つれづれなるままに弁護士(ネクスト法律事務所)

それは、普段なかなか聞けない、弁護士の本音の独り言

民事弁護~沖縄編(第18回)~「人の呪わば穴2つ」

2017-06-26 14:51:26 | 弁護士のお仕事

O氏の代理人弁護士は3つの墓穴を掘った。

 

一つ:「前の裁判でKさんを被告にしなかった」ことについての説得的な理由を何一つ語れなかったこと。

二つ:前の裁判の目的は「大急ぎで判決を取ることだった」と自分から認めてしまったこと。

三つ:苦し紛れに「Kさんに対する証人尋問を行う必要なしと裁判所が判断した」と虚偽の説明を法廷でしてしまったこと。

三つ目について少しだけ説明する。

前の裁判の裁判官が、「Kさんを(証人として)調べる必要なし」という判断をした、などという事実は、前の裁判の記録上、どこにもない。

前の裁判では、被告のT社長側も、O氏の代理人弁護士も、つまり当事者双方とも「Kさんに対する証人尋問の実施」を裁判所に申請しなかった。

当事者からKさんに対する証人尋問の申請が出されていないのに、裁判官が先回りして「Kさんを(証人として)調べる必要なし」などと判断することはあり得ない。

被告のT社長側も、O氏の代理人弁護士も、誰一人「Kさんに対する証人尋問の実施」を裁判所に申請しようとしない。

だから裁判官は、せめて職権で(つまり、当事者からの申請がなくても)実施できる当事者尋問だけでも実施することにしたのだろう。

しかしそれは、「Kさんに対する証人尋問を行う必要なしと裁判所が判断したこと」とイコールではない。

判決を早く出せ早く出せとせっつく原告O氏の代理人弁護士、Kさんの利益とか事件の真相究明には何の興味も抱いていない被告T社長の代理人弁護士。

当事者主義とか証明責任の名のもとに繰り広げられる茶番劇に対する、前の裁判の裁判官の精一杯の抵抗が「T社長に対する当事者尋問の実施」だった、ということだ。

 

「人の呪わば穴2つ」という。

墓穴を3つも掘ったO氏(の代理人弁護士)の恨みの深さが知れるな。

誰の、何についての恨みだか知らんが。

 

10月の弁論準備手続期日にO氏の代理人弁護士が私に投げつけた言葉を、今、そのままお返しするぞ。

事実を証明するためにどのような証拠・証人を裁判に提出するかは当事者の自由。

「当事者主義」だ。

前の裁判でこの当事者主義を利用して意図的にKさんを被告からも証人からも外した理由を、この法廷でもうすぐ明らかにしてやる。

文字通り、「目にモノ見せて」やる。

 

裁判官の横で眠たそうに座っている司法修習生は、「いったい、何で双方の代理人弁護士はこんなに熱くなってるんだ?」とキョトンとしている。

嘴(くちばし)の黄色いヒヨコちゃんには分からなくても無理ないぜ(←偉そう)。

 

火種は揃った。

さぁ、反撃の狼煙(のろし)をあげよう。

だいじょうぶ、Kさん。

Kさんの背広の内ポケットに入っている財布の中の「ヒロの手作りお守り」と「日枝神社のお守り」がきっとKさん(と私)を守ってくれる。

 

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民事弁護~沖縄編(第17回)~「反対尋問その3【墓穴】」

2017-06-22 11:02:03 | 弁護士のお仕事

O氏の代理人:前の裁判でKさんを被告にしなかったことが平岩先生は何かえらく不満みたいですが、(中略)東京のWTK社に対して仮差押えをするとなると、東京地裁へ行って、資料も疎明しなければならない。これじゃ駄目だから、大急ぎで判決取ろうと私が提案したことは覚えてますか?

O氏:はい。今、思い出しました。

O氏の代理人:それで名古屋の裁判所へ裁判を起こして、「(T社長に対する)刑事裁判の記録もそろっている、証拠も陳述書も全部そろっている。これではもうほぼ疑問の余地はないからとにかく早く判決出してくださいと言って、私が(前の裁判の)裁判官に法廷で頼んだことを覚えていますか?

O氏:はい。

O氏の代理人:前の裁判でT社長やO氏に対する当事者尋問をしようというのは、私から「調べてください」と言ったのか、前の裁判の裁判官が「一遍(いっぺん)調べてみましょう」と言ったのか、覚えていますか?

