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<50字~30字>
人一生所遭 有険阻 有担夷 有安流 有驚瀾 是気数自然 竟不能免 即易理也 人宜居而安焉 玩而楽焉 若趨避之 非達者之見
=出典:『言志後録』(佐藤一斎)
【読み】 <人の一生遭ふ所には、険阻有り、担夷有り、安流有り、驚瀾有り。是れ気数の自然にして、竟に免るる能はず。即ち易理なり。人は宜しく居つて安んじ、玩んで楽むべし。若し之を趨避せんとするは、達者の見に非ず。>※担夷=平らかなること。
不知香積寺 数里入雲峰 古木無人径 深山何処鐘 泉声咽危石 日色冷青松 薄暮空潭曲 安禅制毒竜
=出典:王維・過香積寺
【読み】 <香積寺を知らずして数里雲峰に入る 古木人径無く深山何処の鐘 泉声危石に咽び日色青松に冷かなり 薄暮空潭の曲(ホトリ)安禅毒竜を制す>
【大意】 香積寺を知っていたわけではないが、ふらりと山の方へ出かけた。道を見失うような古木が茂り、どこからかわからぬ鐘の音が山の峰から聞こえる。切り立った岩のあいだを流れる泉水の音、日光はさわやかに松の緑に冷ややかである。薄暗がりのふちの片隅に、ひっそりと座禅の僧が心頭滅却の境地で座っていた。
清晨入古寺 初日照高林 曲径通幽処 禅房花木深 山光悦鳥性 潭影空人心 万籟此倶寂 惟聞鐘磬音
=出典:常建・破山寺後禅院
【読み】 <清晨古寺に入れば 初日高林を照らす 曲径幽処に通じ 禅房花木深し 山光鳥性を悦ばしめ 潭影人心を空しくす 万籟此に倶に寂たり 惟だ鐘磬の音を聞くのみ>
【大意】 さわやかな早朝、古い寺の境内に入ると、朝の陽光が高い梢を照らしている。竹の小径は、奥深い静かな場所に通じ、禅房は、花咲く木々に囲まれている。山の光は鳥の心を喜ばせ、淵に映る影は人の心を清らかにしてくれる。 すべての物音はここで寂としてやみ、ただ寺の鐘声の響きだけだ。
宛轉一臂斷 流落二喬輕 覆水已無及 通家如有情 歸來粧粉暗 啼罷涙痕清 莫道紅裙怯 官家盛甲兵
=出典:明/徐渭・宛轉詞
【読み】 <宛轉一臂(イッピ)斷ち 流落二喬(ニケウ)輕し 覆水已(スデ)に及ぶ無く 通家情有るが如し 歸來粧粉暗く 啼き罷めば涙痕清し 道(イ)ふ莫れ紅裙(コウクン)怯なりと 官家甲兵を盛んにす>
【大意】くるりと父は片腕を切り落とされ、おちぶれてさまよう美しい姉妹の薄命。断たれた仲はどうしようもないが、昔からのつきあいがあるのでどうして平気でいられよう。帰った人の化粧は汚れても、泣き止んだ涙のあとは清い。紅い裙の美人がおびえていると言わないでおくれ、おかみは戦争の準備に余念がないのだから。(めぐり変化して哀しいことを歌う。裙=すそ。)
横塘渡 郎西來 妾東去 感郎千金顧 妾家住紅橋 朱門十字路 認取妾夷花 莫過楊柳樹
=出典:明/袁宏道・横塘渡
【読み】 <横塘渡 郎は西より來り 妾は東に去る 郎の千金の顧に感ず 妾が家は紅橋に住す 朱門十字路 妾夷の花を認取して 楊柳の樹を過ぐる莫れ>
【大意】 横塘の渡し、あなたは西から来、私は東へ去ろうとしたが、あなたの好意が嬉しい。私は紅い橋のたもとに住んでいるから、楊柳の樹を通り過ぎずに寄って下さい。(横塘の渡し場で誘う。)
鶯花茂而山濃谷艷 総是乾坤之幻境 水木落而石痩崕枯 纔見天地之真吾
=出典:菜根譚
【読み】<鴬花茂くして山濃(コマ)やかに谷艶(エン)なる、総てこれ乾坤の幻境なり。 水木落ちて石痩せ崕(ガケ)枯る、わずかに天地の真吾を見る>
【大意】鶯が鳴き、花が咲き乱れ、山も谷も活き活きとするが、これは大自然の仮の姿である。谷の水は枯れ、木々は葉を落とし、石の苔は消え、川岸の木々も枯れ果てた状態に大自然の真の姿が見える。 (人間も現役で働いているのは仮の姿で、老後こそ人間の本当の姿ではないのだろうか。人生は老後のためにあると言えるのが達人なのだ)
