メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

細雪(1959年 大映)

2006-12-24 18:34:40 | 映画

「細雪」(1959年、大映、105分)
監督: 島耕二、原作: 谷崎潤一郎、脚本: 八住利雄
轟由紀子、京マチ子、山本富士子、叶順子、信欣三、山茶花究、川崎敬三、根上淳、藤田佳子、菅原謙二

大映(永田雅一)製作のオールスター・キャスト映画といったらいいだろうか。少し前に書いたこの長い原作を2時間以内にまとめて娯楽性をもたせるわけだから、映画化にあたってはかなり大胆な変更を行っている。
 
まず時代設定は、太平洋戦争前の数年から戦後の落ち着き始めた時期に変え、そしてこの四姉妹(上から順に轟、京、山本、叶)の性格と役割については、有名女優4人の(特に下の2人の)効果が出るようにしている。
 
従って、四女妙子(叶順子)の色恋沙汰というべきものと、三女雪子(山本富士子)の縁談模様が中心となる。ここで妙子の話は原作にかなり忠実であるのだが、原作ではもっと優柔不断で読んでいていらいらする雪子については、ふるめかしさを持ちながらも、それが特に妙子とのかかわりで観客が共感を覚える言動をとらせる、というしつらえにしている。原作どおりの雪子が山本富士子では納得しない人が多かっただろう。
 
そして、どうなるかと思っていると予定調和が待っていたというわけであった。
 
従って原作がもつ、次女幸子(京マチ子)の視点で、自己を、家族を、社会を見ていくという充実した味わいはない。
 
だが映画化するとなるとそれは無理なのだろう。そう考えれば、緩みもなく、一気に見ることが出来るから、島耕二の手腕が発揮された、よく出来た娯楽映画といえる。
 
戦後しばらくした後の、関西のちょっと恵まれた層の風俗は面白いし、その後よく見た俳優たちもまだ若い。
中でも「こいさん」妙子役の叶順子(1936生)は、それまでの女優達と比べ、異彩をはなっている。このあたりから女優も変わりはじめたのだろうか。その後しばらくして引退してしまったらしいが。


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