WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

アイランド・ブリーズ

2009年03月10日 | 今日の一枚(E-F)

◎今日の一枚 237◎

Eric Gale

Island Breeze

Islandbreeze_4

 先日、Stanley Turrentine :『Straight Ahead 』のカセットテープを久々に聴いたことを契機に、永らくカセットラックに置き去りにされてきた大量のテープのうちのいくつかを聴いたみた。やはり、お気に入り作品であるにもかかわらず、CDに買い換えなかったものがかなりの数あるようだ。

 伝説的なフュージョン・バンド”スタッフ”のギタリスト、エリック・ゲイルの1982年録音作品『アイランド・ブリーズ』。気持ちいい。ワンパターンの指ぐせ全開である。もちろん褒め言葉である。エリック・ゲイルを私は、脅威のワンパターン・ギタリストだと認識している。ほんの少し聴いただけで彼のものだとわかるそのフレーズは、それが指ぐせであるかどうかにかかわらず、完全に個性の領域に属している。ワンパターンに思えるのだが、それが全然いやみにならず、むしろ爽快な気持ちよさを感じさせるところが素晴らしい。

 私の知る彼の作品中、タッチ・オブ・シルクの次によく聴いたアルバムである。録音されているテープは、SonyのBHFというNormal ポジションのもので、録音状態はお世辞にも良いとはいえない。もともとの音源がなんであったかもよくわからず、レコードジャケットもはっきり憶えていない始末だ。録音の状況から、LPレコードからのダビングであることは間違いない。だだ、出はじめのウォーキングステレオで何度も何度も聴いたアルバムであり、今でもギターソロのメロディーがほぼ完全に口をついて出てくる。渋谷の街を駆け巡っていた生意気な日々に、私の耳元でよく聴こえていたサウンドである。CDを購入しようかとwebを検索してみたが、Blue Horizon との2枚合体盤が発売されているのみで、単体としては廃盤の状態のようだ。残念なことだ。このアルバムに限らないのだが、超名盤は別にして、若い頃によく聴いたアルバムが調べてみると廃盤であることがしばしばある。とくに同時代にリアルタイムで聴いた作品がそうであることが多いようだ。その時購入しなかったことをいつも悔やむのだが、当時経済的な余裕がなかったこともまた事実なのだ。仕方がない。So it go (そういうことだ)。

 Sandy Barber のボーカルをフューチャーした② We'll Make It, Sooner Or Later にいつも魅了される。美しい絶品のバラードであるにとどまらず、エリック・ゲイルの繊細で気持ちの良い”ワンパターンなソロ”が最も良質な形で記録されたトラックであろう。