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ボツ作品と録り直し作品のカップリング聞き比べ

2017-05-16 23:35:25 | 音盤ノート
Josef K "The Only Fun In Town / Sorry For Laughing" LTM, 1990.

  ロック。カフカの『変身』からバンド名を採っているので「ヨーゼフ・ケイ」と読みたくなるが、「ジョセフ・ケイ」と読むのが正しいみたい。1979年から82年まで活動したスコットランドのバンドで、「ポストパンク」と分かったようなわからないようなカテゴリが与えられているが、ファンク要素のあるリズム隊に、カッティングを多用する二台のギターが高音でキンキン鳴り、Talking HeadsのDavid Byrne風のボーカル(曲によってはBauhausのPeter Murphy風)が加わるという演奏である。

  ネオアコ黎明期のレーベルとして知られるPostcardから1981年に発表されたアルバムが本作前半の"The Only Fun In Town"である。この前年にエジンバラでアルバム一枚分を録音したのだが、出来が気に入らず──音が整理されすぎているのがメンバーの気に入らなかったらしい──にボツにして、わざわざブリュッセルに行って二日で録り直したという。結果として、スタジオライブ盤のようなガレージ感溢れるラフな演奏となった。ガチャガチャうるさい攻撃的なサウンドだが、どこかクールで醒めた感覚も残る。自傷的になったGang of Fourという印象だ。

  後半の"Sorry For Laughing"はボツにされた作品のほうで、公式には解散後の1990年に発表されている。Gang of Fourに加えて、"Unknown Pleasures"期のJoy Divisionのテイストもある。確かに音は整理されてはいるが、一点突破で突っ走る"The Only Fun In Town"に比べて、こちらのほうがギターやリズムのアイデアが多彩であり、録音にも空間が感じられて奥行きがある。クオリティは高く、活動中に発表しなかったのがもったいないぐらい。けれども、冒頭を飾る'Fun N' Frenzy'とアルバムタイトル曲'Sorry For Laughing'の二つの代表曲は少々重くなってしまっており、"The Only Fun In Town"のヴァージョンに軍配が上がる。この点が気に食わなかったのだろうな。

  このカップリングは聞き比べができて面白い。バンドの美学はラフな方を選んだのか、などと思いながら。なお、本作品にはさらにシングル曲など3曲のボートラを付した全25曲盤がある。現時点で入手しやすい2014年のCrepuscule盤の収録は22曲であるが、リマスターされている。ボーカルのPaul Haigは、僕の世代では「売れないインディー系エレポップの人」というイメージだったが、ソロになる前はギターバンドなんかやっていたのね。このバンドのほうがソロ時代より全然良い。
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