高速炉開発会議 サイクルは切れていた(2016年12月7日中日新聞)

2016-12-07 08:41:58 | 桜ヶ丘9条の会
高速炉開発会議 サイクルは切れていた 

2016/12/7 中日新聞
 増殖炉がだめなら高速炉、「もんじゅ」がだめなら引退した「常陽」を引っ張り出せばいい。そんな簡単なものなのか。核燃料サイクルの輪は、二十年以上も前に切れていた。もう元には戻せない。

 何か勘違いしてないか。

 そもそも「高速炉開発会議」という名称が、おかしくないか。

 トラブル続きで働けず、「金食い虫」の汚名をまとう高速増殖原型炉の「もんじゅ」(福井県敦賀市)。第一に問われているのは、そのもんじゅを中心とする核燃料サイクルの“進退”だ。

 多くの人は“引退”、つまり廃炉を求めている。

 たとえばもんじゅ、あるいは核燃料サイクルの対策会議というなら、まだ分かる。

 開発会議の議論は、明らかに核燃料サイクルの存続が前提だ。

 経済産業省と文部科学省、電気事業連合会、そして原子炉メーカーなど、核燃料サイクルを維持し、原発を存続させたい役所、企業ばかりが顔を並べるメンバー構成からも、あからさまなほどに明らかだ。

 核燃料サイクルを断念すれば、使用済み核燃料は、ただのごみ。青森県六ケ所村の関連施設で保管してもらえなくなり、宙に浮く。核のごみに対する世論の風当たりが強くなり、原発の再稼働に支障を来す。だから断念はしたくない-。思惑が透けて見えるようではないか。

 ところが、エネルギーを増やしてくれる増殖炉、もんじゅなしではサイクルはなりたたない。

 高速炉は核のごみを燃やす単なる“バーナー”だと言う学者もいる。家庭ごみの焼却処理を「リサイクル」と呼ぶ人はいないのと同じである。

 核のごみの処分技術を研究するのはいい。だが、六ケ所村の再処理施設も、もんじゅ同様、莫大(ばくだい)な国費を投入し、歳月を費やしながら、失敗と稼働延期を繰り返す。もんじゅを廃炉にするのなら、当然、核燃料サイクル全体を断念すべきではないか。

 もんじゅは、科学の夢だった。だが、核燃料サイクルが破綻したのは現実だ。これ以上、傷を深めるべきではない。

 立地地域の福井県や青森県ともよく話し合い、もんじゅと核燃料サイクルをまず円満な“引退”に導くべきだ。

 そして、核のごみの処分をどうするかという緊急課題に議論を切り替えて、正面から取り組むべきである。


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