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英国人によるA&Mサウンドの不器用な模倣

2017-06-16 20:19:59 | 音盤ノート
The Pale Fountains "Pacific Street" Virgin, 1984.

  ネオアコ/ギタポ。ペイル・ファウンテンズは英国リバプール出身のロックバンドで、1980年代半ばの短い期間だけ活動し、アルバム二枚を残して解散した。本作がデビュー作となる。Burt BacharachやThe Carpentersが在籍した1970年前後のA&Mレーベルに感化されて、メロディ重視の曲作りとソフトなバンドサウンドを目指した。乾いた哀愁感のあるトランペット演奏は特にバカラックからの影響がわかりやすい。

  海外のレビューサイトを見てみるとかなり評価の低い作品であり(Allmusic.comで5点中2.5点)、初期ネオアコの代表作とされるAztec Cameraの"High Land, Hard Rain"に比するクオリティとは見なされていないようだ。しかしながら、なぜか日本においてだけ、本作は1980年代を代表する傑作扱いされている。1990年前後の「渋谷系」ムーブメントの文脈でしばしば参照されたからだろう。いったいどこに日本人受けする要素があるのだろうか。

  聴いてみると「演奏の下手なバンドが頑張ってA&Mサウンドを模倣しました」感がありありである。自分たちの出したい理想の音があるけれども、センスの違いや技術不足でそこに到達できない、というような。中年の洋楽好きとしては、1980年代以前の邦楽ロックの洗練の欠如を思い出す。当時の日本人ミュージシャンも、こんな感じで「本物」の洋学に近づこうと試行錯誤していたな、と。ストリングスやコーラスなど、いろいろやり過ぎてしまっている点も、知識だけはたくさんある模倣者のはまりやすい罠として聴こえてしまう。これは日本人としては共感せずにはいられない。

  1990年代以降の邦楽は「J-POP」化してしまい、洋楽をもはや参照系として必要としないかのように見える。現在では本物―模倣という言説自体が時代遅れの馬鹿話だろう。なので、このような共感はもはや理解し難いものかもしれない。1980年代という文脈にさかのぼってみてはじめて、このバンドの不器用さと青臭さが胸を打つのである。
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