レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所」

貧家銭内(平賀源内)の診察記録

レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」 其三

2017-04-19 | 講 談

        原作 土屋寛文

       イメージ・キャスト(仮)

    貧家銭内(発明家) ルー・大柴
    杉田玄白(蘭方医) 笹野高史
    中川淳庵(蘭方医) 遠藤憲一


          其 三

男が裸で、カラダ中に菜種油を付けて敷布に包(クル)まって居る。


      「ろ組」獄舎面会室

銭内と玄白が話しをしている。

 玄白「最近のう。巷(チマタ)で、銭内に(コレ)を見せたらどうなるんだろうと云う噂を聞いた」

銭内が驚き、小声で、

 銭内「コレ? これとは何んだ?」
 玄白「うん? 今は・・・、言わない。オマエの身体に障(サワ)る」

銭内は少し怒り、

 銭内「ミズクイサな。君は・・・」


       数日後の問診部屋

中川淳庵 が銭内の問診をしている。
淳庵(玄白の後輩)は銭内の病に、非常に「興味」を抱いている。
淳庵は机の上の土産(ミアゲ)のスルメを摘(ツマ)み、・・・噛む。

 淳庵「クチャクチャクチャクチャ・・・。うん、そうらしいな」

銭内は小声でそっと淳庵に、

 銭内「教えてくれ」

淳庵も小声で銭内を見て、

 淳庵「ダ・メ・ダッ」

銭内は淳庵にきつく詰め寄る。

 銭内「? 何故」

淳庵は、また小声で、

 淳庵「部屋を汚す」
 銭内「ヨゴス? ・・・頼む! 君はワタシの性格を知ってるだろう。・・・頼む」

銭内は淳庵に拝む様に更に詰め寄る。
淳庵は噛んだスルメを口から出し、懐から紙片を出す。
スルメを包みながら、

 淳庵「ダ・メ・ダは ダ・メッ!」
 銭内「汚いぞ、君は・・・」
 淳庵「キタナイ? ・・・ああ、これか。これは後でまた噛むのじゃ」
 銭内「その事ではない」

夜、「ろ組」獄舎を抜け出す銭内。
銭内は急いで神田の「うなぎ屋」に走って行く。


       うなぎ屋「弥助」

暖簾をくぐる銭内。
店の中は賑わっている。
ウナギの様な声の「店主」。

 店主「いらっしゃ~~い~」

銭内は四人で盛り上がっている席の「隣」に座る。

 銭内「主(アルジ)、一本つけてくれ!」
 店主「へ~~い~」

銭内は卓(テーブル)の上の竹楊枝を口にくわえる。
暫くして店主が熱燗と摘み(ウナギの肝の佃煮)を持って来る。

 店主「へ~~い~、オ~マ~チ」
 銭内「・・・うん」

銭内はウナギの様な細身の長い身体(カラダ)の店主を見て、

 銭内「主(アルジ)、アカバラを五本焼いてくれ」

当時、ウナギ屋の受け答えは、皆この声を使っていた。

 店主「へ~~い~」

銭内は隣の客の話を聴いている。

 客A「あの絵は墨じゃねえ。墨なんかじゃ絶対あの絵は描(カ)けねえ」
 客B「あれは南蛮人の描(カ)いた絵だ」
 客C「裸の絵だったぞ」

客Bは助兵衛な(イヤラシイ)笑いを浮かべ、囁く様に、

 客B「女のな・・・」
 客D「銭湯で描(カ)いたんだべや」

客Bはイヤラシく、手ぶりで表現して、

 客B「乳が盛り上がっていたぞ」
 客C「ありゃ、墨じゃ描(カ)けねえ。漆喰(シックイ)だ」


       玄白庵(玄白の家) 

灯りが漏れている。

 銭内(M)「・・・起きてるな・・・」

声を殺して銭内が、

 銭内「お~い、玄白ッ! 先生ーッ!」

玄白が厠(カワヤ)の格子窓を開ける。

 玄白「何者じゃ?」
 銭内「銭内だ」
 玄白「銭内? ・・・おお、何処じゃ」
 銭内「此処だ。垣根の椿(ツバキ)の中だ」
 玄白「何ンだ。早く入れ」

銭内は垣根を潜(クグ)って顔を出す。
勝手口を入ると、部屋は山積みの書籍だらけである。

玄白が厠(カワヤ)を出て来て勝手口に立つ、銭内を見る。

 玄白「・・・今、厠(カワヤ)で御主の事を思い浮かべていた」

銭内は正常な声で、

 銭内「偶然かな?」
 玄白「おッ? だいぶ発する(喋る)ように成ったな」
 銭内「ハハハ、あの時は (人体の言葉と尻の音) に興味を持ったのだ。既(スデ)に書に纏(マトメ)めてしまった」
 玄白「それは素晴らしい。後で読ませてくれ。・・・おッ! そうだ。君に見せたい物がある。ちょっと上がれ」

銭内は部屋に上がる。
押し入れを開ける玄白。
中から巻物を取り出す。

 玄白「・・・是じゃ」

玄白は巻物を広げる。
色鮮やかな「女の絵姿」が畳に広がる。 

 玄白「・・・どうじゃ。良沢と骨ヶ原に腑わけに行った際、長崎から解剖書と一緒に送って来たモノじゃ。これを君にやろう」

銭内は驚嘆する。

 銭内「えッ! ・・・な、なんと素晴らしい絵じゃ。・・・どのように描いたのじゃろう」

銭内は顔と眼を、畳に広げられた絵に近付ける。

 玄白「さ~なあ。次はこの塗り物に凝(コ)ってみたらどうじゃ?」
 銭内「う~ん。・・・素晴らしい。・・・しかし、この女は口にアザミを咥えて何を企(クワダテ)てるんじゃろうな」
 玄白「これは、アザミではない。バラと称す花だ」

銭内は眼を丸くして、

 銭内「バラ?」

鼻を近付け絵の匂いを嗅ぐ銭内。

 銭内「匂わないぞ?」
 玄白「君はバカか」
 銭内「? ワタシはバカだから養生所に入れられたのじゃないか?」

玄白は呆れた顔で銭内を見る。

 玄白「・・・法螺面子(ホラメンコ)と称す。舞を踊っている所だ」
 銭内「ホラメン子・・・! ほ~・・・」

銭内は広げた絵巻物をもう一度、舐める様に見回し、今一度ゆっくり臭い嗅ぐ。

 銭内「?・・・? ニカワの臭いがする」

銭内は絵に触る。

 銭内「ツルツルしとるな。・・・菜種油を加えたか? 小刀(コガタナ)を貸してくれンか」
 玄白「良いから早く持って行け。此処で凝(コ)られたら私の勉強にひびく」

銭内は玄白の話をまったく聞いてない。

 銭内「・・・う~ん。おい、燃やしてみるか」
 玄白「これッ! 何を言う。火を出したら獄門磔(ゴクモンハリツケ)じゃぞ」

玄白は急いで巻物を巻き始める。

 銭内「あ~ぁ」

玄白はなだめるように、

 玄白「落ち着け。君の部屋でゆっくり見ろ」
 銭内「この色は何を使ったんだろう? ・・・そうだッ!」

銭内が叫ぶ。

 玄白「うるさい! 夜更けだぞ」
 銭内「・・・笊(ザル)を所望(ショモウ)したい」
 玄白「ザル? 何に使う」
 銭内「椿の花を百個ほど採りたい。それと、菜種油を貸してくれ」
 玄白「菜種油をとな?」 
 銭内「うん。色を作るのじゃ」


        「ろ組」獄舎  

銭内の部屋。
悩んでいる銭内。

 銭内(M)「しかし困った。紙がない。・・・どうしょうかのう・・・」


        朝の癲狂養生所
 
淳庵の総回診の日。
ろ組獄舎「七番札」牢部屋  
淳庵が部屋の中を覗く。


      「七番札」部屋の中

部屋の中がやたら明るい。
淳庵が「覗き窓」から中を覗く。

 淳庵「うん? おッ!」

淳庵は眼を凝らす。
部屋の中が「竜宮城」に変わっている。

 淳庵「あ~ッ」

淳庵は気を落ち着けて更に眼を凝らして部屋の中を見回す。
派手なモノが見える。

 淳庵「・・・おッ!?」

銭内がカラダ中に菜種油を塗り、椿の花弁を付けて裸体を叩いて気合を入れて居る。

 淳庵「・・・何をしておるのじゃ・・・」

お付きの書生達も「覗き窓」を覗き、

 書生「・・・椿の汁を出している様で御座います」
 淳庵「椿の汁・・・何に使うのじゃ・・・」

壁には敷布を破き、吉原の花魁(オイラン)の絵が下がって居る。
まさに、狂人が絵具の研究をしているである。
       
                つづく

*中川淳庵(1739~1786)
名医・本草学者・蘭学者・杉田玄白の後輩にあたり、前野良沢・杉田玄白とともに 「解体新書」 を翻訳する。
「向学心と積極性」 に富み、多くの学者と交わった男である。


この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」 其二

2017-04-17 | 講 談

       原作 土屋寛文

      イメージ・キャスト(仮)

   貧家銭内(発明者) ルー・大柴
 
   杉田玄白(蘭方医) 笹野高史

   土屋正直(見回り同心) 國村 隼   

   助 六(下役人) 石倉三郎

   村人A

         其 二

貧家銭内は厭(イヤ)な夢を見た。

     その夢とは・・・

水車が回っている。
徐々に徐々に早く回転して行く。
最後はスクリューの様に早く回る。
 
そこは、江戸は「渋谷村」の夢であった。


        夢の内訳

丑三つ時の闇夜。
今夜もまた、切り裂くような悲鳴が聞こえた。

 声「ギヤ~ッ!」 
  
村人(全五戸、五家族)が飛び起きる。
今日で五日目、夜な夜なこの叫び声に驚かされる渋谷村の村人であった。

 村人A「? また狼かッ!」

赤子は寝ぼけて大泣きをしている。

      *    *    *

田園の中の水車小屋に灯りが漏れている。
「町方役人」が提灯を持ちながら水車小屋を取り囲んでいる。
一人の同心(土屋正直)が外(ハズ)れかけたたドアーを叩く。

 音 「ドンドンドン」

正直の鋭い眼が光る。

 正直「おいッ、誰か居るのかッ!」

小屋の中から苦しむ声が、

 声 「ウ~・・・」

正直は大声で、

 正直「? どうしたッ! ここを開けろ」

正直はドアーを蹴破る。
正直の白足袋が、ヤタラ目立つ。

 音 「バン・・・」

仄暗い小屋の中、水車が規則正しく杵を搗いている。
情けない音。

 音 「コト、コト、コットン」

正直は目を凝らし小屋の隅々を見る。
下役人助六がカンテラ提灯を照らす。

水車の心棒に、何か細工がしてある。
細工物から、縄のような物が天井まで延びている。
正直の白い顔。

 正直「・・・何だ? これは・・・」

正直は縄の行方を目で追う。

天井から、鉄鍋が下がっている。 
縄のような物は鉄鍋の芯にニカワのような物で貼り付けてある。
正直はもう一度、水車の心棒に取り付けてある細工物を見る。
細工物の箱の中から「ハチが飛ぶ」ような音が聞こえる。

