hydroplane ~goo BLOG~

Diary,Essay and Story

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a girl with blackeye #2

2010-05-28 22:53:18 | 小説
夜中の3時を過ぎるころに僕はまだ一人で飲んでいた。
時折、顔を合わせる常連客達とあいさつを交わしながら、
考え事をしながら、耳に入ってくるうわさ話や若いカップルのありふれた話。
どこにも行き場をなくしたしまった(つまりは僕のような)
男たちのつぶやきを聞いていた。
反対側のカウンターでは初めて見る顔の女の子が
友人と思われる若い男女と飲んでいた。
彼女の声はひときわ大きいく、そして陽気だったが、
4時を過ぎる頃には狂気じみた痴態へと変わって行った。

その頃、僕はもう飲むのをやめ、グラスに注いだ水を少しずつ飲みながら
気怠さと眠気の入り混じった、どろりとした泥のような感覚を
おぼえ始めた体を持て余していた。

完全に酔っぱらった表情をしたさっきの女の子がカウンターの間をうろつきながら、
知らない男にしなだれかかっては、お尻を触ろうとする男の手を
うれしそうに笑いながら払いのけている。
悪意のある男達はテキーラをショットで注文し、さらに酔わせようとする。
そんなことするまでもなく酔いつぶれて、2時間後には寝てしまうであろう、
そこはコンビニの前の駐車場かもしれないし、
誰かのアパートかラブホテルか、・・・知ったこっちゃない。

「ねえ、あなたは誰?」

少しイライラし始めていた俺はぶっきらぼうに言った、
「なあ、俺とキスしないか?」

「うん、する」
悪意のない顔で女の子は笑う。
まったく、こわいものなんてこの世の中にはないって顔をしている。
俺は思わず吹き出した。


夜が明ける少し前の路地裏、電柱の明かりが今にも消えそうな暗がりで
倒れ込みそうになるその女を支えてキスをした。

脳裏にはあの夜、男に殴られて顔を腫らして泣いていたナミの
暗い顔だけが浮かんで消えていた。

どうやって復讐をしよう。
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a girl with a black eye #1

2010-04-22 14:45:49 | 小説
雨が降りしきる。僕は図書館に来ていた。
読みかけの雑誌から目を離して窓ガラスを伝う水滴が流れるのを見つめながら、
昔の友達のことを思い出していた。

彼女の名前はナミ。
黒い髪のショートカットがよく似合っていて、
薄いチークのピンク色のファンデーションと日に焼けたことのないような白い肌の
コントラストが印象的な子だった。

よく冗談を言い、僕らは仕事のことでこっそりと悪態をついては笑った。

あの日も雨の降りしきる夜だったろうか、
僕は職場の飲み会が始まるまで休憩室のソファに座って待っていた。
携帯電話が着信をバイブレーションで知らせる

「ちょっと、詳しくは言えないんだけど、駐車場の入り口まで来てほしいの」

「わかった、すぐ行くよ。」

雨の中、ビルの軒下、雨どいのパイプは音を立ててアスファルトに水を吐き出していた。
照明から少し離れたところで傘もささずに立ちすくむ
彼女の様子がおかしいと気づいたのは、それから間もなくのことだった。

いつもはアップにしている髪は全て下ろしていた。
濃い黒のアイシャドウは不気味なパンダで口の端に残る傷跡、
腫れた頬は下ろした髪とアイシャドウでは隠しきれそうもなかった。

泣いて、泣き腫らして真っ赤になった目で彼女は言った。


「ごめん」
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Someone's death 3

2010-03-17 18:48:40 | 小説
そうか俺も親父はさ、
俺たちけっして良い父子の関係とは言えないけど、
とにかく突然だったな

ダニエウが手に持ったタバコの火も消さずに話し始めた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

仕事でイタリアだかオーストリアだか
飛行機に乗ってヨーロッパに行ったと思ったら
電話で知らせが来て、

死んだってさ。

心臓発作らしいんだけど、よくわからなかったよ。
痩せてるとは言えないけど、風船みたいに太ってたわけじゃないぜ
43歳だから贅肉も多少はつくだろうけど、
ショッピングモールでウロウロしてるウスノロのSuper Fat Bastardでもあるまいし、
誰も俺もそんな死に方をするとは思わなかったよ。

もちろん、おふくろは気が違ったみたいになったよ。
泣き叫んで、ベッドに倒れ込んでおいおいおんおんとずうっと泣くんだよ
それを見て悲しくてやりきれない気持ちにはなるんだけど、
俺の目からはそんなふうに涙は出てこないんだ、親父の死に関してはさ。

時々、思い出すと泣きそうになっちまうことはあるけどな、
でも、それは取り乱したおふくろを見たときでさ
なんとかしなくちゃ、まだガキだったけど
俺がなんとかしなくちゃって思ったよな。小さい妹もいたし。


しばらくして、おふくろが家を出るって言い出したんだ。
俺はどこにも行きたくなかったけど、学校も友達も失うのは嫌だったよ。

おふくろは言うんだ、この家はどこもかしこも親父だらけだってさ。
もちろん幽霊とかそんなじゃないぜ、
思い出がいっぱい詰まってたんだろう、
何もしなくても、何かしら思い出さずにはいられなかったんだろうな。

でもさ、まだ俺もガキだったから学校や友達のこともあるし
嫌だったんだよふてくされて、それで最後は激しい口論になってさ。

なんでそうなるのかはよくわからないけど途中からお互い興奮してきて
殴る、殴らないの話になってさ、
ちょうどリビングにギターが置いてあったんだよ。
家族では誰もちゃんと弾けないんだけど、なぜか置いてあったんだよ。
サムの持ってるやつあるだろ、エレキじゃないアコースティックのギターでさ、
とにかくそれが俺の脇に立て掛けてあったんだ、その時。
「俺はもうガキじゃないんだぜ、もう引っ叩かれても、
お袋の言うことなんて聞かねえんだよ」

