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敵の存在こそが協力行動を進化させるとのこと

2017-04-04 21:33:52 | 読書ノート
サミュエル・ボウルズ, ハーバート・ギンタス『協力する種:制度と心の共進化』竹澤正哲, 大槻久, 高橋伸幸, 稲葉美里, 波多野礼佳訳, NTT出版, 2017.

  人間における「協力行動」の発生を理論的に検証するという試み。最後通牒ゲーム(この邦訳では「最後通告ゲーム」と表記)などの実験結果や文化人類学など実証研究への参照はあるが、基本的には協力行動を促す遺伝子が優勢となる理論モデルの検討に頁が割かれている。延々と数式を展開しての説明が続くので、読むのはかなりしんどい。最初に訳者解説を読んだほうがよいだろう。原書はA cooperative species: Human reciprocity and its evolution (Princeton University Press, 2011.)。

  結論としては「内集団びいきの利他主義は進化しうる」ということのようだ。無差別な利他主義者は利己主義者に搾取されるために、その遺伝子が広まることはない。しかし、外集団との争いがあり、負ければ子孫を残せないという状況においては、「内集団に対しては利他主義」な者の多い集団の方が争いにおいて勝ちやすい。加えて、協力しない構成員を罰すること(一種の利他主義)も、集団の団結にとって有益だ。そして、協力行動を促進する制度が集団内に確立されると、そのような利他主義者が有利となってその遺伝子がさらに集団内に広まることになる、と。

  門外漢にとっては、なぜわざわざ協力行動が合理的であることを説明しなくてはならないのか、というのがよくわからないところだろう。別のエントリにおいても記したが、生物学の標準的な考え方である「利己的な遺伝子」を前提とすると、非血縁者との協力が非合理となってしまうからである。本書によれば、外集団との軋轢と非協力者への制裁の存在が、そうした単純な見込みを覆すという。はじめに戦争ありき、というわけである。

  訳者解説によれば、本書において、いくつかの計算式および使用しているキー概念にかなりの問題があるという。しかしながら一方で、生物学から社会科学を統合して一貫した説明を与えているという点で高く評価されてもいる。僕のような凡庸な人間としては、本書の含意をもう少しかみ砕いて説明してくれる一般書籍の登場を待ちたい。
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