 音 「ブ~ン、ブ~ン・・・・」

間の抜けた「助六」の顔。

 助六「! ・・・? な、何だこれは?」

正直はキツイ眼で、

 正直「何かを、コサエ(製作)てたみたいだのう・・・」 

 助六「・・・旦那、野郎は何処に居たんでしょう」

正直は緊張した眼で、

 正直「ヤロウ? オマエは「男」と云う事がよく判るな。女狐(メギツネ)かも知れんぞ」

 助六「いやね、十日程前に小伝馬町の養生所から貧家銭内と云う癲狂浪人が逃げたと知らせが有りましてね」

正直は眼を丸くして、

 正直「貧家銭内?」
  
 助六「旦那、ご存知で」

 正直「うん? うん。*田沼殿の所で、殿(トノ)に怪しげな入れ知恵をしていた用人(ヨウニン)だ・・・」

積まれた藁(ワラ)の中からう、めき声がする。

 声 「ウ~ッ! ウ~」 

昏倒している浪人が居る。

 助六「おッ! やっぱり野郎だ。こんな所で寝てやがる」

正直はカンテラ提灯で浪人の顔を照らす。
浪人は我に返る。

 助六「ヤロ~・・・。おい、三品(サンピン)! 貧家銭内だな?」

銭内の眼は死んでいる。

 銭内「・・・? 如何(イカ)にも。 ・・・? 何故、ワタシは此処に居る」

 助六「何を? それは俺のセリフだ」

助六は十手で銭内を殴ろうとする。

 正直「まあまあ」

止める正直。
正直は優しく、

 正直「・・・かような所で、何をして居(オッタ)た」

 銭内「いや~・・・また失敗してしまった。配線を間違えた。許せ」

正直は驚き、

 正直「何ッ! ハイセンとな?」

 銭内「発光からくり細工と云う物をコサエ(製作)ているのだ」

 正直「ハッコウ・・・?」

 銭内「お主(ヌシ)に言っても分らん。提灯はもう古い。もっと先を照らす物をコサエ(製作)ているのだ」

 助六「旦那、こんなサンピンの言う事なんざ、信じちゃいけませんよ。何しろ、癲狂養生所からのお尋ね者ですからね。しょッ引きましょう」

 正直「う~ん。・・・提灯は古いとは解(ゲ)せぬ事を言うヤツ。よしッ。 御用だ! 助六、縄を打て」

 助六「ガッテン!」

銭内は助六の縄を受け立ち上がる。
薄暗い床に、切れた縄(配線)が延びている。
銭内は助六の縄に引かれて数歩、歩む。
切れた縄(配線)を踏む銭内。

 銭内「ギャ~ァ! アッ、アッー・・・」

助六は仰天する。
助六は眼を丸くして、
 
 助六「だッ、旦那! これがこのサンピンの病ですよ」

正直は銭内の眼の中を睨む。
感心する正直。

 正直「う~ん。・・・解(ゲ)に、癲狂養生所罪人とは恐ろしい者よのう」

 助六「この銭内とか云う癲狂浪人、よく発作と云うものを起こすと町人が言ってました」

正直は切れた縄(配線)と銭内を見て、

 正直「なるほど。縄を踏むと気が狂う。縄当たり(食当たり)と云う病か・・・」

 助六「旦那、ひょっとして縄を打たねえ方が良かったんでは」

                 つづく

*田沼殿 (老中・田沼意次である)


この作品は、著作権を放棄したものではありません

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レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」 其一

2017-04-15 | レーゼ小説

 レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」

             原作 土屋寛文

     イメージ・キャスト(仮)

   貧家銭内(蘭学家) ルー・大柴
   杉田玄白(蘭方医) 笹野高史

         プロローグ

「小伝馬町癲狂養生所」の白桧の看板。

宝暦三年(1751)将軍徳川家重の時代である。
日本橋小伝馬町の一画に、幕府の「牢屋敷」が在った。
その隣に「小伝馬町癲狂養生所」と云う病院が在る。
この作品は、そこに囲われた「天才狂人 貧家銭内(ヒンカセンナイ) の物語り」である。

養生所の外見は、隣の牢屋敷を小さくした様な建物である。
牢屋敷との大きな違いは、門番の 「*出で立ち」 ぐらいである。

その「門番」が、二人立っている。

*出で立ち(立っている姿)は、二人は「看護師」で頭の良さそうな男である。

      *    *    *

その日は、門(モン)に取りつけられた告示板に墨文字で、
 
「告 六月三日 患者(ワズライモノ)貧家銭内 丑の刻まで放免也」

と書かれてあった。

       ここから本文である

          

        「屁の話」

銭内(センナイ)は、すこぶる人見知りが激しかった。
数日前、久しぶりに親友の*杉田玄白に 「飯(メシ)でも喰いたい」 との文(フミ)を書いた。

神田神保町のめしや屋 「さかい屋」 の暖簾(ノレン)が風に揺れている。
銭内が隅の卓(テーブル)の椅子に座って、俯(ウツムイテ)いている。
玄白が暖簾をくぐって入って来た。

奥に座る銭内を見付けて、

 玄白「よ~! 銭内、元気だったか」

玄白はよく喋る男である。
銭内はいつものように、恥ずかしくなり顔も見ず卓(テーブル)の上の辣韮(ラッキョウ)に、急いで箸を運ぶ。

 玄白「おッ!・・・辣韮(ラッキョウ)か。旬だな。・・・私も、それを食したいな。オヤジ! 私もこれをくれないか。それと、燗を一本付けとくれ」

玄白は椅子に座って銭内をジッと観察ている。
銭内は赤面し、さらに恥ずかしくなり、固まってしまう。
暫くして、銭内が小声で、

 銭内「・・・お久しぶりです」

玄白は優しく笑い、

 玄白「うん? そうだな」
 銭内「・・・」
 玄白「で、君は今、何ンの調べ物をしてをるのじゃ」

銭内は、また小声で控え目に、

 銭内「あッ、・・・屁(ヘ)です」

玄白は優しい声で、

 玄白「うん? 聞こえんぞ。なんじゃと・・・」

銭内は控え目に、

 銭内「屁(へ)ッ!」

玄白は怪訝な顔で、上目使いで銭内を睨む。

 玄白「へッ??? ・・・へとな?」

店主(オヤジ)が燗酒(アツカン)と小皿に辣韮(ラッキョウ)を十六粒、盆に載せて持って来る。
玄白はニヤッと笑い、

 玄白「おッ、来た来た。私はこの辣韮(ラッキョウ)で一ぱいヤルのがすこぶる好きでのう」

銭内は、そっと玄白を覗き見る。
玄白も銭内をチラッと見る。

眼と眼が合う。
銭内は驚いて、

 銭内「はッ! ・・・」

玄白はまた笑い、

 玄白「? どうした。何か悩みでも有るのか?」

銭内は、玄白の「言葉の圧力」に負けそうに成る。
俯く銭内。

 銭内「いや」

玄白は燗酒(アツカン)を手酌で一ぱい飲み干し、真剣に、

 玄白「へ、とは何の事だ?」

銭内は赤面している。

 銭内「・・・」

銭内は説明する事が不得手で、そして今日はあまり人と話をしたく無かった。
銭内は暫く考えて、 

 銭内(M)「・・・そうだッ! 此処で試してみよう・・・」

銭内は丹田に力を溜め、下半身から奇妙な音を発する。

 音「プッ、プ~ス~~~」

音は素早く玄白の耳に届く。


        宝暦初期の頃

「昆陽・甘藷(サツマイモ)栽培記より」
*九代将軍家重(小便公方・頻尿公方・オナベ公方)は「放屁お構いなし」 と云う御触(オフレ)を出し、家重(将軍)も所構わず 「屁(ヘ)」 を発していた。
城中でも芋をタラフク食し、水や茶を摂り、放屁の音を競い合って 「剛の者」 と噂される 「目付け役や奉行」 も居たと謂う。
勿論、「便所」も城内に数多く増設させた謂う。


玄白は屁(ヘ)の音には慣れていた。

 玄白「・・・」

暫くして、臭いが玄白の嗅覚を刺激し、脳に達した。
玄白の眉間に皺が。

 玄白「うッ! お主か?」

玄白は臭(クサ)い顔をして、銭内を見る。

 玄白「・・・まあ良いが、メシ屋で屁(ヘ)はのう・・・」

玄白は銭内の顔をきつく見詰め、ハッと気付く。
玄白が驚いて、

 玄白「ッ! お主、今度はそんなものを研究しているのか」

銭内は玄白の質問に答えようと再度、片尻を浮かせ丹田に力を入れる。

 銭内「・・・あッ!」

銭内は突然息を呑む。
玄白は銭内の顔を見て、

 玄白「・・・どうした」 
 銭内「失敗してしもうた」
 玄白「失敗を? 何を」
 銭内「丹田に力を入れ過ぎた・・・」
 玄白「お主と云う男は。ハハハハ」

玄白は猪口に手酌で熱燗を注ぎ、銭内を見て辣韮(ラッキョウ)を摘まむ。

 玄白「気にするな。君は今は病気だ。 ・・・? ウン? 臭いぞ」
 銭内「いやッ、困ったッ。厠(カワヤ)に行って来る」

妙な格好で急いで席を立つ、銭内。


       厠(カワヤ)の銭内

銭内は褌(フンドシ)を外しながら、

 銭内(M)「だめだ。音で伝えるには、前日の喰い合わせを考えなくては。芋七割、米二割、豆一割、塩、水を控え目に。再度、部屋で試さなんと・・・」

玄白はこの日からまた当分、銭内との面談を控えた。
玄白の面談書には、銭内が 「屁(ヘ)の音」 の調べ物をしていたと記してあるらしい。

看守(看護師)の「診立て書」には、銭内の部屋は数か月の間、匂っていたと記してある。

                 つづく

*杉田玄白(1733~1817) (名医・蘭学事始・小塚原で腑分け・非常に多忙な医師であった)
*九代将軍徳川家重 (非常に奇妙な噂のある将軍である。私は是非、NHK大河ドラマで制作放映して欲しい将軍である」

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」 梗 概

2017-04-15 | レーゼ小説

レーゼ講談 「小伝馬町癲狂養生所 冗談録」

             原作 土屋寛文

   諸説有るがこれが「本物」である

江戸は日本橋小伝馬町獄舎(牢屋敷)の隣に、「癲狂養生所」と謂う 「心の病」 を背負った罪人が入る奇妙な「囲い屋敷」が在った。

罪人と言っても、「生来、気がふれている者(剛狂者)が犯す罪」 「何かのはずみで気がふれてしまった(柔狂者)が犯してしまう罪」がある。
この牢獄は、西と東の二つの獄舎に分かれていて西獄舎は「い組獄舎(剛狂者)」、東獄舎は「ろ組獄舎(柔狂者)」となっていた。 

*ここの収容者達は、罪の大小に関わらず、処刑、処罰は留め置きとされている。
知人を殺傷した銭内(貧家銭内)は、「ろ組獄舎」 の七番札の牢部屋に入って居た。
牢部屋と言っても、「ろ組獄舎」 の罪人は医師の承諾を得ればいたって外出等は自由でった。
逃亡しても遠くには行けないし、せいぜい野垂れ死にするのが関の山だと思っていたのだろう。
だから、この手の罪人は行方をくらましても十日もすると腹が減って、またこの牢部屋に戻って来た。

この作品は、この牢獄で他界した「貧家銭内(平賀源内)」と云う希代まれなる「不世出の天才」の養生生活をレーゼ小説化した講談である。

作品は、著作権を放棄したものではありません。

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 最終話

2017-03-09 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          最終話


      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    相原政治(31歳) 阿部サダオ

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S73

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
安藤が帰って、武智と伴が応接室に戻って来る。

 武智「伴ッ! ドアーを閉めろ」
 伴 「あッ、すいません」

伴がドアーを閉めソファーに座る。
武智は伴を見る。

 武智「おい。今、俺がここで話す言葉は記憶にない話だからな」
 伴 「えッ? あッ、はい。 ・・・しかし、凄いですねえ」
 武智「何が?」
 伴 「いや、武智さん」
 武智「うん? ・・・うん」

武智は伴をジッと見詰めて、ニヤッと笑い、

 武智「そりゃー、オマエとは違うよ」
 伴 「・・・あれって、一千万だったンじゃないですか?」
 武智「うん? そうだったか?」

武智は伴を鋭い目で見る。

 武智「オメーも聞いてたろう。解散選挙が近けンだよ。ナリフリ構わずゼニを集める! これが俺達の仕事だ」

伴は感心したように、

 伴 「武智さんて途轍(トテツ)もない詐欺師ですね」
 武智「詐欺師? 失礼な事いうンじゃない。俺は誰も騙してねーぞ」
 伴 「えッ? ・・・まあ・・・ですね。でも相当、ヤバイ仕事じゃないですか」
 武智「デキル秘書て言われてるヤツは皆こンなもんよ」
 伴 「でも・・・」
 武智「いいか。すべて、この仕事は未必でやってるンだ」
 伴 「でも」

武智が怒る。

 武智「うるせえな、デモデモって。デモは会館の外でやってるよ」
 伴 「いや、でもこう云う事は本当に犯罪じゃないンですか?」
 武智「ハンザイ? ・・・オメー本当にそう思うか?」
 伴 「えッ? ・・・まあ」
 武智「犯罪だと思うのなら、この部屋から出て行く事だな」
 伴 「しかし・・・」
 武智「今度はシカシか。オメーな、冴えねえ頭や理屈で物事を考えたらダメだぞ。俺は誰にも迷惑は掛けてねえと言ったろう。オヤジが上手く上に上がれれば良いだけだ」
 伴 「・・・?」
 武智「伴。最初に俺が言った言葉を覚えているだろう。政治屋(セイジヤ)をやって行くにはジバン・カンバン・ カバンだ。秘書の仕事とは 光り輝く表の世界を、裏で支えて行くと云う事だ。泥まみれに成るのよ。あんな風に見えても、安藤さんも昔は仕事がデキル秘書だった。しかし、出来過ぎて金庫番を辞めさせられたンだ。・・・詰め腹を切らされたのよ」
 伴 「えッ!? 詰め腹を?」

武智は伴を見る。

 武智「・・・自分のオヤジを大臣までする事は容易なもんじゃね」
 伴 「実力でしょう」

伴の投げやりの良い方に武智が怒り、

 武智「何んだその言い方は」
 伴 「すいません・・・」
 武智「大臣の椅子は高(値段)けえンだ。組閣の前には実弾(金)の撃ち合いだぞ」 
 伴 「そうなンですか」

