メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ロッシーニ「オリー伯爵」(メトロポリタン)

2012-05-05 11:30:47 | 音楽一般

ロッシーニ:歌劇「オリー伯爵」

指揮:マウリッツィオ・ベニーニ、演出:バートレット・シャー、衣装:カトリーヌ・ズーバー

ファン・ディエゴ・フローレス(オリー伯爵)、ディアナ・ダムラウ(女伯爵アデル)、ジョイス・ディドナート(小姓イゾリエ)

2011年4月9日 メトロポリタン歌劇場、2012年4月WOWOW放送録画

 

初めて見るもの。メトロポリタンでも初だとか。ロッシーニ(1792-1868)が最後のオペラ「ウィリアム・テル」(1829)の前年に書いたというから、すでに200年近く前の作品になる。

 

筋はかなり破天荒、手を抜いた芝居脚本のようなもので、十字軍に男たちが皆いってしまったところにいる女伯爵アデル、そこへ女たらしのオリー伯爵が身分を偽って入ってくるが、実はアデルに恋しているオリーの小姓イゾリエも来ていて、二人はお互いを怪しみながら知らぬふりをする。オリーは最初失敗するが懲りずに今度は男たちが変装した修道女の団体として入り込んで、、、という、まあ細かいところは気にしないで見るほうがいいコメディ。

 

演出もそれを考えてか、舞台の上に舞台をつくり、観客はいいかげんな作りの劇中劇を楽しむという趣向にしている。結論からいうと、音楽的によくできた上演なら、これは余計なお世話といえるかもしれない。

 

見どころ聴きどころは、フランス語で主役三人が延々と続けるベルカントの競演。特にオリー役のフローレスは今いちばん期待されている人気テノールだそうで、なるほどこれだけ声を聴いているだけで快感という歌手はあまりない。ほかの二人もよくて、三人がからんでくんずほぐれつのラブシーンを演じながら歌う三重唱は、心地よく、また大いに笑える。

 

もう一つ、衣装は劇中劇ということもあってあまり時代考証にとらわれず(?)作ったそうだが、形、色、登場人物相互の色の対照など、評判どおり素晴らしい。

 

ロッシーニのオペラはこの30年くらいの間に、「セヴィリアの理髪師」、「ウィリアム・テル」以外の多くの作品が上演されるようになった。これはオペラを声楽を気楽に楽しむ風潮からか。

 

「オリー伯爵」は少し前に作られた「ランスへの旅」から流用されたメロディーが多いらしい。「ランスへの旅」の名前は以前から知っていたがまだ聴いていない。この種のものは映像とともにでないと楽しめないだろうから、こっちもMETでやってくれることを期待しよう。


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