hiyamizu's blog

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東野圭吾『幻夜』を読む

2017年12月21日 | 読書2

 

 東野圭吾著『幻夜』(集英社文庫 ひ15-7、2007年3月25日発行)を読んだ。

 

 裏表紙にはこうある。

阪神淡路大震災。その混乱のまっただ中で、衝動的に殺人を犯してしまった男。それを目撃していた女。二人は手を組んで東京へ出る。男は女を深く愛するがゆえに、女に指示されるまま、悪事に手を染めていく。やがて、成功を極めた女の、思いがけない真の姿が浮かび上がってくる。彼女はいったい何者なのか!? あの名作『白夜行』の興奮がよみがえる、ミステリー史にその名を刻む傑作長編!

 

 『白夜行』の続編で、「雪穂と美冬は同一人物」とも解釈できる。直木賞候補作。

 深田恭子主演でWOWOW連続ドラマ化(2010年11月21日~2011年の1月16日)

 

 

 題名は、次の雅也の言葉から、

「何があっても美冬を守る、たとえ彼女との夜が幻であっても――。」

そして、最後に雅也は・・・、美冬は・・・。

 

 水原雅也の父・幸夫は、工場経営の失敗による借金苦で自殺した。その通夜には、亡くなった幸夫の妻の弟・米倉俊郎も出席していた。敏郎は、半ば幸夫を騙して書かせた借用書を持っていた、彼が通夜に来た狙いは幸夫の保険金でだった。幸夫が書いた借用証を盾に、息子の雅也に返済を迫ることが目的だったのだ。雅也は苦々しくは思いながらも、敏郎の要求に従うしかないと考えていた。

 しかし、その通夜の明け方に未曾有の天災「阪神淡路大震災」が発生した。雅也は難を逃れたが、叔父の敏郎は瓦礫の下に埋まって瀕死の状態であった。雅也は、敏郎への借金返済から逃れるために、被災に見せかけて敏郎を殺害することを決意する。そして、そばにあった瓦を敏郎の頭に振り下ろした。

 その殺害現場を一人の女性に目撃されてしまう。女性の名は新海美冬。彼女もこの震災で両親を亡くし、茫然と立ちつくしているところ、その殺害現場をたまたま目撃してしまうのである。雅也は、美冬が警察に告発をするのを覚悟するが、なぜか彼女はそうしなかった。それどころか、敏郎を殺害したのは雅也でないかと疑問を持った敏郎の娘夫婦たちがその証拠を掴もうとしたときに、未然に手を打って助けてくれたのである。

  そして、彼女は一緒に東京に出ることを雅也に持ちかける。「二人が幸せになるためや!」美冬はこの言葉で次々と雅也に悪事を実行させていく。疑問を抱えつつも、美冬を愛するがゆえに、美冬の指示に従っていく雅也。しかし、やがて成功を遂げていく彼女の思いもかけない真の姿が次々と明らかになっていく。

 

 

初出:「週刊プレーボーイ」2001年No.19/20号~2003年No.16号(連続短編)

単行本:2004年1月 集英社刊

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 このところ東野作品ばかり読み続けている。この作品は大部なわりに出来はいま一つ。悪女が惚れた男を思うがままに操り、罪を犯させる点はいくつかの作品と同じだ。それにしても、東野さんの描く美人は、大きな目がすこしつり上がっているに決まっているのには笑える。

 

 前編とも言われる白夜行の方が子供の頃の事を引きづっているのが見えて面白かった。本編は大震災から始まるが、主人公たちのその前が、震災後に写り込まれてこないので、単純すぎる。

 

 黒川博行氏の解説にあったが、東野氏は以下のように語っていたという。

ミステリーの作法として、謎を大きなものから小さなものへ、第一の謎、第二の謎、第三の謎、第四の謎・・・・・・というように順位をつけて読者に示し、それを収束するときは、小さな謎から大きな謎へ逆に解決していくのだという。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト


登場人物

 

水原雅也:阪神・淡路大震災時に、殺人を犯す。金属加工技術に優れる。新海美冬を愛す。

水原幸夫:水原雅也の父。経営する金属加工工場の業績不振で自殺。

水原偵子:雅也の母。

米倉俊郎:水原雅也の母方の叔父。阪神・淡路大震災で水原家の下敷きに。

米倉佐貴子:米倉俊郎の娘。奈良に住む。

小谷信二:左貴子の内縁の夫。

 

新海美冬:阪神・淡路大震災で両親を亡くす。女優並みの美人。常に冷静に、残酷な手段にも躊躇しない。倉沢克子を名乗り、VTRテープを預かる。後、「華屋」の販売員に。

倉沢克子:TV局の取材記者。

 

秋村隆治:高級宝飾店「華屋」の社長。後に新海美冬と結婚する。

倉田頼江:秋村隆治の実姉。夫は茂樹。

浜中洋一:「華屋」のフロア長。妻は順子

 

桜木:「華屋」の販売員。

畑山彰子:「華屋」の販売員。他に、坂井静子

 

福田(ふくた)金属加工の町工場「フクタ工業」の経営者。

中川:「フクタ工業」の職人。

前村:「フクタ工業」の職人。

安浦達夫:「フクタ工業」の元職人。右手を刺され工場を辞た。

有子:定食屋「おかだ」の娘。水原雅也が好き。母は聡子

 

青江真一郎:美容師。新海美冬に見出されて、カリスマ美容師に。

飯塚千絵:青江の彼女。

浜田美香:美容室「モン・アミ」の見習い。

中野亜美:美容室「モン・アミ」の最近雇った従業員。

 

曽我孝道:商社勤務。新海美冬の父親の元部下。美冬を探している。

曽我恭子:曽我孝道の妻。

新海武雄:曽我孝道の元上司。新海美冬の父。妻は澄子。

 

加藤亘:警視庁捜査一課の刑事。執拗に新海美冬を追う。                 

向井:加藤の上司で班長。警視庁捜査一課の刑事。

西崎:加藤の相棒の若い刑事。



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