トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  892

2016-10-19 09:58:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~お、オロンテス殿、ご苦労様です』
 ハニタスが声をかけてくる。
 『キドニス浜頭、、新艇が到着したようです、まいりましょう』
 二人が立ちあがる、キドニス浜頭がオロンテスに声をかけた。
 『ご苦労でしたな、道中、いかがでしたかな?今日のように落ち着いた日和が何よりです』
 『はい、道中の中間地点を過ぎたころより、程よい西風に押されて、曳航が順調であったことを心から喜んでいます』
 『何っ!曳航してきたと、それはまた、心遣いをされましたな』
 キドニス浜頭は、乗り組みの連中15人を引き連れて、船だまりへと歩を運んでいく。
 スダヌスがキドニス浜頭一行の姿に目をとめる、オキテスに声をかけた。
 『おう、オキテス、一行がきたぞ!』
 オキテスは、一行の姿を見とめる、ギアスに声を飛ばす。 
 『ギアス、一同を整列させ、例の物を統領に渡してくれ』
 『解りました』と答えて、櫂舵一本と櫂を二本を紅白の織りひもで結びとめたものをアヱネアスに渡した。
 『お~お、これか、解った』
 オキテスは、紅白の化粧飾りをした子羊を右手に引いている。ギアスは、オロンテスに託された、祝い品のスペッシャルパンを20個入れた大袋と堅パン3ケースを捧げ持ってオキテスに並んで立っている。
 オロンテスが一行を案内して岸壁に来て立つ、キドニス浜頭と集散所の所長、ハニタスが一行の先頭にいる、ついてきた乗り組みの連中が岸壁上に居並ぶ、美しく飾り付けられている納入新艇に一行が見入った。
 オキテスがヘルメスの乗組員一同に合図を送る、一同から拍手が沸きあがる、キドニス浜頭が驚きの声をあげる、オキテスの合図で拍手が止んだ。オロンテスがハニタスに黙礼を送り、アヱネアスに合図を送る、アヱネアスがキドニス浜頭の前へ進み出た。
 アヱネアスが凛とした声で口上を述べる。
 『キドニス浜頭殿、このたびは、ありがとうございました。我々が建造した新艇第一号艇を、本日、ここにおいて、引渡し致します。お受け取り下さい。重ねて御礼を申し上げます。記念として、予備の櫂舵一本と二本の櫂を贈ります』
 アヱネアスは、紅白のひもで結んだ一本の櫂舵と二本の櫂をキドニス浜頭に手渡した。
 キドニス浜頭は、手渡された櫂舵と櫂を受け取り、おもむろに口を開いた。
 『アヱネアス統領殿、丹精して建造された新艇、ただいま受け取りました。記念の櫂舵、櫂もいただきました。私たちは、新艇を存分に使っていきます。アヱネアス統領殿、今日の日を待ちました。ありがとう!』
 キドニス浜頭が右手を差し出す、力強く握るアヱネアス、この光景を目にしている一同から一斉に拍手が沸きあがった。
 オキテスが子羊を引いている紐をキドニス浜頭に渡す。
 『ポセイドン神への引き出物にお使いください。それから、これはお祝いの赤ぶどう酒です。どうぞ、これも私どもよりの新艇引き渡しの祝いの品です。お受け取りください』
 ギアスが捧げ持つパンの大袋と堅パンのケースをキドニス浜頭に手渡した。
 またまた、一同から盛大に拍手が沸きあがった。
 キドニス浜頭が満面を紅潮させて大感激している。
 『アヱネアス統領殿、ありがとう!ここまで心を遣い、新艇を納入していただき誠にありがとう。ありがとうが足りない思いです。本当にありがとうございました。そして、ここに居並ぶ諸君!ありがとう』
 彼はあらん限りの力を込めて、声大きく、居並ぶ一同に目線を送り礼を述べた。一同は拍手をもってこれに応えた。
 この光景を目にしたスダヌスは腰を抜かさんばかりに驚いた。この光景を遠くから見ていたテカリオンも大感動していた。
 集散所の所長もハニタスもトミタスもこの光景に驚きの目を見張った。
 船だまりの岸壁は、この光景で沸きに沸いた。
ジャンル:
小説
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