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「U2211H」実力診断――IPSパネル搭載で1万円台の21.5型フルHD液晶

2011-02-11 23:57:50 | 日記
 デルの液晶ディスプレイは大量生産によるコストダウンを武器に、日本市場でも買い得感が高いラインアップをそろえており、幅広いユーザーに注目されている。先日はその中でも特に目立つ27型ワイドモデル「U2711」を取り上げたが、今回は21.5型ワイドモデル「U2211H」をチェックしていこう。

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 U2211HはU2711と同様、デル製ディスプレイでは上位クラスの「デジタルハイエンドシリーズ」に属する。ただ、クリエイティブワークも含むマルチユースを想定した大型・多機能モデルである27型ワイド(2560×1440ドット)のU2711に対して、U2211Hはパネルサイズが21.5型ワイド(1920×1080ドット)で、仕様も比較的シンプルにまとめており、メインストリームかやや下の層までをカバーする。

 発売したのは2010年6月ごろだが、ここに来てもともと安価だった価格がグッと下がっている。2010年8月31日現在、デルのオンラインでの直販価格は1万6800円。配送料を合わせても1万8000円台で購入できてしまう。Webで眺めるだけのつもりが、つい衝動買いしてしまいそうな低価格だ。

 今どき、1万円台後半の21.5型フルHD液晶ディスプレイなんて珍しくないと思うかもしれないが、それはTNパネル搭載機でのこと。U2211Hは広視野角だが高コストになりがちなIPSパネルを採用している。安価なe-IPSパネル搭載機が増えている昨今だが、それでもここまで安くなるとは驚きだ。

●ノングレアのIPSパネルを採用、色域はsRGB相当

 まずは基本スペックをざっと追っていこう。液晶パネルは光沢がないノングレアタイプを採用し、サイズは21.5型ワイド(475.2×267.3ミリ)、アスペクト比は16:9、画面解像度は1920×1080ドットのフルHDだ。画面サイズに対して解像度が高いため、ドットピッチは0.247ミリと狭く、ドットを感じない精細な表示が得られる半面、フォントやアイコンのサイズは小さくなる。細かい表示が苦手なユーザーは、店頭で同サイズの液晶ディスプレイを一度確認してみるとよいだろう。

 輝度は250カンデラ/平方メートル、コントラスト比は1000:1(ダイナミックコントラスト比は1万:1)だ。輝度はまずまずで、コントラスト比は低価格なIPSパネル搭載機としては高いといえる(IPSは構造上、コントラストを高めにくいため)。調整の幅にも余裕があり、明るすぎたり、暗すぎたりといった不満は出ないだろう。

 IPSパネルということで、視野角は上下/左右とも各178度と広く、さすがに文句がない。応答速度はグレーからグレーの中間階調域で8msだ。IPSパネルは応答速度を高速化しにくいため、最近の高速応答をウリとしたTNパネルには見劣りする。

 表示色は約1670万色に対応する。色域は広からず狭からず、ほぼsRGB相当といってよい。NTSC比はCIE1976で82%(CIE1931では72%)、sRGBカバー率は100%をうたっている。Adobe RGBなどの広色域表示はサポートしていない。バックライトは2本のCCFL(冷陰極蛍光ランプ)によるエッジライト方式を採用する。

●スタンドは十分な可動域があり、縦位置表示もサポート

 ボディのデザインはシンプルだ。本体サイズは514.4(幅)×184.1(奥行き)×347.6~447.6(高さ)ミリ、重量は約6.45キロとなっている。ドットピッチが狭い半面、フルHDの解像度を確保しながら省スペース性が高い点は見逃せない。

 スタンドの調整機能は充実している。上21度/下4度のチルト、左右で各45度のスイベル、100ミリ範囲の昇降が可能だ。スイベル用のターンテーブルは台座の底面ではなく、ネック部分の付け根にあるので、画面を左右に振る場合でも机上に置いたものと干渉しないのはよい。画面を最も下げた状態だと、液晶ディスプレイ部の下端は設置面から約50ミリの位置になる。フレームの幅は約18ミリなので、表示域の下端は約68ミリの位置だ。ここまで下がれば、画面の位置が高すぎて疲れるということはないだろう。

 縦位置表示もサポートしており、液晶ディスプレイ部は時計回りに90度回転できる。各動作はスムーズに行えるうえ、位置を固定した際にもふらつきなどの不安はない。全般に扱いやすく、よくできた設計だ。なお、スタンドは工具いらずで着脱できる仕組みで、スタンドを外してVESA規格(100ミリピッチ)準拠のフレキシブルアームなどを装着することもできる。

 背面の入力端子はDVI-D(HDCP対応)、アナログD-Sub、DisplayPortが下向きに並ぶ。このサイズの液晶ディスプレイに採用例が多いHDMIは搭載していない。USB 2.0のハブ機能も有しており、背面にアップストリーム×1、ダウンストリーム×2、右側面にダウンストリーム×2の端子を装備している。スピーカーは内蔵しないが、別売の増設スピーカー(サウンドバー)を底部に装着するためのフックと電源端子は用意されている。

●OSDメニューの設定項目はカスタマイズ可能

 操作ボタンは液晶ディスプレイの右フレームに配置されている。縦に並んだ4ボタンのいずれかを押すと、OSDの簡易メニューが起動する仕組みだ。簡易メニューの項目は各ボタンに対応しており、上からショートカット1、ショートカット2、OSDメインメニュー、終了となる。デフォルトでは、ショートカット1で画質モード(プリセットモード)のメニュー、ショートカット2で輝度/コントラストのメニューを呼び出せる。もちろん、ショートカットをほかのメニューに変更することも可能だ。

