サンアントニオからこんにちは

矯正歯科医な分子生物学マニアがアメリカ(テキサス州サンアントニオ)からお送りするアメリカでのポスドク留学生活ブログです。

人工甘味料アスパルテームと発ガンのリスク

2007-06-28 | Weblog
ダイエットコークやダイエットペプシなどカロリーゼロや低カロリーをうりとしている清涼飲料水には、砂糖や果糖ブドウ糖液糖ではなく人工甘味料などが使われていることがほとんどです。

この人工甘味料にはいろんなものがありますが、勝手にわたしが分類してみると、
・糖の構造を一部変えて腸管から吸収されなくしたもの
  ソルビトールなど・・・オールという名前の糖アルコールなど
・環状構造やより大きな分子構造をもっているペプチド系のもの
  ステビアアスパルテームなど
の2種類に分けられます。

アスパルテームは、フェニルアラニンと、アスパラギン酸とがペプチド結合した構造をもっており、”フェニルケトン尿症では摂取をすすめない”というようなことがアスパルテームを使った飲料には記載されています。
このアスパルテームは、FDAが長年にわたって安全性の試験を行い、発ガン性への関与が認められないとしておりました。

しかし、最近、アスパルテームの長期過剰摂取によってラットに発ガン率上昇が観察されたとする論文が出されたというニュースがありました。
このイタリアのグループの論文は、FDA推奨の摂取制限量の2倍を寿命が迎えるまでひたすら与え続け、各種のガン発症率が天然発症率に比較して上昇するかを比較検討したものでした。
かなり長期にわたる研究で、おつかれさまですというかんじですが、その結果によると、アスパルテーム長期過剰摂取で”白血病”、”リンパ腫”、”乳ガン”発症率が上がっている傾向が認められたそうです。

FDAはこの論文が出たことで、正式コメントとして、現在のアスパルテーム使用基準ならびに安全性をそのまま維持するという発言をしておりました。


この論文の実験方法とFDAの試験方法を比較してみると、

イタリアのグループ
   使用量:FDA推奨の摂取制限量の2倍
   実験期間:寿命がくるまで

FDA
   使用量:FDA推奨摂取制限量
   実験期間:2年間

ラットの平均寿命は、系統・栄養摂取状態・環境などによって変わってきますが、2.2-2.5年ぐらいです。
そうすると、実験期間はそれほど大きくは変わらないので、摂取量の問題ということになってきますが、このFDA推奨摂取制限量は次の通りです。

50 mg/kg体重
  20kgの子供・・・ダイエットソーダ2.5本文( 875ml)
  68kgの成人・・・ダイエットソーダ7.5本文(2625ml)

ですので、イタリアのグループの行った実験でのアスパルテーム摂取量は、かなり現実とはほど遠い摂取量と考えられます。


いままで安全な薬剤や物質で、その摂取により得られる恩恵の方が、摂取しない場合に比べて非常に大きいにもかかわらず、こういう過剰摂取量を長期に続けるという非現実的な実験で、”危険性”を指摘するような論文や、その論文のタイトルやアブストラクトの一部だけを見て、「ああ、○○○は体に有害だ!」と騒ぎ立てるマスコミや妄信的なヒトたちによって、いわれのない”中傷”をうけた薬剤や物質は、世の中に大量にありますね。

”水”もそうですね。
過剰摂取で死亡もありえますし(現にアメリカでは賞品が欲しいために水を飲みすぎて死んだヒトがいたとか...)。

虫歯予防に使われる”フッ化物”もそんなかんじですね。
これについては、学会の度にフッ化物を使ってむし歯予防をしている先生に、「○○県の▲▲と申しますが、****年の論文によると、フッ化物はガンを引き起こす可能性があるといわれてますが、....」と質問のようないちゃもんのようなものを発言する先生がいました。

「だから先生、その論文は実験での摂取量が急性毒性量に近いほどの大量を長期に与えている非現実的な実験系で、その後の研究で否定されてるんだって...」と、となりでささやいて教えてあげたかったです。



なにごとも、適量が大事ってことですよね...

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