武智は伴の真似をして、

 武智「そうなンですよ。・・・伴もそろそろ、うちの陣営を知っといた方が良いな」
 伴 「陣営?」
 武智「オメーや相原みてーな秘書達は表に出ているデフェンスだ。この仕事はフォワードもセンターもバックも居なければ出来ねえ。安藤さんはオヤジのバックを守る男だ。影の私設秘書だよ。言わば、ダーティーな所を引き受けている影武者だ」
 伴 「へえー」
 武智「おい。背広と靴でも見て来い!」

伴は驚いて、

 伴 「ええッ! 今度は本当でしょうね」
 武智「ベルサーチでもアルマーニでも、秘書は食わねど良い物を着るンだよ。良い背広を汗だくにするンだ」
 伴 「いや~、本当に勉強に成ります」
 武智「バカ野郎! あッ、そうだ。明日、総理が日米交渉から帰って来る。上がるぞ」
 伴 「上がる?」
 武智「株だよ、株ッ!」

武智は応接のドアーを少し開いて、

 武智「高木くん、自工(自動車工業会)の堀さんに電話してくれ」
 高木「あッ、はい」

         S74

○大木戸の乗る公用車車内(二人)
突然、大木戸の内ポケットの携帯が鳴る。

 音 「ピピ、ピピ」 SE

携帯を取り出す大木戸。

 大木戸「はい(優しく)」
 武智(声)「武智です」
 大木戸「・・・分ってる! 結論は」
 武智(声)「今月中に二本(二千)入ります」

大木戸は眼を丸くして、

 大木戸「おおッ! 大きいね。一本釣り?」
 武智(声)「転がしてます」
 大木戸「ッてことは、洗ってあるわけね・・・」
 武智(声)「安藤さんが中に入ってますから」
 大木戸「おお、それは安心だ。ヨシッ! これで力が付いた。ご苦労さんね」

携帯を切る大木戸。
胸の内ポペットに仕舞いながら、自分に気合を入れる。

 大木戸「ヨ~シッ!」

相原が運転席から、

 相原「何か言いました?」
 大木戸「うるさいッ! バカ者。誰に口を聞いてるッ!」
 相原「あッ! すいません」

大木戸の携帯がまた鳴る。

 音 「ピピ、ピピ」 SE
 大木戸「はい。(優しく)」
 伴(声)「自工の掘さんが喜んでました。ほとんどの自動車株が一斉に上がりました。そうとう儲けたみたいです」
 大木戸「そう。・・・もう動いたか。で、十月のパーチーの件、話したでしょうね」
 伴(声)「はい、一応、三十枚と云う事です」
 大木戸「バカ者ッ! そんな弱気でどうする。儲けさせておいて三十枚とは何事だ! 今直ぐ二袋置いて来なさい」
 伴(声)「えッ! フタッ」

                 おわり

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第16話

2017-03-08 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第16話


      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S71

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
ソファーに武智と伴が対座している。
伴は武智の交渉術に感心して、

 伴 「・・・しかし武智さん、凄い交渉術ですね」
 武智「バカ野郎! これが番頭の仕事よ」

      *    *    *

火曜日の朝。
安藤との約束の日が来る。
大木戸事務所事務室の電話が鳴る。

 音 「ピロピロピロ」 SE

高木が受話器を取る。

 高木「はい、大木戸事務所です」
 
 安藤(声)「武智さん居ますか」
 高木「あッ、安藤さん! お世話に成ります。少しお待ち下さい」

高木が電話の保留ボタンを押し応接の内線に電話を回す。

         S72

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
武智と伴が応接室のドアーを閉めて話をしている。
応接室の内線が鳴る。

 音 「トゥルル・・・」 SE

伴はソファーを立ち、代議士の机上の受話器を取る。

 伴 「はい」
 高木(声)「安藤さんから一番です」
 伴 「はい」

伴は武智を見て、親指を立てる。
武智が嬉しそうに伴から受話器を取り上げる。

 武智「もしもし、おはよう御座います」
 安藤(声)「有り難う御座います。うまく行きましたね」
 武智「いやー、大変でしたよ~」
 安藤(声)「ハハハハ。今、近くに居ます。これからお邪魔しても・・・」
 武智「どうぞどうぞ。お待ちしております」
 安藤「じゃッ、五分後に・・・」

武智は伴を見ながら受話器を置く。

 伴 「・・・来ましたね」
 武智「うん。さあ、ここから本番だ。伴ッ! オメーのその良い頭を借りねえとな」
 伴 「え? ・・・高いッすよ」
 武智「何ッ!?」

暫らくして、事務室のインターホンの音が。

 音 「ピコ~ン」 SE

高木がインターホンの受話器を取る。
モニターに安藤が映る。

 高木「はい」
 安藤(声)「安藤です」
 高木「はい」

高木が開鍵ボタンを押す。
ドアーの開鍵の音

 音 「カチャ」 SE

安藤がそっとドアーを開けて入って来る。

 高木「あッ、安藤さん! お待ちしておりました」

安藤が、いつものケーキの箱を高木に。

 高木「はい、これ」

高木は嬉しそうに、

 高木「わ~、これ、石川屋さんのケーキッ! いつも有り難う御座います。武智さんが奥でお待ちかねですよ」
 安藤「そう」

安藤は、ニッと笑う。

 高木「あら? 歯ッ!」
 安藤「ハハハ、新築したンだ」

高木は驚いて、

 高木「シンチク!?」

安藤は応接室のドアー開けて覗く。                   

 安藤「どうも」

武智は慇懃に笑いながら、

 武智「おう! オウオウオウ、来た来た来た。どうぞどうぞどうぞ。ハハハハ」

伴がソファーを立ち、無理に笑いをつくろい、ソファーを指さす。

 伴 「お世話に成ります。どうぞ、こちらに」

安藤は伴を一瞥し、軽く片手を挙げソファーに座る。
伴は応接室のドアーをそっと閉め、ソファーに座る。
安藤は二人に見せびらかす様に出っ歯を作り笑う。

 武智「あれ~ッ! 入ってるじゃないですか」
 安藤「良い工事でしたよ」

伴が噴き出してしまう。

 伴 「プッ、ハハハハ」
安藤は伴を見ながら、おもむろに懐からダンヒルのタバコを取り出す。
伴がすかさず、デュポンのライターを背広のポケットから取り出し、火を点け、安藤のタバコに。

 安藤「おう、わるいねえ」

ライターの蓋の閉まる音が応接室に響く。

 音 「キーン・・・」 SE

安藤が武智と伴を一瞥して、

 安藤「・・・で、どうしましょう」
 武智「それでねえ、とりあえず日下工業から大公に六億の見積もりを出してもらいましょうか」

安藤がタバコをクリスタルの灰皿に置き、
テーブルのメモ用紙を一枚破き、書き取って行く。

 安藤「・・・うん」

高木が応接のドアーをノックする。
ドアーが開き、お茶とコーヒー、ケーキを持って高木が入って来る。

 高木「失礼します」

急に応接室の中が静まる。
クリスタルの灰皿から、タバコの煙が一筋。
高木がお茶とコーヒー、ケーキを静かにテーブルの上に並べて行く。
安藤を見て、

 高木「どうぞ、ごゆっくり」

安藤は、高木を見てニコッと笑い、

 安藤「ありがとう・・・」

高木が、静かにドアーを閉め、応接を出て行く。
安藤は灰皿からタバコを取り、

 安藤「・・・それで?」

 武智「仮に、大公から値引き依頼が一千とすると、五億九千、日下が五億で出来ると云う事で九千が浮きます。そこで、桜田の富士見からの借金がトータルで三千と云う事ですから、その三千を桜田に代わってうちの大木戸が富士見に返済。もちろん、桜田を通してですが。この三千の返済が桜田の条件なンですよ。そうすると残り六千、これを安藤さんが、安藤さん、岸田さん、大木戸の三人の割り振りを決めてもらう。・・・こんなんでどうでしょうか・・・」

伴は「三千」と云う言葉を聞いて、思わず武智の顔を見る。

 伴(M)「三千? あの時の電話では確か・・・、一千て言っていたはずなのに」

安藤は天井を見詰め、深く吸ったタバコを吐き出す。

 安藤「・・・桜田の借金は三千だったのですか・・・」

武智はコーヒーを一口、口に含む。

 武智「賭けゴルフで一千負け、完工保証のトラブルで二千、合計三千。全部、桜田が絡ンでるんですよ」
 安藤「桜田はそれまでして何で富士見をかばうんでしょうね」
 武智「それは、桜田組の稲垣の娘が、最近、富士見工業の息子に嫁に行ったらしいンですよ。地元の秘書も言ってました。俺もそれまでは知らなかったンですけれどね」
 安藤「ああ・・・、なるほど」

安藤はタバコをクリスタルの灰皿に押し消す。

 安藤「分かりました。フフフ・・・。 大公から値引きはさせませんよ」
 武智「その辺は安藤さんにお任せします」
 安藤「お互いに取り分が多いにこしたことはない。それに・・・」
 武智「それに?」
 安藤「七千を三者で分けた方が良いでしょう」
 武智「・・・安藤さん、ここから先はアンタの受け持ちだ。大木戸もこの件に関しては非常に強い関心を持っている。何しろ本格解散の方向だしね・・・」
 安藤「分かりました。キチッと洗ってお渡しします」
 武智「イヤイヤイヤ、そうしてくれると、大木戸も大助かりです」
 安藤「じゃッ、これで!」

安藤がソファーを立つ。

 安藤「分配の件は今週の金曜日まで待って下さい。落札後五日以内にまず三千を預手で、これは三枚分けてお持ちします。残りの四千は現金。・・・早い方が良いでしょう」
 武智「いや~、安藤さん! 助かります」

武智はソファーを立ち安藤と熱い握手をする。
安藤は歯を舌で触り、ニヒルな笑いを浮かべて応接室を出る。
武智と伴が安藤を見送る。
高木が応接室から出てきた三人を見て、

 高木「あら、もうお帰りですか。やっぱり安藤さんは歯が無いと様になりませんよ~」
 安藤「もう、煎餅は食わない事にしたよ」
 高木「クッキーの方が柔らかいですよ」
 安藤「俺がクッキーじゃ似合うかなあ」

安藤はその一言を残し大木戸事務所から出て行く。
武智と伴は安藤の背中に、

 二人「お世話に成りま~す」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第15話

2017-03-06 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第15話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    稲垣剛助(35歳) 中村獅童

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎

          S59

○議員会館大木戸事務所応接室(夕方・二人)
向かいの衆議院第二会館の五木田事務所(大木戸と同じ選挙区)のカーテンの間から、灯りが洩れている。
武智と伴が、応接室のテーブルを隔て、天井を見ながらモノ思いにふける。

 武智「考えて居てもしょうがねえ」

武智がソファーを立つ。
伴は、武智を見る。

 伴 「コーヒーですか?」
 武智「いや、便所に行って来る」
 伴 「ああ・・・」

武智が事務所を出て行く。
暫くして、武智が事務所に戻って来る。
武智は自分の机の引き出しから名刺ファイルを取り出す。

 武智「え~と、桜田、サクラダ・・・おッ、有った!」

伴はお茶とコーヒーを注ぎに事務室に来る。
武智を見て、

 伴 「電話ですか?」
 武智「・・・うー・・・ん」

武智が桜田組の名刺を手に応接室のソファーに座る。
鼻クソをホジリながら名刺を見ている。

 伴「どうぞ!」

伴がテーブルの上にコーヒーを置く。
武智は伴の心ずかいに驚く。

 武智「おおッ!? 何んだい、ワリ-な」
 伴 「いや~、背広と皮靴とクルマですからね」

武智は伴を見て、

 武智「うん? ・・・うん。・・・ちょっと待ってろ」

武智はコーヒーを一杯飲んで受話器を取る。

 武智「046・・・。・・・ ・・・もしもし、社長居る?」

武智は横柄な態度で。

         S60

○(株)桜田組事務所(夕方・一人)
中年の女事務員が受話器を取る。

 女事務員「どちら様ですか?」
 武智(声)「衆議院大木戸事務所の武智ッ!」

事務員は驚いて、

 事務員「あッ! ハ、はい。ちょっとお待ち下さい」

         S61

○(株)桜田組社長室(一人)
稲垣剛助(桜田組代表取締役・三五歳)がソファーでタバコを吸いながらゴルフ雑誌を見ている。
内線電話の呼び出し音。

 音 「ルルル」 SE

稲垣がテーブルの上の受話器を取る。

 稲垣「何ッ!」
 事務員(声)「あのー、大木戸事務所の武智さんから一番です」
 稲垣「タケチ? ・・・うん」

稲垣が一番をプッシュする。

 稲垣「アー、もしもし、稲垣です」

稲垣も態度が大きい。

 武智(声)「よー、ご無沙汰! 武智だ・・・」

稲垣は少し緊張ぎみに、

 稲垣「あッ、ど~も。その節はお世話に・・・」

稲垣はテーブルの上のタバコ(ハイライト)を一本取り出す。

 武智(声)「そうだよなあ。どうだい、その後は」

稲垣はタバコに火を点け煙を飲み込む。

 稲垣「お蔭様で、あの道路も二ヶ月前に完工しました」

         S62

○大木戸務所応接室(夕方・二人)
電話中の武智。
伴がソファーに座って真剣に聴いている。

 武智「そう。そりゃー良かった。それじゃ・・・、完工祝いでもやらなくっちゃねえ、イ・ナ・ガ・キ・・・」
 稲垣(声)「へへー、ですねえ。またあそこのコースを予約しておきましょうか。で、夜はパーっと宮の下のソープで・・・」
 武智「良いねえ・・・」

