トロイからの落人  Fugitives from Troy

トロイを脱出して7年。約400年後のローマ帝国発祥の杭を、テベレ河河口の地に打ち込んだ男がいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  888  

2016-10-16 08:06:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『俺のこのたびの航海か、今度の航海は、へスペリアの南岸の各所を目指してシチリアの手前まで出かけてきたのだが、向こうも天候不順がここ数年続いているようだな。食糧事情がよくない。それに比べて、西アジアの南部地方は豊作と言えないがまずまずといったところだ。西アジアの内陸部も天候不順が続いているそうだが不作続きではない。地下資源の採掘が人々を潤している。トロイの東、アストリア地方も地下資源、金、銅の類、それにヒッタイトの鉄が状況がいいらしい。どうも、不逞の輩は、そのあたりの風聞を耳にしての民の移動とみている』
 『そのような事情があるのか。奴らの目はクレタを見ていないな。クレタはそのような島なのか』
 『パリヌルス、クレタは、奴らにとって、おいしい魅力のある島ではない。クレタは、農耕生産物、畜産物、そのうえ、地下資源が豊富と言えない。また、島の東部地区は森林も伐りつくして木材は枯渇状態だ。サントリーニの火山爆発の影響を受けて、野草も貧弱、見ての通り牛もいない島ではないか。隆盛を極めた文明も廃れにかかっている。さきが思いやられる島なのだ』
 『言われてみれば、うなづける。国家興隆の大計を建てるに最適の土地ではないと感じている』
 『俺が他人から聞いている風聞ではだな、ヘスペリアの中部地帯は、文明度の高い、トロイ、クレタ、シュメール、メソポタミア、エジプトに比べて、未開の地と言っていいくらいのところらしい。これからという未来を考えたら、国を興すのに最低の条件を整えやすいと考えられる』
 『テカリオン、何故だ?そのように西のことについて調べたのか?』
 『ちょっとな、カルタゴについて興味を持ったのだ。カルタゴは、ギリシア人が植民して、都市国家を形成して、結構長い、そのカルタゴに興味があったのだが、風向き、海荒れで行きそびれたわけだ。シチリアにもギリシア人の都市国家があって、行きたかったわけだが、自然の状況変化にさえぎられたということだ。この辺り、へスペリアの南岸には、ギリシア人中心の都市国家が開かれているのだ。このシチリアからへスペリアの西岸を北上したところに、クマエというところがあるらしい、そのあたりまでにいくつかの都市国家が開かれていると耳にしている。そのクマエなるところから以北には植民地が存在していないと聞いている。状況は定かに知るところではない』
 テカリオンは、ここまで話してひと息ついた。
ジャンル:
小説
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