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言語間の違いも視野に入れた物語論入門

2017-04-21 10:26:09 | 読書ノート
橋本陽介『物語論:基礎と応用』講談社選書メチエ, 講談社, 2017.

  文学研究。いわゆる「ナラトロジー」についての一般向け書籍。著者は『日本語の謎を解く』の人だが、本業はこの領域なのね。なお前半は理論編、後半は分析編となっていて、理論編はについては同じ著者の『ナラトロジー入門』(水声社, 2014.)のほうが詳しいと、著者自身がことわっている。

  理論編の最初のトピックは物語の類型。ウラジーミル・プロップの『昔話の形態学』を参照しながら、物語を構成する要素は30個ぐらいに限られており、その中のいくつかの組み合わせでだいたいの物語はできているという。次に、語りの時間感覚や視点。こちらはジェラール・ジュネットの『物語のディスクール』を参照しながら、回想形式においても物語には現在時間が流れていること、また三人称小説においても視点が登場人物に重ねられていたり俯瞰的であったりと、語りと視点は重ならないことがありうるとしている。残りは、ジョイス『ユリシーズ』のような「自由間接話法」の邦訳を引き合いに、日本語がどうしても話者の視点を採り入れてしまいやすいという特徴があること、およびノンフィクション作品もまた物語的なパターンを有していること等を論じている。

  後半の分析編では、森鴎外の『舞姫』やガルシア・マルケスの『百年の孤独』といった文学作品から、『シンゴジラ』『この世界の片隅に』など最近の映像作品などを採りあげて、その魅力を探っている。対象としてはラテンアメリカ文学が目立つ(中国文学も少々)。語りの面白さについては、やはり南米の実験小説ということになるのだろうか。この他、日本および世界の文学作品にマンガなど、数多くの作品が紹介されている。このため、分析編は賑やかすぎて落ち着いた検証とはなっていない印象である。が、それでも教科書的な理論編よりは楽しんで読める。

  以上。本書は創作する人にとって大いに参考になるだろう。読んだり観たりするだけの人にとっても、本書で提示されたツールを使って気に入った作品を分析出来れば、技術的な面で深くその魅力がわかるはず。僕のように普段あまりフィクション作品に接しない人間にとってはどうだろうか。一応、「物語の構造はノンフィクション作品やマスメディアの報道にも通底しており、メディアリテラシーとして有益である」としたいところだが、やはりノンフィクション作品の豊富な分析を見たいところだな。
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