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冬に雨雪をもたらす温帯低気圧

2014-02-25 15:40:42 | ブログ

 晴天の日に、空にぽっかり浮かぶ白い雲を見ながら考える。雲には、雨や雪を降らさない雲と雨雲とがあるのだなと。いずれにしても、雲の正体は、水蒸気が凝結した水滴か氷晶であり、この二種類の雲の違いは、ただ雲をつくり出す水蒸気の多い少ないだけにあることを知る。小学校や中学校の理科で習ったように、大気中に飽和水蒸気量以上の水蒸気が含まれることになると、余分な水蒸気は凝結して水滴や氷晶に変わり、雲がつくられる。その際に、水蒸気のエネルギーが放出される。前者の雲では、できた水滴や氷晶が生成と蒸発を繰り返すので、雨粒や雪片にまで成長できない。後者の雲では、余分な水蒸気が凝結して水滴や氷晶を肥らせるので、雨粒や雪片にまで成長し、地上に降下してくる。水滴と氷晶は、その生成過程が異なるので、水滴が直接氷晶に変わることはない。それでは、あられは、どのようにして生成されるのか。おそらく、積乱雲の中にあって、本来降下してしかるべき雨粒が、水蒸気のエネルギーの一部から生じた上向きの運動エネルギーによって翻弄されて合体し、上空まで運ばれて氷結した後、降下したものであろう。

 ところで、日本の冬は、西高東低の気圧配置によって支配される天候を特徴とする。西側の高気圧と東側の低気圧とは、対となってローラのような役割をし、シベリア方面の乾いた大気を日本列島に向けて送り込む。暖かい海流が流れている日本海上を通過した大気の流れは、たっぷりと水蒸気を取り込んだ後、日本の中央を走る山脈によって持ち上げられて雪を生成し、日本海側に大量の降雪をもたらす。中央山脈を通過した大気の流れは、太平洋側に乾いた冷たい北風をもたらす。

 このような天候は、冬季にはかなり安定して継続する。しかし、その間にも、ときどき太平洋沿岸には移動性の低気圧が現れ、その低気圧に伴う寒冷前線や温暖前線が太平洋側に雨または雪を降らせる。温暖前線は冷たい大気層の上に湿った暖かい大気の流れが乗りあげ、寒冷前線は暖かい大気層の上に冷たい大気の流れが乗りあげるか、下にもぐり込んで大気が不安定となり、雨や雪をもたらすという。この低気圧は、かなり発達し、日本列島の太平洋沿岸に沿って北東方面に進む。そうすると、何故このような温帯低気圧が発生し、前線を伴うことになるのか、という疑問が生じる。

 参考文献の「天気と気象についてわかっていることいないこと」を読んだ機会に、この本の中の温帯低気圧についての解説を道しるべとして、以前に学習途中で投げ出していた温帯低気圧の気象力学について再検討したいと思った。そして、その検討結果を、以下、自分なりの文章で記録に残しておきたい。

 地表から上空10kmぐらいまでに亘る大気層は、密度成層をなす流体であり、基本的には、鉛直方向に静力学平衡が成り立つものと考えられている。つまり、大気の気圧、その密度および温度は、高さとともに単調に減少しているものとする。

 この静力学平衡にある大気の気圧にずれが生じると、気圧の高い部分からより低い部分に向けて力が働く。これが気圧傾度力である。水平方向の大気の流れは、水平気圧傾度力と地球自転によるコリオリ力とがバランスした状態で流れるものと考えられている。この両方の力が平衡の状態にあることを地衡風平衡と呼んでいる。

 地球の北半球中緯度帯には、帯状の偏西風が蛇行しながら流れている。偏西風も地衡風平衡を保った状態で流れているものと考えられている。また、同じ気圧レベルをもつ大気素分が地衡風平衡を保った状態で循環しているのが、高気圧と低気圧である。高気圧の等圧部分は時計回りに、低気圧のそれは反時計回りに循環する。ただし、地表付近では、大気の流れが地表との摩擦の影響を受けるために、もはや地衡風平衡が成り立たない。そのため、大気は、高気圧では中心から周辺に吹き出すように流れ、低気圧では周辺から中心に向けて流れ込む。高気圧や低気圧は、地表付近ばかりでなく、上空10km近くまで柱状に延びていると考えられる。このとき、鉛直方向の等圧面は、気柱の周囲面となるが、それは、同じ高さにおける気圧の相対的なずれとみなせる。