武智はコーヒーを一杯、口に運ぶ。

 武智「・・・それはそうと、立川のヘリポート其の一って聞いた事ある?」

稲垣の声が少し変わる。

 稲垣(声)「えッ! 知らないなあ・・・」
 武智「知らない・・・そう。 ・・・知らない筈が無い訳けどな~・・・。妙な噂が流れて来ンだ・・・」
 稲垣(声)「? ・・・あッ、時間だ! 武智さん、また今度電話します・・・」
 武智「おい、イナガキ・・・。逃げるなよ~。ゆっくり話を聞かせてくれよ~・・・」
 稲垣(声)「いや、これから打ち合わせが有るンですよ~」
 武智「ウルセーッ!(声を荒げて)」

         S63

○(株)桜田組社長室(一人)
稲垣はとぼけて、

 稲垣「立川?・・・何ンの事ですか・・・」


○大木戸事務所応接室(二人)
武智の横顔が不気味である。

 武智「おい、俺とオマエの仲じゃねえか。ボカシた話は無しにしょうぜ・・・」
 稲垣(声)「ああ、防衛省のヘリポートの件かな? な~んだ、もうそこまで話が広がっちゃいましたか。マイッタなー。ハハハハ」
 武智「何もマイル事はあるめー。・・・おい、仲良くやれよ~」

         S64

○(株)桜田組社長室(一人)

 稲垣「いやー・・・誰から回ったンでしょうねえ」
 武智(声)「そんな事はどうでも良い。中身はどう成ってンだ(優しく)」
 稲垣「武智さんが直接掛けて来る位だから、中身はお分かりでしょう?」


○大木戸事務所応接室(二人)

 武智「うん? ・・・で、富士見て云うのは何者だ」
 稲垣(声)「フジミ? あ~、ただのゴルフ仲間ですよ」
 武智「ゴルフ仲間? それにしちゃ、随分入れ込むじゃねえか」
 稲垣(声)「そんな~、入れ込むなンて・・・。(ニヤついた声)」

武智はコーヒーを飲みながらメモ帳を開く。

 武智「また賭けゴルフで借金でも作ったのか?」
 稲垣(声)「いやいやいや、武智さんに合ったら総てお見通しだ」
 武智「ほお。・・・で、いくらだ・・・」
 稲垣(声)「ええ? へへへ、一本位ですか・・・」
 武智「一本? 百か?」
 稲垣(声)「いや・・・。千」

武智は驚いて、

 武智「センッ?!」

         S65

○桜田組社長室(一人)
稲垣は咥えたタバコをくゆらせている。

 稲垣「へへへ・・・」
 武智(声)「で、オマエが負けたのか?」
 稲垣「とんでもない! フジタさんですよ」
 武智(声)「? ・・・それだけか?」
 稲垣「ウンニャ・・・」
 武智(声)「ウンニャ? 何んだそれは。喋っちまえよ! ネタは上がってるン だから」

稲垣が頭を掻きながら、

 稲垣「まいったなー。工事の保証ッ!」
 武智(声)「いくら?」
 稲垣「うちは、二千」
 武智(声)「全部で三千か・・・」

稲垣は慇懃に

 稲垣「へへへ、そうなりまっか(大阪弁)」

         S66

○大木戸事務所応接室
武智は天井の一点を見詰める。

 武智「て、云う事は・・・その千が戻れば元の鞘に収める事は出来るって事かな?・・・」
 稲垣(声)「そりゃあ、うちとしても来年は会の幹事ですからねえ。こんな事はしたくないですよ」 
 武智「バカ野郎、幹事どころか永久に会からツマハジキだ」
 稲垣(声)「えッ! いや、まあ・・・。誰ですか? 流したヤツは」

武智は稲垣の問い掛けを無視。

 武智「おい。その借金だけど・・・」

武智は冷えたコーヒーを一口に含む。

 武智「大木戸がモツって言ったら・・・」
 稲垣(声)「え~? そんなー、先生にまで迷惑は掛けられませんよ~」
 武智「うるせえ! オメーがゴネてる事がオヤジに迷惑を掛けてるんだよ」

         S67

○(株)桜田組社長室(一人)

 稲垣「ええ!? なーんだ、この工事、裏が付いてたンですか」
 武智(声)「おう、イナガキ」
 稲垣「はい・・・」
 武智(声)「引けよ。千戻れば、おまえン所は丸く収まるんだろう」
 稲垣「まあ、・・・それは・・・」
 武智(声)「何んだい、その煮えきらねえ言い草はよお。まだ何か有るのか?」

稲垣はフテクサレて、

 稲垣「・・・分かりました」

         S68

○大木戸事務所応接室(二人)

 武智「最初からそう言えば良いンだよ。・・・バカ野郎・・・」

武智は伴の顔を見て親指を上げて軽くガッツポーズ。

 武智「明日の朝十時迄にチャンピオンの大公に電話しておけ」
 稲垣(声)「ああ?! 大公さんから回ったンですか。アイツ・・・俺に何にも言って無かったなあ。キタネー野郎」
 武智「ウルセーッ! 誰だって良い。いいかイナガキ、もしこの件で変なアヤが付いたらオマエの会社、県の建設協会、経済同友会、木曜会から全部外すからな」
 稲垣(声)「そんなは事しませんよ。こっちは千万戻って来れば良いンですから」
 武智「そうか。じゃッ、俺との約束だ。分かったな! 明日の朝十時だぞ」

         S69

○(株)桜田組社長室(一人)

稲垣はタバコをクリスタルの灰皿に捻り消し、

 稲垣「分かりました」
 武智(声)「何だい。元気がねえな。・・・まあ、仲良くやれよ」
 稲垣「武智さん、こう云うのは事前に知らせて下さいよ~」
 武智(声)「あいよーッ!」

         S70

○大木戸事務所応接室(二人)
武智が受話器を置く。
伴は感心した表情で武智を見る。

 武智「よしッ、伴。良いか。此処からが俺達の本当の仕事だ。よ~く聞いとけよ」
 伴 「はい」

高木が地下の郵便局から戻って来る。

 高木「すいません、遅くなって。結城先生の所のサッちゃんとそこで会っちゃって。電話有りました?」

武智が応接室から

 武智(声)「無いよ~」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第14話

2017-03-05 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第14話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    大川正義(60歳) 岸部一徳

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S56

○議員会館大木戸事務事務室(早朝・二人)
電話の音。

 音 「ピロピロピロ・・・」

伴が受話器を取る。

 伴 「お世話になります。大木戸事務所です。・・・」

電話は通じているが、相手の声がしない。

 伴 「もしもし、大木戸事務所です。・・・もしもし・・・」

突然、受話器から声が聞こえて来る。

 大木戸(声)「しっかり、しなさいッ! もう一度、請求しなさいッ!」
 大川(声)「いや先生、あんまりせっつくと強要に成りますよ~」
 大木戸(声)「大丈夫だッ! 弱気じゃ事は運ばないッ! ・・・」
 大木戸(声)「もしもし」
 伴 「あッ、お疲れさまです」
 大木戸(声)「オマエはバカか? さっき起きたんだ。疲れてなんかいないッ! あれを出せッ!」

今日の大木戸は、荒れている。

 伴 「あッ、失礼しました。あの、アレって・・・高木さん?」
 大木戸(声)「バカッ! 武智くんだッ!」
 伴 「あッ、代理主席で、十時の九段会館へ直行してます」
 大木戸(声)「代理? ・・・何ンの?」
 伴 「農林事業振興総会です」
 大木戸(声)「総会? ・・・安藤の件は、君も立ち会ったンだろうね?」
 伴 「あッ、はい」

         S57

○地元大木戸事務所代議員室(早朝・一人)
大木戸が伴と電話をしている。

 大木戸「報告は?」
 伴(声)「あッ、今しょうと・・・」
 大木戸「言い訳はよしなさい。結論だけだ」
 伴(声)「すいません」
 大木戸「で、結論ッ!(きつく)」
 伴(声)「はい。一週間後に結論が出ます」
 大木戸「何ッ? ・・・流れは?」
 伴(声)「悪くはありません。ただ・・・」
 大木戸「ただ?」
 伴(声)「堀田先生の事務所が関わっています」
 大木戸「ホッタッ!(驚く) ・・・公明党の堀田か?」
 伴(声)「あッ、はい」
 大木戸「建設か・・・。分かった・・・」
 伴(声)「何か?」
 大木戸「君に言っても分からない。アレが戻ったら電話するように言いなさい。報・連・相と言っときなさい」
 伴(声)「ハ?」

         S58

○議員会館大木戸事務所事務室(早朝・二人)
大木戸が電話を切る。

 伴 「もしもし・・・? ・・・切れた・・・」

高木が事務所に入って来る。

 高木「おはよう御座います」

伴は振り向いて、

 伴 「あッ、おはようございます」
 高木「あら、今日は早いですねえ」
 伴 「昨夜(ユウベ)武智さんから、もう少し早く出勤しろって言われたンで」
 高木「ええッ!? 武智さんが早く出過ぎですよ」

高木はロッカーにコートを仕舞ながら、

 高木「武智さん、事務所にいつも七時半には来てるンですよ」
 伴 「ええッ! 三鷹からですか?(驚く)」
 高木「ええ。いつも、仕事の事で頭がイッパイなんですって」

伴は不安そうに、

 伴 「・・・俺・・・付いて行けるかなあ・・・」

高木は伴の座る机にお茶を持って来て、

 高木「どうぞ」
 伴 「あッ、ありがとうございます」

高木は伴を見て、

 高木「大丈夫ですよ。武智さんは特別です。あの方、よく群馬の小中学校で皆勤賞だったと自慢してますから」
 伴 「へえ~。真面目なンですねえ」
 高木「高校も大学も皆勤賞だと言ってましたよ」

伴は鼻からお茶を出し、咳き込む。

 伴 「ゴホッゴホッゴホッ・・・」

      *    *    *

電話が鳴る。
高木が受話器を取る。

 高木「おはようございます。大木戸事務所です」
 武智(声)「おうおうおう、ご苦労さん。伴、居るか?」
 高木「あッ、武智さん。ちょっとお待ち下さい。伴さん、武智さんからです」

伴が受話器を取る。

 伴 「はい、電話代わりました。おはようございます」
 武智(声)「うん。電話あったか?」
 伴 「はい、本人から報・連・相だと」
 武智(声)「ハハハ(捨て鉢の笑い)。いつも食ってるよ。それだけか?」
 伴 「早川さんが引っ掛かってる様でした」
 武智(声)「早川? ああ、公明党だからな・・・。そんなの関係ねえよ。おい、防衛施設庁の審議官の所に寄って来る。オマエは防衛庁の中沢さんの所へ行って挨拶して来い」
 伴 「ナカザワ?」
 武智(声)「施設課長だよ」
 伴 「ああ、・・・何んて言うンですか?」
 武智(声)「バカ、挨拶だ。後は俺がヤル。それから・・・、四時から例の件、二人で打ち合わせしよう」
 伴 「あッ、はい」 

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第13話

2017-03-04 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第13話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S55

○議員会館大木戸事務所応接室(二人)
安藤が出て行った後の応接室。
伴が応接室のドアーをそっと閉めて、ソファーに座り直す。
武智は、テーブルの上のメモ用紙に数字を書きながら、伴に、

 武智「・・・さっきの話、分かったか?」
 伴 「えッ? あッ、・・・まあ。要するに、桜田組さんが今回の話し合い(談合)に参加してくれれば総てが丸く収まるんですよね。それにはあの急に浮上して来た富士見工業さんが何で桜田組さんとJVを組んだか・・・。それが分かれば簡単じゃないですか」