O氏:たぶん、裁判官だと思います。

O氏の代理人:そうですね。だから、前の裁判の記録を見ると、私でも、T社長の代理人でもなく、いきなり裁判官の質問から始まっている。

O氏:はい。

O氏の代理人:これは「当事者尋問」が(裁判官の)職権で実施することになったからです。

O氏:はい。

O氏の代理人:ということは、先回の裁判でKさんを証人として調べなかったというのも、裁判官が「調べる必要なし」ということだったんじゃないんですか?

O氏:そうだったと思います。

 

なんとも長い言い訳だな。

人は、苦し紛れの言い訳をするとき、饒舌になるのだ。

O氏の代理人弁護士は自ら墓穴を、それも大きな墓穴を掘ってくれたのだけれど。

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民事弁護~沖縄編(第16回)~「反対尋問その2【綻び】」

2017-06-12 11:21:55 | 弁護士のお仕事

私:前の裁判の当事者尋問調書を見ると、あなたは、平成17年12月に沖縄でKさんに会った時の状況について、こう仰(おっしゃ)ってる。

「沖縄の本社の方へ行きまして、そこにいた留守番のKさんという人と話をした。」

と。

あなたの話では、平成17年12月に沖縄でKさんに会ったのは5月25日の東京に続いて2度目のはずだ。

でも、あなたの言い方は、まるで「沖縄で初めてKさんという人に会った」ように聞こえる。

2度目に会った人についての説明としては、すごく違和感のある表現です。

どうしてちゃんと説明しなかったんですか?

「5月25日に東京で会ったKさんがそこにいたので、T社長とか出資金の行方について問い質(ただ)した」

とか、先ほどの主尋問で証言されたように、

「いきなり沖縄の本社に乗り込むのは正直怖かったけど、以前会ったことのあるKさんの顔を見てホッとした」

とか。

O氏:いや、Kさんという人を前から知っているならそうも言えるでしょうが、初対面で名前も知らないのに、そんな風に言えるわけがないと思いますけどね。

 

綻(ほころ)びが、大きくなった。

私のO氏に対する反対尋問は続く。

 

私:前の裁判を起こすとき、どうしてKさんも被告にしなかったんですか?

O氏:それは弁護士さんと相談してこういう形でやる、というふうに指示を受けましたんで。

私:弁護士さんが指示をした?

O氏:弁護士さんと相談してですね。

私:弁護士さんから言い始めた?

O氏:はい。

私:では、前の裁判のとき、どうしてKさんを証人として呼び出して尋問しなかったんですか?

O氏:それも弁護士さんの考えがそういうところにあったんだと思います。

私:なるほど。Kさんに対する証人尋問をしなかったのも弁護士の先生のご指示だったんですか?

O氏:はい、そうです。

私:前の裁判の法廷でKさんに5月25日の話をされると何かまずいことでもあったんじゃないですか?

O氏:それは違うと思います。

 

心なしかO氏の口調が早くなってきている。

疚(やま)しいことがあるとき、聞かれたくないことを答えなければならないとき、人は早口になるものだ。

 

たまりかねて、O氏の代理人弁護士が私の尋問に割り込んできた。

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民事弁護~沖縄編(第15回)~「反対尋問その1【布石】」

2017-06-05 12:33:58 | 弁護士のお仕事

私:あなたが東京のWTK社でKさんに会ったのは、「平成17年5月25日午後2時」で、間違いありませんか?

O氏:はい。間違いありません。

私:本当は「平成17年5月27日」だったのでは?

O氏:いや、25日です(きっぱり)。

私:しかし、前の裁判の記録を見ると、当事者尋問のとき裁判官はあなたに対して、

「平成17年5月27日にWTK社に行ったときの話ですが」

と質問しています。ところが、あなたは、今のように

「いえ、25日です」

と訂正もしないで、

「そのときKさんとT社長に会議室で会った。」

と答えていらっしゃる。何故、日付を訂正しなかったんですか?

O氏:いや、私は最初からずっと25日と言い続けてましたから(きっぱり)。

私:じゃ、これからも「平成17年5月25日」ということでお話を伺っていきますね。

O氏:はい。

 

1つ目の布石、完了。

私のO氏に対する反対尋問は続く。

 

私:あなたのこれまでのご主張によると、そのとき、あなたはT社長からKさんを「営業担当者」と紹介されたんですね?