蔵巧於拙 用晦而明 寓清于濁 以屈為伸眞渉世之 一壷蔵身 之三窟也
=出典:菜根譚
【読み】 <巧を拙に蔵(カク)し、晦(カイ)を用いて明とし、清を濁に寓し、屈を以って伸と為す。真に世を渉(ワタ)るの一壷にして、身を蔵するの三窟なり>
【大意】 優れた才能がありながら、つまらない人間のように振る舞い、聡明さを愚か者のように見せて腰を低くしているようで実は伸び伸びとしている。このような世渡り術が救命胴衣となり、身を隠す3つの隠れ家となる。(切れ者は警戒され、愚鈍は無防備となり、自慢と派手は下衆な連中の特徴。本当に知恵があれば擬態で生きるのが安全である。処世術の極意。*狡兎三窟=ズル賢いウサギは3つの隠れ家を持つという喩え。)
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<七言・28字>
峨眉山月半輪秋 影入平羌江水流 夜発清渓向三峡 思君不見下渝州 =出典:李白・峨眉山月歌
【読み】<峨眉山月半輪の秋,影は平羌江水に入りて流る 夜清溪を發して三峽に向ひ,君を思へども見ず渝州に下る>
◎峨眉山には半月が出ている秋(の宵) 月影は平羌江に沈んで江水は流れる 夜に清渓の駅を発って三峽に向かう 君を思うが会わないで渝州へ下っていく。
謂城朝雨浥軽塵 客舎青々柳色新 勧君更盡一杯酒 西出陽関無故人 =出典:王維・送元ニ使安西
【読み】<渭城の朝雨 軽塵を潤おし 客舎青々柳色新たなり 君に勧む更に尽せ一杯の酒 西のかた陽関を出ずれば 故人無からん (元二の安西に使いするを送る)>
◎朝から渭城に降っている雨が黄塵をしっとりうるおしている。別れの宴をはる旅舎の柳の色は一際緑を増している。遠く旅立つ君よ、さあ、もう一杯杯を重ねたまえ。ここから西、陽関を出れば知友もいないだろうから。
月落烏啼霜満天 江楓漁火對愁眠 姑蘇城外寒山寺 夜半鐘聲到客船 =出典:張継・楓橋夜泊
【読み】<月落ちて烏啼く霜天に満つ 江楓漁火愁眠に對う 姑蘇城外寒山寺 夜半の鐘聲き客船に到る>
◎月が沈み夜明け直前に烏が啼き、霜が一面におりており不吉である。川の橋のそばに漁り火をつけた船が見える。夜中に姑蘇の城の外にある寒山寺の鐘が聞こえ、愁いながら寝た。この朝船に乗りこの地を離れた。
遠上寒山石径斜 白雲生処有人家 停車坐愛楓林晩霜葉紅於二月花 =出典:杜牧・山行
【読み】<遠く寒山に上れば石径斜めなり 白雲生ずる処人家有り 車を停めて坐(ソゾロ)に愛す楓林の晩(クレ)霜葉は二月の花よりも紅なり>
◎遠く寂しい山に登っていくと、斜めの石の小道が続いている。はるか上の白い雲が生じるところには人家がある。車を止めて、そぞろに夕暮れの楓の林を愛でてながめた。霜に紅葉した楓の葉は二月に咲く花にくらべて、いっそう赤かった。
獨上江樓思渺然 月光如水水連天 同来翫月人何處 風景依稀似去年 =出典:趙嘏・江樓書感
【読み】<独り江樓にのぼれば思い渺然 月光水の如く水天に連なる ともに来って月を翫(モテアソ)びし人いずれの処ぞ 風景は依稀として去年に似たり>
◎只独り江のほとりの桜にのぼって眺めていると、思い出は尽きない。眼前、月光は水の如く冴え、江水は果てしなくひろがる。あの日、共に月見をした人は今いずこにいるのだろう。風景はさながら去年と変わりはないのに。
問余何意栖(棲)碧山笑而不答心自閑 桃花流水窅然去 別有天地間 =出典:李白・山中答俗人
【読み】<余に問う何の意(ココロ)にて碧山に住むと 笑うて答えず心自ずから閑かなり 桃花流水窅然(ヨウゼン)として去り 別に天地の人間に非る有り>
◎ある俗人が私に、何のためにこんな樹ばかり茂った山の中に住んでいるのかとたずねた。答えずに冷笑しただけであったが、私の心はそんなことにかかわりなく静かなものだ。ごらんなさい、のんびりとしたあの桃花流水を。ここは俗物の住む世間とはちがった別天地なのだ。