武智は伴を見て、わざとらしく、

 武智「さすが警察官の息子だ。読むねえ~・・・」
 伴 「・・・で、武智さんは何んで桜田さんと富士見さんがJVを組んだと思いますか?」

武智がもっともらしく、

 武智「そりゃあオメ~・・・、桜田と富士見との間に利害関係があるからでしょうよ」
 伴 「利害関係?」
 武智「富士見工業なンて聞いた事のねえ名前だ。そんな新参者とJVを組むンじゃ桜田も相当の訳があるンだろう」 
 伴 「へえ~、そうなンですか(関心する)」
 武智「俺は、こう読んだ。富士見なんて聞いた事もねえ土建屋が、何の後ろ盾も無く表舞台に出られるわけがねえ。・・・と云う事は・・・」

武智は応接室の天井を睨み、

 武智「うーん・・・。県下でも指折りな桜田が、何かの工事で富士見と関(カカワ)わっちゃった・・・」

伴は笑いながら、

 伴 「何んかの工事で、桜田さんが富士見さんの保証人か何んかに成ってたンじゃないですか」

武智は自分の膝を叩き、

 武智「そうだッ! 保証人だ。・・・おそらく何処ッかの工事で、富士見の手抜きがバレタ・・・」
 伴 「検査でバレてやり直しッ! 納期に間に合わない。あッ、こんなの事も考えられます。もしかしたら・・・出先の建設局の局長に多額なビール券を渡した事が、富士見にバレて・・・タカラレタとか」
 武智「ああ、なるほど。・・・あの脇の甘めえバカ息子ならそれも十分、考えられるな」

武智が伴を見詰め、

 武智「オメー、結構読むなあ」
 伴 「そんな事・・・、そんなもンじゃないですか。世の中とは」

武智は指の爪を噛みながら伴をジッと見て、

 武智「あんまり先を読み過ぎると長生き出来ねえぞ」
 伴 「手が後ろに回る方が良いですよね」

武智はきつい眼で伴を見る。
武智は改まって、

 武智「・・・いずれにしてもその辺を探って、・・・結果、もし工事のチョンボなら富士見が桜田に義理を返せば良いて訳だ。桜田としては、下請けか何んかの富士見からの金銭的な債務を、工事で返してもらおうと云う算段だろう。でなければ桜田だって、ヤバイ橋を渡ってまで叩き合いなんかしたくもねえ筈だ。今回、このままフリーにでも成ったら桜田はこのグループから外されるからな。桜田だって、富士見工業なンてチンケな土建屋と心中なんかしたかねえだろう。大体、桜田のバカ息子は元暴走族だ。気が短くて地元じゃ評判だ。オヤジが息子に代を継がせるのが早過ぎたのよ」

武智は両手を思い切り伸ばし、背伸びをしながら、

 武智「あ~あ、桜田組に俺みてえな懐の深~い参謀が居ればなあ。おうッ! そんな事はどうでも良い」

武智はテーブルの上のメモ帳に、ぼそぼそと呟(ツブヤキ)きながら、また何かを書き始める。

 武智「要するに、日下工業が五億で出来るって言っていたな。・・・今回のチャンピオンが七億九千百三十で落としてくれたら、そこからチャンピオンの利益がマックス、二十五パーセントで・・・約一億九千八百。残った約五億九千から五億を引くと・・・」
 伴 「九千万円です!」
 武智「うん。下請けの日下から大公に六億の見積もりを出させる。どうせ、大公から幾らかの出精値引きが来る筈だ。それが一千万としたら五億九千。その九千の中から富士見の義理を桜田に返す」

武智は、また天井を睨む。

 武智「ただ、富士見のチョンボした義理金、いや、桜田が代わって保証した損出が幾らかだ。 富士見みてえな低ランクの土建屋が億単位の仕事は任せられねえ。とすると ・・・、仮にその損が三千としたら・・・残りを・・・三人で話し合い・・・」

 伴 「三人?」

武智は伴を見て、

 武智「安藤と、堀田ンとこの早川とオマエ。・・・なあ、良く出来た話じゃねえか」

 伴は自分の名前が出て驚く。

 伴 「エッ! 僕ですか?」
 武智「バカ野郎、この位のシナリオ書けなくっちゃ秘書じゃねえ。かりに、この話がダメに成っても桜田組の下請けを日下にやらせれば良い事よ。所詮、富士見工業なんてグリコのオマケみてえなもンだ」
 伴 「どっちに転んでもコンサルタント料は入るって事」
 武智「そう! 完璧なシナリオだ!」
 伴 「でも、金でなくて、チクッた方なら?」

武智は伴を見て、

 武智「うん?」
 伴 「だって、その理由を知ってるのは僕と武智さんしか居ないという事ですよね」

武智はニヒルな笑いを浮かべ、伴を見詰める。

 武智「バン、オマエもワルじゃのう。ベルサーチの背広でも買ってやるか」
 伴 「ついでに靴とクルマを」
 武智「何ッ!」

伴と武智は顔を見合わせ、

 二人「ウフ・・・ハハハハ」

武智と伴が大声で笑いながら、親指を立ててガッツポーズをする。

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。
 

      -TSUCHIYA Production-

 

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第12話

2017-03-03 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第12話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S54

○議員会大木戸事務所応接室(夕方・三人)
会館が夕闇に包まれる。
安藤と結城、伴が応接室で密談をしている。
テーブルの上には安藤の好きなダンヒルのタバコ、コーヒー、お茶、持参したケーキが置いてある。
事務室から高木の声。

 高木(声)「すいませ~ん。お先に失礼しまーす」
 武智「お~うッ! ご苦労さんねー。後で神田の旨い焼鳥屋に連れて行くから」
 高木(声)「え~ッ! 信じて良いのかなあ」
 武智「俺はウソは付かないよー」
 高木(声)「ハハハハ、じゃッ!」

高木が事務所を出て行く。

      *    *    *

大木戸事務所に三人が残る。
武智はコーヒーを替えにソファーを立つ。

 武智「ちょっと、熱いのに替えるべえ」

武智は安藤のコーヒーを見て、

 武智「・・・替えましょうか」
 安藤「おお、そうだね」

武智がカップを二つ持って事務室に消える。
応接室には安藤と伴が残る。
伴は安藤を見て、

 伴 「仕切り屋ってどんなお仕事ですか?」

安藤は、伴の突然の「その」問いかけに、えも言われぬ顔で歯を左手隠し、

 安藤「俺は仕切り屋じゃないよ~」
 伴 「高木さんから、仕切り屋と聞きましたけど」
 安藤「仕切ってなんていませんッ! ・・・流れを調整するお仕事ッ!」

伴は首を傾げて、

 伴 「・・・」

武智がコーヒーを二つ、両手で持って来る。

 武智「伴ッ! オマエは飲むんだったら、自分で持って来い」
 伴 「はい」

武智がコーヒーをテーブルに置いて、ソファーに座る。

 武智「・・・で・・・」

安藤がダンヒルのタバコを一本抜き、抜けた歯の間に入れる。
伴がすかさず、例のライターで火に点ける。

 伴 「おう、わるいねえ」

安藤は伴を睨み、タバコを深く吸い、歯の間から煙を出す。
伴は俯いて、ジッと笑いを堪える。
安藤がおもむろに話始める。

 安藤「実はねえ・・・、あるヤツから依頼されてね・・・」
 武智「あるヤツ?」

安藤は伴を一瞥(ベツ)する。
武智が安藤を見て、

 武智「ああ、コイツなら大丈夫。口は固てえから」

武智は伴を睨む。
 伴 「あッ、はい・・・」

安藤はまたタバコを深く吸い、天井に向かって歯の間からゆっくり煙を吐き出す。
そして、急に体を前に倒す。
それに、続いて武智と伴も体を前に。

 安藤「予定価格九億六千五百。・・・、五社呼ばれて今回のチャンピオンは大公・徳高のJVが七億九千三百で落とす予定・・・」
 武智「ええッ!?(驚く) ナンダイ、もうそこまで話が進んでるンですか」

安藤は武智と伴をチラッと見て、溜息まじりに、

 安藤「・・・ただ、一社がどうしてもねえ・・・。このままだとモグラ叩き・・・」
 武智「? で、その一社って云うのは?」
 安藤「神奈川の桜田組と静岡の富士見工業のJVなンですわ・・・」
 武智「サクラダ? ああ、石田のバカ息子の所か」

伴はウラグチの件を思い出し、

 伴 「ええッ?! またバカ息子ですか?」

武智は、いぶった化な顔で伴を見る。

 武智「おい! オマエは黙ってろ」
 伴 「あッ! はい・・・」

安藤は話を続ける。

 安藤「そのバカ息子の所ですよ」
 武智「桜田に変な噂でも流れてるんですか」
 安藤「いや、実は富士見の方なンですよ」
 武智「フジミ・・・? 神奈川のフジミかあ・・・聞かねえ名前だな」
 安藤「いや、俺はそんな事どうでも良いンですがね」
 武智「え?」

伴が安藤と武智の会話を目を丸くして聞いている。

 安藤「私が頼まれているのはその下の下請け業者なんですよ。どうせ、フリーに成っても「二五」を切ったら不調で流れる。桜田としても、前々から上手くやっている裏仲間だ。昨日今日(キノウキョウ)の新参者じゃねえしねえし・・・一応、フリーに成っても仁義だけは通すでしょう」
 武智「で、頼まれている下請け業者っていうのは?」
 安藤「東京の日下(クサカ)工業という所です」
 武智「クサカ? どっかで聞いた事があるなあ・・・」
 安藤「堀田さんの所の秘書が顧問をしている所ですよ」

武智は驚いて、

 武智「ええッ、早川のッ! ・・・あの早川が顧問だったのかあ・・・。なるほどねえ・・・」
 安藤「そう。・・・で、かりに、叩き合いに成っても七億三千止まり。落札業者の利益をマックスで三割とすると、こっちの見積もりじゃ五億」
 武智「え~えッ! 五億ッ? 五億で出来るンですか?」

安藤は軽く、

 安藤「大丈夫でしょう」
 武智「面白れえ。て云う事は石田(桜田組)の息子を何とかコンペに引きずり込めば良いって事か」
 安藤「それが出来れば、それにこしたことはないですけれど・・・。富士見の焦げ付きは幾らあるのかなあ・・・」

武智は驚いて安藤を見る。

 武智「焦げ付き?」

安藤は意味深(イミシン)な表情で、前歯の抜けた口で不気味な笑いをつくる。

 安藤「・・・」

武智は安藤のシナリオにハタと気付く。

 武智「そうかッ! よしッ、乗ったッ! で、入札日は?」
 安藤「五月の連休が明けて直ぐ」
 武智「五月八日か・・・」

武智は代議士の机の裏壁のカレンダーを見る。

 武智「三ヶ月後か・・・。伴ッ! 面白く成って来たぞ。安藤さんッ! 美味しい話を有り難う御座います。来週の火曜日迄、待って下さい」

 安藤「・・・一週間か・・・」

安藤はタバコをクリスタルの灰皿に強く押し消し、前歯の抜けた口で不敵な笑いを浮かべながら、武智と伴を見る。

 安藤「分りました。上手く行けば、・・・大きいですからねえ・・・」
 
安藤が席を立つ。
伴は我に返り、席を立つ。

 伴「アッ、ご苦労様です!」 

安藤は何も言わずに自分で応接のドアーを開けて出て行く。
武智が笑顔でもみ手すり手で安藤の後を追う。

 武智「いや~、いやいや、安藤さんには負けるなあ。有難うございま~す」

安藤が事務所のドアーを開けて出て行く。
ドアーが静かに閉まる。

 音「カチャッ」

伴は事務所の空気を感じて、

 伴 「・・・格好良いですねえ・・・」

武智は伴を見て、

 武智「?? 何処が?」

事務室の電話が鳴る。

 音 「ピロピロ・・・」

伴が受話器を取る。

 伴 「お世話になります。大木戸事務所で御座います。・・・もしもし、・・・もしもッ!」
 大木戸(声)「うるさいッ!」
 伴 「あッ! お疲れさまです」
 大木戸(声)「何をしてるッ!」
 伴 「あッ、はい、安藤さんとの打ち合わせが今、終りました」
 大木戸(声)「・・・武智くんに代わりなさい」
 伴 「はいッ!」

伴は武智を見て、

 伴 「本人です」

武智は得も言われぬ顔で、伴の受話器を取る。

 武智「あッ、ハイッ! 代わりました」
 大木戸(声)「・・・いいね。あまり深く掘らない事。今は周りが厳しいからね」
 武智「あッ! ハイッ!」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第11話

2017-03-02 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第11話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S49

○議員会館大木戸事務所応接室(朝・二人)
大木戸が本会議に出て行った後。
武智と伴がソファーに座り茫然と見詰め合う。
武智が溜息をついて、

 武智「毎日毎日、叱咤激励だ。厳しいのう・・・」
 伴 「武智さんは金庫番だからしょうがないですよ」
 武智「何ッ」

武智が伴を睨む。

 武智「オマエがやれ」
 伴 「無理ッすよ~。僕は泥棒は出来るかも知れませんけど、詐欺師はムリ」
 武智「オイ、バカにしてるンだろう」
 伴 「とんでもない。尊敬してます」

