ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

分かっちまった心の痛み

2011-09-18 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
愛「ッ」反論出来ねぇのか黙ってた。汚ねぇ言葉使って、
斯波「クナイ振り回すだけの能無しか?」
愛「汚いなら触んな。もう…ほっとけッ」
斯波「ヒガむなッ」本当にほっといて欲しいやつは、ほっとけって言わネェ。黙って、死ぬ。
愛「アンタに、何が分かんのよッ!」
斯波「自分だけが傷付いていると思うなッ」
分かりたくもねぇ…お前なんか、
だが、分かっちまった、知っちまった…お前の、心の痛み。
「俺にも、許婚がいた」
愛「え…」
斯波「祝言挙げる三日前。あっさり逃げられた、あの世に」
あの道で襲われ、汚されたと思ったか、入水して、
次の日、最上に浮いていた。その次の日が祝言だってのに。
「汚されて、嫁に行けネェって」
馬鹿だろ?
何も変わらず、美しいままの黒髪だった。汚れてなんか無かった。なのに、
「先に、逝っちまった」
サラリ…と風になびく、末摘花の黒髪に手を伸ばした。しかし、この手に触れた黒髪は、末摘花の髪ではなく、幻でもなく、現実の、くそ生意気な女の黒髪で、
「チッ」サッと手を引っ込めて、懐から末摘花のかんざしを取り出した。
そして、スッと現実の女にかんざしを差した。
だが、する…と抜けた。高く一つで結ってあるこの髪じゃ…
「かんざし向きじゃねぇな」苦笑した。
死んだ女にやるより、生きてる女にやった方がいい。だから、
ふん…と、かんざしを「やるよ」と突き出した。
愛「え?」
斯波「死んだ女に、髪はネェ」
愛「…」どうしたらいいのか分からないのか、
りりり…、
かんざしを夕日に照らし、クルクル回して、銀の輝きを橙に変化させていた。


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