WATERCOLORS ~非哲学的断章~

ジャズ・ロック・時評・追憶

可愛い女の子

2006年12月21日 | 今日の一枚(E-F)

●今日の一枚 103●

Eddie Thompson     

Ain't She Sweet

Watercolors0003_1  昨日見たNHKテレビの「その時歴史が動いた」は、日本の知的障害児教育の創始者のひとり石井筆子についてのものだった。番組の性質上内容の薄さは否めなかったが、それでも障害者問題について改めて考えさせるものだった。特に、近代日本の富国強兵の理念の中で、生産能力に欠ける存在として、障害者が差別・排除されていた状況の中で、石井筆子とその再婚した夫・亮一が、不撓不屈の信念で障害児教育をつづけていく様は感動的だった。

 筆子は前夫との間に3人の子を授かり、そのうち2人の子が知的障害児だった(もう1人は早世)が、いずれも筆子より先に他界した。東京・青山霊園に筆子が建てた3人の娘たちへの石碑には「鴿 (はと) 、足止めるところなく、舟に還 (かえ) る」と記されており、それはこの世界に居場所がないから、鴿 (娘たち)は長く留まることなくあの世へ行ってしまったのだ、という意味らしい。障害児教育が整備されていなかった当時の状況を象徴することばでもある。

 イギリスの盲目のピアニスト、エディ・トンプソンの1976,1978年録音盤、Ain't She Sweet。数年前、ジャケ買いした一枚だ。日本盤タイトルは「可愛い女の子」だそうだ。性格なのだろうか、ちょっと生真面目すぎる感じの響きだが、盲目であることなど微塵も感じさせない演奏である。

 障害者が真にいきいきと生きるためには、彼らをサポートする制度や施設などとともに、彼らが自分自身をきちんと肯定できる生きがいや自己表現の方法が必要だ。

 盲目のピアニスト、エディ・トンプソンには、ピアノという楽器があった。