを置いてコンビニの袋から弁当を出す。

 高木「お昼、今からですか?」
 伴 「うん」
 高木「カップ麺が有りますよ」
 伴 「えッ、食べて良いですか?」
 高木「どうぞ、どうぞ。今、お茶を入れますから」
 伴 「すいません」

暫くして、カップ麺の蓋を開けてソバを掻きまわす伴。
武智は伴のカップ麺を見て、

 武智「旨そうだな」
 伴 「えッ! まだ食べてないンですか?」
 武智「いろんな事が有って、食う暇がねえ」
 伴 「? どうしたンですか。元気ないッすね」
 武智「俺は鬱病だ」
 伴 「エッ、この間の集団検診の結果が出たんですか」
 武智「違うッ! あのオヤジ、俺にあれやれこれやれって山ほど宿題を置いて行った。稲大は、お前一人でやれッ!」

伴はソバを一口。

 伴 「アチッ! 僕、一人でですか?」
 武智「そうよ。俺は忙しくてそれどころじゃねえ。今から地元で、票集めだ」
 伴 「ええッ! 群馬ですか?」
 武智「おう。それも国境だ。水神の婆さんの所まで行くんだ」
 伴 「ああ、この間の食事会の」
 武智「そうよ。まったく~。忘れない内に行って来いとよ。・・・伴、あのオヤジが食事に行こうって始まったら覚悟しておけよ。喰った後、三倍のお土産がくっ付いて来るからな。・・・そうだ、高木くん! ワリ~けど売店で総理の絵が描いてある湯呑みを三十個、取ってきてくれや。あの山川の婆さんに配ってもっちやうから」
 高木「はい」
 武智「あれって一個いくらだ?」
 高木「さあ・・・五百円位かな」
 武智「三十個で1万5千円!? 高ッけえなあ」

伴が、

 伴 「パー券、一枚ですね」
 武智「何ッ!」

武智が伴を睨む。

 武智「・・・そうだな。高木くん、現金有る?」
 高木「それ位なら」
 武智「そうか。アッ、ついでに俺の弁当も買って来てくれや。お稲荷さんとカップ麺」
 高木「はい」

高木が手提げ金庫から現金を出して、事務所を出て行く。
伴はカップ麺のスープをすすりながら、

 伴 「後援会長の息子さん、段取りは・・・」
 武智「うん?・・・おい! 裏口じゃなくて勝手口ってモノもあるらしい」

伴は思わずスープを喉につまらせ、

 伴 「グッフ!」

伴は咳き込みながら、

 伴 「そんな入り口、有るンですか?」
 武智「うん?・・・何ンか、一年間イギリスかどっかえ留学して大学へ推薦で入るンだってよ。早川が言ってた」
 伴 「早川さんとエレベーターで一緒でしたよ」
 武智「早川と? アイツ、株の話はしねえだろうな」
 伴 「カブ? しませんよ」
 武智「そうか。・・・アイツ、最近自宅を新築したらしいからよ」
 伴 「ジタクッ!・・・良いですねえ。それはそうですけど・・・どうやって・・・?」
 武智「うん?・・・俺が今から浦口に電話してやる。いいか、聞いてろ」

武智が受話器を取り、浦口に電話をする。

 武智「・・・もしもし、浦口事務局長(浦口 剛・五八歳)お願いします」
 女(声)「どちらさまですか?」
 武智「大木戸事務所の武智です」
 女(声)「あッ、お世話になります。少々お待ち下さい」

暫くして、

 浦口(声)「もしもし、いやいやいや毎度毎度お世話になります。どうしました?」
 武智「いやンもう。二つも決まっちゃいましたよ~。どうします?」
 浦口(声)「えッ! 本当ですかッ!(驚く)ありがとうございまーす。二つなんて信じられな~い。どうしましょう」
 武智「ええ~・・・」

         S38

○文教振興会事務所(一人)
浦口がリモコンでテレビのボリュームを落としながら、

 浦口「改めて先生にご挨拶に・・・」
 武智(声)「いや、ちょっとねえ・・・」
 浦口「チョット? どうしました」
 武智(声)「ちょっと、大所高所からご指導を仰ごうと・・・」
 浦口「おお、私が出来ることなら何ンなりと」
 武智(声)「いや~イヤイヤ、あのね・・・、ウチの若いモンを行かせますから話を聞いてやって下さい」
 浦口「何ンだろう。楽しみにして良いのかな・」
 武智(声)「そりゃー、アンタ~、甘~いモノでも・・・」
 浦口「ええッ! 甘いモノッ!? ただ、今、ドクターから止められてるンですよ」
 武智(声)「控えめですから大丈夫ですよ」
 浦口「うれしいなあ。お待ちしてます」

         S39

○議員会館大木戸事務所(二人)
伴がカップ麺を置いてジッと聞いている。

 武智「じゃッ、後ほど三時前後に、伴 憲吾と云うカバン持ちがお邪魔します」
 浦口(声)「ハハハハ、お待ちしてます」

武智が受話器を置く。
伴が呆れた顔で武智を見ている。

 武智「・・・どうした?」
 伴 「武智さん、本当に頭がキレますね。詐欺師みたいだ」
 武智「何? オマエ、俺をバカにしているンだろう」
 伴 「とんでもないです。僕、武智さんみたいなキレる方って今まで見た事ないです。いやー、本当に勉強に成ります」

武智は伴の顔を見て、

 武智「?・・・」

      *    *    *

高木が台車に湯呑を載せて事務所に戻って来る。
伴がドアーを開けて、

 伴 「ご苦労さまです」
 高木「けっこう、この湯呑売れてますねえ」

武智は振り向いて、

 武智「何処でも大変なンだよ」
 高木「あッ、武智さんにお弁当・・・はいッ」
 武智「おお、ワリ、ワリー」

武智は伴を見て、

 武智「おい、早く行って来い」
 伴「いや、まだメシを食ってないンですよ」
 武智「何ッ!?」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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