ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

雪の降る夜:やることいっぱい(1)

2013年03月28日 00時30分02秒 | Weblog
30分も休憩をとってしまったが、おかげで十分に体力を回復することができた。
・・・が、ここからがまたまたきつい登攀となった。
目的地の「黒百合ヒュッテ」までは1時間ちょっとで到着することができたのだが、何時間も要したような気さへした。

ザックのショルダーハーネスが肩に食い込む。
ダブルストックで一歩一歩登る。
とてもじゃないが周囲の状況や景色を見るだけの気持ちのゆとりはなかった。
だが、それではいけないことも分かってはいた。
どれほどつらくとも時折周囲を見渡し、目立つ地形が視界に入ればそれを基に地図で確認をする。
雪山であればそれは尚のこと重要な作業となってくるのだ。

今日の前半の登攀時は「5分・・・5分登ったら1分だけ休憩しよう」と決めて登攀を続けた。
しかし、今この時はもっときつさを感じていた。
5分の登攀さえもきつかった。
「よし、100歩だ。100歩登ったら30秒だけ休もう」
情けないかな、そう自分に決めて足を進めた。

ある程度トレースは踏みしめられているとはいえ、「体重+ザック」の重量で膝近くまで雪に埋もれてしまう。
額から流れ出る幾筋もの大粒の汗が頬を伝い、やがて口の中へと入ってくる。
汗のしょっぱさが嬉しい。
「いけねぇな。水分と塩分の補給しなきゃ。」
そう思い、水を飲みポケットにしまってあった塩飴を数個口に入れた。
何度かその繰り返しであったが、初めに決めた100歩でさえ、次第にその歩幅が短くなってきた。

「だぁーっ! きつーうっ!」
思わずでかい声で独り言が出てしまった。
どうせ誰もいないし・・・まぁいいか(笑)。

ふと左右を見ると、針葉樹林の合間から小高いPEAKが目視できた。
先ずは地図で確認。
現在地の標高、すぐ横にPEAKが見えるポイント、そしてPEAKまでの距離から推測し、地図で「これだ」というポイントを確認した。



「よっしゃぁ~! 目的地まで直線距離で(たぶん)あと300メートルくらいだ。」
そうとなれば一服しよう!

事前の調べでは、鉱泉分岐点から小屋までの雪山ルートタイムは1時間10分となっている。
あれだけゆっくりと登り、休憩時間を含めてちょうど1時間10分だった。
ということは、平均してもっとゆっくりと登ってのルートタイムということになる。
へぇ~あれだけゆっくりと来たのに・・・(笑)。



黒百合ヒュッテに到着し、すぐに受付を済ませた。
本当なら温かな珈琲を飲み、ゆっくりと煙草を吸いたいところであったのだが、今の天候は決して良好とは言えない。
いつ崩れてきてもおかしくなかっただけに、やや焦りはあった。
そう、これからやるべき事が山積みなのだ。

さっそくねぐら作りの開始だ。
場所を決め、ザックからスコップを外して整地をしなければならない。



ある程度は安全が確約されている小屋のテント場とは言え、単独で雪山でのテント設営は初めてのこと。
嘗て一度だけ経験はあるが、あの時は教えてもらいながらちょっとした手伝い程度のことだった。
書籍や人から聞いただけの知識しかない自分の力が試されることになる。

極力フラットに仕上げるため、スコップで雪をかきだした後、自分の足で表面を踏み固める。
そしてスコップの面で叩き、表面を締める。
それでもなかりの凹凸が目立った。
次にスコップで表面を削りながら仕上げるのだが、一見フラットに見えても叩きと締めが甘く、足がズボッと埋まってしまうポイントもあった。
そのポイントに雪を足し、再び叩いて締める。
最後は斜度の確認だ。
水平器などあるはずもなく、これは見た目の「勘」で行った。
斜めの雪面にテントを張ってしまうと寝心地にも影響するわけだし、「勘」ではあったがまずまずの出来映えだ(と思う)。

いよいよテントを張る。
自作の「十字ペグ」のお出ましだ。
竹刀の竹を切り電動ドリルで穴を開け、そこに麻縄を通しただけの物だが、自宅に電動ドリルなどあるはずもなく、近所のホームセンターの工作室で作った。

十字ペグを使用したのは四隅だけで、後の残りは一本の竹ペグを横に置き雪の中に埋め込んだ。



ここまでの所要時間は約1時間だった。
いや、1時間も要してしまったと言った方が正しいのかも知れない。
それでも今夜のマイホームの完成は嬉しかった!



荷物をテント内に入れ着替えた。
だが、まだゆっくりとはできない。
荷物の整理、水作り、夕食作り等々まだやらなければならないことが残っている。

衣食住のすべてを一人で行う。
3シーズンのテント泊よりも体力は使うし、やることが多い。
それにしても腹減った・・・。

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2 コメント

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十字ペグについて (ROOKIE)
2013-04-21 16:15:22
衣食住のすべてを1人で行うって言葉がなんかいいなぁと思いました。こういう経験をしていると、ごく当たり前のはずの家の布団で寝ることでさえ、とっても幸せなことだって思いますよね。

十字ペグは平面的に置いて上に雪を載せて使うんでしょうか?
十字ペグ (TAKA)
2013-04-24 01:07:54
十字ペグの設置はそのときの風の強さにもよりますが、基本はテントの四隅で、風の状況によっては側面にも用います。
約30㎝ほどの穴を掘り、底に固定して雪をかぶせ上から踏みつけてできあがり。
あとは張り綱の調整だけです。
ただし、翌朝の撤収時に凍ってしまっていることがあるため掘り起こすことができない場合もあるので、「麻紐」を予め結びつけておきます。
掘り起こせない時はその麻紐をナイフで切って、ペグは諦めます。
雪山テント泊って準備が大変なんだなぁと思いましたが、やはり経験してなんぼの世界。
お客様へのアドバイスにも役立ちました。

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