故人西辭黄鶴樓 煙花三月下揚州 孤帆遠影碧空盡 惟見長江天際流 =出典:李白・黄鶴樓送孟浩然之廣陵
【読み】<故人西のかた黄鶴樓を辭し 煙花三月揚州に下る。孤帆の遠影碧空に盡き 惟だ見る長江の天際に流るるを。>
◎古い知人(孟浩然)が、西方にある黄鶴樓を辞去し、春霞がたって美しい三月に、下流の揚州へ下って行く。ひとつだけの帆掛け船の姿が遙か彼方の青空に消えてしまい、天の際まで流れる長江がただ見えるだけだ。
瀟湘何事等閑回 水碧沙明両岸苔 二十五弦弾夜月 不勝清怨却飛来 =出典:銭起・帰雁
【読み】<瀟湘より何事ぞ等閑に回る 水は碧に沙(スナ)は明らかに両岸苔むす二十五弦夜月に弾ぜば 清怨に勝えずして かえって飛び来たらん>
◎雁よ美しい瀟湘を等閑(なおざり)にしてなぜ帰るのですか。水は青々とし砂浜は明るく両岸は苔むしているのに。湘水の女神が二十五絃の琴を月夜に奏でるので、清らかな怨みの調べに堪えかね帰り飛ぶのです。
朝辞白帝彩雲間 千里江陵一日還 両岸猿声啼不住 軽舟巳過萬重山 =出典:李 白・早発白帝城
【読み】<朝に辞す白帝彩雲の間 千里の江陵一日にして還る 両岸の猿声啼いて住(ヤ)まず 軽舟己に過ぐ万重の山>
◎朝焼け雲に映し出された白帝城に別れをつげて三峡を下り、千里離れた江陵に1日で着いた。途中では両岸の猿声が絶え間なく聞こえていたが、私の乗った小舟は幾重にも重なった山々の間を通りすぎていった。
巴陵一望洞庭秋 日見孤峰水上浮 聞道神仙不可接 心隨湖水共悠悠 =出典:張説・送梁六
【読み】<巴陵一望洞庭の秋 日に見る孤峰の水上に浮ぶを 聞道(キクナラク)神仙接すべからずと 心は湖水に隨って共に悠々>
◎巴陵(洞庭湖の東畔)から見渡すと洞庭湖は早や秋で、湖中の孤峰(君山)が浮かんで見える。この山の神仙には近寄れないそうだが、君にもいつ又会えるやら。君を見送る我が心は、果てしなく広がる湖水と共にたゆたう。
盧山煙雨浙江潮 未到千般恨不消 到得帰来無別事 盧山烟雨浙江潮 =出典:蘇軾の詩句
【読み】<盧山は煙雨浙江は潮 未だ到らずば千般の恨(愁)を消せず 到り得帰り来れば別事なし盧山は烟雨浙江は潮>
◎誰もが一度は行ってみたい盧山や浙江は、行かなければ悔いるようだが、実際に行ってみると得るものもなく行かなくても同じことだった。悟ったからといって何の変わりはないものだ。
囘首七十有餘年 人間是非飽看破 往來跡幽深夜雪 一炷線香古匆下 =出典:良寛・草庵雪夜作
【読み】<首(コウベ)を囘(メグラセ)ば七十有餘年 人間の是非看破に飽く 往來の跡幽(カス)かなり深夜の雪 一炷の線香古匆の下>
◎七十余年をふりかえれば、この人の世の是非善悪を見破り道理を説くことには、飽きてしまった。行き来する道の足跡は、深夜に降る雪のために幽かになって一つの線香の火が古びた窓の下にある。(それは、わたし・良寛の生命の微かなともしびでもある)
萬岳雲晴歸一眸 千年紺碧大摩周 總忘苦樂人間事 湖上閑吟極勝游 =出典: 永平寺泰禅・摩周湖第一展望台文学碑
【読み】<萬岳雲晴れて一眸に帰す 千年紺碧の大摩周 総てを忘れる苦楽の人間事 湖上閑を吟じて勝遊を極める>
笠置山寒貉一邱 延元陵古水東流 南朝無限傷心涙 灑向楠公墓畔秋 =出典:楠公墓前の漢詩
【読み】<笠置山は寒貉一邱 延元陵は古びて水東に流る 南朝限り無し傷心の涙 麗(ソソ)いで向かう楠公墓畔の秋>
日照香爐生紫煙 遙看瀑布挂長川 飛流直下三千尺 疑是銀河落九天 =出典:李白・望廬山瀑布
【読み】<「廬山の瀑布を望む」<日は香爐を照らし紫煙生ず、遙かに看る瀑布の長川に挂くるを。飛流直下三千尺、疑ふらくは是れ銀河の九天より落つるかと>
