WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

「ホヤ」の季節だ!

2010年05月05日 | 今日の一枚(Q-R)

●今日の一枚 265●

Ray Bryant

Ray Bryant Plays

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 もう春だ。私にとって、春は「ホヤ」の季節でもある。私の住む三陸海岸でも「ホヤ」が普通にスーパーに並ぶようになった。「ホヤ」はグリコーゲンが豊富で、海のパイナップルなどともいわれ、私の住む地方ではメジャーな食べ物であるが、他の地方ではほとんど知られておらず、大学生の頃にそのことを知って愕然としたものだ。私にとっては、この季節になると、どうしても食べたくなる食材のひとつだ。若い時分、愛知県で働いていた頃には、名古屋の市場でやせた「ホヤ」を見つけて買ったものの美味しくなく、どうしても美味い「ホヤ」を食べたくなって、新幹線料金を払って仙台までUターンで「ホヤ」を買いにやってきたこともある程だ。

 「ホヤ」を食べると、次に飲んだものに甘みがでてくる。昔、伊達の殿様が「ホヤ」を食した後に水を飲み、この名水はいったいどこの水だと聞いたというのは地元では有名な話だ。「ホヤ」を食しながら飲む日本酒は本当に美味い。私自身、現在のように日本酒にはまった理由のひとつは「ホヤ」にある。

 GWの最終日ということもあり、ゆっくり日本酒を飲みたいと考え、近所のスーパーで「ホヤ」を5つ買ってさばき、半分を実家におすそ分け、もう半分を日本酒の「おしばて」とした。「ホヤ」ももう1ケ88円になっており、本格的な「ホヤ」の季節である。今日の日本酒は、金紋両国の「福宿 無濾過原酒 あらばしり 吟醸酒」だ。地酒である。「ホヤ」とともに飲む酒はさすがにうまい。雑味が消し去られまろやかな風味になる。また、楽しみな季節がはじまる。

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 今日の2枚目である。レイ・ブライアントの1959年録音作品『レイ・ブライアント・プレイズ』である。原盤が超マイナーなレーベルSignatureだったため、かつては"幻の名盤"と呼ばれたらしいが、CD時代の近年はピアノトリオの定番として大人気を博している。いつも思うのだが、レイ・ブライアントの作品は、基本的に上品である。彼の演奏を聴くといつも「端正」ということばを思い出す。清く正しく美しくとまではいかないが、良くも悪くも下品なところがなく、ソフィストケートされている。それが退屈に感じることもあるが、無性に恋しくなり、じっくり聴きたくなることもある。私にとって、ピアノトリオといわれて、まず思い浮かべる「基本の」ピアニストの1人である。

 あまり休めなかったが、GW最後の夜だ。今夜はレイ・ブライアントの端正なピアノを聴きながら、「ホヤ」と日本酒をじっくり味わいたい。

 


バッド!ボサ・ノヴァ

2010年05月05日 | 今日の一枚(G-H)

●今日の一枚 264●

Genne Ammons

Bad! Bossa Nova

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 気持ちのよい朝だ。GWも今日で終り。ほとんど休みはなかったが、それでも昨日はオフ、さてどこに行こうかと思案していたところ、朝の県内版ニュースで、楽天vs西武のニ軍戦に菊池雄星くんが登板するとの情報を得、次男と妻を伴って、急遽、Kスタへ向かった。ニ軍戦とはいえ、GWで雄星くん登板ということもあり、満席に近い状態(外野席は開放せず)、選手の半分程度は一軍でなじみの選手であり、なかなか楽しめた。試合の方は楽天の負けということで残念だったが、それなりに見せ場もあり、面白かった。西武の雄星くんは、5回まで無失点の投球だったが、内容はあまり良いとはいえない気がした。チャンスで楽天打線のいい当たりが再三再四、野手の正面ライナーという幸運(不運)があったからだ。何より、玉が遅い。150㌔以上の速球を投げるという鳴り物入りで入団した雄星くんであるが、昨日は130㌔台後半が大半、141~2㌔の玉も少しあったが(MAX 147㌔)、速いとは全然感じなかった。甲子園で無理をして投げて、肩を壊してしまったんじゃないかと思ってしまうような投球であり、一軍はまだ無理かなと思った。

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 今日の一枚は、ジーン・アモンズの1962年録音作品『バッド!ボサ・ノヴァ』である。1962年といえば、スタン・ゲッツのボサ・ノヴァ作品の大ブレークで、世界的なボサ・ノヴァ・ブームが巻き起こった年だが、ジーン・アモンズのボサ・ノヴァは一味も二味も違う。ボサ・ノヴァの爽やかで軽快なリズムをバックに、ジーン・アモンズはブルースフィーリング溢れるサックスを吹きまくる。まさに、吹きまくるという表現が適当だろう。このへんが、「バット」の所以なのだろうか。②「カプランジ」が耳について離れない。「ジャングル・ソウル」というサブタイトルがぴったりだ。単純で土着的ともいえるリズムの繰り返しをバックに、《どブルース》といいたくなるようなサックスが展開される。これが9:35も続くのだ。はじめはそれほどでもないのだが、聴いているうちに、演奏に引き込まれ、リズムに身体が同化してしまう。ところどころでアクセントをつけるバッキー・ピザレリとケニー・バレルのギターもなかなかの聴きものである。ブルース感覚溢れるプレイで充満しながらも、結果的にはきちんとボサ・ノヴァ作品に仕上がっているところがまたいい。

 難点をあげるならジャケットである。なんかちょっと汚い感じだ。芸術を私が理解できないだけなのだろうか。絵の具を吹き飛ばしただけのようなデザインは、小学生のやっつけ仕事にしか見えないのだが……。私としてはあまり手に取りたくないジャケットである。これも「バット」の所以なのだろうか。