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人間は秩序立てて現象を認識しようとする癖がある、と

2011-02-14 07:52:54 | 読書ノート
小林朋道『ヒトはなぜ拍手をするのか:動物行動学から見た人間』新潮選書, 新潮社, 2010.

  人間行動について進化論的視点から解釈した書籍。人間の心理や行動の「癖」は原始時代のサバンナでの適応によって形成されており、それにもとづけば現代人のこの行動はこれこれこういう風に解釈できる──という説明パターンの分野である。内容は「なぜ映画やテレビのドラマを見たがるのか?」「葛藤状態のとき頭を掻くのはなぜか?」等の19のトピックから構成されている。

  この分野では性差が特に注目されてきたが、この本でも男女の動物の扱い方の違いや、心地よい風景に男女で違いがあることなどが採りあげられている。女性は男性と比べて、家畜に触れるとよりリラックスし、また木陰や小屋などの避難所のある風景を好むそうだ。一方、男は動物を見ると征服したくなり、狩りのしやすい見渡しのよい風景を好むとのこと。

  性差と無関係なトピックもある。上下関係の中では、目下のものは目上のものとのコミュニケーションにおいてより多くのエネルギーを費やす必要があるという。そのため敬語や丁寧な言葉使いは普通の話し方より長くなる。またサングラスやポケットに入れた手が失礼なのは、相手に伝える情報量が少なくなってしまうためだと。他のいくつかのトピックでは、説明のために、相手の行動を反復することで相手の情動をシミュレーションするというミラーニューロン仮説が導入されている。

  検証は不十分だが、この本は提示された仮説の説得力を楽しむのが主眼。すべての説明で納得させられたわけではないが、個人的には興味深かった。僕の子どもが困ったときに頭を掻く行動をとるのを、しばしば目にしていたところので。
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