 大気素分の単位質量あたりの運動エネルギーと位置エネルギーとの和は、保存されるものと考える(エネルギー保存則)。大気の一定空間には、このほか温度に依存する内部エネルギーがあるが、地上や海など他からの熱の供給がない断熱過程とすれば、内部エネルギーは変化しないので、位置エネルギーの変化による運動エネルギーの増加または減少だけを考慮すればよい。

 一定空間について、水平方向に流れる大気素分の運動エネルギーを集めたものが、時間的にどう変化するかを示す方程式がある。これによると、上昇運動がありかつ大気密度が平均値より小さい区域では、水平方向の運動エネルギーが増加することを示している。これは暖かい上昇気流が流れる区域を意味している。また、下降運動がありかつ大気密度が平均値より大きい区域でも、同様に、水平方向の運動エネルギーが増加することを示している。これは冷たい下降気流が流れる区域を意味している。偏西風も主に水平方向に流れるし、その鉛直方向の速度成分もあると思われるが、定常流のために、新たに水平方向の運動エネルギーを生み出さないものと考えられる。そうすると、新たな上昇気流や下降気流を生み出す源は、偏西風自身がつくり出す渦、大気が不安定になったために発生した高気圧や低気圧など、大気の攪乱であるということになる。

 大気素分が下降運動をする下降気流については、落体の運動からの類推で、大気のもつ位置エネルギーが運動エネルギーに変わったことを理解できる。しかし、上昇気流が何故新たな運動エネルギーを生み出すのか。上昇気流があるということは、どこかでそれを補償する下降気流があるということだから、同様に大気のもつ位置エネルギーが運動エネルギーに変わるものと考えられる。また、後に見るように、生み出された上昇気流と下降気流の水平方向の速度成分が低気圧に作用して、その低気圧を発達させるものと考えられる。上昇気流と下降気流の鉛直方向の速度成分は、鉛直平面に沿った大気の流れをつくる。

 高気圧と低気圧は、その気圧が同じ高さにおける周囲の大気圧からずれている区域であり、平らな水面に生じる波から類推されるように、高-低-高-低のように波動をつくる。高気圧が気圧の峰であり、低気圧が気圧の谷であって、高-低で1波長を構成する。このような気圧の波動が偏西風の流れに乗って移動高低気圧として日本列島付近にやってくる。

 高低気圧の気柱は、地表から上空まで鉛直に延びているわけではなく、上空にいくほど高低気圧の中心が西へずれた構造となっている。このため、低気圧の西側では、上空の低気圧(谷)と地表付近の高気圧(峰)に挟まれた区域になり、大気が縮んで大気密度が平均より大きく、冷たい下降気流が流れる。また、低気圧の東側では、上空の高気圧(峰)と地表付近の低気圧(谷)に挟まれた区域になり、大気が膨らんで大気密度が平均より小さく、暖かい上昇気流が流れる。このような低気圧は、北側の寒気と南側の暖気が衝突する前線上にあるとき、西側では寒気流、東側では暖気流を呼び込みやすい構造をしていることが理解できる。低気圧が、北の寒気と南の暖気をブロックしている偏西風の流れの中で発生する場合、シベリア寒気団と南の暖気による前線上に位置するとき、後述の海洋前線とぶつかった場合などである。

 偏西風は西から東の方向に流れているのに、何故、高低気圧は上空にいくほど西へずれた構造となるのか。蛇行して流れる偏西風は、また、いくつかの波の成分を含む波動でもある。その波の1つとして、ロスビー波が含まれる。ロスビー波は、偏西風の速度より小さい位相速度で西向きに進む。偏西風の速度が大きいほどロスビー波の速度も大きくなり、偏西風は上空にいくほど速く流れるから、高低気圧の鉛直方向のずれは、上空にいくほど大きくなる。