武智はやけくそな笑いを浮かべ、

 武智「オメーよ・・・。まあ、良い。二時の大谷村の十人の陳情団、頼むぞ」
 伴 「あッ、はい」

伴は、懐から手帳を取り出し読み上げる。

 伴 「・・・まず、県の出先、総務省、国交省、農水省、えーと、それ以外、何処か廻りますか?」
 武智「うん? おう、それで良い。特に国交省は官房の総括、各審議官、水資源の部長と地域対策の課長、河川局は局長、次長、各課長、この辺はくれぐれも宜しく頼むって言っとけや。特に、河川局の桑原次長は地元だからな」
 伴 「ハイ。・・・あの~、何の陳情に来るんですか?」

高木がコーヒーとお茶をお盆に載せて、笑いをこらえるて応接室に入ってくる。
高木はソファーの隅に小さく座る。
武智は呆れた顔で、伴を見て、

 武智「伴よー、はるばる大谷村から、村長を頭に十人もの陳情団が雁首そろえて来るんだ。まさか、裏口でもあるめえ」
 伴 「まあ、そうですけれど・・・」
 武智「村が沈んじゃうンだよ」
 伴 「地盤沈下ですか?」
 武智「バカ! ダムの計画があるのよ。湖底の村になっちゃうのよ。そんな事、事前に棚の陳情ファイルを読ンで頭に入れとけ。また、オヤジにドヤされるぞ!」
 伴 「なるほど。石川達三の世界ですね」
 武智「何ンだそれはッ!」
 伴 「故郷(フルサト)が無くなっちゃう事でしょ」
 武智「うん?・・・お前は政治家には向いてねえな」
 伴 「そうですか?」
 武智「いいか伴。こう云うのは、推進派と反対派が居るンだ。どっちの陳情団の話も丁寧に聞いてやる。そして、丁重な扱いをしてやる。偏ったら票は減る。どうせ、もう直ぐ解散だ。この辺の芝居は大きな山場だ。金も集めろ、票も集めろ! とにかく、行け行けゴーゴー。ヤバイ橋も渡らなくっちゃ。さっき、オヤジが言ったろう? 親身になって丁寧に聞いてやる。無理はくれぐれもしない事」
 伴 「ハイ。勉強に成ります」 
 武智「・・・うん」

武智はソファーの隅に座る高木を見て、

 武智「それから安藤さんの件、十六時に呼ンでくれる」
 高木「あッ、はい」

事務所の電話が鳴る。
高木が急いで応接室を出て行く。
武智は伴を改まって見て、

 武智「伴ッ!」
 伴 「はい!」
 武智「オマエよー。この世界はいつも二つ先の事を考えるンだよ。そうすれば手は後ろに回らねえ。オヤジに言われたら先の先を考えるンだ」

         S50

○衆議院第一議員会館正門受付(夕方・一人)
墨紺のスーツに身を固めた品の良い? 男が。
男は受付で面会依頼紙を取り、

       「安藤 登」

と、大きな文字で書く。
用件欄の「陳情」に丸を付け、提出する
受付の女子職員が受話器を取りボタンを押す。

 女子職員「・・・受付です。安藤様が面会です」
 高木(声)「はい。お願いします」

安藤は入館紙を衛視に提出、衛視がちぎって安藤に渡す。
安藤がロビーに入り、エレベーターを待つ。
暫くして、エレベーターのドアーが開く。
十階のボタンを押す安藤。
ドアーが閉まり安藤を乗せたエレベーターが上がって行く。

         S51

○議員会館廊下(二人)
安藤がセカンドバックを持ち、廊下を俯きかげんに歩いて行く。
すれ違う年配の男性秘書。
男性秘書は振り返って、

 男性秘書「安藤さん!?」

安藤は立ち止り左手で口を隠し、振り返る。

 安藤「ああ、矢吹さん。久しぶり」
 矢吹「そうですねえ。今日は?」
 安藤「うん。・・・ちょっとね」
 矢吹「後で寄って下さいよ」
 安藤「ああ、分かりました」

安藤が大木戸事務所の前に立つ。
インターホンのボタンを押す。

         S52

○大木戸事務所事務室(一人)
高木がインターホンに答える。

 高木(声)「はい」
 安藤「アンドウです・・・」 
 高木(声)「どうーぞー」

施錠を解放する音。

 音「カチャッ」 SE

安藤が「菓子折り」を持って入って来る。

 高木「あッ、ご苦労さまです。皆さんお待ちです」

安藤は菓子折を高木に渡す。

 高木「わ~、フランソワーズのケーキッ! 美味しそう・・・」

安藤は、左手で口を隠し、

 安藤「皆さんて、先生も居るの?」
 高木「いいえ、武智さんと伴さんです」
 安藤「バン?」
 高木「新人の秘書さんです」
 安藤「ああ・・・」
 高木「安藤さん、口、どうしたンですか?」
 安藤「・・・」

安藤は高木を無視して、応接室に入って行く。

         S53

○応接室(三人)
武智と伴が、安藤を見て椅子を立つ。
武智は右手を差し出し、握手を求める。

 武智「いや~、イヤイヤイヤ、イヤイヤ、まあ~ッ、どうぞ、どうぞどうぞ。何ンだ何ンだ、久しぶりじゃないですか~(慇懃に)」

安藤も左手で口を隠して右手を差し出す。
奇妙な笑い声で、

 安藤「ホホホホ。うんうんうん」
 武智「どうしました、口?」
 安藤「刺し歯が取れちゃって・・・」
 武智「ええッ!(驚く)」
 安藤「いや、此処に来る前に大公さんに寄って、茶うけの煎餅を食べたンですよ。そしたらポロっと・・・。まいっちゃいましたよ~」
 武智「あら~~~。大公建設で・・・」

安藤は伴を見る。

 武智「ああ、紹介します。俺の舎弟で伴と云うカバン持ちです」

伴は背広のポケットから皮の名刺入れを出し、一枚。

 伴 「あッ、はじめましてー、伴 憲吾と申します。お世話になりますー」

安藤も、セカンドバックからビトンの名刺入れを取り出し、一枚。

 安藤「安藤 登です」

伴をまじまじと見て、武智に、

 安藤「良いの入ったじゃないの」
 武智「そうですか?」

武智は伴を見て、

 武智「ほ~ら、言われちゃったじゃない。ハハハハ。まあ、どうぞどうぞ、座って座って」

高木がお盆にコーヒーとお茶を載せて応接室に入って来る。
高木はテーブルにコーヒーとお茶を並べ、

 高木「安藤さん、久しぶりですねえ。元気そうで」
 安藤「そ~お?」

安藤はソファーで伸びをする。

 安藤「あてててー。首が痛くて・・・」
 高木「クビッ!」
 安藤「回らないンだ」
 高木「そりゃあ、大変。寝違えた?」
 安藤「う~ん?・・・金が有ればねえ・・・」
 高木「は~?」

伴が安藤を見詰めている。
安藤は応接の陳情棚を見て、武智に、

 安藤「・・・良い話し有る?」
 武智「う~ん。ゼンゼン」
 安藤「そ~お?」

安藤は左手で口を隠し、

 安藤「・・・あれ、ちょっとやってみようかと思って・・・」
 武智「あれ?」
 安藤「例の防衛省のヘリ基地」
 結城「・・・ああ、あの可決した横田の・・・」 

武智は鋭い眼で安藤を睨み、コーヒーを一杯飲む。

 結城「おい、伴ッ! ドアーを閉めろ」
 伴 「あッ、はい!」
 武智「・・・あれは緊急で補正を組んで、三ヶ月以内に着工します。アメリカがうるさくて」
 安藤「岸田事務所の吉村さんからも聞きました・・・」

武智は目を細め、眩しそうに安藤を睨む。

 武智「・・・ボーリング依頼ですか・・・」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第10話

2017-03-01 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第10話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    山川トメ(80歳) 市原悦子

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸ヨネ(77歳) 角替和枝

    大川正義(60歳) 岸部一徳

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S48

○議員会館大木戸事務所応接室(朝・三人)
週初めの大木戸を交えての懇談会(営業会議)である。
事務所では高木が電話をしている。

 声 「・・・ハイ。今日は全員、地元に戻っております。・・・ハイ。・・・・ハイ。その様にお伝えします」

大木戸が懐から議員手帳を取り出しテーブルに置く。

 大木戸「サア! 始めよう。で、どうかな?」
 武智「ハイ! ええ、昨日、水神村から戻りまして・・・」
 大木戸「ウーンッ!(力強く) どうだったッ!」
 武智「大変な田舎で・・・」
 大木戸「そうッ!(力強く)」

本日の大木戸は非常に精神が安定して、強気である。

 武智「人口が百二十三、平均年齢六十七歳」

大木戸は鬼の様な歯を見せて、武智を見てニッと笑う。

 大木戸「高齢化だねえ・・・」
 武智「はい。・・・で、ほとんどの住民が山川姓です」

大木戸の「ニッ」の笑い直らない。

 大木戸「そう。近くに郵便局は在るの?」
 武智「在ります。特定が」
 大木戸「ほお・・・在る・・・。アレの看板は立って無いね?」
 武智「アレッ?」
 大木戸「ゴキタ(小声で)」
 武智「アッ! 有りません」
 大木戸「ヨシッ!(力強く) 大川くんに言って直ぐに看板を立てさせなさいッ! 御意見箱も忘れずにクッ付ける事ッ!」
 武智「ハイッ!」
 大木戸「で、湯呑は配ったンだろうね」

武智「アッ、はい。ただ、ほとんどの方がトメさんの親戚と云う事で・・・」

大木戸の目が輝く。

 大木戸「三十では足りないッ!(力強く)」
 武智「はい・・・」

大木戸は天井を見上げ何かを考える。
武智が口を挿む。

 武智「トメさんに後援会の取りマトメ役に成ってもらう・・・」
 大木戸「そうッ!(力強く) 君も成長したね~。そこなンだよ。ねー、伴くん」
伴は自分に振られて、緊張しながら、

 伴 「ハイッ!」

大木戸は優しく鬼の様な笑いを浮かべ、猫の様な声で、

 大木戸「君は、何をしてたの?」
 伴 「はい! 浦口さんとウラグチの件で・・・」
 大木戸「そうッ。で、カステラは?」
 伴 「はい。お持ちしました」
 大木戸「う~ん。喜ンだでしょう」
 伴 「はい。一人で良いのかと」
 大木戸「何ッ! そンな事が出来るのか」
 伴 「全体枠が有るみたいです」
 大木戸「ほう。武智くんも同行したの?」

大木戸は優しい目で武智を見る。

 武智「私はちょっと・・・」
 大木戸「チョット?」

大木戸の顔色が変わる。

 武智「イヤッ! 私は水神に・・・」
 大木戸「私は一緒に行ってやりなさいと言ったよね」
 武智「あ、はい。ですから、私は・・・」
 大木戸「いい訳は止めなさいッ! 伴くんはまだ素人だ。つまらない事を喋ってしまったら私が困るンだからね」
 武智「あッ、ですから私は電話で・・・」
 大木戸「うるさいッ!」

大木戸は二人を見て、

 大木戸「・・・いいですか、人と人は触れ合う事で愛が深まるンです。分かりますか?」
 二人「あッ! ハイッ!」
 大木戸「地元事務所の陳情者でも進学に迷っている若者やご家族が居る筈でしょう」
 二人「ハイッ!」
 
大木戸は大声で高木を呼ぶ。

 大木戸「高木く~んッ!」
 高木「ハイッ!」

高木が応接室のドアーをノックし、部屋に入って来る。

 高木「お呼びでしょうか?」
 大木戸「ヨネさんを出してくれる」
 高木「ハイ」

高木は事務所から、

 高木「先生~ッ、三番、ヨネさんです」
 大木戸「おお・・・」

大木戸はソファーを立って机上の受話器を取る。

 大木戸「ご苦労さンね~。大川くんは? ・・・そう。出てるの・・・何処へ? ・・・水神村ッ!? 何ンとまあ~、先の読める人だねえ~」

大木戸は受話器を耳に当て二人を睨む。
武智と伴は俯いて聞いている。

 ヨネ(声)「どうした? 陳情かい?」
 大木戸「うん。学校だ・・・」
 ヨネ(声)「学校? 大学かい?」
 大木戸「うん」
 ヨネ(声)「五人来てるよ。生還病院の次男坊も来てるなあ」
 大木戸「生還? 院長は民進党じゃないの?」
 ヨネ(声)「奥さんは大木戸派だよ」
 大木戸「ええッ!(驚く) 何処に入りたいの」
 ヨネ(声)「応恵大の医学って書いてあったよ」
 大木戸「応恵ッ!(驚く)」

