WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

In A Jazz Tradision

2009年03月14日 | 今日の一枚(E-F)

◎今日の一枚 239◎

Eric gale

In A Jazz Tradision

 今日の一枚もエリック・ゲイル。カセットテープで聴いている。これもCDを購入し損ねたアルバムである。彼がカリフォルニア州のメキシコバハで亡くなったのは1994年だったが、それからの15年という歳月が長いのか短いのかよくわからない。ただいえることは、彼の存在感がしだいに過去のものになりつつあるのではないかということである。例えば先日も記したように、HMVで検索してみるとわずか4枚のCDしかでていない。amazonでも同様だった。驚異的なフュージョングループ「スタッフ」のギタリストとして一世を風靡し、多くのギタリストに影響を与えた彼も、時間の経過とともに忘れ去られていくということなのだろうか。そう考えると、今もっているカセットテープが貴重なものに思えてくる。(まあもちろん、今後CD化される可能性はあるのだろうが……)最近、立て続けに昔のカセットテープを聴くのはそのためかもしれない。

 エリック・ゲイルの1987年録音作品、『In A Jazz Tradision 』。何と、エリック・ゲイルが純正ジャズに取り組んだ一枚だ。Normalポジションながら、TDKのARXというテープに録音されており、思ったよりかなり音がいい。音量を上げても十分に快適に聴ける。参加ミュージシャンは次の通り。

Eric Gale : guitar
Houston Person : tenor saxophone
Lonnie Smith : organ
Ron Carter : bass
Grady Tate : drums

 このおよそエリック・ゲイルらしからぬアルバムの評価は様々であろうが、私としてはサウンド的に多少の物足りなさを感じるものの、演奏自体は結構評価している。まるでロン・カーターのリーダー作であるかのようなジャケット写真からもわかるように、エリック・ゲイルは演奏においても決してでしゃばったまねはしない。あくまでバンドの中のひとりとして、全体のバランスの中でプレイしているようにみえる。しかし、それでいてしっかりとした存在感が感じられるのは、やはりエリック・ゲイルが凄腕ギタリストであることの証なのであろう。純正ジャズを演奏し、サウンド的にもまぎれもない純正ジャズでありながら、どこかフュージョン的な、あるいはエリック・ゲイル的なテイストを感じるのは不思議なものだ。それはオルガンの使用によるものかもしれないし、チョーキングを多用するエリック・ゲイルのプレイスタイルのせいかも知れない。いずれにせよ、優れた音楽家の演奏というものは、そのオリジナリティーが自然に、滲み出るように表出されるものなのであろうか。

 どの演奏も質の高いものであるが、典型的なハードバップでぐいぐい迫ってくる ① Eric's Gale 、私の大好きな名曲 ⑤ Jordu 、ブルースフィーリング溢れる最後の曲 ⑦ Blues For Everybody  、が私のお勧め、特に印象に残った演奏である。