◎「廬山の瀑布を望む」太陽の光が香炉峰を照らして紫色がかった雲煙が湧き起こり、遥か眺めやると、長い川に滝が掛かっているかのようである。飛ぶような滝の流れが真っ直ぐに三千尺おちてきて、まるで銀河が天の最も高いところから落ちてきたのかと疑った。
荊棘林中線路通 等閑踏破太虚空 頓超明月清風境 安住菅湯爐炭中 =出典:『槐安国語』。第3句第4句『禅林語句抄』
【読み】<~~ ~~。頓に明月清風の境を超え、菅湯爐炭の中に安住す。>
翻手作雲覆手雨 紛紛輕薄何須數 君不見管鮑貧時交 此道今人棄如土 =出典:杜甫・貧交行
【読み】<手を翻(ヒルガヘ)せば雲と作(ナ)り 手を覆(クツガヘ)せば雨となる。紛紛たる輕薄 何ぞ數ふるを須(モチ)ゐん。君見ずや管鮑(カンポウ)貧時の交はりを。此の道今人(コンジン)棄つること土の如し。>
◎貧交行:貧しい時代の交友の歌。=情況に合わせて、態度をころころと変える友人たちのさま。入り乱れる数多くの軽薄なさまは数える必要もない。ご存じでしょう、管仲と鮑叔牙の貧しい時代の交わりを。このような管鮑の交友の精神は、現在の人々は土くれのように棄ててしまった。
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<五言・20字>
春眠不覚暁 処処聞啼鳥 夜来風雨声 花落知多少 =出典:孟浩然・春暁詩
【読み】<春眠暁を覚えず 処処啼鳥を聞く 夜来風雨の声 花落つること知る多少>
◎春の心地よい眠りのため、明け方がいつ来たのがわからない。あちらこちらで鳥が鳴くのが聞こえる。昨夜は雨や風の音が聞こえたが、どれだけの花が散ったのかわからない。
千山鳥飛絶 萬徑人蹤滅 孤舟蓑笠翁 獨釣寒江雪 =出典:柳宗元・江雪
【読み】<千山鳥飛ぶこと絶え 萬径人蹤滅(ジンショウキ)ゆ孤舟蓑笠(サリュウ)の翁独り釣る寒江の雪>
◎両岸に絶壁が迫り鳥影もなく、ましてや人跡もとだえている。その谷間の寒江に、蓑笠をつけた老人がたった独り小舟で釣りをしている。
松下問童子 言師採薬去 只在此山中 雲深不知處 =出典:賈島・尋隠者不遇
【読み】<松下童子に問う 言う師は薬を採りに去(ユ)けりと只だこの山中に在らん 雲深くして処を知らず>
◎作者は既知の隠者を訪問したのではなく、誰かに聞いたところの隠者を訪ねていったのであろう。けれども会えなかった。最後まで童子の答えとしても通じる。
獨坐幽篁裏 弾琴復長嘯 深林人不知 明月來相照 =出典:王維・竹里館
【読み】<独り幽篁の裏に坐し 琴を弾じ復(マ)た長嘯す 深林人知らず 明月來たりて相照らす>
◎誰もたずねて来ない竹やぶの奥の離れで、気儘に爪びいたり歌ったりするのは楽しい。相手になってくれるのはお月様だけ。
偶来松樹下 高枕石頭眠 山中無暦日 寒尽不知年 =出典:太上隠者・答人
【読み】<偶(タマ)たま松樹の下に来り 枕を高うして石頭に眠る山中暦日なし 寒尽くるも年を知らず>
◎通りがかりの松の樹の下 石を枕に眠る 山の中には暦もなく 月日のたつのも忘れている。(陸游詩の「野人暦日なし、鳥啼いて四時を知る・と同意)
白日依山盡 黄河入海流 欲窮千里目 更上一層楼 =出典:王之渙・登鸛鵲楼
【読み】<白日山に依りて盡き 黄河海に入りて流る 千里の目を窮めんと欲し 更に上る一層の樓>
◎白昼の空は山の端に尽き 黄河は海の中まで流る 大地の果てを見渡したくて 上の階へとまた登りゆく。
空山不見人 但聞人語響 返影入深林 復照青苔上 =出典:王維・鹿柴
【読み】<空山人見えず 但だに聞く人語の響くを 返影 深林に入り 復た照らす青苔の上を>
◎山中に人の姿はみえず ただ人の話し声だけが響いてくる 夕陽が林の深くまで差し込み 青苔を照らしている。
衆鳥高飛尽 孤雲独去閑 相看両不厭 只有敬亭山 =出典:李白・独坐敬亭山
