hiyamizu's blog

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『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』を読む

2011年11月02日 | 読書2
溝口優司著『アフリカで誕生した人類が日本人になるまで』ソフトバンク新書162、2011年5月ソフトバンク クリエイティブ発行、を読んだ。

第1章では、アフリカで人類が生まれ、猿人、原人、旧人がなぜ、どのようにしてホモ・サピエンス(新人)に進化したのかが説明されている。現在進行形で研究が進んでいるようで、ときどきTVなどで説明される内容も、どんどん変わってきているようだ。もちろん判明していない点も多いのだが、そのあたりも含めて、分かりやすく説明される。
私たちホモ・サピエンスは10数万年前にアフリカで、ホモ・ハイデルベルゲンシス(旧人~原人)の中から誕生し、10万年前頃アフリカを出て中東に達した。

第2章では、ホモ・サピエンスがアフリカから出て、15万年あまりの年月をかけて世界中へと広がっていく様子が書かれている。現在でも続々と化石人骨の新発見があり、そのルートも時期にも異説があり、細かなところは今後も変化する可能性がある。

第3章では、日本人はどこからやってきたのかが解説される。明快な答えは得られていないのだが、いくつかの点は明らかになっている。少なくとも4万年前頃までにはホモ・サピエンスが日本列島にたどり着いた。

縄文時代は16,000年前頃始まり、3000年前頃まで続いた。氷期に海水面が下がり、マレー半島、スマトラ、ジャワ、ボルネオなどの島が繋がっていた大陸は、「スンダランド」と呼ばれるが、縄文人のルーツはここにあり、オーストラリア原住民(アボリジニ)などの祖先が同じだという。

弥生時代は3000年前(紀元1000年)頃から紀元300年頃。弥生人には寒冷地対応が見られ、バイカル湖近辺の人々が朝鮮半島で水稲技術を見につけ西日本に渡って来たのだろう。そして、大陸渡来の弥生人が日本に住んでいた縄文人と混血し広がって、人口増加率の高い農作民の弥生人系がかなり置き換わったと考える人が多い。



溝口優司(みぞぐち・ゆうじ)
1949年富山県生まれ。1973年富山大学文理学部卒。1976年東京大学大学院理学系研究科中退。国立科学博物館人類研究部研究官。現在国立科学博物館の人類研究部長。
長年歯や骨の形態を研究。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

人類、日本人のルーツに興味のある人は是非読んで欲しい。専門過ぎず、通俗過ぎず、易しくわかりやすい。ただ、著者の専門は頭蓋骨(正式には“とうがいこつ”と読む)、歯なのではやりのDNAについて触れることは少ない。



以下、私のメモ。

直立二足歩行でチンパンジーから猿人に
人類の遠い祖先は1000万年~700万年前にチンパンジーの祖先から分岐して猿人となった。猿人の脳の大きさはチンパンジーとほとんど変わらないが、直立二足歩行したことにより手をいろいろな用途に使うようになり脳が発達した。

美食の猿人が粗食の猿人を淘汰
栄養価の高い肉を食べる美食の猿人は時間的余裕を持ち食べること以外に脳を使い、発達し生き残った。硬い食物を頑丈な歯で一日中食べていた粗食の猿人は生存競争に敗れやがて絶滅した。

女性の胸はなぜ膨らんでいるのか?
直立したことで見えなくなった生殖器をカバーするため、唇は生殖器の、乳房は臀部の擬態だと言われている。

私たちの起源はルーシーか?
一人の個体の1本の染色体(核DNA)自身の祖先は、時間軸を遡れば遡るほどたくさんの祖先がいることになる。ミトコンドリアDNA(mtDNA)は、卵子にしかない細胞質の中にあり、女性にだけ伝達される。mtDNAの場合は過去に遡れば一人の女性、ミトコンドリア・イヴに行き着く。したがって、「私達のmtDNAの起源はアフリカの一人の女性のmtDNAである」とは言えるが、「核DNAもすべてその女性に行き着くわけではないので、私たちの起源はアフリカの一人の女性である」とは言えない。

なぜヨーロッパ人は色が白く、鼻が高いか?
紫外線が少ない高緯度地方ではメラニン色素が多いと紫外線をブロックしてしまい必要な量のビタミンDを作れなくなる。色の白い人だけが生き残った。
鼻は空気を温め湿らせてから肺に送り込むため、寒く乾燥した地域に住む人ほど幅の狭い鼻となる。
また、体が大きいほど熱を体内に溜め込みやすく、放出しにくい。したがって、寒冷地対応で体は大きくなる。
縮毛もしくは螺旋毛の方が、汗を発散しやすく頭が冷えるため、暑い地域の人には縮毛や螺旋毛が多い。
バイカル湖などさらに寒い地域に到達した人類(日本人の祖先を含む)は、空気を温めるため副鼻腔が大きく鼻幅が広く、凍傷にならないため鼻が低くなった。眼球が凍るのを防ぐためにまぶたが一重になった(モンゴリアン・フォールド蒙古襞)。まぶたが一重なのは、現代人の中では北アジア人と東アジア人だけで、チンパンジーなど霊長類全般も二重まぶただ。

今後人類は変化するか?
人類集団の形質が自然淘汰で変わるには、少なくとも数千年の安定した環境が必要だ。私達の環境はこれからも変わっていくだろうが、私達は知恵を使い、道具を進化させることで環境に適応していくので、自らの体を大きく変化させることはないだろう。

太い女性はもてた
人類の長い歴史の中では男性は胎児を育み易い太っている女性を好ましいと感じていた。そもそも太っている女性が少なかった。

同じ種とは?
生物の分類には大きい方から「界>門>鋼>目>科>属>種」という段階がある。猿人も含めて人類はすべてヒト科。ホモ・サピエンス(現在の人類)はすべてヒト科ヒト属ヒト種で学術和名の「ヒト」。黄色人種などの人種はすべて同じ種のホモ・サピエンス。同じ種では交配第一世代の子が生まれる。馬とロバにはラバが生まれるが、ラバ間には子が生まれない。したがって、馬とロバは種が異なる。





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