モールス音響通信

明治の初めから100年間、わが国の通信インフラだったモールス音響通信(有線・無線)の記録

沖縄戦と沖縄の通信(その1)

2017-07-16 | モールス通信
◆沖縄戦下の沖縄

大本営は、1943年(昭和18年)12月末日、南洋諸島および台湾の防備強化を決定した。この決定によって翌年3月中旬、大本営は南西諸島および台湾へ視察班を派遣した。そして那覇においてその統帥を発動することになった。

南洋の島々がつぎつぎと玉砕したので、大本営は南西諸島のもっとも重要な沖縄本島および宮古島島がほとんど無防備に近い状態であるとして、急遽兵力の増強を開始した。満州からの大兵団は、6月26日から月7月24日までに、一部空輸し、戦艦大和、武蔵を動員して輸送された(陸上自衛隊幹部学校「沖縄戦史」第1巻)。

第32軍司令部は、敵情判断としてアメリカ軍の沖縄攻略に使用できる兵力を5ないし10箇師団と判断した。またそのとき米軍の太平洋艦隊の第1500機をもつ機動部隊がその支援にあたると予想した。そしてその進攻時期は、10月以降可能であると考えられるが、台風を避けるため20年春頃の公算が大きいと判断していた。

また沖縄決戦体制を確立するため、第32軍は県民を総動員し、昼夜交替で陣地構築作業をすすめ、食料増産に励むよう指令した。疎開計画は、老幼婦女子に限り沖縄本島から九州は8万人、宮古、八重山から台湾へ2万の計10万人を予定し、その経費は一切国庫負担とされた。しかし対馬丸(乗船者約1700人中、生存者は学童59人、一般疎開者168人)が敵潜水艦の犠牲となったため、「どうせ死ぬなら、海の上で死ぬより、郷土で死んだ方がよい」として、そのあと県の疎開計画に耳を傾けようとしなかった。

ところが10・10空襲で那覇市が全焼すると、ようやく戦争の恐ろしさを悟り、ふたたび疎開するようになった。沖縄から島外疎開は、7月中旬より翌20年3月22日の輸送中止まで延べ約178隻で輸送され、約7万人が九州・台湾に疎開した。

島外疎開のほかに、第32軍は県庁に対して、主戦場と予想される沖縄本島の中南部の60歳以上の老人と国民学校以下の小児は、20年3月末日までに比較的安全な国頭地方に疎開させるよう要望した。

第32軍は、現地徴集に並行して、19年秋、遊撃隊、特設警備中隊、特設警備工兵要員として約5000人の防衛召集をおこなった。つづいて翌年1月から3月にかけて戦局が逼迫したことと、台84師団派遣の中止にともない、満17歳から45歳までの健全な男子、ほとんど全員約2万人に対して防衛召集をおこない米軍上陸に備えた。

また、中等学校の学徒は鉄血勤皇隊として編成され、軍の各通信隊にも入隊した。 
 ただし、本稿では軍の通信隊についてはふれず、逓信関係のみとする。

◆沖縄戦時下の逓信従業員
1944年(昭和19年)7月サイパン島を手中に収めためた米軍は、太平洋の島々を飛び石づたいに占領し、やがてほこさきを沖縄に向けた。B29は連日飛来し、警戒警報は、解除のないまま発せられた。近海も米潜水艦が徘徊し、海岸業務取扱局の呼出応答電波500KCは、それらの情報通信で多忙をきわめた。

このようにきわめて緊迫した状況下にあった同年10月10日の午前6時半、突如沖縄上空に数拾機の米軍編隊機が現れた。県民は、日本軍の大演習と思い込んでいたが、那覇飛行場や那覇商港および那覇市街目がけて急降下し、投爆と機銃掃射に、はじめて敵の空襲とわかり、たちまち恐怖におののいた。

逓信従業員は、非番の者もみずから局にかけつけて、非常通信の確保、局舎の防火の任務についたのであった。特に那覇市内にある郵便局および電気通信工事局の従業員は、激しい空襲にみまわれながらもふくそうする通信の疎通または電話交換業務を続行したが、午後3時半ごろ局舎が火に囲まれ、やむを得ず職場を離れた。重要書類と受信機、機器類を分解して持てるだけのものをもって、機銃を浴びながら郊外へ脱出することは容易なことではなかった。

この空襲で、那覇市内は、ことごとく灰燼に帰し、局舎電気通信施設も全焼した。また、電気通信工事局従業員1名が死亡、那覇在住の職員は、みんな着のみ着のままとなってしまった。以後これを10・10空襲と呼ぶようになった。


◆出典 沖縄の電信電話事業史 1969年11月30日※
 (編者兼発行人 琉球電信電話公社)
  ※沖縄の本土復帰は本書出版の2年余の後、1972年(昭和47年)5月15日である。
 
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