「米が正恩氏暗殺計画」報道(2017年4月19日中日新聞)

2017-04-20 08:34:42 | 桜ヶ丘9条の会
「米が正恩氏暗殺計画」報道 

2017/4/19 中日新聞


 朝鮮半島情勢を受け、米国のトランプ政権は北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の「斬首(暗殺)作戦」も含む対応を検討しているという。しかし、相手がどんな国であれ、どんな元首であれ、国際法上、暗殺は許されないはずだ。日本も無関係ではいられない立場だが、安倍政権からは作戦の是非を巡る論議は聞こえない。米国が今月、シリアを攻撃したことにも理解を示した安倍晋三首相。米国の激しい動きをただ容認する一方で、論理が分かりにくい外交姿勢が続いている。

 シリアのアサド政権の化学兵器使用を理由に挙げ、米国は今月六~七日、巡航ミサイル五十九発をシリアに撃ち込んだ。安倍首相は「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国の決意を支持する」と表明。米国の攻撃は「事態の深刻化を防ぐための措置と理解している」と述べた。

 だが、アサド大統領は十二日、AFP通信に「主に米国が攻撃のためにストーリーを捏造(ねつぞう)した」と関与を否定。実際、化学兵器を使用したのがアサド政権と示す明確な証拠は見つかっていない。外務省中東一課の担当者も「国際機関の調査を待っている」と話し、安倍首相の「決意を支持」は武力行使の容認かとの問いに直接の回答は避けた。

 国連憲章は他国への武力行使について、安全保障理事会の合意がある場合か個別的、集団的自衛権の場合のみ認めている。今回の攻撃はそのどちらにもあてはまらない。

 米国にはそういった武力行使の先例がある。イラク旧政権の大量破壊兵器所有を口実とした二〇〇三年のイラク戦争が典型だ。この事案では大量破壊兵器が発見されず、ジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)は退任間際に「最大の痛恨はイラクでの情報活動の失敗」と発言。米国と協調した英国も「法的根拠があったとは言い難い」との調査報告を発表した。

 この時に米国を支持した日本はどうだったのか。安倍首相は一五年七月の参院特別委員会で「(イラクに)大量破壊兵器はないと証明する機会を与えたにもかかわらず、それを実施しなかった」と抗弁した。

 トランプ大統領は先月まで、ロシアが後ろ盾のアサド政権を容認する意向だった。この翻意の背景として、米国メディアは、ロシアとの密通疑惑の否定や、シリア攻撃を避けたオバマ政権との差異化による支持率上昇の狙いなど、国内的な動機を指摘している。

 こうした場当たり的な傾向は安倍政権も同じだ。オバマ政権が一三年、シリア攻撃を打診した際、安倍首相は化学兵器使用の証拠を求めた。ところが昨年十二月、先進七カ国(G7)がまとめたアサド政権とロシアへの非難声明には、プーチン・ロシア大統領の訪日を間近に控えていたせいか、加わらなかった。

 トランプ政権の意向を忖度(そんたく)するばかりにも見える、対シリア、対米の外交姿勢。自民党幹部らは米国のシリア攻撃が「北朝鮮への抑止力になる」「『ならず者国家』に対して一定の抑止力になればいい」と語った。安倍首相も北朝鮮が「サリンを(ミサイルの)弾頭につけて着弾させる能力」を持つと強調した。

◆国際法違反でも…外交 トランプ氏忖度

 その北朝鮮への米国の対応について、米NBCテレビは七日、米国家安全保障会議(NSC)が北朝鮮の最高指導者である金正恩氏の殺害を検討していると報じた。

 これは「斬首作戦」と呼ばれ、オバマ政権時の一五年、米韓が作成した「作戦計画5015」をベースにしている。これに米国単独で特殊部隊を北朝鮮に潜入させ、金氏を暗殺する作戦も選択肢として加えたという。

 昨春の米韓合同軍事演習で、米軍はこの作戦の訓練を実施したとされる。北朝鮮外務省は昨年三月、「斬首作戦なるものを(中略)はっきりと知りながら、耐え忍んで自制するなどということは、絶対にありえない」と反発していた。

 相手が「ならず者国家」だとしても、国家元首の暗殺は国際法上、許されるものなのか。立命館大の吾郷(あごう)真一教授(国際法)は「当然、許されない」と断言する。

 元首暗殺は先制攻撃の一環とみなせるが、吾郷教授は「先制攻撃は明確に違法だ。それどころか、国連憲章はもちろん、成文化されていない慣習国際法でも他国への武力攻撃は原則禁止されている」と語る。

 北朝鮮に対する先制攻撃を米国の個別的自衛権の行使や、同盟国である日本や韓国との集団的自衛権の行使として正当化する意見がある。とりわけ、北朝鮮のミサイルの射程が米国本土まで延びつつある中、自国に差し迫った危険を除去するために予防的に実行する先制的自衛権を持ち出す議論もある。

 しかし、吾郷教授は「先制的自衛権について、世界の国際法学者の多くは認めていない。自衛権一般についても、米国本土や日韓が攻撃されていない段階では認められない。核など大量破壊兵器の脅威を攻撃の根拠とする見方もあるが、大国のみならず、複数の国が核兵器を保有しており、国際司法裁判所が核武装自体を国際法違反と認定していない以上、これも先制攻撃を正当化する根拠には当たらない」と解説する。

 米国はレーガン大統領時代の一九八六年、リビアがテロ支援をしたとして、同国の最高指導者カダフィ大佐(当時)の殺害を狙って首都トリポリを空爆した。

 問題は北朝鮮が舞台の場合、日本が巻き込まれる可能性が高いことだ。斬首作戦で米軍基地が使用されれば、「国際法に違反して米国との集団的自衛権を行使したことになる」と吾郷教授。北朝鮮側の反撃は日本を対象にしかねない。

 元国連事務局広報官の植木安弘上智大教授(国連研究)は「日本は平和的解決を目指し、中国への働き掛けなど外交努力を尽くすべきだ。米国の懸念は北朝鮮が大陸間弾道ミサイルを完成させ、その標的になること。今なら核開発の凍結や米と北朝鮮の二国間対話、六カ国協議の開催など北朝鮮と交渉する余地はある」と訴えている。

 高千穂大の五野井郁夫教授(国際政治)は、こう酷評する。

 「かつて保守の指導者たちは、日米同盟と憲法九条を戦略的に使うことで平和主義を貫いてきた。ところが、安倍外交は国際法すら無視して、トランプ大統領に追従する一方。これでは反米の国や勢力に対し、日本を攻撃目標にせよ、とアピールするに等しい」

 (沢田千秋、三沢典丈)
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