定年を境に、昔の思い出・記憶は密封した積りである。
最近、ノーベル文学賞・イシグロ氏の「日の名残り」という作品を読んでから、
思い出の中に生きるのも必要なことかもしれないと感じつつあった。
今年の年賀状の一枚に、懐かしい思い出の文章があった。
数十年前の若かりし頃は、前だけを向いて生きていた。恐ろしいものはなかった時代である。
スマホもインターネットもなかった時代である。全国私学研修会が広島県で開催された。
各校何らかの仕事を持たなければいけなかった。我が校は、商業高校であったが、
学校長は化学の公開授業を持って帰り、その役割が自分に回った。
オイオイオイであるが、怖いもの知らずだったので引き受けた。
公開授業のテーマは、「食酢中の酢酸のパーセントを調べる」である。
酸と塩基の中和反応を利用したものである。水酸化ナトリューム液をを1滴ずつ落しながら、
「アッ!」と声がしたら実験を終了する事と言って自分も楽しんだ。
実験結果の計算を生徒達はそろばんでする。初めて眺める人達は、さすが商業高校だとビックリであった。
懐かしい楽しい大きな思い出である。