大木戸は二人を見る。
武智が伴の膝をこずく。
伴は気付き、大木戸に手でOKサインを送る。

 大木戸「そう。その陳情書、此処にファックスしてくれる。伴くん宛てにね」
 ヨネ(声)「あいよ~・・・。それから川場村の集会場の看板、また、足が折れてるンだよ~」
 大木戸「何~、またかあ・・・。私の反対派が多い所だからねえ。鉄パイプにしなさい。頑丈な」
 ヨネ(声)「あいよ~」

大木戸が受話器を置き、ソファーに座り直し、

 大木戸「いいですか。簡単な事なンです」

武智と伴は大木戸を見て、

 武智「ハイ! とても勉強に成ります」
 大木戸「私は、いつかも君達に言った事が有るねえ。思い出してご覧なさい」
 二人「は?」
 武智「すいません。ちょっと記憶が・・・」
 大木戸「バカ者ッ! 長いお付き合いして行くンだ。固い絆ッ。絆は助け合いから始まるッ! どんな陳情でも早く、確実に、丁寧に、相手の身になり、力強くッ! 支援者を包み込むように。これが、熱い、熱い一票に繋がる。人にはそれぞれ人に言われぬ悩みが有る。それを解決してやる事が票に繋がる。ひるがえって、我々の糧に成るのである」
大木戸が机を人差し指で叩きながら、熱弁をふるう。

 二人「ハイッ! 勉強になります」
 大木戸「・・・うん・・・」

大木戸は、テーブルの上のコップの水を一口飲み、

 大木戸「安藤くんが来たらしいね」
 武智「あッ! そうだ」
 大木戸「ソウダ? 報、連、相はどうした」
 武智「すいません」

大木戸は武智をキツイ眼で見る。

 大木戸「・・・何しに来たの?」
 武智「あッ、横田のヘリコプター基地拡張工事の件で・・・」
 大木戸「おお? もう動いているのか」
 武智「そうです」
 大木戸「あそこは格納庫の増設もあるはずだ。もう直ぐ出るはずだぞ」
 武智「今日の夕方、安藤さんと打ち合わせます」
 大木戸「そう。横田も立川も大変だ。大統領が変わったからねえ・・・」
 武智「えッ!? 立川も?」
 大木戸「・・・」

大木戸は腕時計を見て、
 大木戸「おお、もうこンな時間だ。本会議が始まる」

大木戸は議員手帳を懐に仕舞、ソファーを立つ。
二人を見て、

 大木戸「いいですか、無理はくれぐれもしない事」

武智と伴はソファーを立ち、

 二人「ハイッ!」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第9話

2017-02-28 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第9話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    山川トメ(80歳) 市原悦子

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    安藤 登(50歳) 桑野信義

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S44

群馬水神村(全景)
大変な田舎である。
武智が「山川トメ宅」の玄関先から、携帯で電話をしている。

 武智「モシモ~シ・・・モシモ・・・」

武智はAUの携帯を睨み、

 武智(M)「こんな田舎からAU、通じるンだろうか・・・」

 武智「モシ~・・・オッ!? 通じたッ!」
 高木(声)「あッ、すいません。この電話、混線してるみたい。え~と、どちら様でしょうか?」
 武智「俺だ」
 高木「あッ! 武智さん。お疲れさまです」
 武智「うん?・・・うん。・・・いや~、イヤイヤ、えれ~山ン中だよ。ダメかと思った」
 高木(声)「は?」
 武智「いや、このAUだよ」
 高木(声)「AU? ああ、武智さん、AUですか?」
 武智「うん。・・・何かある?」
 高木(声)「・・・今の所有りません。あッ、本人が電話を入れろって」
 武智「電話?」

武智はイブッタ化に、

 武智「分ったよ」
 高木(声)「今、どちらですか?」
 武智「婆さんの家だ。おい、バッテリーが切れそうだ。伴に変わってくれ」
 高木(声)「はい」

         S45

○議員会館大木戸事務所応接室(一人)
伴が応接室の書類棚から陳情フェイルを取り出し、立ち読みしている。
事務所から高木の声。

 高木「伴さーん、一番に武智さんからです」
 伴 「えッ! あッ、すいません」

伴が代議士の机上の電話の受話器を取る。
ボタンを押して、

 伴 「代わりました。ご苦労様です」
 武智(声)「何やってンだ」
 伴 「えッ、浦口さんの例のウラグチの件で陳情ファイルを見て・・・」
 武智(声)「ンなの後で良い。株が下がってるぞ」
 伴 「カブ?」
 武智(声)「早川は来なかったか?」
 伴 「来ません」
 武智(声)「そうか。・・・来週の月曜日、アメリカからパインズ財務長官が総理ン所に来る。で、その晩、官邸で皆ンなを集めて何ンかを喋るらしい。そうしたら翌日、株が上がる。浦口に伝えとけ」
 伴 「ええッ!(驚く)」
 武智(声)「いいから、早く連絡しろ。五、六人まとめて入れるから」

武智は感心して、

 伴 「武智さんて凄いヒトですねえー」
 武智(声)「バカ野郎、この位出来なくちゃ金庫番になれねえよ」
 伴 「分かりました。しかし、この部屋じゃ、株の上がり下がりまで事前に分かっちゃうんですね」   
 武智(声)「ハハハ、ああ見えてもアレは一応財務副大臣やってンだぞ。おいッ! この事は、口外無用ッ! 誰にも言うなよ。俺達どころか、オヤジの手も後ろに回っちまうからな」
 伴 「言いませんよ。私は株なんかまったく興味が有りませんから」
 武智(声)「バカ野郎ッ! 株と為替ぐらい勉強しろ。政治とは株と為替だ!」
 伴 「は? そう云うモンですか」
 武智「そう云うモンよ」

高木が応接室に入って来て、電話中の伴の机上に「一枚」の名刺を置く。
高木はメモ用紙を名刺の隣に置き、応接室から出て行く。
伴は、メモを見て、

 伴 「アッ、それから「N&C」安藤「安藤 登・五十歳」さんと云う方が武智さんを訪ねて来たようです」
 武智(声)「安藤さんッ!(驚く)」

         S46

山川トメの自宅(午後・二人)
トメがなかなか家の中に入って来ない武智に、

 トメ「何やってンだ?・・・あれ、まだ喋ってンの。蚊に刺されるから早く入れや」

武智は携帯を耳から遠ざけて、、

 武智「アッ、すンません。また、弟ですよ~。困ったヤツだ。ハハハハ」
 トメ「餅を焼いたから食えや」
 武智「あッ、ありがとうございます」
 伴(声)「モシモシ・・・モシモ~・・・」
 武智「ハイハイハイハイ」
 伴(声)「誰と話てるンですか?」
 武智「婆さんだ!」

「と」、携帯電話の電池切れの警告音。

    「ピピピ、ピピピ、ピピピ・・・」

 武智「おい、もうダメだ」
 伴(声)「誰ですか? 安藤さんて」
 武智「仕切り屋だ!」
 伴(声)「シキリヤ? モシモシ・・・ モシモ」
 武智「ダメだ・・・」

武智の携帯電話の電池が切れる。

         S47

議員会館大木戸事務所応接室(一人)
電話が切れる。

    「・・・・・・」

伴は受話器を置き、机の上の名刺を取り上げて、

 伴 「シキリヤさんか・・・」

「と」、高木が事務室からお盆にお茶を載せて応接室に入って来る。

 高木「お茶をどうぞ・・・」
 伴 「あッ、すいません。・・・高木さん・・・、この安藤さんて誰ですか?」
 高木「ああ、安藤さんはこの事務所の下請けです」
 伴 「下請け?」
 高木「交渉専門の外郭団体です」
 伴 「何ンですかそれ?」
 高木「何ンと云いますか、・・・談合関係の調整会社・・・かな? 上手く説明出来ません」
 伴 「談合って・・・あのゼネコンの?」
 高木「そうッ! 安藤さんは昔、此処の事務所で第一秘書をしてたンです。頭が良くて・・・。お話を聞くと凄く勉強に成りますよ」
 伴 「談合のスペシャリスト?・・・。へ~え、早くお会いしたいなあ。しかし、この部屋の関係者ってみんな狼(オオカミ)みたいな人ばっかりですねえ」
 高木「ええッ!? そんな怖い方は居ませんよ。どっちかと云うと・・・タヌキとか・・・キツネ、ムジナかな?・・・うん、皆ンな、とっても可愛い方ばっかり!」
 伴 「タヌキとキツネ、ムジナ? ・・・蕎麦屋みたいですねえ」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第8話

2017-02-27 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第8話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    山川トメ(80歳) 市原悦子

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S40

○文教振興会応接室(午後・三人)
応接室のテーブルを隔てて浦口と伴が座っている。
テーブルの下には「セキネのカステラ」の紙袋が。
テーブルの上には交互に浦口と伴の名刺が置いて有る。
浦口はテーブルの上のマイルドセブンのタバコを一本抜き取り、口元に。
伴はすかさず、ポケットから例のデュポンのライターを取り出し、火を点け、浦口のタバコに。

 音 「ピ~ン」 SE

浦口はタバコを深く吸い、伴を見てニコッと。

 浦口「君、タバコは?」
 伴 「私はやりません」
 浦口「そう。・・・で・・・」
 伴 「は? あッ!」

伴がテーブル上に「セキネのカステラ」の紙袋を載せる。
浦口はセキネと云う文字を見て態度が一変する。

 浦口「おおッ! そう。いやいやいや、チョット待って。・・・山口さ~ん(山口喜美子・四七歳)、お茶を出してくれる~ッ!」

事務室から山口の声

 山口「はーい」
 浦口「玉露をねー」
 山口「分かりました」
 浦口「それから、このカステラを持って行って」
 山口「はーい」

暫くして、山口がお盆にお茶を二つの載せて応接室に入って来る。
山口はテーブルの上の「セキネのカステラ」を見て、

 山口「あらー、局長の一番好きなモノじゃないですかー。これが来ると何か良い知らせでしょ」

山口は伴を見る。

 伴 「えッ、アッ! まあ・・・」
 浦口「二つだってよ。二つッ!」
 山口「二つッ! あら、国分寺の方も? さすが、大木戸先生」

山口は伴を見て、妙な熟女の色気を出し、

 山口「ごゆっくりしてらっしゃい」
 伴 「あッ、恐縮です」

山口が応接室を出て行く。

      *    *    *

浦口がお茶を一杯すすり、伴を見て、

 浦口「で?」
 伴 「あッ、実は稲大に入りたい青年が居るのですが」

浦口は驚いて目を丸くする。

 浦口「ええッ!・・・何人?」

伴も驚いて、

 伴 「いやッ、一人ですよ」

浦口はヘリンボーンのジャケットの内ポケットから黒い手帳を取り出し、

 浦口「・・・名前を聞かせて?」
 伴 「野村勇作、十八歳です。大木戸の後援会長の息子さんです」

浦口は手帳に書き取って行く。

 浦口「・・・何処の学部に入りたいの?」
 伴 「文学部らしいです」
 浦口「文学部で良いの?」
 伴 「はい」
 浦口「一部でしょうね」
 伴 「そりゃあ、・・・多分」
 浦口「・・・分かった」

浦口は手帳をポケットに仕舞ながら伴を見て、

 浦口「この時期は多いのよ。あッ、この彼は稲大だよね。他の先生からも今年は、ウチだけで十五人、頼まれてるのよ」

伴は驚いて、

 伴 「えッ、そんなにッ!」
 浦口「川田先生のお嬢さんも、どうしても英智大学に入りたいというのよ」
 伴 「英智ッ! 凄いですねえ」
 浦口「凄くないのよ。何処の大学も学生の取りあいよ~。だって、少子化で経営が大変なンですから。出来るだけ身元のしっかりしたご子息の方が安心出来るンですよ。特に先生方の関係してる方が」
 伴 「そう云うもんですか?」
 浦口「そう云うモノよ。・・・確認の為、もう一度聞きますが、この野村くんだけで良いのね?」
 伴 「はい・・・今の所は・・・」

