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いまさらながら実感……城島健司は素晴らしいキャッチャーだ!

2008年09月01日 | Baseball/MLB

 

 今朝のスカパー!MLBライブでは、近藤祐司さん(元立命館大アメフト部・日本代表DB/愛妻家)とのコンビで、インディアンス対マリナーズ戦を担当した。

 

 イチロー城島健司小林雅英と、計3人の日本人選手がいて、開幕前はポストシーズン進出も有力視されていた両チームの中継を、ともに現在の順位、勝敗でお伝えするのは、正直なところ複雑な心境だったのだが、そこはさすがにメジャーリーグ、というよりもベースボールという競技そのものの魅力がもたらすものなのだろう。見どころは決して少なくなかった。

 

 目立つ数字がクローズアップされるのは仕方がないが、今日の試合では城島の守備面にもっとスポットライトがあてられていいはずだ。

 

 開幕早々に来季以降の再契約を結びながら、その後の「政変」によって、二階に上がってハシゴを外された立場に立たされ、 現在は若手マット・クレメントらとの併用を強いられている城島だが、オーストラリア出身の左腕ライアン・ローランド-スミス相手のリードは、彼の優れたキャッチャーとしての能力を再認識させるものだった。

 

 正直なところ、ローランド-スミスは、「左腕」、そして「メジャーリーグ史上はじめてファミリーネームにハイフン(-)の入った選手」以外、これといった取り柄のない投手だ。

 

 球速は並だし、カーブ、チェンジアップなどの変化球に見るべきものはあるが、特にカーブは精度が甘く、まだ「ウィニングショット」「ミールピッチ」と呼べるレベルには達していない。

 

 しかし、今日の城島は、いってみれば冷蔵庫に残った食材で見事な「まかない料理」をつくった名料理人のように、ローランド-スミスの好投を演出した。

 

 もっとも精度の高かったチェンジアップを決め球にして、つねに打者の裏をかく配球で、90マイル台そこそこの速球と、ときおりヒヤッとするようなコースに投げ込まれるカーブさえも生かし、ローランド-スミスが大崩れするのを防いだのだ。

 

 もちろん、これはローランド-スミスに平均水準以上の制球力があるからできたリードでもあり、そのあと出てきたリリーフ投手たちにはかなり苦労させられていた。

 

 こうした城島のリードにおける「工夫」が、必ずしもマリナーズの投手陣に理解・歓迎されているわけではない。とくに2ナッシング、1ボール2ストライクなどの投手有利なカウントで、あえてボールになる変化球を要求されたピッチャーは、最初、いや何度コンビを組んでも面喰ったり戸惑っているだろう。

 

 当人同士の関係は「水と油」かもしれない(日本シリーズなどでは、かなり城島のリードに辛口の評価をしている。阿部新之助ほどじゃないけど=笑)が、ホークスの先輩にあたる野村克也・現楽天監督とは、キャッチャーとしてやはり共通するものがある。

 

 野村監督に、1959年に38勝4敗の驚異的な成績でホークスを初の日本一に導いた杉浦忠投手についてその印象を聞くと、

 

「おもろなかったわ」の答えが返ってくる。「スギが相手だとワシはただの“カベ”だったから」だそうだ。つまり、野村捕手があれこれ考えなくても、西鉄や大毎の強力打線をねじ伏せてしまうほど、59年の杉浦投手は完璧、難攻不落の大投手だったとの、ノムさんらしい「ホメ言葉」だ。

 

「生涯一捕手」野村克也が生きがいとしていたのは、傍目には「二線級」にしか見えないピッチャーをエース、主戦クラスに、自らのリードで育て上げることだった。

 

 高橋栄一郎佐藤道郎江本孟紀山内新一松原明夫(福士敬章)などが、「野村再生工場」が生み出した代表的商品だ。ケースは少し違うが、リリーフに活路を見出した江夏豊も、ある程度そのカテゴリーに入れることができるだろう。

 

  いま、少年野球や中学、高校野球などで、どれだけキャッチャーをめざす人たちがいるか、アンケートなどのデータがないのが残念だが、自ら積極的に志願した選手がいるとすれば、やはり城島と古田敦也(前東京ヤクルト)の影響は大きいだろう。

 

 城島のリードとマリナーズ投手陣との相性に話を戻せば、あれは多少「騒ぎ過ぎ」の観がある。

 

 メジャーリーグの歴史で「リード面の能力」が真っ先に評価される歴史上のキャッチャーは、ヨギ・ベラヤンキース)だ。彼は打者としても左打ちのスラッガーで、バットでの評価も高いが、一方でヤンキースに昇格した当初は盗塁阻止能力に難があり、1947年のワールドシリーズでは、ジャッキー・ロビンソンらドジャースの俊足ランナーにいいように走られて、チームは世界一を逃すところだった(4勝3敗で戦後初優勝)。