 ロスビー波は、コリオリ力を復元力とする波動であり、地球の中緯度帯を帯状にめぐるように周回する。バイオリンがかなでる楽音は、両端を固定された弦の振動によるものである。その波動は、両方の固定端を越えて進行できず、弦と垂直方向にだけ振動する定常波である。一方、固体の環状体に沿って伝わる振動は、周回の長さが適当であれば定常波として一つにつながり、そうでなければ進行波として伝わるであろう。大気は流体であるために、ロスビー波は、定常波となることはなく、常に進行波として伝播する。このように、ロスビー波の進行方向とその位相速度は、偏西風の風向きとその速度から独立と考えてよいから、両者の高低気圧に対する影響は、重ね合わせで作用するのであろう。

 低気圧の周囲に生じる上昇気流と下降気流の水平方向の速度成分は、循環する等圧面を横切るとき、その等圧面を収束させるように作用するから、角運動量保存則により、循環の角速度が増加し、低気圧が発達することになる。

 台風として日本にやってくる熱帯低気圧は、海から吸い上げた水蒸気のエネルギーをエネルギー源として発達する。冬の温帯低気圧についても、海が重要な役割をしているという。温帯低気圧も、海から得たエネルギーを利用して発達することは容易に理解できる。

 日本の太平洋沿岸を流れる暖かい黒潮と冷たい親潮は、三陸沖と銚子沖で衝突し、海洋前線をつくる。このような海洋前線は、海上に暖かい空気と冷たい空気が衝突した温暖前線や寒冷前線をつくる。移動中の温帯低気圧がこのような寒暖空気の衝突による停滞前線にぶつかったとしてみよう。低気圧の西側には寒冷前線がつくられ、東側には温暖前線がつくられることは容易に想像できる。低気圧の等圧面上の空気は反時計回りに循環するため、西側では北の大気を南に運び、東側では南の大気を北に運ぶからである。海洋前線上には蒸発したての十分な水蒸気があるので、温帯低気圧はそのエネルギーを利用して発達する。温帯低気圧は、かなり長い間、寒冷前線と温暖前線を伴って移動するところを見ると、それは、海洋前線に沿って移動し、継続して海洋エネルギーを利用することが分かる。

 偏西風の帯状流は、赤道付近の大気がもつ地球自転による角運動量に近いものを保持しているから、熱帯地方から北極方面への熱輸送に貢献しているものと考えていた。しかし、偏西風は、実際には、熱輸送するというより、赤道から極向きの熱の輸送をブロックしているようである。つまり、偏西風は、いわば大気中につくられた万里の長城のようなもので、発達した温帯低気圧は、偏西風の横腹にあけた文字通り風穴であり、このような熱の輸送に貢献する。

 今年1月の初めから今日まで、新聞に載る天気図を収集し、温帯低気圧がどのように発達し、雨雪をもたらすのか追跡した。

温帯低気圧は、次に月/日で示すように、かなり頻繁に日本列島付近を通過する:1/8~9;1/15;1/20~21;1/25~26;1/30;2/1~2;2/3~4;2/7~9;2/14~15;2/19~20。このうち、特筆すべきものを次に挙げる。

(1)1/8~9に低気圧と前線が本州の南岸を東進し、東京では1/8夕方から1/9朝まで雨であった。低気圧は、1014hPa→1004hPa→994hPaのように発達した。

(2)2/8には、東京で一日中雪、2/9までに27cmの積雪となった。低気圧は、1010hPa1000hPa990hPa980hPaまで発達した。この低気圧は、爆弾低気圧と呼ばれる急速に発達したものであった。気象庁によると、上空5,000mの付近を流れる偏西風の気流の渦と低気圧の接近が重なり、爆弾低気圧になったという。

(3)2/14には、東京で一日中雪、2/15までに27cmの積雪となり、その後雨に変わった。低気圧は、1014hPa1010hPa1004hPa996hPa988hPa976hPaまで発達した。関東甲信で記録的な大雪となり、山間部の孤立状態が続出し、農業被害や建物の損壊などの被害をこうむった。

参考文献

筆保弘徳など著「天気と気象についてわかっていることいないこと」(ベレ出版)

小倉義光著「気象力学通論」(東京大学出版会)

岩槻秀明著「気象学のキホンがよーくわかる本」(秀和システム)


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