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エレクトリック・ギターの多重録音によるロック系ミニマル音楽

2016-09-14 21:47:05 | 音盤ノート
Ash Ra Tempel / Manuel Gottsching "Inventions for Electric Guitar" Kosmische Musik, 1975.

  ドイツのプログレッシブ・ロックで、インスト作品集。名義のよくわからないアルバムで、ジャケットにAsh Ra TempelとManuel Gottschingの二つが表記されている。これはバンド作品なのかソロなのか。この頃のバンドは実質Gottsching一人のソロユニットになっていたので、どっちでもいいのだろう。だが、ソロ名義ではドイツ国外でのマーケティングに向かないようで、次作の"New Age Of Earth"が英Virginから発売されたときには名義がAshraとされた。

  その中身は、ミニマル音楽の影響を大きく受けた、シンセサイザーとエレクトリックギターによるサイケデリック・アンビエント音楽である。収録は三曲で、18分に及ぶ演奏の一曲目'Echo Waves'は、ギターのピッキング音を重ねてトリップ感を醸し出すという、いかにも麻薬中毒者が喜びそうな浮遊感に満ち溢れた曲である。次の曲はシンセサイザーによる暗い小品(といっても6分かかる)。21分を超える最後の'Pluralis'もシンセとギターの反復によるミニマル的な楽曲だが、最初の曲に比べてかなり重厚で瞑想感がある。

  最初と最後の二曲は、反復パターンとオーバーダブが造り上げる音響がとても面白い。だが、ミニマル音楽的な「エゴ抑制」を全編を通して貫くことはできず、曲の最後の最後にロック魂を炸裂させたディストーション・ギターが割り込んでくる。初めて聴いたときには、このギターソロの存在が古臭く感じられて、かなり気に食わなかった。なんでこんなダサいソロを入れるのか、と。こうした瑕疵はあるが、同時代のロックミュージシャンの中で、ゲッチングがもっともよくミニマル音楽の快楽の本質を理解していたということは理解できる。
コメント
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