 OSDのメインメニューには、輝度/コントラスト、自動調整、入力信号、色設定、画面設定、その他の設定、カスタマイズ(ショートカットの設定)といった項目を用意。色設定のモード選択では、グラフィックス(PC用)とビデオ(映像機器用)の2種類が選択可能だ。グラフィックスモードでの画質モードは標準、マルチメディア、ゲーム、暖色、寒色の5種類とユーザーカスタムモードを1つ用意する。ユーザーカスタムではRGB各色の増減による調整が行える。一方のビデオモードはムービー、ゲーム、スポーツ、自然色の4種類を備える。

 ガンマはPCとMacの設定があるのみで、色温度やガンマの数値での設定には対応しない。また、低価格な製品のためか、画面設定のワイドモード(スケーリング機能)は4:3(アスペクト比固定拡大)または全画面フルスクリーン拡大があるのみだ。スケーリングはグラフィックスカードのドライバ機能を利用したい。

●ガンマ特性と色域を調べる

 次は実機の表示をキャリブレーターで測定し、ガンマ特性と色再現域を確認しよう。測定にはエックスライトのキャリブレーター「i1Pro」(製品パッケージとしては「i1Basic」)を用いた。検証したのは2点だ。まずはi1ProでU2211Hをソフトウェアキャリブレーションし、測定結果のグラフからプリセットモードのガンマ特性を調べた。次に、Mac OS XのColorSyncユーティリティを用いて、i1Proで作成したプロファイルをsRGBの色域に重ね、色再現域をチェックした。

 i1Proでの測定結果を見ていこう。U2211Hは画質モードにsRGBの設定がないため、標準モードで測定を行った。目標値は色温度を6500K、輝度を80カンデラ/平方メートルとしている。標準モードでは色の調整ができないため、そのままの状態で測定している。結果はRGB各色ともガンマが直線的に重なっており、意外にもといっては失礼だが、まずまずだ。中間階調から明部にかけてズレが生じているが、低価格帯の製品であることを考えれば、許容できる範囲ではないだろうか。

 一方、ColorSyncユーティリティで見た色再現域はsRGBの色域から少しズレてしまった。画質モードの名称がsRGBではないため、sRGBの再現性は追求していないのかもしれないが、公称スペックではsRGBカバー率100%をうたっていることもあり、ユーザーによっては色域のズレが気になるかもしれない。より正確な色再現を求めるならば、ユーザーカスタムモードを用いて、細かくキャリブレーションを行うほうがベターだろう。

●ディスプレイキャリブレーションの基本キット「i1Basic」

 エックスライトの「i1Basic」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイのキャリブレーションに機能を特化したパッケージだ。名前の通り、i1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。同じくスペクトル方式の「ColorMunki」と比較しても、さらに高い精度が得られる。

 i1Basicをベースとして、より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じてソフトウェアの機能を拡張することも可能だ。

 日本国内では加賀電子が取り扱っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basicの価格は16万9800円だ。

●目視で画質をチェックしてみると……

 測定結果を除く部分は目視で評価した。表示の均一性には多少の難があり、今回入手した機材では左側が明るく、右側が暗い印象を受けた。色もこの範囲で微妙に変化しているので、フォトレタッチなどで厳密に色を調整する作業には少し厳しい。

 また、液晶パネル表面の粒状感はそれなりに存在する。筆者はあまりザラつきが気にならないほうだが、U2211Hでは画面近くで視線を動かすと、粒状が目に付くことがあった。慣れれば軽減されるとは思うが、液晶の表面処理によって目が疲れやすいと感じるようなユーザーは、できれば実機を確認しておいたほうがよいだろう。

 視野角についてはさすがに文句がない。イスにもたれかかろうが、寝そべろうが視認性は大きく変わらない。この広視野角が特に生かされるのは、縦位置表示で据え置いた場合だろう。TNパネルの縦位置表示は視野角の狭さが際立ち、VAパネルでも画面端の変化に不満が残ることもあるが、IPSパネルを搭載したU2211Hは縦位置表示でも視野角起因のグラデーションは生じず、問題なく使用できた。

 前述の通り、応答速度は中間階調で8msと速くないが、IPSパネルは階調による応答速度の差が小さいこともあり、高速に移動する映像で偽色や不自然さが目立つことはなく、フルHD映像コンテンツなどはそれなりに視聴できる。ただ、応答速度が最優先されるゲーム用途などには向かないだろう。

●安価なIPSパネル搭載のフルHDディスプレイとしておすすめ

 以上、U2211Hを一通りチェックした。今回試した機材では、表示ムラとsRGB色域からのズレが少し気になったものの、色再現性を追求する用途に使わないのであれば、その安さから幅広いユーザーにおすすめできる。

 ライトユーザーならば十分にメインディスプレイとして使えるだろうし、コアユーザーでも縦位置表示の有用性などからサブディスプレイとして活用できるだろう。低価格と広視野角を存分に生かし、2台同時に導入して、デュアルディスプレイ環境で使うという手もある。

 しかも、この価格帯ながら3年間のプレミアムパネル保証(保証期間中に1つでも輝点のドット抜けが見つかった場合はディスプレイを無償交換)まで付いてくるのだ。現行のデル製液晶ディスプレイのラインアップでは、U2711と並んで買い得度が高い旬なモデルといえる。【榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia】

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