O氏:そうです。

私:これは今回の裁判で、あなたが「そのときKさんから貰った名刺である」と証拠提出しているKさんの名刺です。この名刺に書かれているKさんの肩書、この部分を読み上げてください。

O氏:私、メガネがないと、ちょっとよく見えないんですが・・・・。

(あたふたとメガネをかけて)ああ、「代表取締役」と書いてありますね。

私:代表取締役が「営業担当者」って、おかしな話だとは思いませんでしたか?

O氏:25日のときは、そこまでは気づきませんでした。

私:「そこまでは気づかなかった」とはどういうことですか?

O氏:いや、25日には私、メガネを持って行かなかったので。

私:メガネを持って行かれなかった! T社長から出資の話というか、お仕事の話があると言われて、あなたはわざわざ東京まで出かけられたんでしょ? 出資とかお仕事の話ならいろんな書類を見せられる可能性があると思うんですが、メガネは持っていかれなかったんですね?

O氏:はい。

 

小さな綻(ほころ)びだが、これまで完璧に見えたO氏の話が揺れ始めた。

2つ目の布石、完了。

私のO氏に対する反対尋問は続く。

 

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民事弁護~沖縄編(第14回)~「当事者尋問」

2017-05-29 11:14:02 | 弁護士のお仕事

平成21年2月某日。

O氏とKさんに対する当事者尋問が始まった。

法壇上の裁判官の横には、名古屋地裁で裁判修習中の司法修習生。

そして、傍聴席には息子の晴れ姿(?)を見に来た私の親父。

 

「宣誓 良心に従って、ほんとうのことを申します。

知っていることをかくしたり、無いことを申したりなど、決して致しません。

以上のとおり誓います。」

 

O氏とKさんが法廷の中央にある証言台の前に立ち、ふたり並んで宣誓書を読み上げる(ちなみに宣誓書の文章は裁判所によって微妙に違う。興味のある方は裁判傍聴時に調べられたい。)。

 

まず、O氏の代理人弁護士がO氏を尋問する。主尋問という。

依頼者(O氏)と、その代理人弁護士のやりとりだから、当然ながら事前に代理人弁護士が作ったシナリオに沿ってみっちり練習してきている。

(プロの役者じゃない、という意味で)ド素人の尋問者(弁護士)と同じくド素人の供述者(O氏)が、暗記してきたシナリオどおりに喋(しゃべ)るだけだから、大根役者の三文芝居みたいなやり取りが延々と続く。まぁ、それはこちらも同じことですが。

あまりの大根ぶりに裁判官や修習生の中には「目を瞑(つむ)って熟考」を始める輩も(たまに)いる。

事前にリハーサルを繰り返してきているから、主尋問で供述者(=当事者本人)が失敗をしでかす(=墓穴を掘るようなことを言ってしまう)なんてことは、よほど代理人弁護士の腕が悪いか、供述者(=当事者本人)がチキンハートじゃない限り、まずない(たまにある)。

 

O氏の主尋問はほぼ完璧だった(・・・いいなぁ)。

事前リハーサルも何も、O氏と代理人弁護士は、前の裁判で既に「本番」を経験済みなんだから当たり前か。

内容的に目新しい話は何もないけど、主尋問はそれで十分。

これまでの手続きでまったく出てこなかった新しい事実(主張)がいきなり飛び出して来たら、裁判官も相手方も面食らうし、手続きも混乱する。

主尋問では、これまで書面で主張してきた事実を、当事者自身の生(なま)の言葉で、淀(よど)みなく、詳細かつ説得的に裁判官に伝えられればそれで十分なのだ。

 

しかし、眠く・・・じゃなかった、目を瞑って熟考したくなっちゃったぞ。

O氏の代理人弁護士とO氏のやり取りってば、盛り上がりなさすぎ!

って、裁判官と修習生まで二人そろって居眠・・・じゃなかった、目を閉じてやがる!

 

「私からは以上です。」

そう言ってO氏の代理人弁護士が着席した。

さあ。

次は私のO氏に対する反対尋問だ。

 

待ってろよ! 裁判官と修習生。

今、刮目(かつもく)させてやるぜ。

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