『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  886

2016-10-13 05:22:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンが話しかけた。
 『考えてみればだな、お前と俺とは互いに違った世界で生きている。そうであるだけに互いの話が別世界を相手に届ける語りつくせぬ話を互いが持っている。手放したい話もあれば、いつまでも持っていたい話もいろいろある』
 『そうだな、うなづける』
 二人は、何を話そうかと話の検索に右往左往している、目が合う、二人は、大声をあげて笑いあった。
 『なあ~、パリヌルス、近頃、海が結構騒がしいのだ。もともと、ギリシアなど、アカイアの者どもを筆頭に、こいつらは海賊立国主義だしな、キクラデス諸島のこまかい海賊集団も増えたり減ったり、その上、どこから湧いてきたのか、どこから渡来してきたか、わからない不逞の輩の小集団、また、島の領主が海賊の一掃を企てているところもあってな』
 『それじゃ、お前自身が危険に身をさらしているというわけか』
 『そんなこんなで俺も考えるよ、交易のネタについてのあれこれをだ』
 『これはという思い付きでもあるのか?』
 『ある、ある!あるんだなこれが』
 『よかったら話してみろ!』
 『なあ~、パリヌルス。それはなんだと思う?』
 『まさか、船だとは言わないだろうな』
 『ピンポン!まさにそれだ。その船だ!俺の考えている船だが、それを二艇ほど造ってみないか。今の新艇に衝角構造を点けて、船体を対衝角衝撃構造に造る!小型戦闘艇がどうであろう。面白いとは考えないか?武を持って起つ人間は、いつも何かをほしいと考えている。その武をもって、どうすれば他人の富をわがものに出来るか、そればかりを考えている。そして、それを実行するには、どのようなものを使って、それをやるかを考えている。それを持てば、相手の物を奪い獲って己の物とできる!負けることなどこれぽっちも考えない、そこが人間の愚かなところなのだが』
 『お前というやつは、結構、戦好きなのだな。戦の道具を売っていたら、エーゲ海の武器交易人と言われるぞ』
 『しかし、新物の剣や槍の類は扱ったことはないが、お前らのエノス時代にお前のところから引き取った武具や剣や槍でいい儲けをはじき出した。こんなものと思っていたのに、いい金になった。ありがたかったな』
 『そうか、そんなにおいしかったか、それは重畳といったところだな』
 『クレタ界隈では、あのように大量の戦利を奪えるような争いがない。そうであるばっかりに、小型の戦闘艇に目を付けたというわけだ。いい着想だとは思わないか?』
 『お前っていうやつは、戦争仕掛人だな』
 『ギリシア辺りの造船所は、軍船の造船と小船舶は漁船しか造っていない。海上における戦闘用小船舶に考えが及んでいない。ニーズのあるところへニーズの品を造って届ける。それが俺の交易の使命である』
 テカリオンは、自分の胸にある熱い想いを渾身の力を込めてパリヌルスに語った。


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