『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1083

2017-07-26 07:30:39 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
『軍団長、今日はここでオロンテスの帰ってくるのを待つ。会議の場で、今日、結論を出すと言っていたのだが考えがまとまらない。お前はどうだ?』
 『統領に右ならえです、私もそのような状態です。積んでは崩し、崩しては積みあげての繰り返しです。結論に至っていません。彼らには悪いが日を改めるということで』
 『三日後の朝からでどうだ。結論を急がねばならない事案でもない』
 『了解しました。そのように計らいます』
 『オロンテスが帰ってきたら、オキテスのいるところで打ち合わせをやる。それでいいな』
 『おう、軍団長、戦闘艇の試作艇を見に行こう』
 『はい!』
 二人は、揚陸されている戦闘艇の試作艇のほうへ歩を運んで行く。
 建造の場では、この試作艇を綿密に観察し、ドックスの指示を受けて、戦闘艇の部材を丹念に仕上げている。
 二人は、その光景を見つめる。
 ドックスの的確な作業指示、作業者がドックスの指示を手にしている木板に書き込む、それを覗き見る、ひと声かけるドックス、手順のいい作業運びを見てとる。
 二人が試作艇に手をかける、艇体をなぞる、その構造を念入りに見て廻る。
 『おう、よい造作をしている。艇体が考えていたより長く感じられるな』
 イリオネスが口を開く。
 『これが新しい構造の舵か』
 彼が操舵の取っ手の握り部分を握る、そろりと動かす。
 ドックスが二人のところへと近寄る。
 『統領、そして、軍団長。説明を必要とするところがあれば、聞いてください』
 まず、統領が質問する。
 『おう、ドックス、尋ねる。この舵の構造だが、簡単な造作でありながら、合理的といえる。操船具合を確かめてみたい!』
 次いで軍団長の指示である。
 『ドックス、その打ち合わせを明日にでもする。オキテス隊長と話し合っておいてくれ』
 『解りました。舵のことですが、この造作にかかる時、気にかけたことは、この上なく頑丈であることに留意しました』
 『そうだろうな、櫂舵を見ればわかる、壊れるところがない。新舵構造と櫂舵、二方法の造作が施されているとは、いい配慮構造といえる。重畳!』
 戦闘艇の造作について統領の問いかけが続く、それにこたえるドックス。
 『しかしだな、ドックス。この衝角構造体についてだが、追加して造作して仕上げた構造体の補強構造について、詳しい理屈を聞いてみたい』
 『その件については、パリヌルス隊長に尋ねていただければ幸いです。オキテス隊長は、その件についてパリヌルス隊長から聞いているはずです』
 『おう、解った』
 遠くからオロンテスの声が聞こえてくる。
 『統領、オロンテスがキドニアから、帰ってきたようです。呼びますか』
 『いや、その必要はない。彼はこちらへ来る』
 アエネアスが予知能力の暗示で答えた。


最新の画像もっと見る