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篤姫(あつひめ)とOEM戦略

2009年05月10日 | 歴史に学ぶ

今年のNHK大河ドラマは『天地人』。「愛」という珍しい兜の前立ちで知られている戦国の武将・直江兼続が主人公で、若手人気俳優の妻夫木聡さんが演じ、視聴率も好調のようです。でも私個人としては、昨年の『篤姫』の方が好みかな。(宮崎あおいさんという女性が主役だったこともありますが・・・)。この『篤姫』ですが、原作は宮尾登美子さんの『天璋院篤姫』。私はこの原作を読み、ドラマも毎週見ていました。宮?あおいさんの演じる主人公の篤姫(のちの天璋院)は江戸幕府13代将軍・徳川家定の正室であり、幕末の動乱期にあって、徳川家を支えた気丈な女性です。

この篤姫は、将軍後継問題で発言権を得ようとした薩摩藩主・島津斉彬を中心とする「一橋派」と呼ばれるグループの切り札として、大奥に送り込まれた人物です。けれども彼女はもとは薩摩藩主・島津家の分家の娘。とうてい将軍御台所(正夫人)になれる身分ではありません。それをクリアするための戦略が「養子縁組」でした。

薩摩藩主島津家の分家に生まれた篤姫(当時は「於一(おかつ)」)は、英明をうたわれた島津斉彬の眼鏡にかなったほどですから、将軍夫人としての素質は十分にあったものと思われます。しかしながら外様大名のさらに分家の娘では身分が低すぎます。

そこで斉彬がとった手段が養子縁組作戦。まず島津本家の娘として幕府に届けました。薩摩藩77万石という大藩の姫ですから、輿入れ工作のための財力と人脈は十分です。しかし、いくら薩摩藩が経済力に優れていても、外様大名に過ぎませんから、将軍御台所としては格式が不十分でした。

ところで、当時の日本では将軍を中心とする幕府の他に天皇を中心とする朝廷があり、その朝廷を構成する主要メンバーが公家とよばれる人々でした。この公家たちは、経済力はきわめて低いのですが、位だけは異常に高いのです。その頂点にあったのが、五摂家筆頭の右大臣・近衛忠煕。近衛家は歴史的にも島津家とは関係が深く、忠煕の正夫人も島津家の出身でした。

斉彬は篤姫を将軍御台所にするため、彼女を近衛忠煕の養女にします。なんといっても近衛家は公家の筆頭の家柄ですから、家柄としては超一流ブランドです。こうして日本の片隅の家に生まれた於一(おかつ)は島津本家の養女から日本でも屈指の名門・近衛家の養女となり、やがて将軍家へ嫁ぐというプロジェクトは成功したのです。

このような手法は当時、一般的に行われていたことでした。近衛家などの公家にしても、養子縁組を申し込んでくる先からの経済的支援を期待できますから、喜んで応じたものと思われます。養子縁組を申し出るほうにしても、公家という一流ブランドを拝借することで、自家の婚姻が有利に展開するというメリットがあります。

篤姫の輿入れに際してもこの関係が有機的に結びつき、効果的に機能していました。製品にたとえるのは恐縮ですが、篤姫という高品質の製品をもつ島津家というメーカーが、近衛家というブランドを使って、将軍家という巨大マーケットでの販売に成功する、という図式が見えてくるのです。

経営学における企業関係としてOEM(OEM供給)があります。「委託を受けた相手先ブランドで製品を生産し供給すること」と定義される関係です。実際のマーケットにおいては生産者側からOEMの相手先を開拓し、そのブランド力を利用して生産実績を上げることもあるでしょう。

この篤姫の将軍家輿入れの図式を見るとき、なんとなくOEM戦略に似ているなと思います。私自身まだまだ勉強不足ですので、ほかに良いご意見があれば、ぜひコメントとしてお寄せください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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