 

 そのほか、殿堂入りしているキャッチャーの顔ぶれを見ても、ロイ・キャンパネラ(ドジャース)、ジョニー・ベンチ(レッズ)、ゲイリー・カーター(エクスポズ)、ジョシュ・ギブソン(二グロリーグ)などは、現役時代のエピソードとしてまず強肩やブロック、捕球能力、そしてバッティングなどがあげられることが多く、イバン・ロドリゲス(ヤンキース)もこのグループに属するだろう。

 

 現在、リード面にスポットが当たるキャッチャーとしては、ジェイソン・ケンドール(ブリュワーズ)とジェイソン・バリテック(レッドソックス)の名前があげられる。 

 特にケンドールのリードについては、これからCC・サバシアベン・シーツとコンビを組む際、彼らの持ち味をいかに引き出しているか、大いに注目してもらいたい。

 

 

 また、メジャーでは主戦級の投手が正捕手ではなく、いわゆる「パーソナルキャッチャー」とバッテリーを組むケースも見かけられる。ティム・ウェイクフィールドとダグ・ミラベリ(レッドソックス)はナックルボールの捕球が目的で特別なケースだが、古くはスティーブ・カールトン(フィリーズ)がボブ・ブーン(ブレット、アーロン兄弟の父)ではなく、カージナルス時代からの盟友だったティム・マッカーバーと組んでいたし、ブレーブス時代のグレッグ・マダックスハビアー・ロペスがマスクをかぶらない試合が多かった。今年のヤンキースでは、マイク・ムシーナの相手をもっぱらホセ・モリーナが務めている。

 

 キャッチャーと投手陣のあつれきも、別に珍しいことではない。最近ではジャイアンツ時代のA.J.ピアジンスキーがそのリードやコミュニケーション能力を投手陣に酷評され「チームのガン」呼ばわりされていたのが、2005年にホワイトソックスに移籍したとたん、攻守にわたる活躍でチームの世界一に貢献したのが記憶に新しい。

 

 城島にとっては、マリナーズ入団時の監督が、捕手出身のボブ・メルビン(現Dバックス監督)でなかったことも、多少不運な面はあった。これは城島に限らず、一度は契約を更新したメルビンを、2004年シーズン終了後に結局解任したことは、マリナーズフロントの重大な判断ミスで、これによってマリナーズの再建には10年単位の遅れが生じた。

 

 言葉の問題は確かにあるが、パッジ、ホルヘ・ポサダ(ヤンキース)、モリーナ三兄弟など、スペイン語を母国語とするキャッチャーは多い。彼らの場合、同じスペイン語圏出身の投手とバッテリーを組むケースに恵まれているが、外国語で投手と意思の疎通を図る必要がある点では、城島と立場は同じだ。

 

 今後のマリナーズが選ぶ道は二つだ。まず、クレメントを向こう十年の正捕手と決めて、城島を他球団に移籍させること。もうひとつは、城島を正捕手に戻し、フロントと監督の意思として、「彼のやり方に従え」と投手陣に徹底することだ。

 

 今季こそ深刻な打撃不振に陥っているが、二ケタ本塁打、70打点以上が計算できる「打てる捕手」はメジャー全体でも決して多いとはいえないし、ましてあれだけの盗塁阻止能力を有し、ブロックも強い。残してフル出場させても、他球団に出していい見返りを得ても、マリナーズにはかなりの「利益」になる。

 

 たとえば、ニューヨークのどちらかが、城島に目をつけるということはあり得ないだろうか? ヤンキースは手術後のポサダに不安が残るし、メッツもブライアン・シュナイダー(あ、おれと誕生日同じなんだ=笑)は強肩ぶりはともかく、打撃面が物足りないだろう。

 

 勝手に人事を進めて、城島には申し訳ないが、それぐらい彼は素晴らしいキャッチャーだと、今日の試合で改めて強く認識したわけである。

 

 まあ、来年のWBCに向けての最優先課題は、監督人事よりもまず、城島を正捕手として招集することだろうね。

 

 

 

  

 

マスクごしに見たメジャー―城島健司大リーグ挑戦日記
会津 泰成,繁昌 良司
集英社

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6 コメント

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Ditto (ADELANTE)
2008-09-01 22:45:07
> 来年のWBCに向けての最優先課題は、監督人事よりもまず、城島を正捕手として招集すること

Ditto(同感です)

絵文字が、「長嶋さん」×4でした。(^_^) ラッキー
「V]と「B」の発音表記のこと (Ryo Ueda)
2008-09-01 23:09:41
ADELANTE様

ご投稿ありがとうございます。それにしても、いろんなところに足を運ばれていますね。私が言ったことがない場所があまりにも多いのでびっくりしています(笑)。

先日、ブログで書かれていた、スペイン語と英語の「V」と「B」の発音表記のこと、大変興味深かったです。
すなわち、フェルナンド・バレンズエラであって、「ヴァレンズエラ」ではないわけですね。

「ボビー・バレンタイン」の場合は?

