議員報酬増ブームの怪 富山辞任ドミノ(2016年9月15日中日新聞)

2016-09-18 09:36:31 | 桜ヶ丘9条の会
議員報酬増ブームの怪 富山辞職ドミノ 

2016/9/15 中日新聞


 富山市議会で政務活動費の不正取得が続々発覚し、議員辞職が相次ぐ異例の事態となっている。その発端となったのは、今年六月に決まった議員報酬の引き上げだ。住民の反発を背に議員の活動が検証され、ずさんな金の使い方が明るみに出た経緯がある。ここ数年、議員報酬や期末手当を増やす動きが各地で目立つ。検証が必要なのは富山市議会だけではない。

◆「生活苦しい」「なり手不足」

 富山市議会で辞職ドミノの口火を切ったのは、最大会派・自民党の重鎮、中川勇氏(69)だった。

 先月三十日に辞職した中川氏は、不正に受け取った政務活動費について翌日の会見で「ほとんどが飲み代(に使った)。飲むのが好きで、誘われれば嫌と言えない性分なので」と認めた。

 旧知の印刷業者から白紙の領収書を束で受け取り、市政報告会の資料コピー代としてたびたび請求していたが、実際には市政報告会は開いていなかった。「これじゃいけないと思いながら、ついついやってしまった」と釈明した中川氏。不正取得の額は五年間で約七百万円に上った。

 さらに今月九日、同じ自民会派の村山栄一氏(66)が白紙領収書で約四百七十万円を不正請求していたとして辞職。十二日には自民会派の岡本保氏(65)が、不正に二十万円を受給していたとして職を辞した。同じく浅名長在エ門氏(65)の不正請求も発覚、十五日に辞職願を提出することが明かされた。

 問題は民進党系会派にも波及。高田一郎(69)、針山常喜(70)の両市議が十四日、総額約千百八十万円を不正に受け取っていたとして辞職願を提出した。

 実は問題の発端は六月市議会にある。議会側から「生活が苦しい」「なり手不足対策」などと声が上がり、市議の議員報酬を月額十万円引き上げて七十万円とする条例改正案が審議されていた。

 地元紙北日本新聞の本田光信報道本部長は「なぜ十万円ものアップが必要なのか、あまりにも議論がないまま前に進もうとしていた。議会の在り方として本当にそれでいいのか。そういった問題意識から、地方議会全体を見直す報道に力を入れ始めた」と振り返る。

 その一つとして試みたのが、富山市議全員から議員報酬増額の賛否を聞き取る取材だった。自民会派の控室で記者五人が取材をしていたところ、当時会派会長だった中川氏が「何を聞いているんだ」と怒鳴りながら女性記者に近づき、メモを無理やり取り上げた。

 記者は弾みで倒れ、北日本新聞社が富山県警に被害届を出す事態に発展したが、条例改正案は自民、公明、民進系会派の賛成多数で可決された。

◆市民の8割、反対なのに

 この議員報酬増額について、北日本新聞の世論調査では市民の約八割が反対している。来春には市議選が控えており、政務活動費問題に揺れる自民会派内では現在、増額見直し論が浮上している。

 市民団体代表の吉田修さん(66)は「市民の反対意見に全く耳を貸さず、増額を決めたのは許し難い。その上、税金からなる政務活動費のでたらめな使途も判明した。増額の白紙撤回は当然のことだ」と批判した。

◆金沢、名古屋、全国で次々

 富山市議会が議員報酬アップの参考にしたのは、同じ北陸の金沢市議会。今年四月から月額三万円を増やし七十万円に上げ、全国の中核市では、大阪府東大阪市に並び最高額となっている。

 金沢市議会事務局の担当者によると、市議の政務活動費を見直す議論が進み、月額十八万円から二万円減らすことが決まったが、その際、共産党以外の各会派から「議員報酬が二十年見直されていない」と、当初の議題とは関係ない報酬引き上げ論が持ち上がったという。この二十年で定数が六人減り、「職責や活動量が増えている」という理由で増額が妥当とされた。

 ここ数年、同様に議員報酬や議員のボーナスにあたる期末手当を引き上げる動きが各地で相次いでいる。

 栃木県の那須塩原市議会は、市町村合併で人口規模が大きくなったとし、四月から議員報酬を月六万五千円引き上げ四十二万円にした。

 福岡県の宮若市議会も四月から、近隣市との比較を理由に月三万円引き上げて三十三万円となった。

 期末手当を引き上げる議会もある。埼玉県議会は三月、年二回の期末手当を報酬の計二・九五カ月分から三・一五カ月分に増額。議会事務局の担当者は「県知事ら特別職の期末手当引き上げに沿ったもので、議員提案があった」と説明する。「県民の理解が得られない」と三会派が反対したが、自民、公明両会派などの賛成多数で可決された。

 全国市民オンブズマン連絡会議事務局長の新海聡弁護士は「二〇〇〇年ごろ、地方議員の報酬に住民から厳しい目が向けられ、引き下げの機運が起こった。ほとぼりが冷めたとみて元に戻そうとする動きがあるほか、批判の多い政務活動費を減らす代わりに議員報酬を上げるケースなどもみられる」と解説する。

 名古屋市議会も今春、議員報酬を年八百万円から千四百五十五万円に増額した。河村たかし市長が主導した議会改革で一一年に議員報酬を半減したが、ほぼ元に戻した。

 市長らは反発し、報酬増額の是非を問う住民投票条例制定案を提出。自民、民進、公明の反対多数で否決された。増額に反対する市民団体が市議会解散請求(リコール)の署名を集めたが、市長が代表を務める地域政党・減税日本が運動に加わらなかったこともあり、リコール成立に必要な三十三万人余に届かなかった。

 調査研究のための政務活動費の一部を、領収書がいらず自由に使える議員報酬に付け替えようとする動きも顕著だ。東京都千代田区の審議会は昨年末、区議の政務活動費十五万円のうち十万円を区民に報告義務のない議員報酬に組み込む答申を出し、全国から批判が殺到した。

◆適切か否か、議論の必要

 神戸学院大法学部の上脇博之教授(憲法学)は「政務活動費は議論を活性化させるための調査に使うもの。仕事をしない議員の報酬を増やすことになりかねず、本末転倒だ」と批判する。

 近年、議員削減を理由に個々の報酬を引き上げる動きも目立つが、上脇氏は「それこそ悪循環」と批判する。「議員を減らせば、一人区が増え、各選挙区で選挙に強い与党議員が勝つ。在任期間の長いボス議員の存在感が増すことで、議会では質問すらしないという状況に陥りやすくなる。結果、議会と行政の間の緊張感はなくなり、チェック機能が働かなくなる。その被害を受けるのは住民だ」と警告。「議員報酬が適切かどうかをそれぞれの地域で議論する必要がある」と訴えた。

 (池田悌一、木村留美)
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