29Lib 分館

図書館・情報学関連の雑記、読書ノート、音楽ノート、日常生活の愚痴など。

三人の子を持つパパの育児エッセイ

2011-03-25 09:43:30 | 読書ノート
ジョシュア・ガンズ『子育ての経済学:ビジネススクールの講義でいちばん受けた話』松田和也訳, 日経BP, 2010.

  ときおり学者らしい洞察の入る、男の育児エッセイ。タイトルから想像される「育児常識を経済学的に分析する」ような論争的な内容ではない。副題からはかなり高度な水準の分析を期待してしまうが、プライベートな面を語った随想以上のものではない。おそらくビジネススクールでは、本筋ではなく四方山話として披露したものだろう。

  そういう本だと思って読めば、かなり面白いと言える。著者は3人の子を持つメルボルン大学の経済学者──ケネス・アローの弟子らしい──で、妻がMBAの学位取得に励んだ4年間ほどかなりの時間、育児にたずさわったという。特に、親の意図を超える反応を示す、長女(第一子)の行動が楽しい。例えば、おむつをはずす訓練のインセンティヴとして、トイレに行くとその後にお菓子を与えるという規則を家庭で作った。そうしたら、長女は排泄物がでないのにトイレに立てこもるようになってしまったという。著者はゲーム理論などを持ち出してあれこれ考察するのだが、結局落ち着いた結論は「トイレトレーニングのプロがいる託児所にまかせちゃえ」ということだった。

  教師でかつ保護者として個人的に興味深かったのは、三者面談がいいらしいということ(p.222)。教師が保護者と面談する際、生徒も同席させるというのである。子どもの学校での振舞いと家庭でのそれが違っていることはしばしばある。その場合、保護者と教師がそれぞれイメージする生徒の姿が異なっており、二者面談では話がかみ合わない。なので生徒を同席させたほうが、保護者は学校での子どもの姿を理解しやすいということのようだ。これ以上のことは挙げられた文献を辿る必要があるが。いや、個人的に学生指導で大変だったことがあるので。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 放射線をめぐる不安を軽減す... | トップ | 「市民社会」が日本で持ち上... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書ノート」カテゴリの最新記事