トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1053

2017-06-14 08:12:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テムパキオの朝が明ける。
 太陽は、はるか遠くに見える(テムパキオから60キロ余り東方)クレタ島三山、三番目の高峰デクテイ山(2184メートル)から昇る。
 パキオテ方の船衆らの朝が早い。彼らは進水式の準備を整えている。ゴッカスらはオキテスの指示を受けて彼らを手伝っている。準備が出来あがる。
 パキオテ頭領が姿を見せる。オキテスとスダヌスがパキオテ頭領と顔を合わせる。
 『頭領、おはようございます。今朝も気持ちよく晴れています、とってもいい朝です。昨夕は大変、馳走になりました。ありがとうございました』
 『おう、おはよう。よく眠れたかな。昨夕はどうも、こちらこそ礼を言わなければならん。今日の太陽の第一射が届くのは間近い!その太陽をここに会する一同がそろって迎えねばな』
 パキオテ頭領が船衆の一人を呼び寄せる。
 『おう、進水式の準備が整ったのか?』
 『はい!出来あがりました』
 『よしっ!今日の太陽の第一射が間近い!一同の整列だ。式に使う剣は準備しているな』
 『はい!万事抜かりなく整っております』
 スダヌスがオキテスに声をかける。
 『オキテス隊長、私が一同を呼んできます』
 スダヌスが一同を呼びに走る。
 パキオテ頭領が新艇に向かって立つ、その背後に船衆らが二列になって横に並ぶ、その後ろに場をとって、ギアス、ゴッカスが率いる軍船、新艇操船の者らが隊列を組んで並ぶ。
 なかなかの壮観である。
 突如、気を見て、パキオテ頭領が身体の向きを反転させる、昇り始める太陽の方向に向く、デクテイ山南面の稜線から今日の太陽が顔を出す、大日輪の昇陽である。
 大日輪が全姿を輝かせて、頭領と新艇を照らす。
 頭領が大日輪に深く低頭する、体を起こす、声高らかに航海安全の祈願文言を日輪に届けよとばかりに叫んで祈りあげる。
 彼は、太陽への祈りを終えて、新艇の艇尾の波打ち際に立つ、船衆が子羊を引いてくる、波打ち際に子羊を据える、
 頭領が海神ポセイドンに新艇を求めたことを述べ、航海の安全を祈りあげる。
 『ポセイドン神!我の往く海の安全を願う!』と言葉を結ぶ。
 船衆が剣を頭領に渡す、剣を手にする頭領、浜に凛とした気が漂う、手にした剣を海につける、滴るしずく、子羊に対する、子羊と目が合う。
 頭領が剣を上段に引き上げる、剣が陽にきらめく、裂帛の気合、光の一閃、子羊の頭部が胴体から離れる、吹きあがる鮮血が風に舞う。
 子羊の頭部が海にのまれていく、船衆が頭部のない胴体を海に放り投げる、海がのんでいく。
 浜に喊声が轟く、船衆、オキテスら列席の一同が新艇に取り付く。
 頭領が新艇の艇首前に立つ、手に持つぶどう酒の壺を舳先に打ちつける、飛び散るぶどう酒と壺の破片、またもや、一同が沸き立つ。
 『新艇を海におろせ!』
 頭領が叫ぶ。
 新艇が海に降りていく、艇体を海に浮かべた。
 挺心と海心が同化する。オキテスをその気が襲う、オキテスの心は『不思議なる気』に触れて、全身に鳥肌が立った。
ジャンル:
小説
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