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結婚に関して体験的に語られていたことを科学的に裏付けかつ条件づける

2012-02-06 10:16:46 | 読書ノート
タラ・パーカー=ポープ『夫婦ゲンカで男はなぜ黙るのか』古草秀子訳, NHK出版, 2011.

  円満な夫婦関係構築のためのハウトゥー本なのだが、科学的調査による知見をベースにしたところがミソ。この種の本はカウンセラーによるものがほとんどで、限られた知識と経験に個人の価値観が織り交じったアドバイスが繰り出されることが多い。しかし、本書は心理学的または生物学的知見を取り入れてアドバイスを展開しており、適用範囲が広くなっている。著者は健康問題を主とするジャーナリストで、離婚経験があるそうだ。

  扱っているトピックは、恋愛感情から、浮気や性生活、夫婦ゲンカ、育児や家事など。普段ケンカをしない夫婦よりもケンカする夫婦の方が、ストレスが少なく長続きするというのは意外なことことかもしれない。ただし、ケンカは適切なやり方でなされることが条件で、相手への批判や軽蔑を口や態度に出してはいけないそうだ。一方で、結婚時の年齢や学歴で離婚率が変わることは読者が「そうだろうな」と思うところだろう。また、お金の問題を解決すれば、家庭が円満になるというのもそう。既婚者が離婚して独りになれば健康状態が悪くなるというものそうだ。概して、意外な発見の披瀝ではなく、今まで何となく世間で知られていたことを裏付け、成立する条件を説明してみせた、という印象である。

  以上のようなわけで、夫婦関係を一気に改善する驚きの方法というものは紹介されていない。日々のささいなことを正しいやり方で解決せよというのがその主張である。では読者の知的関心を湧かせないかと言えばそうでもなく、研究者が発展させてきた夫婦関係を測る指標がいろいろ紹介されており、これが役に立ちそうである。ノーマルな夫婦の関係を、ゲイやレズビアンのカップルから逆照射するという研究などが紹介されるのも面白い。とはいえ、あくまでもハウトゥーで、読みやすくまとめられている。
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