「私があなたのことをもう叩けないと思ってるんだったら、大間違いよ」

お袋がギターをつかんだと思ったらぶん殴られて、
バッカーンと割れたギターが床に転がって、
まともに殴られた俺は頭から血流して、お袋がまたヒステリーにみたいに泣くんだよ。
バカみたいだろ、まるでコメディだけどな。
まさか母親にギターで殴られるんて思いもしなかったし。

あの時は、それから二人して抱き合ってしばらく泣いたな。

ダニエウはここまで話し終えると、もう一本タバコに火をつけると
だまって天井を眺めて、煙を吐き出す。
俺は冷蔵庫から2本ビールを出した。



例えば俺の部屋のベッドと鏡、窓、
俺たちがこうしているキッチン、シャワー、ポーチ、
ここにはこうやって楽しい思い出しかないけどさ。
いつか思い出すだろうな女たちやお前や連中のこともさ。
へへへ。


その時、玄関のドアが開く音がしてジュリオが歌いながら帰ってきた。
「Hey, Man. What's up? bro! Welcome to Tifana,
We have everything in here Tequila, Sex, Sweet marijuana!!」

「へい、どこ行ってたんだよ、飲むか?」

「金曜日だぜ、おい、お前ら何暗い顔してんだよ、
外の通りではスカートはいたPussy達が
顔にヤリたいって書いて歩いてくぜ。
へっへへ。俺たちも街に出ようぜ。」
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Someone's death 2

2010-03-05 01:08:33 | 小説
「もっとこう、なんて言うかなエレベーターにみたいに
上がったり下がったりするもんだと思ってたんだよ、感情って。」

サムが子供の頃を思い出しながら話を始めた。

入院先の祖母が死んだという知らせがきたのは10才の時だった。
小学校から帰ってきたある日の夕方のことで
死んだって聞いたときは、大変だとは思ったけど他にはなんにも感じなかった。
電話したり、通夜の準備をするために家の中を片付けたり、
みんなが忙しそうで、それを眺めたり、手伝いをして、着替えたりして、
いつもどおりご飯も食べるし気がつくとテレビ見て笑ってた。
いちおう、不謹慎なのかなとは思うんだけど、
そもそも悲しいという感情がどこから来るのか、よくわからなかったんだろう。

祖母が病院に入っていた間はずっとベッドに寝ていただけで、
顔を会わしても、ちゃんとした会話もできなかったし
覚えてるのは同居していた幼い頃の記憶だけしかないんだから、
何も感じないのが当然というか、当たり前と言えば当たり前なんだろうな。

でも子供心にそれでもとにかく泣かなくちゃいけないと思って、
一人になって部屋の電気を消して、片付けたソファーの隙間に寄りかかって、
顔を埋めて泣こうとしたんだよ。
いかにもテレビで見た悲しみの中で泣く人を真似てみたんだ。

まるで儀式のように、目を閉じて、集中してみた。
泣かなくちゃダメだ、これは悲しい出来事なんだって思い込もうとした。
いつまで待っても涙は出てこなかった。
だから、しばらくそのままの体勢でソファの隙間にいたんだ、
襖が開いて通夜のために喪服に着替えた母が僕を見て、
無言で襖を閉めると黙って立ち去っていった。

なんだかウソをついたようなバツの悪い気持ちになって、
祖母の死で泣けないことよりも寂しい気持ちになった。
だから泣けないとわかっていてももう少し挑戦を続けることにした。
もちろん、いつまで経っても泣けるわけないからあきらめるんだけど。

やがて白い服を着せられた死体、葬儀屋、近所の人、
見覚えのある大人たちと会ったことのない遠い親戚、
結局、そのまま人生初めての他人の死というものの記憶は
全てが淡々と進んでいった。

そうだ棺桶の蓋をかぶせて閉める時に金づちの代わりに石で釘を打つんだ。
その時に最後になるからと勧められて手で触った死体の顔。
弾力も体温も何もないおでこもほっぺた。
ただその感触だけ覚えてるかな。

お化けや幽霊は本当にいるんだろうか、
祖母もそうなったりするんだろうかと思ってたけど、
火葬場に行って燃やした後、骨だけになって出てくるんだけど、
もう死体という存在すらなくなってしまうんだな、
砂と小さなかけらのようになってしまったと思ったら
その時だけは涙が出たんだ。

何の努力もなく本当に自然に出てきたね。
人の死というのは理解できるまでに時間がかかるのかもしれない。

うん、物事を受け入れるというのは時間がかかるんだ。



そうか俺も親父はさ、
俺たちけっして良い父子の関係とは言えないけど、
とにかく突然だったな

ダニエウが手に持ったタバコの火も消さずに話し始めた。
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What did you get in your hand?

2010-02-27 03:46:40 | 小説
目を閉じる、いつか君は僕に言ったね
「僕が死ぬときは、鳥のさえずりのようなきれいな音楽を聞きたい
時刻は太陽が昇り始める時の澄んだブルーの朝か、
真っ赤に、オレンジに、ピンクにと
空が色を変えながら染まる夕方がいいね」

「そうだな、なるべくなら雨降りはいやだね」って


それなら武器を手に取るのは止めた方がいい

手に武器を握りしめて死ぬのは悲惨なだけだからね
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