浦口は伴を見て、お茶を勧める。

 浦口「冷(サ)めちゃうよ」
 伴 「あッ、はいッ!」

         S41

○議員会館大木戸事務所事務室(二人)
高木が受話器を取って、電話中である。
伴も自分の机で電話をしている。

 伴 「アッ、武智さん? 伴です、ご苦労様です。 今、大丈夫ですか?」

         S42

○車内(二人)
武智は群馬水神村の山中を山川由紀之の婆さん「山川トメ・八十歳」を乗せて運転している
武智は運転しながら、携帯を持って

 武智 「何ンだ? 運転中だ。電話するな!」
 伴(声) 「えッ!? すいません。あの例の裏口の件です」
 武智「後にしろ・・・」

伴はその言葉を無視して、

 伴(声) 「バッチリです」
 武智「バカ野郎! お前の話を聞いてると事故っちゃうよ。ちょっと待て。今、車停めるから・・・」

武智が路肩に車を停める。
後ろの座席に座ってるトメを見て、

 武智「トメさん、わりーねー。 三分待っててや」
 トメ 「いいよ! どうせ、急ぐ旅でもあるめえよー」

武智はまた、携帯を耳に、

 武智「もしもし。伴、オマエ親父の口癖、知ってるだろう。五W一H だぞ!」
 伴(声) 「アッ、すいません。昨日、浦口さんの所に行って来ました」
 武智「結論ッ!」
 伴(声) 「アッ! OKでした」
 武智「そんな事、あたりめえじゃねえか。切るぞ」
 伴(声) 「いや、一人で良いンですよね」
 武智「何?」
 伴(声) 「あのー・・・、浦口さんが一人で良いのかと・・・」
 武智「・・・」
 伴(声)「もしもし、もしもし、武智さん?」
 武智「聞こえてるよお~。・・・おい、応接の棚の陳情ファイルを広げてみろ。息子の進学で悩んでいる親が居るだろう」
 伴(声)「あッ、分かりました。また後で電話します」
 武智「いいよ。電話なンてしなくて」

武智が携帯を切る。
トメが後部座席から武智に赤飯の握り飯を差し出す。

 トメ「忙しいねえ~。これ、食うか?」

武智が驚いて、

 武智「あッ、イヤ~、いやいや、こりゃーすいません。旨そうだ」
 トメ「誰と喋ってたンだい?」
 武智「出来の悪い弟だよ」
 トメ「そ~けえー・・・」

武智は握り飯を頬張る。

         S43

○議員会館大木戸事務所事務室(二人)
伴が受話器を置き、お茶を一気に飲む。

 伴 「アッチー! 何て熱いンだ。喉が焼けどしそうだよ」

高木が呆れた顔で伴を見る。

 高木「・・・焦って飲むからですよ。・・・裏口、上手く行きそうですね」
 伴 「浦口さんですよ。ウラグチじゃないから」
 高木「だって、私大は定員の二倍以上は補欠学生を取ってるじゃないですか。それが証拠に学籍番号、あれってとっても変ですよ。 だから、私大の場合、別に学生の能力の問題じゃ無いンじゃないかな。 一に経営、二に儲け、三四が無くって五に補助金ですよ」
 伴 「?・・・高木さんチも政治一家ですよね」
 高木「そうです。何か?」
 伴 「いや、僕この部屋に居ると世の中、百八十度、違って見えて来るんですけれど」
 高木「そうですか? うちの父は、私の小さい頃から家族によく話してました。世の中は「裏と表」は有るが、「表と裏」は無いってね」
 伴 「何ですか?それ」
 高木「裏の明るさを知れば表が暗く見える。表の暗さを知った人は裏の明るさを見たがる」
 伴 「・・・ああ。・・・イヤー、何から何まで本当に勉強に成りますねえ。 僕、人間が変わりそうです」

「と」、電話が鳴る。
高木が、受話器を取る。

 高木「お待たせしました。 衆議院大木戸事務所で御座います」 

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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爆笑風刺ドラマ 「カバン持ち(請託編)」 第7話

2017-02-26 | レーゼ小説

この作品は「脚本の叩き台」として公開されています。

          第7話

      請託編(カバン持ち)

        原作 土屋寛文

       イメージキャスト

    伴 憲吾(32歳) 妻夫木聡

    武智栄護(45歳) 遠藤憲一

    高木順子(25歳) 高畑充希

    植松行政(45歳) 堤 真一

    早川俊久(45歳) 谷原章介

    森住玲子(40歳) 室井 滋

    浦口 剛(58歳) 高田純次

    大木戸博康(55歳) 片岡鶴太郎


          S36

○第一議員会館正面玄関(午後・三人・その他)
伴がコンビニの袋を提げて議員会館の正門階段を足早に上がって行く
衛視が伴に敬礼する。
伴は首に掛けた「IDカード」を見せ軽く会釈する。
衛視はコンビニの袋の中を確認する。
衛視はニコッと笑い、

 衛視「弁当ですか。お疲れさまです」
 伴 「いや、どうも」

伴は急いでエレベーターに向かう。
堀田事務所の第二秘書・早川(早川俊久・四五歳)がエレベーターを待つ。

 伴 「どうも」
 早川「おう、久しぶり!」
 伴 「そうですね」
 早川「地元?」
 伴 「いや、国交省です」
 早川「国交省・・・」

エレベーターが停まり、ドアーが開く。

 伴 「どうぞ」
 早川「おッ、じゃ、お先に!」

エレベーターの中にワインの箱を数段重ね載せた、台車が目を引く。
早川が台車の横の女性秘書・森住(森住玲子・四十歳)に、

 早川「おッ、甲州ワインですねー。中元かな?」
 森住 「はいー・・・」
 早川「うちにも来るのかな?」
 森住「勿論ですよー。・・・先生お元気ですか?」
 早川「元気すぎて困りますよー。先週人間ドックで検査してもらったら体力は三十代ですって」
 森住「あらー・・・ そう言えば堀先生、スポーツクラブに通っていらっしゃるんですって?」
 早川「ええ? 結構、知れ渡ってますねえ」
 森住「うちの先生は運動不足で尿酸値が上がってしまって・・・。運動って言ったら議会で大声張り上げるぐらいでしょう。あれじゃその内、糖尿で・・・」

八階のドアーが開く。
伴がエレベーターの開放ボタンを押す。

 伴 「どうぞ!」
 森住「あら、すいません!」

森住は台車を押しながら、

 森住「・・・大木戸先生の所の秘書さんですよね」
 伴 「はい! 伴と申します。 宜しくお願いします」
 森住「こちらこそ。先生に宜しく!」
 伴 「はい!」

森住が台車を押しながら廊下の表札を確認し去って行く。
伴と早川が廊下を足早に歩きながら、

 早川「森住大臣の長女だ」
 伴 「エッ! そうですか。可愛い方ですね」
 早川「可愛い!? まだ独身だ。よかったら話を進めようか」

         S37

○議員会館大木戸事務所事務室(午後・三人)
武智が電話を掛けている。
伴が事務所に戻って来る。

 高木「ご苦労さまです。」
 伴 「すいません。遅くなって。・・・あれ? 先生は」
 高木「電話が入ってちょっと前に、出ました」
 伴 「ええッ?! 道路の金井さんと話してたのにー・・・」

武智が受話器を置く。
伴を見て、

 武智「おう、ご苦労さん」
 伴 「何か遭ったんですか? 急に戻って来いって・・・」
 武智「うん?・・・うん。いいなあ、オマエは」
 伴 「エ?」
 武智「おい! ちょっと黙ってろ。俺は忙しいンだ。」

伴は自分の席に着き、カバンを置いてコンビニの袋から弁当を出す。

 高木「お昼、今からですか?」
 伴 「うん」
 高木「カップ麺が有りますよ」
 伴 「えッ、食べて良いですか?」
 高木「どうぞ、どうぞ。今、お茶を入れますから」
 伴 「すいません」

暫くして、カップ麺の蓋を開けてソバを掻きまわす伴。
武智は伴のカップ麺を見て、

 武智「旨そうだな」
 伴 「えッ! まだ食べてないンですか?」
 武智「いろんな事が有って、食う暇がねえ」
 伴 「? どうしたンですか。元気ないッすね」
 武智「俺は鬱病だ」
 伴 「エッ、この間の集団検診の結果が出たんですか」
 武智「違うッ! あのオヤジ、俺にあれやれこれやれって山ほど宿題を置いて行った。稲大は、お前一人でやれッ!」

伴はソバを一口。

 伴 「アチッ! 僕、一人でですか?」
 武智「そうよ。俺は忙しくてそれどころじゃねえ。今から地元で、票集めだ」
 伴 「ええッ! 群馬ですか?」
 武智「おう。それも国境だ。水神の婆さんの所まで行くんだ」
 伴 「ああ、この間の食事会の」
 武智「そうよ。まったく~。忘れない内に行って来いとよ。・・・伴、あのオヤジが食事に行こうって始まったら覚悟しておけよ。喰った後、三倍のお土産がくっ付いて来るからな。・・・そうだ、高木くん! ワリ~けど売店で総理の絵が描いてある湯呑みを三十個、取ってきてくれや。あの山川の婆さんに配ってもっちやうから」
 高木「はい」
 武智「あれって一個いくらだ?」
 高木「さあ・・・五百円位かな」
 武智「三十個で1万5千円!? 高ッけえなあ」

伴が、

 伴 「パー券、一枚ですね」
 武智「何ッ!」

武智が伴を睨む。

 武智「・・・そうだな。高木くん、現金有る?」
 高木「それ位なら」
 武智「そうか。アッ、ついでに俺の弁当も買って来てくれや。お稲荷さんとカップ麺」
 高木「はい」

高木が手提げ金庫から現金を出して、事務所を出て行く。
伴はカップ麺のスープをすすりながら、

 伴 「後援会長の息子さん、段取りは・・・」
 武智「うん?・・・おい! 裏口じゃなくて勝手口ってモノもあるらしい」

伴は思わずスープを喉につまらせ、

 伴 「グッフ!」

伴は咳き込みながら、

 伴 「そんな入り口、有るンですか?」
 武智「うん?・・・何ンか、一年間イギリスかどっかえ留学して大学へ推薦で入るンだってよ。早川が言ってた」
 伴 「早川さんとエレベーターで一緒でしたよ」
 武智「早川と? アイツ、株の話はしねえだろうな」
 伴 「カブ? しませんよ」
 武智「そうか。・・・アイツ、最近自宅を新築したらしいからよ」
 伴 「ジタクッ!・・・良いですねえ。それはそうですけど・・・どうやって・・・?」
 武智「うん?・・・俺が今から浦口に電話してやる。いいか、聞いてろ」

武智が受話器を取り、浦口に電話をする。

 武智「・・・もしもし、浦口事務局長(浦口 剛・五八歳)お願いします」
 女(声)「どちらさまですか?」
 武智「大木戸事務所の武智です」
 女(声)「あッ、お世話になります。少々お待ち下さい」

暫くして、

 浦口(声)「もしもし、いやいやいや毎度毎度お世話になります。どうしました?」
 武智「いやンもう。二つも決まっちゃいましたよ~。どうします?」
 浦口(声)「えッ! 本当ですかッ!(驚く)ありがとうございまーす。二つなんて信じられな~い。どうしましょう」
 武智「ええ~・・・」

         S38

○文教振興会事務所(一人)
浦口がリモコンでテレビのボリュームを落としながら、

 浦口「改めて先生にご挨拶に・・・」
 武智(声)「いや、ちょっとねえ・・・」
 浦口「チョット? どうしました」
 武智(声)「ちょっと、大所高所からご指導を仰ごうと・・・」
 浦口「おお、私が出来ることなら何ンなりと」
 武智(声)「いや~イヤイヤ、あのね・・・、ウチの若いモンを行かせますから話を聞いてやって下さい」
 浦口「何ンだろう。楽しみにして良いのかな・」
 武智(声)「そりゃー、アンタ~、甘~いモノでも・・・」
 浦口「ええッ! 甘いモノッ!? ただ、今、ドクターから止められてるンですよ」
 武智(声)「控えめですから大丈夫ですよ」
 浦口「うれしいなあ。お待ちしてます」

         S39

○議員会館大木戸事務所(二人)
伴がカップ麺を置いてジッと聞いている。

 武智「じゃッ、後ほど三時前後に、伴 憲吾と云うカバン持ちがお邪魔します」
 浦口(声)「ハハハハ、お待ちしてます」

武智が受話器を置く。
伴が呆れた顔で武智を見ている。

 武智「・・・どうした?」
 伴 「武智さん、本当に頭がキレますね。詐欺師みたいだ」
 武智「何? オマエ、俺をバカにしているンだろう」
 伴 「とんでもないです。僕、武智さんみたいなキレる方って今まで見た事ないです。いやー、本当に勉強に成ります」

武智は伴の顔を見て、

 武智「?・・・」

      *    *    *

高木が台車に湯呑を載せて事務所に戻って来る。
伴がドアーを開けて、

 伴 「ご苦労さまです」
 高木「けっこう、この湯呑売れてますねえ」

武智は振り向いて、

 武智「何処でも大変なンだよ」
 高木「あッ、武智さんにお弁当・・・はいッ」
 武智「おお、ワリ、ワリー」

武智は伴を見て、

 武智「おい、早く行って来い」
 伴「いや、まだメシを食ってないンですよ」
 武智「何ッ!?」

                 つづく

この作品は、著作権を放棄したものではありません。

      -TSUCHIYA Production-

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