【読み】<衆鳥高く飛びて尽き孤雲独り去つて閑かなり 相看て両に厭はざるは只だ敬亭山有るのみ>
◎飛ぶ鳥の影、空高く消え 浮き雲ひとつ長閑(のどか)に流る たがいに向き合い飽きないものは私がためには敬亭山のみ
長信多春草 愁中次第生 君王行不到 漸與玉階平 =出典:明・謝肇淛・春怨
【読み】<長信春草多く 愁中次第に生ず 君王行き到らず 漸く玉階と平らかなり>
◎長信宮には若草が多くなり、それが愁いの空気の中でもどんどんのびる。天子がおいでにならないから、段々玉で造った階段と同じほどの高さになってしまう。
明月憐團扇 西風怯綺羅 低垂雲母帳 不忍見銀河 =出典:明・謝肇淛・秋怨
【読み】<明月団扇を憐れみ 西風綺羅怯たり 低く雲母の帳を垂れて 銀河を見るに忍びず>(春怨と同じく、捨てられた女の悲しみを詠っている)
◎明月は団扇を憐れみ、秋風を軽く美しい絹の着物をまとった女が恐れる。雲母で作ったとばりを低くおろして銀河を見るのに忍びない。
吾心似秋月 碧漂清皎潔 無物堪比倫 教我如何説 =出典:禅語
【読み】<吾が心秋月に似たり 碧潭清うして皎潔たり 物の比倫に堪えたる無し 我をして如何が説かしめん>
◎私達の心は秋の明月のように円満無欠であり、緑色の深淵に照り映えて清く輝いている。これはあくまでたとえであって結局は何物にも比べることは出来ず、また言葉で説明し尽くすことは出来ない。 人みな仏になる性質をもっていることを、月にたとえている禅語です。
本来無東西 何処有南北 迷故三界城 悟故十方空 =出典:弘法大師空海・四句の偈
【読み】<迷うが故に三界は城、悟るが故に十方は空、本来東西は無し、何処にか南北有らん=めいこさんがいじょう ごこじっぽうくう ほんらいむとうざいがしょうなんぼく>
◎迷うから、そこに壁があるように感じる。迷わなければ、障壁はない。そもそも、本来、東と西の区別は無い。だとすると、南と北の区別も無い。要は、自分の気持ちの持ち方一つである。
江碧鳥逾白 山青花欲燃 今春看又過 何日是帰年 =出典:杜甫・絶句
【読み】<江(コウ)碧(ミドリ)にして鳥逾々(イヨイヨ)白く 山青くして花然えんと欲す 今春看(ミ)て又過ぐ 何れの日か是れ帰年ならん>
春水滿四澤 夏雲多奇峰 秋月揚明輝 冬嶺秀孤松 =出典:陶淵明・四時歌
【読み】<春水四澤に滿ち 夏雲奇峰に多し。秋月明輝を揚げ 冬嶺孤松を秀づ>
◎春の水が四方の沼沢に満ちて、夏の雲は奇峰からたくさん湧き上がってくる。秋の月は輝かしさを発揚し、冬の山の嶺々は一本だけある松の木をひときわ高く聳えさせている。
天下傷心處 勞勞送客亭 春風知別苦 不遣柳條障 =出典:李白・勞勞亭
【読み】<天下 心を傷ましむるの處 勞勞 客を送るの亭 春風別れの苦なるを知り 柳條をして青からしめず>
◎(現在の南京にある労労亭は歴史上)国中の心をいたましめる処だ。旅をする人を見送り(迎えてきた)宿である。春風は多くの別離の苦しみを記憶している。(別れの哀しみがあまりにも深いので)柳を青くさせないでいる。
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<19字>
林間松韻 石上泉聲 静裡聴來 識天地自然鳴佩 =出典:菜根譚
【読み】<林間の松韻、石上の泉声 静裡に聴き来たりて、天地自然の鳴佩を識る>
◎林の中で聞こえてくる、松風の響きや岩の間を流れ聞こえてくる泉の音(声)は、心静かに聞き入ってみると、天地自然の素晴らしい音楽である。
<17字>
山之高峻処無木 而谿谷廻環 則草木叢生 =出典:菜根譚
【読み】<山の高峻なる処には木なし、而して谿谷廻環すれば、草木叢生す>
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