おっしゃるとおり、「th」のカタカナ表記はないわけですから、「V」を「ヴ」と表記するのは再検討したいと思っています。


日本語って結構いい加減 (ADELANTE)
2008-09-02 01:21:12
> Fernando Valenzuela

「Z」はスペインのスペイン語では「TH」の音、南米のスペイン語では「S」の音で、スペイン語には「ざじずぜぞ」はありません。

ですので、フェルナンド・バレンスエラがスペイン語での発音だとおもいます。

Venezuelaもベネズエラではなくベネスエラのはずです。

> 「ボビー・バレンタイン」の場合は?

彼は何系なのでしょうか。スペイン系だったら 「ボビー・バレンタイン」でしょうし。(スペイン系の名前にはおもえませんが) 別に、「ボビー・ヴァレンタイン」でもいいとおもうのですが、私は「ヴァヴィヴヴェヴォ」を使わないと決めたので 「ボビー・バレンタイン」で行きます。Wikipediaも「バレンタイン」ですね。

ま、「バレンタイン・デイ」または「バレンタイン・デー」が、商業的に「ヴァレンタイン・デイ」または「ヴァレンタイン・デー」に変わらない限り(チョコレート業界の力は大きい?)、「バレンタイン」のままではないでしょうか。

「バ」と「ヴァ」もそうですが、「デイ」と「デー」の使い方も曖昧ですね。そして 「・」の使い方にしても、日本語って結構いい加減ですね。(私は好きですが)漢字と平仮名の分かち書きもひとそれぞれですし。「わたし」の文筆家もいるし、「私」と書く文筆家もいますよね。
Re:「V」と「B」の発音表記 (ADELANTE)
2008-09-02 01:32:55
追加です。

「V」と「B」の発音表記については、日本人が区別していないのに「バ」と「ヴァ」にする必要があるかという疑問があります。

それに「クリントン」は「Clinton」、つまり発音は「Klinton」であって「Kurinton」ではないので、「L」と「R」の違い以前に、「K」と「KU」の違いがあるのです。これは「あいうえお」と「ん」以外「子音+母音」で構成されている片仮名、平仮名の構成上仕方のないことなのですが。
ポサーダよりも... (jeter)
2008-09-02 01:47:20
>たとえば、ニューヨークのどちらかが、城島に目をつけるということはあり得ないだろうか?

ポサーダコンバートをかねてより熱望している
当方は、絶対にありだと思ってます。
早ければこの夏あると勝手に思ってましたが、
ドンプロウスキーの誘いに乗っかってしまった
ので、現実味はなくなってしまいましたが...
ただ来シーズンのスターターの顔ぶれ如何で、
ややこしいのがムッシーナだけで、かつまた井川
を処分し損ねたりしようものなら、ぜひ獲りに行
ってほしいところです。
「ねこでこ茶屋」店主さま (Ryo Ueda)
2008-09-03 10:55:33
エントリーをご紹介いただき、ありがとうございました。
「ねこでこ茶屋」
http://nekodeko.exblog.jp/

コメント・TB機能を設定されていないようですので、こちらにて御礼申し上げます。

>この人はかなり辛口な記事を書く人なんだけど(もちろんイチローにも厳しい^^;)

そんなことはないですよ。イチローになんか甘い甘い(笑)。

「まかない料理」の件ですが、けっしてマリナーズの投手陣が本当にどうしようもない、といっているわけではありませんよ。
「ミシュラン東京」の三つ星に選ばれた寿司職人の小野次郎さんは、たとえ自分が確信をもって市場で選んできた魚でも、(けっして品質が悪くなるからというわけでなく)店に出さないことがあります。次郎さんはそれを「まかない」につかっているんですね(あれだけでもそのままメニューになりそうなんですが)。
マリナーズの現在の(とにかく試合をつくることのできる)投手陣は、小野さんがまかないに使う素材と同じで、時期やタイミングによっては、立派に「表メニュー」としてお客さんの前に出せる、ということを言いたかったわけです。

歌舞伎もお好きなようですね。「平成中村座」とか、幸四郎丈が東大寺大仏殿で演じる「勧進帳」とか、見たい演目はいっぱいあるんですけど、時間とお金が……。

これからも、ご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

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