ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

義兄様と義姉様

2011-08-11 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
鞘が再び抜かれないよう握ったままの富樫さんの手に、私の手を乗せ、グッと力を入れた。能子「私と、誰を、重ねたのですか?」と、義兄を詰問した。
富樫「…”平家の女”には、敵わねぇな」
能子「…ま、まさか」
富樫「あぁ…」ドカッ、と座った。その拍子に、
能子「繭子…」力が抜けて、富樫さんの手から、私の手が、ずる…と落ちた。
繭子…が?無言で、富樫さんに再度、目で尋ねた。すると、
富樫「平家の女は、命に潔くてな…」参った。ふぅ…と視線を逸らした。
繭子は私の父 清盛の正妻 時子(二位尼)様の弟の大納言 時忠様の子で私の従姉妹(いとこ)にあたる。壇ノ浦合戦後、平家存続のために兄の側室に入り、私の義姉となった。ただ、彼女は謀反の大罪で京を追われた夫の妻で源氏に嫁いだ平家のスパイという汚名をも着せられ、
富樫「散々、命張られたよ」辛い立場に置かれた。
能子「…そ、そんな、」それで、繭子は、死を…?
“迷わず、死を選びなさい”
平家の血と誇りを守るため、我が身と心が汚されるくらいなら、と迷わず、入水した。壇ノ浦で時子様は平家最後の希望 孫の安徳天皇と、国家権力の象徴 天叢雲剣を胸に抱き、入水し、私もそれに続いた。平家の希望と権力は海の底に沈み、平家の、父の歴史は終った。敗北、一生消えない歴史の傷が刻まれ、それで終わったはずなのに、今尚、問われる。
私たちの生きる意味…生き残った平家子息はその血ゆえに苦しむ。この戦いに意味があったの?意味を失くし、全て終わらせたくて捨てた。
なのに、源氏の捕虜という形で息を繋いでしまった。
“それなら、結婚しましょ”
そう言ってくれた与一によって、私は生かされた。
ただ、源氏の中で息繋いた私は平家。父から譲られた平家の血は変わり様の無い事実で、
“源氏の中で苦しむあなたを救えるのは、平家じゃないですか?”
平家の血と清盛の娘である事は、変えられない現実だった。
“その女、平家だぞッ!”
そういう現実から数歩、身を引いて、能子「お義兄様、義姉様を救って下さり」指を付いて、頭を深く深く下げて「ありがとうございます」変えられない現実から、繭子を救ってくれた。
ただ、私には苦しくて、ぽたっ、畳みが泣いて、指に力が入って、カリッ、畳が鳴いた。


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