
いつもたづねてくれるころの夕風がでた
たづねてくれるみちの草だけは刈つておく
風鈴のしきりに鳴るよ訪ねてくれる日の
炎天訪ねてくれて豆腐を貰ふ
たまたまたづねてくれて、なんにもないけどちしやなます
雲かげもない日のあなたを訪ねて来た
訪ねて逢へて赤ん坊生れてゐた
誰もたづねて来ない若葉が虫に喰はれてゐるぞ
ひさしぶりたづねてきて桜落葉する
水音をたづねて落葉のなかへ
暮れて雪あかりの、寝床をたづねてあるく
夕立晴の花をたづねてあるく
うらうらやうやうたづねあてた
柿若葉その家をたづねあてた
しぐるゝやあんたの家をたづねあてた
たづねあてたがやつぱりお留守で桐の花
日向草の赤いの白いのたづねあてた
放送塔を目じるしにたづねあてた風のなか
やうやくたづねあてた家で牡丹の芽
やうやくたづねあててかなかな
そこら音ある水をたづねる
訪ねる人もゐない街のぬかるみ
裏門、訪ね来て山羊に鳴かれる
たまたまたづね来てその泰山木が咲いてゐて
はるばるたづね来て岩鼻一人
たゝへた水のをりをりは魚がはねて
たゝへた水のさみしうない
伐り残されて芽ぶく木でたゝへた水へ
木かげたゝへた水もほのかに緋鯉のいろ
水たゝへたればいちはやく櫨はもみづりて
水たゝへたればおよぐ蟇
水たゝへたればその枝もみづりたれば
水たゝへたれば林ことごとくもみづれば
つきあたれば秋めく海でたゝへてゐる
初夏の水たゝへてゐる
道がなくなればたゝへてゐる水
水底の月のたゝへてゐる
ゆんべの雨がたゝへてゐる、春
雨をたゝへてあふるるにういて柿の花
岩ばしる水がたゝへて青き禊ぎする
海は湛へて暮れ残る蝉がいらだゝし
五月の海は満ちて湛へて大きな船
霽れて元日の水がたゝへていつぱい
水田たゝへてつるみとんぼがゆふ日かげ
山の青さをたゝへて水は澄みきつて
ゆう潮がこゝまでたゝへてはぶ草の花
わいてたゝへてあふれる湯の惜しむところなく
たゝへて凍つてゐる雲かげ
たゝへて春の水としあふれる
たゝへて冬の水のすこし濁り
水はたゝへて秋の雲うつりゆく
水はたゝへて山山の倒影がまさに秋
水はたゝへてわが影うつる
草苺ほのかに朝の水がたゝへ
白みゆく空風もなく海は湛へたり
水田たゝへようとするかきつばたのかげ
水たゝへれば伸びきつた枝のもみづりて
もののこゑほのぼのと海はたゝへけり
大地へおのれをたたきつけたる夜のふかさだ
たゝきころされて秋蠅に声なし
たたきだされて雨はれる百合の芽である
ついてきた蠅でたゝき殺された
秋の蚊のないてきてはたゝかれる
雨に茶の木のたゝかれてにぶい芽
けふは霰にたたかれて
とまればたたかれる蠅のとびまはり
はだかではだかの子にたたかれてゐる














