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自殺研究としては心理学的・生理学的な知見が要所

2017-08-08 17:32:13 | 読書ノート
ケイ・ジャミソン『生きるための自殺学』新潮文庫, 亀井よし子訳, 新潮社, 2007.

  自殺についての研究書であるが一般向けに書かれている。著者は米国の臨床心理学者で、自身も自殺未遂の経験を持っているという。オリジナルはNight falls fast: Understanding suicide (Vintage, 1999)で、邦訳は2001年に『早すぎる夜の訪れ:自殺の研究』(新潮社)というタイトルで発行されている。本書はそれを改題して文庫化したもの。原書にあった参考文献リストは割愛されている。

  自殺の原因として、社会や職場環境からのストレスよりも気質や性格など生物学的要因が重視されているのが特徴である。大半の人はストレスがあっても自殺しないのに、彼らはなぜそうするのか、というわけだ。直接的にはうつや統合失調症を罹患すれば自殺を催しやすいということであるが、そうした病気の発症のしやすさは遺伝的に決まっているという。アルコールや薬物への依存、衝動的な行動も自殺に繋がりやすい要因であるが、これらはやはりうつや統合失調症の罹患と併行している。したがって対策も医学的であり、薬としてリチウムが効果的だとして勧められている。このほか、自殺者の心情、自殺の歴史、自殺の連鎖を止めるための報道への注文、遺族の心情などについても詳しい。一人の自殺者に焦点を当てた長いエッセイも収録されている。

  自殺について博学になれる良書であり、定番の書籍ではある。だが、個人的にはちょっと冗長すぎる印象もあった。文学などからの引用が豊富なのだが、雑学的な脱線のように感じられた。しかし、人によっては、こうした点を著者の教養が感じられる部分として深みを感じるだろう。このあたりは好みによる。
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