トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1093

2017-08-09 07:31:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスとガリダ、二人は、イリオネスの前に座して、飲むほどに酔うほどに雄弁になってくる。
 『おい!スダヌス浜頭、お前と俺とはだな、ニューキドニアの外郭仲間うちだろうが、手伝うことがあれば、大いに手伝っていこうではないか』
 ガリダの口調に力がこもっている。スダヌスの口調も同調して力が入る。
 ガリダが話し続ける。
 『イリオネス軍団長殿、そういうことです。用事があれば遠慮なく言ってください。いい手伝いをさせていただきます』
 『イリオネス殿、ガリダの言う通りです。俺ら二人、骨惜しみせず手伝います。これは盟約ですな』
 『おう、ありがとう!いい日、いい時にご両人に会えた。うれしい限りといえる』
 六人が集散所の広場で炉を囲み、酒杯を傾け、肴を口に運ぶ、二人の好物のオロンテスが焼いたスペシャルパンの新味を味わい昼を過ごした。
 オキテスは、タブタと打ち合わせる。
 『タブタ、五日後に製材所を訪ねる、よろしく頼む』
 『解りました。待っています』
 昼便の用事を済ませたアレテスがパン売り場に姿を見せる。
 イリオネスが声をかける。
 『おう、アレテス、ご苦労!オキテスも一緒に浜へ帰る。荷を車に積んでくれ』
 オキテスは、アレテスの手を借りてドラクマ銀貨の袋を手押し車に積んで船だまりへと向かう。
 『隊長、これはなんです?』
 『これか、お前なんだと考える?これはだな、完売した新艇の決済代金の半額を今日受け取ったのだ』
 『相当の重量ですな』
 『そりゃ、重いわけだ。新艇5艇分の半額だぞ!もっといただいてもいいのだが、互いに話し合って決めた金額だ。もっとよこせとは言えないだろうが』
 受け取ったドラクマ銀貨の総重量は約17キロがラム、5つの袋に入れられていた。
 受け取ってきた新艇の代金をアレテスの昼便の帰り船に積んで浜へと帰る。
 洋上には西風が強く吹いている、浜に帰り着くにはそれなりの時間を要した。
 イリオネスは、アレテスを呼び寄せる、オキテスは傍らにいる。彼は、アレテスをじい~っと見つめる、目を合わせる、おもむろにゆっくりと話しかけた。
 『なあ~、アレテス、いろいろあったな、あの時以来、今日まで、一年有余。我々一族は小さいといえども大所帯だ。振り返って考えれば多事多難である。いろいろなことをやっている』
 艇が波を割って飛ばすしぶきが顔にあたる、それを拭う、二人の目が合う。
 『オキテスとは、ほとんど毎日顔を合わせているが、小島の業務を任せているお前とは顔を合わせるのが時たまといった具合だ。お前も日に焼けていい顔色をしている。健康に変わりがないようだな。それについては何よりと安心している』
 イリオネスは、アレテスと顔を合わせて、しみじみと語る。アレテスは、うなずきながらイリオネスの言葉を聞き止める、心が潤んだ。
 トロイが炎上して、地上から消滅しようとしているあの夜のこと、二人が、そして、傍らのオキテスが、瞼の裏に思い浮かべていた。
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