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帯では都会的であるかのように装うも、実際の音はエスニック風味

2016-09-19 16:01:28 | 音盤ノート
Steve Reich "Tehillim" ECM, 1982.

  現代音楽。今秋スティーヴ・ライヒのECM録音三作が箱セット"The Ecm Recordings"として発行される。”Music for 18 Musicians”(参考)と"Octet / Music for a Large Ensemble / Violin Phase"(参考)と、本作の三つがその内容となる。箱セット化はECM New Series系統では初だろう。

  本作は女声(ソプラノ三人とアルト一人)の輪唱を前面に出した歌唱曲で、ヘブライ語で歌われる。演奏には当時のライヒ組の打楽器部隊だけでなく、弦楽器隊や管楽器隊も参加している。指揮者までいる大編成であるが、あまり音の厚みは感じない。リズミックな打楽器隊は非常に目立つが、オーケストラ音はとても薄くてシンセサイザー一台で代用できそうな使い方である。曲の印象もそれ以前の作品とかなり異なる。反復パターンを微妙に変化させつつ最初から最後まで同じ情動を維持するというのが以前の作品だった。本作は前半後半に分かれるが、それぞれ最初は少ない音数で始まり、終盤に向かって複雑さが増して最後に頂点を向かえるという構造になっている。ミニマル音楽らしからぬクライマックスがあるのだ。巧みに盛り上げてはいるが、個人的には以前のスタイルの曲のほうが好きだ。クラシックからライヒに入る人には聴きやすいかもしれない。

  なお、当時の日本盤LPのタイトルは"マインド・ゲームス"。その帯には“部屋の空気さえ変えてしまうインテリア・サウンド”という文句が添えられていた。自身のユダヤ人アイデンティティを打ち出したパーカッシブなこの曲にまったく合っていないのだが、マーケティングする側はミニマル音楽をインテリ層向け都会的BGMとして売りたかったのだろう。苦心の産物だな。
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