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内容よりも、インド出身・女性・盲目・シク教徒などといった著者の属性に圧倒される

2012-02-29 09:59:52 | 読書ノート
シーナ・アイエンガー『選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義』櫻井祐子訳, 文藝春秋, 2012.

  「選択」に関係する心理学や社会学の諸研究を通覧する一般書籍。ポジティブ心理学のセリグマンや行動経済学のトベルスキーとカーネマンの名前が謝辞に出てくるが、まさにそのあたりの内容である。個人主義的な意思決定に対する文化的違いと満足の差、自分自身による選択が他者に強制されるより必ずしも満足が高いとは限らないこと、選択肢を5-9個に限ったほうがそれ以上の選択肢の場合より選びやすくなること、などなどのトピックが実例を交えて解説されている。

  タメになる知見が披瀝されているし、エピソードも面白い。僕が購入したのは第八刷で、オビも著者の講義がテレビで紹介されることを示すものに変わっている。ベストセラーになっているのだろう。一方で、似たような主題の書籍でバリー・シュワルツの『なぜ選ぶたびに後悔するのか:「選択の自由」の落とし穴』(ランダムハウス, 2004)があったが、現在廃刊のようである。『選択の科学』は近いうちに文庫本になると推測されるが、著者の特異な出自の強調、副題におけるビジネス書としてのアピール、テレビとのタイアップなど、マーケティングの差がこの違いを産んだのだろう。
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