四方山話を聞かせましょう

ロック・ポップス黄金期の話、フラメンコの話、ギター製作の話、昭和期の話、そして時にはまじめな建築の話

ギター製作の話をいたしましょう。 第十一話

2007年05月04日 | ギター製作
表板の製作  1



一般的に表板の材料には、スプルースや米杉が使用される。
日本ではスプルースの音が好まれるため、圧倒的にスプルースのギターが
多いらしいが、ヨーロッパでは米杉と半々ぐらいの割合で造られているらしい。
いずれの材料にしても絶対的な条件は、柾目の板であることだ。
最良の柾目は木口を見て、板に対して直角に目が通っていること(本柾目)
だが、問屋さんで材料を購入しても少し流れて斜めになっている(追い柾目)
ことがある。
目の細かさは、細かいに越した事はないが、少々目が粗くても音に対する
影響はあまりないらしい。

我々建築に携わる者にとっては、米杉もスプルースも非常に安価な
材料なのだが、ギター用の材料としてはいずれも極端に高価な材料に
なってしまう。
建築資材の様に若木で伐採するのと違い心材や辺材の使えないところを
除いて20cmの板幅を確保しようと思えば樹齢数百年という木を伐採
しなければならない。
まだ米杉は大木が残っているが、スプルースはだんだん世界中に大木が
なくなってきたらしい。

かつて、あるギター製作家がギターが売れないので木工技術を生かして
民芸品でも作ろうと材木商に松材を発注したら、ギター材とすれば
原木でもわずかしか買えない金額でトラックに山のように原木が積まれて
きてびっくりしたと言う実話があるくらいだ。

レッド シダー
ヒノキ科ネズコ属の針葉樹 別名米杉
杉の名が付いているが一般に日本で言う杉とはまったく別物。
比重が軽く、スプルースよりも音の立ち上がりが早く明るい音が得られると
いわれている。
ただ、色むらが大きく、柔らかく割れやすい。
年数が経過すると黒ずんで汚く見えるようになるが非常に扱い易い材料だ。
スプルースよりも安価で削るも切るも簡単にできるのでアマチュア製作家に
とっては都合の良い材料だと思う。(私の場合骨棒の材種で悩んでいるが)


スプルース
よくスプルースを使用したギターの表板に松と表記した物があるが、
厳密には松ではない。
松科トウヒ属の常緑針葉樹
世界中に生息するが同じ種類の木でも産地によって性質は少しずつ違う。
ほとんどが産地の名前が付いている。


シトカ スプルース (カナダ産)
弾性率が大きく、柔らかい材料だが強度があるためギターの表板にはよく
使われている。
他のスプルースに比べ硬質なために、きらきらした音になると言われている。
ギターに使用されるスプルースの中では一番安価で購入できる。

イングルマン スプルース(カナダ産)
シトカ スプルースよりも軟質で白っぽい。
色やけが起こりにくく、材質の通り柔らかい音が出ると言われている。
プロの製作家でこの材料を進める方が多いが、いささか高価だ。


ジャーマン スプルース
昔から最も使用されてきた材料だが、今は希少な材料となり良材は
入手困難になった。
実際はほとんどドイツ産ではなくチェコ産らしい。


エゾ スプルース
日本が誇るエゾ松だが、最近は北海道産ではなく北洋材を指す。
建築の世界ではエゾといえば垂木材などだが、ほとんどロシア材だ。
今年ロシアが輸出木材に20%の関税を掛けてくるようになるので、
建築資材同様かなり値上がりすると思われる。
むかしヤマハのギターはこのエゾ松を使用していたが今では高級品にしか
使用していない。
金額は高価だ。
私の場合ほとんどこの材料は建具屋さんで原板を調達している。

私の使用割合は
シトカ 4 、米杉 3 、北洋エゾ 2 、イングルマン 1 
といったところか?






今から使用する材料を決める。
幅20cm、長さ50cm、厚さ12mmぐらいの柾目の板を半分に挽き割り、
目の細かい芯の方をあわせるように開いて使用する。
あらかじめ板の両面をプレーナー仕上げをして3mm程度にしておくと
後々仕事が楽だ。
問屋さんで購入するならこの作業は有料でしてくれる。





貼り合せる面にカンナをかけていたと直角になるように削るが、板の
両端より中ほどがわずかにへこむように削った方がハタガネで締め上げたとき
きちっと密着するようだ。
カンナが難しければ長めの板に両面テープで空砥ぎペーパーを貼って一種の
ヤスリを作って削ると上手くいく。





裏に板を当てて段差ができないように両端を固定して接着。
この接着はタイトボンドを使用。
接着時に、はみ出した接着剤をできるだけぬれ雑巾などで拭き取って
おいた方が良い。
ただ、いくらふき取っても接着剤はにじみ出るので、裏木などを当てると
くっついてしまう。
私の場合は板と裏木の間にティッシュペーパーを挟んでいる。
後でぬれ雑巾で拭けばきれいに取れてしまう。



接着剤が乾いたなら  (タイトボンドは20分ほどで乾くが最低2時間は
置いた方が良い)
板の両面に軽くペーパーをかけ、接着剤のはみ出し部分を取り除く。






板の中心線を書き、ギターの半型でギターの形を書き込む。
この時硬い鉛筆を使用すると材に食い込みへこむので2B~4Bぐらいの
柔らかい鉛筆でなでるように書いた方が材料が痛まない。
そして書いた線を残すように大きめにギターの形に切り落とす。
切り落とす時は、ノコギリで落とせば早いが、ノコギリが上手く使えなければ
カッターナイフで物差しを当てて直線の連続で切り落としわずかな三角の
出っ張りをペーパーで丸く削った方がきれいな形に仕上がる。






私はサントス・エルナンデスの型を使用している。



                       つづく


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