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メンバーシップ型雇用は若年層に有利、だが部分的なジョブ型採用もまた望ましい

2014-04-18 15:42:59 | 読書ノート
濱口桂一郎『若者と労働:「入社」の仕組みから解きほぐす』中公新書ラクレ, 中央公論, 2013.

  日本における若年雇用問題について解説した書籍。「世界ではジョブ型雇用が一般的であるが、日本ではメンバーシップ型雇用の方が普及している」という事実認識は、すでに同著者の『新しい労働社会』(岩波新書, 2009)や『日本の雇用と労働法』(参考)で示されていた。本書はもう一度それをわかりやすく噛み砕いて説明し、特に若年雇用問題に焦点をあてながら現実的な解決策を提示するものである。

  まず強調されているのは「メンバーシップ型雇用は若年層に優しい」という認識である。ジョブ型雇用の世界は経験者優先であって、知識もスキルも浅い若者が雇われる確率は低い。ヨーロッパの失業問題はまさにそうである。一方、メンバーシップ型雇用では実績の無い新卒者を優先して雇ってくれる。割を食うのは高い給与をもらう中年正社員のほうで、自主退職勧告の対象となりやすい。したがって相対的に見れば、日本の若年雇用は深刻な問題ではないということになる。

  それでも解決すべき問題は存在していると著者はいう。1990年代以降、メンバーシップ型採用の枠が減少し、非正規雇用者の増加が問題視されてきた。また正規雇用者の間でも、過大な労働投入量を要求するブラック企業の台頭という、メンバーシップ型ならではの労働問題が浮上してきている。雇用形態の二極分化と労働環境の悪化という近年の傾向は解決すべき問題となっている。

  そこで提唱されているのが、「ジョブ型正社員」という、終身雇用ながら職域を限定した正社員である。事業所の廃止などで該当する職域が無くなったら解雇される、という点で、部署移動などで救済されるメンバーシップ型正社員より保護が弱い。しかし、有期の非正規雇用者よりは安定的で、将来のプランを描きやすい。メンバーシップ型正規と非正規雇用の中間に第三の雇用形態を挿入しようというわけである。

  ジョブ型正社員というのは、僕の専門領域である図書館学においても大きな示唆のある提案である。司書資格というのは一応ジョブ型雇用の世界が前提になっており、司書資格課程を教える教員は、文系学部内では珍しく、教養志向とは異なるジョブオリエンテッドな専門知識を教授する。だが、その受講生が専門職として採用されることは現実にはない。公立図書館員になるということは、結局公務員試験という名のメンバーシップ型採用に通るかどうかがまずあり、さらにそのメンバーシップ内業務の配置転換によってそこにいるというものだからだ。日本の公立図書館の労働は、メンバーシップ型雇用の図書館員(すなわち正規採用された公務員で、部署異動によって図書館にたまたまいるというだけの人も多い)と、たくさんの有期雇用の「司書」で構成されている。これでは長期に一貫した図書館運営ができない。そういうわけで公務員の採用でこの制度が広まることを切に願う。
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